[InterBEE2019]EIZOブース:CG3145-BS後継機種の開発中HDRリファレンスモニターを参考出展
2019-11-27 掲載

12G-SDI入力対応、キャリブレーションセンサーを内蔵した開発中HDRリファレンスモニターを参考出展


EIZOブースの今年一番のハイライトは、CG3145-BSの後継機種となる開発中HDRリファレンスモニターの参考出展だ。高輝度1000cd/m2・高コントラスト比100万:1の現行HDRリファレンスモニター、ColorEdge PROMINENCE CG3145-BSの表示性能をさらにパワーアップさせた後継機種となる。
一番の特徴は、SDI入力対応だろう。ColorEdgeシリーズにはSDI入力対応のモデルは存在しなかったが、開発中HDRリファレンスモニターはSDI入力を求める放送局の強い要望に応えた形だ。12G-SDI対応の入力端子を1系統、3G-SDIまで対応の入力端子を3系統搭載しており、カメラからの信号をダイレクトに接続できる。

キャリブレーションセンサーを内蔵している点も大きな特徴だ。ColorEdgeのCGシリーズには、もともとキャリブレーションセンサーがモニター筐体に内蔵されており、専用ソフトウェアを使用してモニター単体で自動キャリブレーションが可能だ。開発中HDRリファレンスモニターは、最高輝度1000cd/m2の測定にも対応する進化したキャリブレーションセンサーを内蔵している。

さらにモニター前面ベゼルには、新たに調整ダイヤルが搭載されている。もともと放送用機材は調整ダイヤルを備えた製品が多く、ユーザーは、輝度やコントラスト比など任意の値を調整ダイヤルを使って微調整を行うことができる。開発中HDRリファレンスモニターでも調整ダイヤルを搭載したことにより、より業界ユーザーにも使いやすくなると予想される。

細かいところでは、モニターの輝度、ガンマカーブ、色域を入力信号のメタデータに合わせて自動的に切り替える新機能が搭載される予定だ。
ColorEdgeシリーズには、DCI-P3やBT.2020を含むさまざまな映像制作専用カラーモードを用意しているが、実際に現場で作業をするクリエイターがモニターOSDメニュー上のカラーモードを一個一個手動で切り替えて作業するとなると、ミスの発生も考えられなくはない。こうした背景から、新機種ではSDIのメタデータに合わせて自動切り替え可能な機能が搭載される。
対応SDIメタデータの機材としては、Blackmagic DesignのUltraStudio 4K Extreme 3やUltraStudio 4K Miniが動作確認済みとのこと。
市場のリファレンスモニターはスペックが横並びになりつつある傾向にあるが、EIZOが一番重視しているのは色の再現性だという。HDRは黒のレンジも拡張されていて、特に映画制作などではどれだけ暗部の階調が再現できるかを重視している。高輝度をアピールするメーカーもあるが、EIZOとしてはより色再現性を向上させることに重点を置いて、新製品を開発したという。
PQコンテンツ制作と同時に、地デジ放送向けSDRのプロジェクトを作る作業があるとする。プロジェクトを切り替えるだけで、モニター輝度は、1000cd/m2から100cd/m2に下がり、ガンマカーブも2.4、色域もBT.709に自動的に変わる。クリエイターは、モニター設定を気にせずに、ツール側のプロジェクト設定だけ切り替えれば、安心して使えるという機能になっている撮影、編集、制作、カラーグレーディングとワークフローの流れごとにソリューションを展示
EIZOブース全体としては、4K HDRのモニターを使った映像制作ソリューションの提案をテーマとしており、撮影、編集、制作、カラーグレーディングとワークフローの流れごとにソリューションを実演しながら紹介を行っていた。
撮影のコーナーでは、HDRの映像をリアルタイムでSDRに変換したときにどのように違いが出るかの実演が行われていた。HDR制作では、SDRコンテンツを一緒に制作するのが一般的で、SDR放送ではどのように見え方が変わるかをリアルタイムで確認しながら作業できる環境を再現していた。

