txt:井上晃 構成:編集部

次世代ATEMのフラッグシップ登場

Blackmagic Designは、次世代ATEM製品群というべき多数の新製品を発表し、一部の製品は同日付で発売を開始した。次世代ATEM製品群として位置づけられているのは、4 M/E、16系統の次世代ATEMクロマキーヤーに対応したHD/Ultra HDライブプロダクションスイッチャー「ATEM 4 M/E Broadcast Studio 4K」。デザインを一新し、全てのATEMライブプロダクションスイッチャーで使用可能なコンパクトな1 M/Eコントロールパネルである「ATEM 1 M/E Advanced Panel」。1台のコントロールパネルで4台のカメラをリモートコントロール可能な「ATEM Camera Control Panel」などである。

今回のレビューでは、次世代ATEMのフラッグシップ機である、 ATEM 4 M/E Broadcast Studio 4Kを中心に、ATEM 1 M/E Advanced Panelを組み合わせ、その次世代スイッチャーシステムの実力を計ることにしよう。

ATEM 4 M/E Broadcast Studio 4K

ATEM 4 M/E Broadcast Studio 4Kは、既存のATEM 2 M/E Broadcast Studio 4Kのリプレース製品ではあるが、2 M/E Broadcast Studio 4Kは、ATEMソフトウェア 7.3アップデートで4 M/Eと同等の機能になるということから、4 M/Eは2 M/Eのソフトウェアアップグレード製品であるとも言えよう。

ただ単なるソフトウェアアップグレードかというとそれは違っており、4つのM/E列にそれぞれ、4つの新しい高度なATEMクロマキーヤーが対応し、合計16系統のミックスエフェクトに対応したハイエンドのライブプロダクションスイッチャーというのが4 M/E Broadcast Studio 4Kの核心だ。

HDはもちろんのこと、4Kも2160p59.94まで対応し、20系統もの12G-SDI入力を装備しこれには自動再同期機能を搭載、Aux出力は6系統(フロントパネルにAux切り替えボタン、確認用LCDスクリーンを搭載)、2系統のHD/4Kマルチビューで、16系統のソースに2系統のプレビューおよびプログラム出力を自在にモニタリング可能。内蔵メディアプールストレージには、64個のRGBA Ultra HDスチル、360フレームのUltra HDクリップを保存でき、内蔵SuperSourceでは、4系統のDVE、4系統のキーレイヤーを独立したビデオソースとして使用可能などなど、リッチで、ゴージャスな機能がこれでもかと奢られているが、それが僅か2Uのラックサイズに納められている。

Blackmagic DesignのCEO グラント・ペティ氏が「これまで以上にパワフルでクリエイティブなエフェクトに対応したハイエンドのライブプロダクションスイッチャーを使用することで、驚異的なテレビ番組制作が可能になります」と語るように、頷ける超弩級のフラッグシップ製品ではあるが、それでいてお値段の方は税別681,800円という、なんとお値頃な製品なのであろうか。

今回はこの機能の全てを詳細にレビューしてては、紙面がいくらあっても足らないので、4 M/E Broadcast Studio 4Kの特長的な機能であるSuperSourceなど、スイッチャーとしての表現力に的を絞ってレビューしていく。

ATEM 1 M/E Advanced Panel

ATEM 1 M/E Advanced Panelは、ある意味ATEMユーザーが待ち焦がれていた製品だ。ATEMスイッチャー用のコントロールパネルとしては、純正のATEM 1 M/E Broadcast Panel、ATEM 2 M/E Broadcast Panelが、ATEMシリーズ登場当初から用意されていたが、これらの発売以降、純正のコントロールパネルはアップデートがなく、放置されていたからだ。

昨年から下位モデルでは、新しいコントロールパネルを持つ、ATEM Television Studio Pro HDなどが登場し、新コントロールパネル登場への期待が高まっていたが、満を持しての登場となった。プロ仕様のスイッチングパネルには欠かせない、Tバーフェーダーやジョイスティックには、特注デザインの高品位なものが使用されているそうだ。その感触はまさに「キモチイー!」確実な動作の感触としっかりとした剛性が素早い操作を助けてくれそうだ。

ボタン・ラベルカラーは4色から設定でき、視認性の向上に貢献している

この新しいコントロールパネルは、全てのATEMスイッチャーと動作するよう設計されており、直接スイッチングする入力ボタンは10個ながら、シフトキーと合わせて20個の入力を自由にアサインが可能である。またボタンの上下にはLCDのラベルパネルを装備し、ボタン自らとテキストおよびラベルカラーを自由に組み合わせることで視認性を向上させることに成功している。

他のパネル上のボタン類は、上段中央の5インチLCDスクリーンを中心に、セクション毎に区分けされ合理的に配置されている。特徴的なのは中段右端のM/Eボタンであろう。ここにはM/E 1からM/E 4まで各4系統のM/E列を切り替えるボタンだ。これによって少ないボタン数でも全てのM/Eのコントロールが可能となっている。

中央のLCDスクリーンには、4つのソフトボタン、4つのソフトノブが付いており、左側の機能ボタンから呼び出した機能の設定が行えるようになっており、右側のテンキーによる入力も可能など、これまで以上にスピーディに設定が可能になった。このモダンで最新のコントロールパネルの価格は税別339,800円と、従来型ATEM 1 M/E Broadcast Panelの6割程度の価格だ。これもまた破格と言える価格なのではないだろうか。

