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[ワークフローの鍵を握るMXF 02]日本テレビがIBE-NTとMXF伝送システムを共同開発

2009-02-04 掲載

日本テレビ放送網(東京都港区)は、アイ・ビー・イー・ネット・タイム(東京都中央区、以下IBE-NT)とMXF局間IP伝送システムを2008年11月に開発。12月から全国のNNN系列30局で導入し、報道素材や番組素材のIP伝送用として運用を開始している。

汐留に社屋を移転して5年以上が経つ日本テレビ。現在は、ベースバンド信号ベースで運用している制作ワークフローも、次期機材更新の段階でファイルベース・ワークフローへと変更する可能性が高い。HD映像をエンコードしてMXFファイルに変換して転送するこの伝送システムは、現在の日本テレビの制作ワークフローの効率化とともに、次世代ワークフローに向けた技術の蓄積としての取り組みの要素も強いものだ。しかし、それ以上に、系列地方局における番組制作ワークフローの効率化にも大きな影響を与えたようだ。


高価な専用線でなく、IP網を通じて素材伝送

日本テレビとIBE-NTが共同開発したMXF局間IP伝送システムは、IBE-NT製MXFレコーダMXR-300soと、ファイル伝送用にカスタマイズしたアイ・オー・データ製ファイルサーバで構築している。開発の狙いについて、日本テレビ技術統括局技術戦略センター技術開発部の菊地秀彦氏は次のように話した。

「HD伝送用のネット回線は、地上デジタル放送開局に合わせて、デジタルの専用線を追加して引いています。しかし、そのネット回線コストは距離に応じたコストがかかるだけでなく、回線数も限られているため、他局と自由にHD素材の交換をすることは難しかったんです。さらに、地方局によってはHD素材を受ける端末がないというケースもあり、HD素材流通がしにくい現状もありました。今後のワークフローを考えたときにファイルベースへと移行していくのは確かであるし、専用ネット回線に比べて、通信コストが格段に安く、定額であるIP網を利用して、報道用HD素材の伝送ができないかと考えました」

NTV_MXFworkflow.jpg 開発した局間IP伝送システムのシステム概要。MXFレコーダでベースバンド信号とMXFファイルを変換し、拠点間のIP伝送はファイルサーバ側で受け持つ形を採っている。

日本テレビでは、3年前くらいから検討を始めたが、当時は伝送に使用するためのHDコーデックの価格も高く、なかなか開発をスタートできなかったそうだ。ところが、近年になってPCベースで運用できるHDコーデックが安価に手に入れられるようになってきたことから、エンコーダソリューションでは定評のあるIBE-NTと組んで共同開発を行ってきた。IBE-NT製MXFレコーダMXR-300soは、内蔵のハードウェアエンコーダを使用してベースバンド信号をリアルタイムにMXFへと変換する。このエンコード段階において、2種類のMXFファイルが生成される。すなわち、フルHD映像の入ったMXFファイルと、仮編集・プレビュー用のプロキシ映像の入ったプロキシMXFファイルだ。これらのMXFファイルは、アイ・オー・データ製ファイルサーバに格納され、素材伝送用に待機することになる。

MXF-IP_ntv_ibent.jpg
日本テレビとIBE-NTが共同で開発したMXF局間IP伝送システム

MXFファイルの伝送は、MXFレコーダで変換したファイルリストからファイルを選択し、配信先を設定して伝送するPUSH型伝送だけでなく、素材を持っている放送局のファイルサーバにアクセスして必要なファイルを取ってくるPULL型伝送もサポートしている。伝送時は、まずプロキシMXFファイルが先に伝送して編集作業効率を向上させ、その後、フルHD素材のMXFファイルが伝送される。伝送時には、ファイルに含まれるメタ情報も同時に送られている。PUSH型伝送時には、複数の局に向けて配信したり、あらかじめ複数の局をグループ化しておくことも可能になっている。回線にはVPNを使用しているが、転送速度は実測で約50Mbpsだそうだ。35Mbpsの素材を使用した場合で、収録から再生までで実時間の2倍くらいの時間での運用が可能だという。

