txt:宏哉 構成:編集部

小さくても機能は大きいRoland V-02HD

Roland V-02HDは、HDMI入出力専用の2チャンネル映像スイッチャーだ。ワンマン2カメ体制といった小規模スイッチングの現場に特化したような製品でありながら、ワイプやキーイングのほかPinPやビジュアル・エフェクトなど多様な機能を有する。

今回、V-02HDを発売前にお借りすることができたので、そのファーストインプレッションをレポートしたい。

サイズ

まず特筆すべきは、その小ささだ。約115mm×100mm×50mmのサイズで片手で持てるサイズ感。小さいながらも筐体はスチール製でガジェットとしての安定感があり、重量は約600gと軽量だ。このサイズであれば、スイッチャーなどを置くテーブルがなくても三脚に取り付けるなどして省スペースで運用可能だ。

入出力

HDMIによる映像入力は2チャンネル。出力は、PROGRAM OUTとPREVIEW OUTが用意されている。HDMI端子は入出力の全系統にスケーラーが搭載されているため、パソコン画面などの入力にも対応できる。さらに、アナログ音声入力がφ3.5mmステレオミニ端子で用意されており、ステレオで音声を入力することができる。PHONE端子も備わっているのでヘッドフォンなどで音声のモニターが可能だ。

様々なフットペダルに対応

また、Rolandならではという点では、CTL/EXP端子の搭載だろう。TRS標準プラグによる外部からのコントロール信号の入力が可能で、同社のエクスプレッション・ペダル(EV-5)やBOSSブランドのフットスイッチ(FS-6)などを使うと、足によるスイッチ操作でV-02HDをコントロールする事ができるようになる。これらのスイッチは、音楽バンドなどがエレキギターなどのアンプやエフェクターの外部コンロールに使ったりするためのアイテムだ。汎用品で安価である事も導入をしやすい。

トップ・パネル

操作パネルを見てみよう。下段は左右に大きく[1][2]と2チャンネル分のスイッチングボタンが配置されている。この[1][2]ボタンは、単に入力1/入力2の選択だけではなく、設定でオートテイクやカット切替をトグルする設定にもできる。パネル中央には横向きでTバーが用意されている。Tバーのストロークは55mmと長く、深いディゾルブやワイプの位置調整などが十分に可能な仕様だ。

上段には、セットアップとエフェクト系のボタンとつまみが配置されている。左側の[OUTPUT FADE]つまみは工場出荷時設定では左に回すと黒フェード、右に回すとキャプチャした静止画に切り替わる。[EFFECT]ボタンでは、MIXとWIPEの切替、PinPとKEYなどのDVE機能をトグルで切り替えることができる。

EFFECTS CONTROLパネル部では、ビジュアル・エフェクトを掛けるための設定を行える。[VFX]ボタンを押すと、設定可能なエフェクトが選べる。全体・部分モザイクや色の置き換え、モノトーンなど14種類のエフェクトが用意されている。「HUE OFFSET」「SATURATION OFFSET」「VALUE OFFSET」といった色相・彩度・明度を調整できる項目もあるので、現場でのちょっとした映像調整にも使えそうだ。

試用

今回は、講演会などのスクリーン出しを想定してセットアップを行った。登壇者を写すカメラと、PCから出力された講演内容のスライド画像をスイッチャーで必要に応じて切り替えて、スクリーンに映し出すというものだ。

カメラを三脚に据え、その三脚にV-02HDと確認用モニターを取り付けることでコンパクトなワンマンオペレーション環境を構築できる。V-02HDの底面には1/4インチねじが切ってありフレキシブルアームやライトスタンドなどに固定できる。本体重量約600gとはいえ、パネル面を操作する時の加重も考えて、しっかりとしたアームなどで固定したい。