ATEM 4 M/E Broadcast Studio 4Kの表現力

筆者は予てからスイッチャーは表現力が大切であると主張してきた。入力のスケーラーなど便利な機能も大切なのだが、どのような絵作りが可能なのかを重んじており、スイッチャー内部で構築出来る表現力が、スイッチャー本来の価値を決めると考えている。

ATEMシリーズのスイッチャーは、特にDVEが可能な機種では自由なピクチャーinピクチャーに加えて、アップストリームキーヤー、ダウンストリームキーヤーの数の多さが、他のスイッチャーにはない魅力だと感じていた。実はこの基本的な表現力は、初代の1M/E Production Switcherの登場から備えられていたが、これらのアップデートも実は行われていない。だがDVEが2系統使いたいというような現場は多く(例えばセミナーなどでパワポを左に寄せて、演者を右にPinPなどというパターンはよくある)このような時にはM/Eを持つスイッチャーをもう一段カスケード接続するなど対応が必要であった(1M/E以上を持つライブスイッチャーはそう多くないため)。

だがATEMには初代の2 M/E Production Switcherから、SuperSourceという複数の入力を一度にDVEしてしまう機能があったが、2 M/E Production Switcher自体なかなかお目にかかれる機種ではなく、そのSuperSourceという機能もベールに包まれていた。という事で、4 M/E Broadcast Studio 4Kをレビューする機会に恵まれたことから、ナゾ(?)に包まれていたSuperSource機能の魅力を解説したいと思う。

SuperSourceは予めプリセットされたパターンを元に、2ソースのPinPから4ソースのPinPまで一括してスイッチング出来る特別な合成エンジンだ。このSuperSourceは1キーで1つの入力として扱われ、複数のM/E、キーヤーを使用せず一発でのマルチ画面合成が可能なのが大きな特長だ。このためこのSuperSourceから別の画面へのトランジションが可能であり、DVEが空いてさえいれば、プッシュ、スピン、スクイーズ、スウッシュといったDVEトランジションでの画面切り替えさえも可能で、見栄えのする番組制作ができる。

SuperSourceのプリセットは4ソースのものが2種類、3ソースと2ソースのものが各1種類だが、これらの画面配置は自由に行え、ジョイスティックで簡単に配置できるので、利用価値は非常に高く、他の1M/Eスイッチャーには真似が出来ない表現力だと言えよう。

もう一つ大切なのが、4 M/E Broadcast Studio 4Kという名称の由来ともなっている、4段のM/E機能だ。これを簡単に図示すると下図のようになる。

各M/E列では、4つの独立したアップストリームキーヤーで、DVE、ルマ、リニア、パターン、クロマキーイングの合成が可能だ。その合成されたプログラムが下方のM/E列に送り込まれ更に各段でのアップストリームキーヤーでの利用が可能になる、という方式で、最終段のM/E 1では実に合計16段ものアップストリームキーヤーでの合成が可能という仕組みである。現実的には16段ものアップストリームキーヤーでの合成が必要になるという場面は少ないかもしれないが、各段で予め合成画面を作っておいて、下方段のソースとして使用するという使い方が考えられる。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2018/03/ong37_BMD_ATEM_02.jpg

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特に本機4 M/E Broadcast Studio 4Kでは、次世代の高品位クロマキーヤーが搭載され、クロマキーの品位向上が期待されている。今回の試用では残念ながらクロマキーのテストまでは行えず、クロマキーの品位の確認までは出来なかったが、他スイッチャーと比べるとやや品位に劣ると思わされていた従来のクロマキーから、使えるクロマキーへ脱却することを期待したい。

総括

実はこのATEM 4 M/E Broadcast Studio 4K、前機種に負けず劣らず動作音は相変わらず爆音だ。かなり耳障りなファン音が鳴り響くので対策は必要だろう。だが試用してみて、ATEM 4 M/E Broadcast Studio 4Kはつくづく表現力の高いスイッチャーだと感じた。そしてこの表現力が高く、4K 2160p59.94に対応する高機能なスイッチャーがなんと、税別681,800円だという事に、ため息が出る。

他銘柄にはこの価格で1M/Eのスイッチャーは山ほどあるだろう。また実にエレガントなATEM 1 M/E Advanced Panelまで組み合わせても100万円少々だ。これは既存スタジオ設備のアップデートとしても、実にリーズナブルかつ強力なソリューションであると思う。この後のアップデートパスとしては、ATEM Camera Control Panelと、Blackmagic URSA BroadcastなどのBlackmagic Design製カメラ類の導入も考慮に入れたい。これらはたった2本のSDIケーブルもしくは光ケーブルで結ぶことで、4Kライブスイッチング、リターン、タリー、インカム、そしてリモートカメラコントロールまで実現する。

今回の次世代ATEM商品群は非常に強力だ。いつポチっても後悔しないだろう。ちなみにこれらの製品はBlackmagic Designの伝統に則って、電源ケーブルさえ同梱されていない。ポチったあとは3P電源ケーブルを探して到着を待とう。

WRITER PROFILE

井上晃

有限会社マキシメデイア代表。FacebookグループATEM Tech Labo、Grass Valley EDIUS UGで世話人をしてるでよ。