txt:林和哉(株式会社フロンティア) 構成:編集部

DaVinci Resolve Editor Keyboardの実力はいかに!!

エディターキーボードはマウスが存在しない時代でもリニア編集で使われていた由緒正しき入力機器ですね。キーボード自体、無いと生きていけない人が大半だと思います。ただ、今時の若い人たちはスマホ世代なので、キーボードでのブラインドタッチ入力は不要、というお話も聞きますね。

昔はタイムコードが命でしたから、テンキーの使用頻度は異常に高かったですねぇ。さらに、ジョグダイヤルを使うことでテープの頭から最後まで、ものすごいスピードで行ったり来たりしながら必要なカットを完パケテープにダビングしていました。その作業の間に、実はすべての素材に目を通すことができる、という二次的三次的なメリットもあったわけですね。

ノンリニア編集になって、素材を頭から再生しなくても欲しいところにすぐ飛ぶことができるようになりました。編集の途中に素材を挿入したり、いらないものをカットしたあとに隙間を詰めたり、インサート編集やリップル編集ができるようになりました。その結果、素材でも一度も見ない、触らない、という部分が出てきています。

リニアは直線と言う意味ですよね。むかしむかし、皆さんの中に、ベストテープなんてのを作ったことがある人がいると思います。今時の人はMDからスタートとかかも。だとするとピンとこないかもしれませんが、テープの場合、片面30分録音してマイベストバラードみたいなものを作ったします。やったぜ!と満足して聞いてみると、あ、しまった2曲目にこの曲入れたかったんだよね…なんてことが割と起こったりします。

そんな時にどうするかといえば、やっぱり2曲目に入れたい曲を入れて、うしろ全部ダビングしなおすのです。テープtoテープかCDtoテープか、そうやって作っていきます。なので、直線に編集するからリニア編集、その反対語でノンリニア編集と呼ばれています。直線じゃ無いですよー、というお話ですね。

さてノンリニア編集にはメリットが多い訳ですが、ちょっとデメリットもあります。それは、悩む作業ができる=いつまでも決まらない、です。このカットがいいかなぁ、あのカットがいいかなぁ、という迷いカットが増えて、結果的にビデオトラックが、上にどんどんどんどん積まれて、このカット使ってもいいかな、あっちがいいかな、ちょっと上に置いておこう、と12トラックぐらいまで積んで、どれが本線なんだっけっていうのがわかりづらいタイムラインになっちゃう。時間も掛かりますね。

そんな中、昔の映像編集の良さと不便さをなんとか混ぜて快適にしようとブラックマジックデザイン(以下:BMD)のCEOのグラントさんは常日頃考えているそうで、彼が自分の理想とする編集スタイルを提案するためにカットページというものを作ったそうです。

ここ最近、「カットページ」は何につかうの?という質問が増えてきました。複雑な編集は勿論エディットページで今まで通りやるわけですが、「とにかくリニア編集に近く、それでいてノンリニア編集の良さもある操作体系で簡単にどんどんつないでいく編集をするためのものである」と答えています。

映画とかのタイミング取るというより、ババババっと撮った素材をストーリーテリングするためにつないでいくような編集。ENG的なものとかバラエティー的なものとか、カットの強さを積み重ねていく的なもの。そういったものを非常にスピーディーに編集できるページだと思います。そうやって使ってみると、きっとガッテンガッテン、合点がいくと思います。あくまで私見です。公式見解じゃ無いですので、BMDさんを詰めないでくださいね。

CUTページは、トラックを増やしていくと言うより、1トラックで勝負していくような編集に非常に向いてます。タイトルは後から載せれます。本線の拡大縮小とかスタビライズとか、そういったものにすぐアクセスできるのでほんと素早く仕上げるのに特化したページですね。

さて、そこでさらにグランドさんは考えました。せっかく作ったこのページ、ソフトウェアだけじゃなくてキーボードも作っちゃおう、と。リニア編集の時に使われていたキーボードの質感そのまんま。プロフェッショナルな気分になること請け合いです。すばやく編集するにはショートカットが必要ですね。私はショートカット覚えちゃう方なんですけれども、専用のキーボードがあると、そのボタン一つ押すだけで機能が発動する、めちゃくちゃ編集のスピードが上がるわけですね。なので、専用のキーボードっていうのが生まれてくるわけです。

