txt:井上晃 構成:編集部

業務用4Kハンドヘルドカムコーダーのフラッグシップ機Canon XF705登場

キヤノンは、2018年9月中旬、同社の業務用ハンドヘルドカムコーダーの製品ラインXFシリーズに、同シリーズではフラッグシップ機となるXF705の登場を発表した。

XFシリーズの元祖となる18倍ズーム・3板センサーのXF305が発売されたのは2010年4月のことである。同シリーズは10倍ズーム・単板センサーのXF105、20倍ズーム・単板センサーのXF205等のHDモデルを経て、2017年9月には1.0型CMOSセンサーと15倍ズームレンズを搭載した4K撮影対応機XF405で新世代へと進化。そして初代から8年の時を経て新世代のフラッグシップ機としてXF705は登場した。

筆者は長年XFシリーズのユーザーであり、現在もハンドヘルドの主力としてはXF205を使用している。新旧のXFシリーズの変化を俯瞰しながら本機を紹介しよう。

本機の概略

キヤノンには業務用としてはXFシリーズより下位に当たる製品ラインとしてXAシリーズがある。同社は民生用カムコーダーから業務用のXFシリーズまでは、センサーとレンズに共通のユニットを使用するが、外装と収録コーデックなどの内部機能にバリエーションを持たせて差別化するという製品の戦略的構築を行っている。

XF705もこのような戦略の基に開発された製品であるというのが各所に見て取れる。概略から見てみよう。

まずセンサーとレンズは新世代となったXF405が搭載した1.0型CMOSセンサーと15倍ズームレンズを継承した。XF705の登場と時を同じくして、JVCからも1.0型センサーを搭載した4Kハンドヘルド機が登場し、これまで1.0型センサーに12倍光学ズームを組み合わせた機種の展開を多数してきたソニー、そして4/3型センサーに13倍ズームのパナソニックと、どうやら各社、レンズ一体型4Kハンドヘルドカムコーダーには、1.0型以上のセンサーが必要であるという結論らしい。その大きなセンサーが必要な理由の一つが映像のワイドダイナミックレンジと広色域への対応だろう。

昨今の4Kカムコーダーは、Log記録やHDR(High Dynamic Range)への対応など、映像のワイドダイナミックレンジとBT.2020に代表される広色域への対応が必須という状況であるが、XFラインながらXF405は4:2:0 8bit記録にWide DRモードのみの対応となっていた。

これに対してXF705は4K UHD 60P YCC4:2:2 10bit記録に「HLG(Hybrid Log-Gamma)」「PQ(Perceptual Quantization)」の2つのHDR方式、またCanon Log 3というキヤノン最新のLog記録に対応することで、映像のワイドダイナミックレンジ及び広色域記録に対して完全対応を果たした。これに加えて、高画質と高圧縮を両立した新ビデオフォーマット、XF-HEVC(H.265)を採用したのが、XFシリーズフラッグシップ機としての本機の概略である。

外観

マイク部を含まず、高さ210mm、前後長433mm、幅191mm、撮影時総重量約3160gと、初代フラッグシップXF305の約236mm×396mm×180mm、同重量2980gと比べると、ほぼ同じサイズに見えるが、ボディ部分はコンパクト化され、よく押し込められたという印象だ。

ただ、ハンドヘルドカムコーダーとしては最大サイズであり、重量は小型軽量の代表といえるXF205の約1,960gと比べると相当な重量であり、手持ち撮影時の負担はそれなりに覚悟しなくてはならないだろう。

4.0型、約123万画素液晶モニターはXF305に習いハンドグリップ前端に設置された。三連の独立レンズリングはズーム、フォーカス、アイリスをダイレクト操作。そしてボディの後端が跳ね上がる形状はキヤノンのカムコーダーとしての伝統を感じさせ、実際ショルダーパッドは手持ち撮影時のサポートに一役買っている。