制作向けや編集向けのソリューションコーナーでは、放送局ユーザー向けに、EDIUSを使った展示が行われていた。EDIUS Workgroup 9のバージョン9.2以降から、EDIUS側にColorEdgeのカラーモードを連携して切り替えできるカラーコントロール機能が搭載された。
デモでは、HLGのコンテンツが流れており、EDIUSのカラースペースをBT.709に変えるとモニター側のカラーモードも自動でBT.709のカラーモードに切り替わる仕組みを実演。これまでは、コンテンツを切り替えた場合、モニター側の表示も手動で変更する必要があったが、その手間が一切なくなるという便利な機能だ。

カラーグレーディングのコーナーでは、HDRリファレンスモニターのColorEdge CG3145-BSの展示が行われていた。DaVinci Resolveを使って1000cd/m2の仕上がりの明るさをグレーディングできる環境を紹介。
CG3145-BSの特徴は、特殊な液晶パネル方式を採用しており、液晶ながらコントラスト比100万:1という深い黒の再現が可能なところだ。有機ELと実際に並べてみても遜色のない黒の締まり具合を実現できる。かつ、他社の有機ELのHDRリファレンスモニターの場合では、画面の白の比率が高くなると自動で輝度が下がってしまうが、液晶ではそのような心配がない。リアルで正確なHDR映像の表示が可能とのことだ。


コンテンツを楽しむための21.6型有機ELモニター「FORIS NOVA」登場
コンテンツを楽しむための製品としては、EIZOブランド初となる21.6型有機ELモニター「FORIS NOVA」の展示も注目を浴びていた。EIZOは主に制作側のモニターを提供するメーカーだが、FORIS NOVAは4KのHDRコンテンツを視聴するためのHDRモニターだ。ColorEdgeは制作用のためにHDR10には対応していないが、FORIS NOVAはHDR10やHLG(ハイブリッドログガンマ)のカラーモードを搭載。EIZOは以前、FORIS.TVというブランドでテレビ自体を販売していたことがあったが、4K HDRに対応してる有機ELモニターというのはEIZOブランドでは初となる。
FORIS NOVAは、AmazonのFire TV StickやBlu-ray Disc、NetflixなどのHDRコンテンツをプライベート空間で視聴用として楽しむことをコンセプトとしている。2019年11月1日発売で限定500台。EIZOダイレクトのみの販売で、価格は税別350,000円。
輝度が330cd/m2で、コントラスト比100万:1という仕様になっている。現物を見てみると、さすが有機ELで、黒が引き締まって見える。液晶のように後ろから照らしている発光の形式とは異なる描画を実現しているのがわかる。

EIZOとカリーナシステムの合同ブースで出展
今年のEIZOブースは、2018年3月にグループ会社となったカリーナシステムと合同で出展していたのも気になったところだ。カリーナシステムは、病院のビデオ管理システムなどを中心に事業を拡大している映像技術のハードウェアやソフトウェアメーカー。ヘルスケア市場では、すでにカリーナシステムの医療用カメラと配信システムに、EIZOのモニターを組み合わせたソリューションを展開している。今回Inter BEEでは、放送・映像制作市場に向けた両社の映像ソリューションを紹介していた。
カリーナシステムはカメラなど撮影機器から記録、配信、編集などの入力部分を得意とし、EIZOは映像表示部分を得意としている。この2社が一緒になるとことで、カメラ(撮影)、モニター、モニター(表示)まで、映像制作の入口から出口までをトータルソリューションとして提供可能になる。統合し、強みを磨き上げる狙いから、グループ化を実現したとのことだ。

[ Category : Inter BEE 2019, NEWS, SPECIAL ]
[ DATE : 2019-11-27 ]
[ TAG : EIZO Inter BEE 2019]
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