今回試した「DaVinci Resolve Editor Keyboard」は、これはもうカットページにある機能をリアルタイムに使うために特化したキーボードと思って相違ないですね。エディットページでももちろん使えるんですがいくつかのカットページ専用の挙動部分に関して、専用キーが割り当てられているのが素晴らしい。

DaVinci Resolve Editor Keyboardの外観

MacBook Pro 15インチと比較して、このくらいの大きさになります。なかなかの迫力ですね。質感はダイキャスト感で高級感があります。気分も上がります。

キーボード正面

キーボードの真ん中部分は、通常のキーボードショートカットをプリントした部分ですが、このキーボードの根幹は、左右の部分にあると言っても過言ではありません。その部分に、DaVinci Resolve Editor Keyboardの真価があります。

それぞれの部分と、与えられた機能について見ていきましょう。

レフトブロック

■レフトブロック上段

Editorial Tool
これまでのタイムラインへのアクションと、CUTページに追加された新しいタイムラインへのアクションが、ワンタッチで行えるボタンが配置されています。

SMART INSERT(新機能。便利!):
選択したトラックの再生ヘッドに最も近い編集ポイント(スマートインジケーターで表示)右側にあるすべてのクリップをタイムライン後方に押して、クリップを自動的に挿入する。スマートさが命の機能のため、自分で決めた位置にクリップを挿入することはできません。あくまでも、最も近い既存の編集ポイントに挿入されます。

APPEND:
タイムラインの一番最後にクリップを追加します。

RIPL O/WR(新機能。便利!):
再生ヘッドの下にあるクリップを上書きします。その際、

  • 追加するクリップがタイムライン上のクリップよりも長い場合
    →後続のクリップをタイムライン後方に押してスペースを確保
  • 追加するクリップがタイムライン上のクリップよりも短い場合
    →ギャップを削除して後続のクリップをタイムライン前方に詰める と動きます。

タイムラインにイン/アウトを打ったときは、クリップ単位でなく、インアウトの間で上記の動作をします。

筆者注:これは便利!通常は、当該クリップをカットしてその場所にインサートするとか、ギャップを自分で消すとかするわけですが、それが要らないのは、時短です

CLOSE UP(新機能。便利!):
タイムラインでイン/アウトを打ち、この編集を実行すると、イン/アウト間が約150%の拡大されたクローズアップとして、選択したトラックの直上トラックに追加され、顔検出も実行されます。顔が検出されると、顔がフレーム内で自動的に再配置されます。

既存のワイドショットにズームしてミディアムショットを作成したり、ミディアムショットからクローズアップショットを作成したりすることができます。

この機能は、1080Pタイムラインで4Kメディアで作業している場合に特に便利です。または4Kタイムラインの8Kメディアの時、品質を損なうことがないからですね。

PLACE ON TOP:
タイムラインにある他のクリップの上にスーパーインポーズとして追加クリップを編集します。追加クリップは常に一番上に配置されるため、トラック1、2、3にクリップがある場合、選択されているトラックに関係なく、追加クリップは自動的にトラック4に配置されます。トラック1、2、3、とあり、2、3、が空だった場合は、トラック2に配置されます。

SRC O/WR(新機能。便利!):
タイムラインに配置されたクリップに、同じタイムコードを持つマルチカメラ収録した別アングルの素材があった場合、この編集を実行すると、

  • タイムラインでイン/アウトを打ち、メディアプールで別アングルの素材を選択した場合
    →追加するクリップの同期するタイムコード部分を自動的に切り出し、直上のトラックに配置する
  • ソースにイン/アウトを打った場合
    →追加するクリップと同期するタイムコード部分を使用したクリップの直上のトラックに、追加クリップを配置する。

筆者注:逆マッチフレームのような動作ですね

IN:
いわずもがな、インポイントを打つキー。素早く2回押すと、インポイントを削除します。

OUT:
いわずもがな、アウトポイントを打つキー。素早く2回押すと、アウトポイントを削除します。

■レフトブロック下段中央

Trimming Tool

TRIM IN:
ボタンを押している間、ヘッダーの位置の一番そばにある編集点のインカミングに対して、JOGホイールやNUDGE LEFT、NUDGE RIGHTを使用してトリムが可能。クリップ自体のイン点、アウト点を調整する物ではないことに注意が必要です。トリムモードに入っている場合は、自動的にリップル編集として挙動します。

