txt:井上晃 構成:編集部

小さいけれど機能は大きい

ブラックマジックデザインは、NAB Show 2018開催前に、興味深い製品を多数発表した。筆者もその中から、ATEM Television Studio Pro 4Kなど、いくつかの製品のレビュー記事を執筆させていただいた。

今回はその多数発表された製品の中から、埋もれてしまいそうに小粒なのだが筆者にはビビッと引っかかり興味をもった製品「Micro Converter BiDirectional SDI/HDMI」を紹介させていただこう。

ありそうでなかった双方向

Blackmagic Micro Converter BiDirectional SDI/HDMIは、名前の通り同社お馴染みの小型コンバーターの一員である。ブラックマジックデザインのコンバーターは定番と言っても良いもので、様々な種類の信号を希望の出力に変換してくれるコンバーターは、現場には必需品と言っても良いものだろう。ただ、こんなことが起きた、また考えたことはないだろうか?

「あ~!コンバーターあるけど、変換方向が逆だ!」
「なんでコンバーターって一方向なんだ。どっちでもいければいいのに…」

そう、信号変換の方向性によって、常に複数の種類を用意しなくてはならないのが、このような機器の常だ。実はブラックマジックデザインのコンバーターでも、双方向に変換できるコンバーターは存在する。例えばBlackmagic Video Assistなどは、レコーダーモニターにも関わらず双方向のコンバーターとしても利用できるなど、汎用性が高い製品も存在する。またBlackmagic Design Broadcast Converterなども双方向の変換が可能であった(実は筆者が手にした最初のブラックマジックデザイン製品はこのBroadcast Converterだった)。

しかしながら、現行のブラックマジックデザイン製品のコンバーターは、ほぼ一方向の製品群のみであり、現場で使用する際には、常に変換方向を意識しておく必要があった。

そこに登場したのが、Blackmagic Micro Converter BiDirectional SDI/HDMIである。 同製品はBiDirectional(双方向)の名の通り、1080p60までながら、あらゆるSD/HDフォーマットをSDIからHDMI、HDMIからSDIへと変換が可能だ。もう言うまでもないだろうが、この手のひらサイズのコンパクトな本機1台が2台分の働きをするのである。そう本機を持ってさえすれば、信号変換の方向性を気にする必要性から解放されるのだ。

製品仕様

Blackmagic Micro Converter BiDirectional SDI/HDMIは、縦59mm、横81mm、厚さ25mm、重量174gという手の平サイズのコンパクトボディに、

  • SDIビデオ入力 1(SD/HD/3G-SDI対応)
  • SDIビデオ出力 1(SD/HD/3G-SDI HDMIビデオ入力に自動マッチング)
  • HDMIビデオ入力 1(HDMIタイプA入力)
  • HDMIビデオ出力 1(HDMIタイプA出力)

を搭載し、その他にも給電用にMicro USB端子を搭載している。

マルチレート対応の3G-SDI入出力は、Level AおよびLevel B機器を含む、事実上すべてのプロ仕様の放送機器と互換性があり、フォーマットを自動的に検知して変換する。もちろんフルサイズのコンバーターと同等の放送局品質10bitビデオ処理を実現しているそうだ。ただ異なるフォーマットへ変換するようなスケーラー機能は搭載されていない。

パワーサプライユニット同梱版では、コネクター部分を差し替えることで各国の電源端子形状に対応が可能なユニバーサル仕様で、5V 2.0A出力のMicro USBパワーサプライユニットが同梱される。この電源がMicro USB仕様であることは、本機の運用を更に柔軟にさせるナイスなポイントの一つでもある。

付属のパワーサプライユニットが2.0A版と高出力な電源が必要かというと、そうでもなく、一般的なモバイルバッテリーで十分給電は賄える。写真のようなモバイルバッテリーでは通常、極小のDC出力の場合、自動シャットダウンなどが働いて使用中に電源が切れるなどの不具合があるものだが、写真のANKER製のモバイルバッテリーだとシャットダウンをしない絶妙な使用状態になって電源断などが起きなかったのは嬉しいポイントだ。