この主要操作部の位置関係は非常に良く、ハンドヘルドカムコーダーとしての基本操作性をよく考慮していると思う。一つだけ残念なのが、XF205にあった回転式グリップの非搭載だ。ボディがやや太くなり回転式グリップだと、グリップがカメラ重心から離れるのを嫌ったのではないかと思うが、様々な撮影ポジションに回転式グリップは有用であったので非搭載は残念の一言だ。

また他にもライトが搭載されていないことも惜しい。このXFクラスのハンドヘルドカムコーダーは、単体だけで完結する汎用性が求められる。他銘柄の最新機種ではグリップの前端などにライトを組み込んでしまってる機種も存在する。この鼻先のライトの有用性については論議があるところだとは思うがあればやはり便利だ。アクセサリーシューに本体連動型のライトなどアクセサリーを用意してくれればな、とも感じた。

3本リングに赤ラインのLレンズ

レンズ自体は光学15倍ズームで焦点距離:8.3-124.5mm(35mmフィルム換算時:約25.5mm-382.5mm)というのはXF405と同等のものであるように見える。ただレンズ前端の赤ラインでも分かるように、XF405のものから一段とブラッシュアップされたLレンズが搭載され、全ズーム域と画面全域で高画質を実現したとしている。

レンズの3本リングは、リング幅も広く触感も異なることから間違えることも少ないだろう。またズームリングの仕様も回転制限のない自由回転のリングから、ワイド端からテレ端まで約90度のストップ端を持つリングとなりミリ数の刻印まである。このことからグルグル回しても好みのズーム速度にならないとかはなく、一定の回転角の中でどう指を動かせば、どのようなズーム速度が可能か、ということが明確になった。

ただズーム機構自体は電子式であり、メカニカルなカム式ではない。その反面もありズームのリング操作とグリップ部のズームロッカーの操作はスイッチ切り替えによる排他となっている。グリップのロッカーで自由なズーム操作を行った後、リング操作にスイッチを切り替えると、ズームリングの位置へズームが自動的に送られる仕様だ。

このズームリングと電子ズームの連動度いわゆるツキというものだが、速い操作だとやや遅れるのが残念だ。じんわりとした遅いズームには良く対応しているので、速い操作にもツイて来てくれると嬉しい。ズームリング自体の操作感は重めで操作しやすいのは美点だ。

HDR対応の高輝度液晶モニター

4.0型で約123万画素の液晶モニターは、HDR映像の確認をサポートする高輝度な液晶モニターを搭載している。特にHDR(HLG/PQ)収録時には輝度をかなり(抽象的な表現で恐縮だが)アップしHDRの撮影をアシストしてくれるのが嬉しい。波形モニター、輝度レベルの領域を視覚的に表示するゼブラパターン等も搭載され、HDR収録時の露出決定をサポートしてくれる。

また余談だが、本機はHDR/SDRの同時記録が可能で、その時HDRに対するSDRのゲイン差を調整できる。HDRにマッチした露出決定を行うと、SDR向けには高輝度部分が露出オーバー、低輝度部分に対しては露出アンダーになりがちなので、その補正に役立つ機能であろう。

合計6chの音声入力

音声入力は、XLR端子でのINPUTが2系統、グリップ最前端に内蔵ステレオマイク、そして珍しいことにφ3.5mmステレオミニジャックによるマイク端子が備わっている。

XLR端子は1系統が通常の前部、そしてもう1系統が本体後端へと分離した。これら6チャンネル分の入力に対して記録できるのは4チャンネル。どのチャンネルへも自由に記録できる訳ではなく1~4それぞれのチャンネルに対して割り当てられる音声入力は、マイク端子入力と内蔵ステレオマイクが排他など、割り付けに制限があるので、注意が必要だろう。

