txt:小林基己 構成:編集部

■富士フイルム GFX100S
FUJIFILM GFX100S:価格はオープン。富士フイルム直販公式ショップでは税込768,900円
GF80mmF1.7 R WR:税込330,000円
GF110mmF2 R LM WR:税込395,450円
GF45mmF2.8 R WR:税込227,500円
問い合わせ先:富士フイルム

King of Portrait Movie GFX100S

富士フイルムのX-T3を愛用している自分としてはGFX100が出たころから中判フォーマットのF-logムービーというものがどうなのか気になっていた。なにしろフルセンサーを超える43.8mm×32.9mmの1億2百万画素のセンサーから4K30Pの動画収録ができるのである。

そのGFX100の画像性能そのままに小型化して、価格も70万円台でGFX100Sが発売された。これは試してみない手はない!

しかも、GF 80mm F1.7という中判レンズとしては異常な明るさを誇るレンズも同時発売された。これは昨今流行りのラージフォーマットでこれまで表現できなかった世界を見せることができるのでは?と、胸を膨らましてGFX100Sと45mm F2.8、80mm F1.7、110mm F2.0の3本のレンズをお借りしてショートムービーを撮影してみた。

左は筆者のX-T3、右はGFX100S

35mm判の約1.7倍の面積を持つイメージセンサー搭載

ボディの大きさを比べると中判カメラとは思えない小ささに驚く。APS-C(スーパー35mm)のX-T3と比べても一回り大きくなったくらいでキヤノンEOS 5D Mark IVと同じくらいの大きさだ。

しかし、これがレンズを外すと驚愕する。マウントいっぱいいっぱいにイメージセンサーが広がっている。かなりインパクトを受ける瞬間だ。

左はGFX100S、右は筆者のX-T3

小ささの次に目を惹くのがカメラ右上部のサブ液晶モニターである。パワーを入れていない状況でもクッキリとしたコントラストの高い非発光表示がされているので、最初はプリントされた保護シールかと思って剝がし口を探してしまった。バッテリーを抜かない限りパワーが入っていなくても設定を表示してくれているのは、確認のためだけにパワーオンしなくていいのは助かる。

印刷に見違えるほど視認性の高いサブ液晶モニター

左上部にはSTILLとMOVIE切り替えスイッチが付いている。GFX100Sを購入する人はフォトグラファーがほとんどだと思うが、動画機能をないがしろにしていないメーカーの意図が見えて嬉しい。

液晶は3.2型の236万画素の3方向チルト式の液晶モニターだ。X-T3の2倍、X-T4の1.5倍の解像度で日中の撮影でも不自由を感じないくらいの輝度がある。X-T4などで使用されているバリアングルではないが、GFX100Sにとっては上下と縦位置撮影用の右へのみチルトする、というこの方法が合っている。ファインダー内は、より解像度の高い369万画素の有機ELでファインダーを見る派の人には十分なスペックだ。

必要十分な動画記録向けの仕様を備える

さて、富士フイルムのXシリーズといえば、感度、シャッタースピード、絞りがメカニカルダイヤルになっているというのが特徴的だが、GFXに関してはそのカメラ機好き向けのロマンチックさを排除し、合理性へと舵を切っている。上部のモードダイヤルはM(マニュアル)、A(絞り優先)、S(シャッター優先)、P(プログラム)、C(カスタム)1~C6の表示がされたモード切替ダイヤルのみになる。その分、操作感覚はシンプルになっていて、サブ液晶に情報を終結したプッシュダイヤル式になっている。前述のとおり、電源を入れなくても各設定を確認できることでデジタル式のデメリットを克服している。

そして、今までのGFXシリーズに使われたバッテリーNP-T125から最近のXシリーズに使われているNP-W235へと変更された。容量が上がって単価が下がり、なによりX-T4と併用できるのは嬉しい。