では使用電流量が多いのかというと、この5200mAh程度のモバイルバッテリーで、5時間以上の使用が可能と、なかなかのスタミナぶりでもあった。最近では様々な機器にUSB端子が装備されているので、USBで手軽に給電できると運用はとても楽になるだろう。ちなみに多くの人が持っているであろう、白くて四角く小型なiPhone用0.5A版の電源アダプターでも十分に運用が可能であった。

双方向だけじゃない!1台で2台分以上の機能!

1台で双方向を実現しているだけで本機は2台分の機能を持つのだが、実はそれだけではない。このHDMI→SDIコンバーターと、SDI→HDMIコンバーターは、二つが1台の中で共存しており、この二つを同時に使用可能なのが、単なる双方向とは違うところなのである!

この画像をみていただきたいが、SDIの入力とHDMIの入力に異なる入力があった場合、本機はHDMI→SDIとSDI→HDMIのクロス変換を同時に行う。この場合2系統の変換を同時に行っているというのがポイントであり、本機が1台で2台分の機能を持っていることの証明である。

そして、コーナータイトルに2台分以上と記したのは、次のような2台分以上の機能を持つからである。次の2枚の画像を見ていただきたい。

HDMIもしくはSDI、双方の入力ともに、どちらか一方の入力だった場合、本機は入力された映像をHDMI及びSDIの出力双方に同時出力する。つまり入力に応じた多彩な出力を行うというインテリジェントな動作が行われるのである。これは、入力をHDMI、SDI同時出力のスプリッターとしても使用出来るということだ。これを応用すると、SDI入出力でデイジーチェーンの様に連なって接続しながら、次々とHDMI機器へ分配するという様な動作が可能である、ということなのだ。

また本機にはSDI入力のSDIリクロッキングに対応しており、SDIビデオ入力を再生成するので、SDIジッターを削減し、SDIの出力信号を改善することが可能だ。これにより、長いケーブルを使用している場合でも高い信頼性を得られる。これによって2台以上の機能を持つというのが、本機が単なるコンバーターではないということなのである。

今回は2台のMicro Converter BiDirectional SDI/HDMIをHD-SDIのリクロッキング装置として利用し、3C-2B(A)という3C-2VのケーブルにFBのアルミシールドを追加しHD-SDI伝送特性を10%程度改善したという、少し珍しい3Cケーブル100m巻を3本用意し、合計300mのHD-SDI伝送検証を行ってみた(検証した信号は、1080/60iであり、1.5G伝送である)。結果は次の画像を見てもらいたいが、見事に300mの伝送に成功している。ちらつきや乱れなどもなく安定した結果であったことも報告しておきたい。

まとめ

いかがだったろうか?このような現場で補助的な機器は単機能でも十二分に働いてくれるものだが、そこにインテリジェントな機能を追加することで、1台が2台分以上の働きを見せてくれるような機器に発展したことは、単純に驚きだ。この小さくてもピリリと気の利いた機器は、現場での様々な苦労を本当に低減させてくれるものではないかと思う。

お値段も単体版で税別7,980円、パワーサプライユニット同梱版が税別8,980円と機能を考えるととてもお値頃であると思う(全てブラックマジックデザイン直販価格)。コンバーターは安価な中華製が広く流通するようにもなったが、単なるシグナルコンバーターには無い価値が本機Micro Converter BiDirectional SDI/HDMIにはある。中華コンバーター2台分以上の価値は間違いなくあると断言できるので、迷わず1台持つ事をオススメしたい。

WRITER PROFILE

井上晃

有限会社マキシメデイア代表。FacebookグループATEM Tech Labo、Grass Valley EDIUS UGで世話人をしてるでよ。