左から代表取締役社長の野津氏、チーフプロデューサーの浦郷氏、ミキシングエンジニアの丸橋氏、オペレーションマネージャーの遠山氏

株式会社IMAGICA Lab.は、株式会社IMAGICA GROUP内のグループ企業であるSDI Media Group, Inc.(以下:SDI Media)と株式会社IMAGICA SDI Studio(以下:ISS)を共同設立し、日本語音響制作専門のダビングスタジオをオープンした。2020年2月17日から本格的に事業を開始した同スタジオに今回お伺いした。

ISSは、IMAGICA Lab.の日本国内における80年超にわたる映像事業のノウハウとSDI Mediaのグローバルなネットワークを活かし、ユーザーのニーズに即したサービスを、ハイエンドな機材とワークフロー、両社が培ってきた人材により提供する。

IMAGICA SDI Studioが提供するサービス

ISSのロゴはIMAGICA Lab.とSDI Mediaのコーポレートカラーを使用。波形のデザインは「IMAGICA SDI Studio」と発声した際の波形になっている

具体的なサービス内容としては、外国語の映像及びゲームコンテンツの日本語吹替版制作や日本語のアニメーション作品の音響制作であり、吹替やアフレコ、ミキシング作業はもちろん、吹替やアフレコのキャスティング、吹替用の翻訳からQC、納品データの作成等を行う。

また、IMAGICA Lab.やSDI Mediaと連携し、字幕サービスや、DCP作業、DVDやBlu-Rayの制作、映像編集や加工作業などについても対応するトータルサービスを提供していくという。

代表取締役社長 野津仁氏はISSの設立について以下のように説明する。

野津氏:IMAGICA Lab.とSDI Mediaは、これまで特にローカライズという分野でグループ会社として様々なコラボレーションを行ってきましたが、ローカライズの中でも日本語吹き替え事業を一緒に展開していくことを目的に昨年ISSを設立。2020年2月から事業を開始しました。特長を分かりやすくするためにも会社名はとてもシンプルなものにしました。

ISSではオリジナルアニメーションの音響制作にも対応可能です。IMAGICA Lab.とSDI Mediaでは、これまでも日本語吹き替え作業を含めたローカライズ事業を行ってきたため、様々な経験・ノウハウを活かし、2月17日にオープンしたばかりですが、すでに多くのお客様よりご相談いただきスタジオが稼働している状況です。

これまでの経験・ノウハウやお客様とのネットワークをすぐに活かせる部分がISSの一番の特長であり、お客様のニーズだけではなく現場のスタッフや技術面、セキュリティに関する考え方などの対応を含めて、IMAGICA Lab.とSDI Mediaですでにあるリソースや知見が十分に活かせるスタジオになっています。

収録ブースは全部で4つ。101はミキシング作業専用でDolby Atmos Home Mastering 7.1.4chに対応し、102はレコーディングブースに大人数が収容可能。103~105は個別録りが可能な収録ブースとなっている。

■101

  • 主な仕様:Dolby Atmos Home Mastering 7.1.4ch 対応
  • 収容人数:Mixing/Control Roomに12人程度

■102

  • 主な仕様:5.1ch Surround Mixing 対応
  • 収容人数:Recording Boothに25人程度、Mixing/Control Roomに10人程度

■103

  • 主な仕様:5.1ch Surround Mixing 対応、個別録りが可能
  • 収容人数:Recording Boothに8人程度、Mixing/Control Roomに8人程度

■104

  • 主な仕様:5.1ch Surround Mixing 対応、個別録りが可能
  • 収容人数:Recording Boothに8人程度、Mixing/Control Roomに8人程度

■105

  • 主な仕様:5.1ch Surround Mixing 対応、個別録りが可能
  • 収容人数:Recording Boothに8人程度、Mixing/Control Roomに10人程度

スタジオ全体の構成には両社の経験やこだわりが随所に採用されており、SDI Mediaのグローバル目線の意見も多く取り入れたという。ISSのチーフプロデューサー 浦郷洋氏は次のようにコメントしている。

浦郷氏:日本では個別録りがあまり行われていません。海外では個別録りが主流です。今後、海外企業とのコラボレーションを考え、個別録りができるブースを3部屋(103、104、105)設けました。アニメーション作品は、大人数が対応できる日本のスタイルで収録したほうが良いので、個別録りではないブースも1部屋(102)設けました。

個別録りに対応したレコーディングブース(写真は104)

野津氏:当初、個別録りのレコーディングブースは、我々からするとここまでの広さは必要ない印象でしたが、海外のお客様は広さを求めるというSDI Mediaの知見とこだわりをもとに、レコーディングブースの広さや音の反響、天井の高さについてはSDI Mediaの要望と考えを採用しました。

101はモニターではなくスクリーンを採用

野津氏:また、101にはモニターではなくスクリーンを採用したのもSDI Mediaのこだわりです。海外のお客様はスクリーンを好まれるため、スクリーンは1部屋だけではなく、レコーディングブースなども、できる限りモニターではなくスクリーンが良いとSDI Mediaから要望がありました。ただ、日本では声優さんが紙台本の使用が多く、部屋を暗くする必要があるスクリーンでは台本が見えなくなってしまうため、SDI Mediaとディスカッションを重ね、1部屋のみスクリーンを導入しています。

ISSのミキシングエンジニア 丸橋亮介氏は次のようにコメントしている。

丸橋氏:101のその他の特長としては、今回IMAGICAグループのダビングルームとして初めてDolby Atmos Home Masteringを採用していることです。IMAGICA Lab.では、昨年11月に第二試写室をDolby Cinemaのグレーディング、プレビューができる設備としてリニューアルしましたが、ダビングが行えるミキシングルームを採用したのは初めてです。

SDI Mediaからの要望が大きかったレコーディングブース正面を向いたガラス窓。コミュニケーションのとりやすさを最優先している(写真は102)

25人程度収容可能なレコーディングブース(写真は102)

レコーディングブースの様子はモニターで確認可能(写真は102)

浦郷氏:スタジオの設計に関しては、建物のまわりに太い柱があり、ビルの両面がガラス張りのため、壁沿いに部屋を作れず、島状に部屋を作らなければいけない制約がありました。その中で、102には声優さんが一度に大勢いらっしゃいますが、103・104・105には一人ずつ時間をずらして声優さんがいらっしゃるため、マネージメントや取り回しのしやすさを考慮し、101・102と103・104・105の部屋の入り口と待ち合いスペースを分けました。

また、ISSは高度化するセキュリティ要求に対応できる仕組みを採用している。

野津氏:事前にお客様には案内メールをお送りし、メールに記載してあるQRコードや番号をスタジオ入口の端末で入力していただくと名札が出てくる仕組みを採用しました。その名札に記載のあるQRコードでドアを解錠して中に入り、入館後はその名札を付けていただきます。

また、入室できる人を制限したい時には各部屋にカードリーダーでロックをかけることができます。より高度なセキュリティが必要な作品に関しては、入室の際にカードリーダーだけでなく、別途テンキーで番号を入力して入室する環境設定も可能です。