今回はデモ機にバッテリーが一本のみと、内心ヒヤヒヤだった。DJI RS 2からカメラコントロール用にUSB-C接続していたのだが、これが電源供給の意味も果たしていたようで、14時から18時までほとんど撮影しっぱなしで4K29.97Pで総データ150GB近く収録した、ちょうど本体バッテリーとRS 2のバッテリーが完全消費するくらいで終わった。USB-Cから電源供給しながら撮影可能というのもメリットの一つだ。

なんとケーブルプロテクターも同梱してくれている。ケーブルが張った時の衝撃が直接端子に伝わらないような仕様なのだが、どうも使いづらい…自分は気持ちだけ受け取っておくことにした。

収録メディアについては、UHS-2対応のSDカードが2スロット用意されている。4K30P 400Mbpsという厚いデータにもかかわらずSDカードで収録できるのはコスト的に助かる。4KとFHDでそれぞれ16:9、17:9が選べて、23.98、24、25、29.97、(50、59.94、FHD設定時のみ)fpsの中からコマ数を選び、ビットレートを400、200、100、50Mbpsの中から選択する方法になる。

ファイル形式はH.265なら4:2:0の10bit、H.264の場合は4:2:0の8bit収録になる(それの他にH.264(web)という高圧縮のモードも用意されている)。そして圧縮形式をAll intraかLong GOPかを選択する。

ただ、特筆すべきはHDMIに関しては4:2:2 10bitでも出力でき、ATOMOSのNINJA Vなどを使用することでProRes RAWで収録可能だ。

今回は4K、16:9、29.97fps、400Mbps、H.265(Long GOP)でV60のUHS-IIモードのSDカードで内部収録した。29.97fpsで撮影しているが編集のタイムラインは23.98fpsになっており、全体が1.25倍のスローになっている。1カットだけFHDで59.94fp収録の2.5倍スローもインサートされているが、4K完パケでも見てもそんなに違和感は無い(4:2:2-10bitのProres RAWも試してみたかったのだが、編集環境が限られるのでATOMOS NINJA V収録は断念した)。

シネカメラに関しては、ラージセンサーのカメラもだんだんと増えてきた。それでもせいぜい35mmフルサイズだ。それをグッと広げた43.8mm×32.9mmのCMOSはマウント側から見ると圧巻の光景だ。スチル撮影だと威力を発揮する12Kセンサーはムービー撮影でもほとんどクロップされることは無く、そのまま4Kのムービーを出力してくれる。

ラージセンサー、しかも超高画素と聞くとローリングシャッターを懸念する人も多いと思う。中判ミラーレスがムービーが撮れるようになってだいぶ経つのに、使われている作品を目にすることは少ない。これは電子シャッター時のローリング現象が起因していると思われる。しかも1億画素を超える高解像度だ。以前、フルサイズだが5000万画素を誇るソニー α7R IVを使ったときにローリングシャッターが気になった。

GFX100Sは、このα7R IVよりちょっと強めに出る印象だ。今回のショートムービーではジンバルによる移動撮影が多かったが、うっかりそのことを忘れているくらいローリングシャッターの印象は薄かった。しかし、それでも早いパンなどは気になってくるだろう。車窓からの移動ショットやスイッシュパンなどの撮影は避けた方が賢明だ。

まあ、本来、中判カメラで撮るというと脚を据えて落ち着いた状況で撮ることがほとんどなので、気になるとするならモデルの動きが速い時など限られた状況だろう。ローリングシャッターが気になるのは実はちょっとした手振れの方が歪みとなって気になる。そういった意味では5軸補正6段分の手振れ補正はかなり力になってくれる。

X-T3と同じ感覚で動画撮影可能

GFX100SはGFX100とほとんど変わらない画質性能を持ちながら、ボディの小ささとバッテリー、メモリー含めて900gという軽さから、中判ならではのスタジオで落ち着いてという呪縛から解放させてあげたくなる。そんな意味もあって、今回はDJIのRS 2というジンバルに載せて、渋谷から原宿にかけてぶらぶら歩きながら撮影スポットを探すというようなポケットカメラ的な使い方で撮ってみた。