接続するモニターだが、V-02HDでは入力映像やプログラム/プレビューを一画面に映すマルチビュー出力はできない。とはいえ入力は2系統だけなので、最低でもプレビュー用モニターが一台あれば、スクリーン出しは事足りるだろう。スイッチング収録などでは、プログラムアウトを確認できるモニターが更に一台欲しいところだ。

セットアップの為のメニュー画面はプレビューモニタに表示される。メニューの文字は結構小さいので、ポータブル用途の7インチモニターだとかなり小さく表示される。現場の用途を考えると小型のモニターを持って行く現場が多くなると思うので、メニュー文字サイズを大きくできる設定などがあると良いかもしれない。

プレビューアウトには画面下にPREVIEWの文字がラベルされ、またオーディオレベルメーターも表示できる。それぞれの表示をオフにすることも可能だ。音声に関しては、INPUT LEVELの調整やDELAY値も調整可能。映像のスイッチングに合わせて音声も切り替えるAUDIO FOLLOW設定も行える。

PinPも自由自在

PinPは柔軟な設定ができる。「EFFECTS」パネルの[TYPE]ボタンでPinPを選択する。現在プログラムアウトされている映像が背景映像で、プレビュー映像が子画面になる。PinPの子画面の位置やサイズはプレビュー画面で調整できるので、プログラムアウトに出す前に視覚的に確認できるのは良い。設定は簡単で、パネル上の2つの[CONTROL]つまみで直接調整できる。2つのつまみで子画面の縦位置横位置を調整できるほか、つまみを押しながら回すと子画面のサイズの拡縮、さらに子画面内の映像の拡縮ができる。この点は、同社の4チャンネルスイッチャーV-1HDを上回る機能と柔軟性だ。また、子画面に対しては「SHAPE」「BORDER COLOR」「BORDER WIDTH」などが設定できるほか、拡大した際の映像の切り出し位置も指定できる細かさだ。

やはり便利だったのは、CTL/EXP端子によるフットスイッチ操作での映像スイッチングだ。カメラマンの心理としては、カメラを振っている最中は右手も左手もカメラやパン棒から極力は離したくはない。V-02HDの三脚へのセットアップでは、左手で触れるようにレイアウトしたが、決まった単調なスイッチングで済む現場であればフットスイッチを使った操作で十分だ。

私のお奨めは、2ボタン式のフットスイッチFS-6だ。[A][B]2つのボタンがあり、それぞれにカット切替とディゾルブ切替を設定することで場面によって使い分けられる。ディゾルブの尺設定も予め設定可能だ。

フットスイッチを使うと、本番中はV-02HD本体を触る回数も軽減されるので、本体を固定している三脚が揺れることも無くなり、カメラの映像もより安定するというメリットもあった。

まとめ

駆け足でV-02HDを試用してみたが、この小型ボディーの中に2カメスイッチングで必要十分な機能を詰め込んでいることに感動した。PinP機能などは一部上位機種の機能を上回っているのだからジェラシーすら感じる(筆者はRoland V-1SDI所有者)。

操作系は非常に洗練されており、現場でのワンマンオペレートやリアルタイムオペレートの理に適った設計だと感じた。また、繰り返しになってしまうが、フットスイッチを使った操作はカメラオペレートに集中しながらも、的確にスイッチングを行える素晴らしい提案だと思う。そして何よりも驚くのは、これらオペレーションを撮影用の三脚を立てているミニマムな空間だけで実現できることだ。

チャンネル数の多いスイッチャーは当然たくさんの入力素材を扱え、数段のM/E列を抱える事で複雑な映像表現を行う事ができるが、この2チャンネル入力しかないV-02HDはシンプル・コンパクトだからこそ、今まで思いも拠らなかった現場に投入できる可能性を感じた。この先、ぜひとも面白い使い方を見つけ出したい。

WRITER PROFILE

宏哉

のべ100ヶ国の海外ロケを担当。テレビのスポーツ中継から、イベントのネット配信、ドローン空撮など幅広い分野で映像と戯れる。