TRIM OUT:
ボタンを押している間、ヘッダーの位置の一番そばにある編集点のアウトゴーイングに対して、JOGホイールやNUDGE LEFT、NUDGE RIGHTを使用してトリムが可能。クリップ自体のイン点、アウト点を調整する物ではないことに注意が必要です。トリムモードに入っている場合は、自動的にリップル編集として挙動します。

ROLL:
ボタンを押している間、ヘッダーの位置の一番そばにある編集点のアウトゴーイングに対して、JOGホイールやNUDGE LEFT、NUDGE RIGHTを使用して編集点自体を前後に動かすことが出来ます。難しくいうと、アウトゴーイングを短くした場合はインカミングがその分前に伸ばされます。全体の尺に影響は出ません。

SLIP SRC:
Slip Sourceの略。ボタンを押している間、ヘッダーの位置の左クリップに対して、JOGホイールやNUDGE LEFT、NUDGE RIGHTを使用してクリップのインアウトを動かさずに、使用している素材のインアウトの調整が可能。

SLIP DST:
Slip Destinationの略。ボタンを押している間、ヘッダーの位置の右クリップに対して、JOGホイールやNUDGE LEFT、NUDGE RIGHTを使用してクリップのインアウトを動かさずに、使用している素材のインアウトの調整が可能。

TRANS DUR:
TRANSITION DURATIONの略。ボタンを押している間、ヘッダー位置にあるトランジションの長さをJOGホイールを使って調整可能。

■レフトブロック最下段下

Transition Tool

CUT:
ヘッダー位置にある編集点のタイプを変更します。ディゾルブなどのトラジションが適用されていた場合、それを削除してカットつなぎにします。

DIS:
ヘッダー位置にある編集点にディゾルブを追加します。

SMTH CUT:
ヘッダー位置にある編集点にディゾルブを追加します。

ライトブロック

■テンキー上

ビンのソート順を切り替えられるボタンが並んでいます。 昇順、降順は押す度に入れ替わります。

TRIM EDITOR:
CUTページ専用のトリムエディターを呼び出します。

HOME:
タイムラインの一番最初に戻ります。

HOME:
入力する数字を、フレームカウントにするか、タイムコードにするかを切り替えます。

DUR ENTER: DURATION ENTERの略。クリップやディゾルブなどを選択した後、希望する尺をテンキーで入力、ボタンを押すと長さを指定できる。

筆者注:ディゾルブの長さ、クリップの長さが一発で調整できるので、いちいちメニューを開かなくて良い分、時短になります

ジョグダイヤル

これはテンションが上がります。上部には、ソースまたはタイムラインのアクセスを切り替えるボタン。その下にSHTL、JOG、SCRLボタン。それぞれのボタンを押すと、くるくる回るジョグモードから、メカニカルにギヤがロックされて、シャトルダイヤルになったり、スクロールダイヤルになったり。

ソーステープ

これは、カットページのビューワー左上にあるソーステープアイコンをクリックした後のソーステープモードで真価を発揮。ビンの中の素材を一本のソーステープと見立てて、高速シークして使いどころを見つけます。そのソーステープ内の並べ順が、テンキーの上に配置されているソートキーで変えられます。ビンでテープ内容を変えることが出来るので、カット事、シーンごとにまとめると便利ですね。

ザーッと見てきましたが、CUTページに魅力的な機能が詰まっていることも分かっていただけたかと思います。それをワンアクションで実行できることが、DaVinci Resolve Editor Keyboardの魅力であり、これを使う事で、圧倒的に素早い編集が出来るようになります。

これまでのノンリニア編集の延長線にありながら、ノンリニア編集を再定義することに挑戦した野心的な作品、それがCUTページとDaVinci Resolve Editor Keyboardだと感じています。FCP Xのようにドラスティックな変更ではなく、新旧織り交ぜた絶妙なバランスを持っている印象です。ライトコースとして、CUTページのトレーニングも開催します。詳細決まり次第、発表しますので、ぜひご利用ください。

用語解説

インカミング:編集点を境に、これから入って来るカット自体、またはこれから入って来るカット側の編集点を指します。

アウトゴーイング:編集点を境に、終わって去って行くカット自体、または終わって去って行くカット側の編集点を指します。

WRITER PROFILE

林和哉

最新技術が好物でリアルタイムエンジンにゾッコン。Unity Technologies Japanの中の人。セミナー講師経験豊富。