ジンバルには45mmと80mmをつけて使用してみたがバランス的にも問題なく、X-T3+XF16-55mmF2.8 R LM WRを使用している時と感覚的には変わらない。8人の出演者、一人に一か所ずつシチュエーションを用意するとなると万全のロケーションで全部撮れるわけでもない。何気ない街の景色が、このGFX100Sのファインダー越しに見ると(実際は液晶画面)どこで構えても成立する説得力のある画にしてくれる。

それは被写界深度が浅いということが一つの要因だが、自分にとってはF-logの存在も大きい。

TestShootは全てF-logで収録している。この富士フイルムならではのLogが非常に出来が良い。これは好みの分かれるところだが、自分にとってF-logはグレーディングでもかなり扱いやすいLogだと思っている。そして富士フイルムのカメラに共通して内蔵されているフィルムシミュレーションも健在だ。PROVIA、ETERNAなどのスタンダードなものからETERNAブリーチバイパスのようなハードな映画的画調も健在な上、GFX100Sで新たに70年代のフィルムの色調を再現したノスタルジックネガも加わって、19のモードが用意されている。どのシミュレーションも地に足の着いたトーンに仕上がっているのはフィルムメーカーの経験値のなせる業だと思う。

収録形式はF-logの他にフィルムシミュレーション、HLGが選べて、内部のSDカードにF-logを収録し、外部モニターに出す映像はETERNAの画質でモニタリングすることも可能だ。HDMI経由ならその3種類の他にRAWも選べるので外部収録機にProRes RAWで収録することも可能だ。中判カメラでRAW収録できるとなると新しい世界が見えそうだ。

■F-log収録の状態

あと気になることといえばオートフォーカスだろう。フォーカスに関してはラージセンサー特有のデリケートさがある。ラスト近くのフルショットで歩いてきてピントを置いた位置に止まってもらうというカットはマニュアルでピントの置いてある場所で止まってもらうというカットだが、背面液晶とRS 2経由のスマホモニターという環境だとジャストな位置にきているか判断するのは難しい。そういうこともあって今回の撮影はコンティニュティーAF任せだった。GFX100SはGFX100やGFX 50Sに比べてAF性能が改善されていると聞いた。顔認識や瞳認識も使える。

ソニーのαシリーズのようなAF性能は望めないとしても、X-T4クラスにどれだけ近づているか気になったが、やはり、超浅い深度と大きなレンズを動かすわけなので、フルサイズ機に比べるとモッサリした印象だ。冒頭の手でふさいでいるところから離れてバストショットになるカットもAF-Cでやっているが、ちゃんと来ているところと追いついてないところとあって、頑張れ!とカメラを応援したくなる。

このような深度が浅く近距離から中距離へのトラックバックカットは熟練したフォーカスプラーでもないと上手くいかない。自分がマニュアルで送れるかといったら、かなり無理がある。そんな中、80mm F1.7のレンズは比較的頑張ってくれていた(50mm F3.5はこれよりも軽快なAF反応だという噂なので、レンズの重さもパフォーマンスに影響してくるのだろう)。

編集時に確認して、あれ?と思ったカットは大抵45mm F2.8の方だった。中盤1分40秒くらいの大きな木を背景にした微妙な送りをするカットも45mm F2.8だ。ただ、このワイド感で手前の人と背景の立体感は中判ならではの魅力だろう。

中判クラスの魅力はレンズの解像度にも起因する。実際、ムービーは4Kの解像度までしかないが、静止画で使えば12Kに迫る解像度だ。その表現力を余すところなく使えるレンズの描写力は相当だ。今回のムービーでは中判ならではの浅い深度にこだわって全編それで通してしまったが、きっちり絞り込んでレンズの描写力を味わうようなムービーもトライしてみたい。

43.8mm×32.9mmという大型イメージセンサーでハイエンドムービーに使える唯一のカメラ。GFX100Sには、明らかにこのカメラにしか撮れない画がある。

WRITER PROFILE

小林基己

CM、MV、映画、ドラマと多岐に活躍する撮影監督。最新撮影技術の造詣が深く、xRソリューションの会社Chapter9のCTOとしても活動。