なお、XLR入力端子はAES/EBUによるデジタル入力も可能なのも目新しい。

最新のXF-HEVC(H.265)記録

XFシリーズの元祖は、MPEG-2 Long GOPコーデックによって、FHDの4:2:2 8bit 50Mbps MXF記録を行うのがXFコーデックの原点であり、AVCHD記録のXAと比べての優位点であった。この8bitながら4:2:2の記録と50Mbpsという当時の主流HDVの25Mbpsの倍というビットレートに拘ったXF305は、クロマキー撮影にも強い機種として記憶に残る。

このXFコーデックはXF105、XF205と受け継がれたが、新世代のXF405によって、4K UHD 60P MPEG-4 AVC/H.264 4:2:0 8bit 最大150Mbps記録のXF-AVCフォーマットへと進化し、そして今回XF705では映像圧縮フォーマットに最新のHEVC(H.265)コーデックを採用、4K UHD(3840×2160)/60P/4:2:2/10bit/最大160Mbps記録のXF-HEVCフォーマットへと進化した。

記録メディアはXF105-XF305までは今や主流とは言えないCompactFrashが採用されていたが、XF405以降はSDカードが採用され、XF705でも汎用性の高いSDカードが採用された。

ただ、XF-HEVCでの4K記録やスローモーション記録時は、UHSスピードクラス3のSDカードが必要となる。またSDカードは品質が多様なメディアでもあるので、使用時には十分テストをしてから本番に使用することをお勧めしておこう。安手のメディアは厳禁である。ちなみに最大ビットレートの160Mbps記録をした場合、32GBのメディアで約25分の収録が可能だ。

NLEの対応

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この最新のXF-HEVCフォーマットだが、編集プラットホーム側でサポートしてもらわないと意味がない。その点安心なのが、XF705の発表と時を同じくGlass Valley社のノンリニアビデオ編集ソフトウエア「EDIUS 9」が、無償アップデート(バージョン9.3)によってXF-HEVCにいち早く対応したことだ。EDIUS 9ではコーデック変換やデジタイズなども行わず直接XF-HEVCフォーマットの読み込みが可能であり、またHDR編集などにも対応しているので、XF705の美点を殺さずに対応してくれている。その他にも、DaVinci Reslove 15(有償版)ではすでに対応しており、Avid Media Composerはプラグインで対応、Adobe Premiere ProとFinal Cut Pro Xは順次対応予定となっている。

HDRアシスト液晶モニターで確認しながらHLGやPQ収録したXF705の映像は、EDIUS 9を用いると取り込み、カット編集はあっという間だ。HDRの属性も継承が可能なので、即時性を追求したHDR映像と言った分野では有益な選択となるだろう。

まとめ

上記で紹介した以外にもXF705は、

  • フルHD時には120P 4:2:2 10bitのスローモーション記録が可能
  • 回転式3濃度NDフィルター(ND1/4、1/16、1/64)を内蔵
  • 高速・高精度なフォーカシングが可能なデュアルピクセルCMOS AFを搭載
  • ネットワーク経由で映像と音声(2ch)をストリーミング送信が可能
  • 3G-SDIの約4倍の伝送速度を持つ12G-SDI端子を搭載

等々、新世代のフラッグシップ機としてスキの無い機能を搭載した。

正直なところXF405が搭載した1.0型CMOSセンサーと15倍ズームレンズの真価を、ようやく発揮できる機種としてXF705は完成したように思う。

XF705は、放送局レベルでの番組制作から、イベントやコンサート映像などのコンテンツ制作においても、高画質な記録も欲しい、映像制作ワークフローの効率化も求めたい、そんな様々なユーザー層へ訴求でき、どのようなレベルでも対応が可能な4Kハンドヘルドカムコーダーであると言えよう。

発売日は2018年11月29日と間もなく。ポチッとボタンを押す心づもりをして発売を待とう。

WRITER PROFILE

井上晃

有限会社マキシメデイア代表。FacebookグループATEM Tech Labo、Grass Valley EDIUS UGで世話人をしてるでよ。