「通常のVPNネットワークは、東京や大阪など、主要拠点をルーティングして行われることがほとんどです。しかし、主要拠点をルーティングすることによって距離が伸び、伝送効率も下がってしまいます。これは大容量の映像ファイルの転送が難しくなってしまいます。ルーティングせずにファイルを直接やりとりするために、30局のシステムに30局分の設定をしたフルメッシュの方法も考えたのですが、900の設定が必要になりメンテナンス性に欠けてしまいます。そこで、今回はダイナミックVPN方式を採用しました。東京と大阪でIPアドレスのデータベースを持ち、通信の最初の段階にアクセスしてルーティングを行い、それ以降は直接接続に切り替えるという方法です。IPアドレスが変更になっても再接続しやすくしているわけです。こうすることで、メンテナンスもしやすくなりました」

MXFファイルだけでなく、通常ファイルの伝送も可能

現在はHD-SDI経由で素材を取り込んでいるが、今後、ファイルベース運用をスムースに行うためには、ソニーXDCAM、パナソニックP2、池上通信機GFなど各社のカメラで使用されているMXFフォーマットを直接扱うことでの効率化も避けられない。MXF局間IP伝送システムには、エンコードしたMXFファイルの伝送だけでなく、通常のファイル転送サーバとしての役割も持たせている。各社テープレスカメラが生成したファイルをそのまま送ることができるほか、CG素材ファイルや音声ファイル、一般文書ファイルなども取り扱えるようにすることで汎用性を持たせているわけだ。

MXF-IP_capture.jpg
MXF局間IP伝送システムの伝送設定画面。ファイルを選択して、放送局をプルダウンメニューから選ぶだけの手軽さだ。

「現在は、VTRからのベースバンド信号をHD-SDIを通じて入力していますが、将来、ファイルベースに移行した時には、ノンリニア編集システムからMXFファイルを出力してしまえば、単なるファイル転送装置としても扱えるようにしています。地方局によっては、地上デジタル放送の開局に合わせて制作システムを更新し、すでにファイルベースに移行し、ノンリニア編集を中心に運用を始めた局もあります。そういう局にとっては、MXFファイル生成用のエンコーダは必要ありませんので、エンコーダなしの低価格版も作っています。プレビューは出来なくなってしまいますが、ノンリニア編集システムからファイルを直接参照して利用することが可能になります」

MXF局間IP伝送システムのメリットは、安価なIP網の利用というだけではなく、制作作業の効率化の面でも効果があるという。IBE-NTがカスタマイズしたアイ・オー・データ製ファイルサーバは、MXFレコーダ側で作成された伝送スケジュールを元に、MXFレコーダとは独立して動作する。つまり、エンコード作業と伝送の設定後は、ファイルサーバ以外の電源を切っても動作するように設計している。

「HD素材伝送用の専用ネット回線を使用する時は、送信側と受信側で回線ブッキングが行われるまで待機し、回線接続後に送出・録画の作業が必要になります。つまり、どうしても担当者がその場にいる必要があったのです。MXF局間IP伝送システム導入後は、ファイルサーバが回線の接続とファイル転送を管理しているので、担当者が待機する必要もありません。夜間などの運用において、人的コストの削減にもつながっています」

日本テレビでは、1日のニュース素材をまとめて各局に配信するといったことにも活用を始めている。地方局などでは、本局とサテライト局間の素材転送などにも利用されているほか、地方局同士で、ローカルな話題の素材伝送をすることにも活用が広がってきているようだ。各放送局で1~2台という導入ではあるが、IP網を通じた安価なファイル転送が可能になったことにより、制作の幅が確実に広がったと言えるだろう。IP網を使用していることから、必要なときに簡単に増設できることもメリットだろう。

MXFという規格化されたファイルフォーマットを生かし、全国の系列局間で素材フォーマットを統一していく今回の共同開発の取り組みは、放送局間のワークフロー共通化にとどまらない。本局とサテライト局はもちろん、収録現場と編集室、編集プロダクション間など、遠隔地と連携した制作を行っているプロダクションなどにおいても、制作ワークフローを効率化するきっかけを与えてくれそうだ。

(秋山 謙一)




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[ DATE : 2009-02-04 ]
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