怒濤の攻めに転じ、新製品を次々に投入

今年のSONYは一体どうしちゃったんだ?とも思える新製品の登場が目白押しだった。しかもそのどれもがユーザーベースに考えられた製品とも取れる魅力のある製品ばかりだ。

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まずは年始初っぱなからソニー初となるフラッシュメモリーカムであるXDCAM EXカムコーダーPMW-EX1が登場した。ハンディカムスタイルの大きさでありながら1/2型3CMOSセンサーを採用し、HS(ハイスピード)が使えるのにもかかわらず100万円を切るという低価格には驚きしかなかった。その画質も”リトルモンスター”の呼称の通り確実に1ランク上のものであった。しかしその調整幅の多さから、逆にセッティングに悩むことも多く、改めてガンマや二ーポイントの勉強をさせられた1台でもあった。そしてその興奮冷め病まないうちにHDV機の真打ちが登場した。

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ハンディタイプとしては初のレンズ交換が出来るHVR-Z7JとHDV機初のショルダー型となるHVR-S270Jである。筆者も5月末からS270Jで撮影をしている。両機共にβ機の頃から数回借りてテストをしてきたが、毎回その画質が上がっていて、開発陣の意気込みが強く感じられものだ。「SONYのファーストロットには手を出すな!」とよく言われるが、発売後3カ月位でもS/Nが大きく変わっていた。小さなマイナーバージョンアップは、常に繰り返されていたことが想像できる。

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HDV最終兵器と言われた2台のHDV機登場の興奮が冷めぬうちに、2008 NAB Showでとんでもないカメラが発表になった。それがXDCAM EXカムコーダーPMW-EX3だ。EX1が登場したときに「これがショルダータイプになってレンズ交換式、しかも価格は130万以下なら買うのに」と思っていたら、そのままイメージ通りの製品が登場して、驚きを通り越してしまった思い出がある。

さらに、HDVシリーズで今週発売となったのがHVR-Z5Jだ。ソニーは今年1年、まさに怒濤の攻めをしてきたと言えるだろう。

HDV弱点の低照度下での撮影が可能になったZ5J

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さて、HDV業務機としてZ1Jが発表されてから、3年以上の歳月が経った。ソニーは、HVRシリーズとしてこの3年に小型のA1JからショルダータイプのS270Jまでフルラインナップを揃えた。初代HDV機として標準機となったZ1Jの正式後継機種とも言えるZ5Jが登場した。そのデザインは、見かけはZ1Jとほとんど一緒で、遠目にはZ1JだかZ7Jだか全く解らないかもしれない。しかしその心臓部は3CCDから3CMOSセンサーと大きく変わった。そのロジックに、最近のソニーのCMOSセンサーではお馴染みになったExmor技術を投入した結果、HDVの弱点とも言えるf値の低さからは開放された。

レンズ周りもカールツァイスからソニーオリジナルの”G”レンズの採用となり、感覚的にはZ1Jと比べれば確実に2絞りは明るくなったように感じる。暗いところではお話にならないと言われ続けたHDVも、確実に撮影範囲を広げたことは言うまでもない。Gレンズはただ明るいだけではなく、筆者的に一番使いやすく感じたのはそのテレ端の広さだ。レンズの広さだけで言うならば、パナソニックAG-HPX175も35mm換算で約28mmと、ようやくスチルカメラの標準ズーム並になった事で有名になった。しかし、Z5Jも換算で約29mm強と、このクラスのカメラの壁であった30mmを切って来たために、かなり使い勝手が良い。ちなみに、この広さはV1Jにオプションのワイドコンバーターを付けた時とほぼ同じ。重量自体はV1JよりZ5Jの方が重いのだが、V1J+ワイコンだとそのトータル重量でも殆ど変わらなくなる。と言うことは画質を比べれば両機の使い方が自ずと想像できるはずだ。

1つ疑問に思うのは、Z7Jなどのカールツァイス搭載機種とZ5JのGレンズの明るさを踏まえた画質の違いだ。筆者所有のS270Jと比べても両者の違いは大して変わらないようだ。レンズのキレは、S270(カールツァイス)の方が若干良いが、逆にラチュードの幅がZ5Jの方が多少広いためか、白飛びがS270Jに比べるとそんなにシビアには出てないように感じた。もっともこれはレンズ性能というよりも、ソフトの問題の方が大きいように感じる部分でもある。これからS270Jをアップグレードに出すので、アップグレード後に機会があったら報告したい。

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あと、Z5Jと同時に登場したオプションのリモートコマンダーRM-1000BPにも興味がある。ゲーム機のコントローラーの様な筐体に上手くダイアル式のフォーカスとアイリス、ズームレバーが配置されている。一見カメラコントロールユニット(CCU)の様にも見えるが、残念ながらiLinkの仕様で常に命令系統は1信号しかコントロールできない。これがリモートコマンダーとCCUの差なのかもしれないが、使い方と現場によっては重宝するガジェットになるだろう。もし、これにMSやCFなどのメモリーカードを挿して録画出来れば、即買いしそうだな。

現場で活用できるガジェットの登場を期待したい

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ソニーはこの1年、民生機でも面白い製品を登場させている。筆者としては、AVCHDカメラであるHDR-CX12HDR-TG1は今年のベスト製品だと思っている。CX12は外部にガンマイクとワイコンを取り付けることでA1Jの代わりに小型軽量のディレクターカメラとして使用することが出来る。でも、ソニーさん、こんなディレクターカメラを来年出してよ!

TG1に至っては画質云々よりもその大きさが最大の武器と言える。常に携帯しても苦にならないというのは、無限の可能性を秘めたメモカメラとも言えるはずだ。「TG1のカメラ部分が分離して(出来ればワイヤレス)、レコーダー部分にLCDモニターが付いた物が販売されると面白いのになぁ」と思っていたのだが、Inter BEEで“まめカム”HDなる機材が発表となり、来年早々に発売されることにビックリした。もうこれは買うしかないでしょ。

今年1年、ここまでソニーに驚かされてしまったら、来年はもう多少のことでは驚かないはず。欲を出して、さらに面白い製品…、現場で使っていて不具合のないガジェットなどを期待してしまったりする。ソニーは、ユーザーの小さな声を全然聞いてないフリをして、しっかりとその実を蓄えるメーカー。ソニーに期待するというより、小さな事でもフィードバックすれば、また面白い製品を作ってくれると確信している。

岡 英史(VIDEONETWORK)


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