パナソニックが提供するサイネージソリューションは、ソフトウェアベースでサイネージ表示をするNMstageだ。

「NMstageは、店頭株価情報表示システムがベースになっています。サイネージの表示部分については一般的なものですが、もともと金融関係向けのシステムとしてベースを構築したこともあって、システムを管理している部分については非常に堅牢に作られています。例えば、センター側で、全ての端末の稼働状態を把握できるようにし、表示コントローラのNM-Player稼働ログデータをとってきて解析することもできます。表示している内容についてもプレビューできるようにしているため、センターのシステム側で障害状況を絞り込めます。ケーブル断線なのか、ディスプレイの故障なのか、電源が入っていないだけかなのかも判断でき、修理・メンテナンスがしやすくなっています。このように、デジタルサイネージを業務の基幹として使用したいという人向けに、バックグラウンドのシステム管理部分に力を入れて開発してきました。電子看板的に表示が出て、内容を変えることができればいいというサイネージシステムとは異なります」

こう話すのは、パナソニック システムソリューションズ ジャパンの営業本部商品マーケティングセンター FPD推進グループ デジタル推進チームの相馬聡氏だ。NMstageの基本ソリューションは、コンテンツ、ログ、スケジュールを管理サーバに置き、それらを操作端末のNM-Operatorソフトウェアで管理、スケジュール編成にしたがってネットワークを通じてNMコントローラEX AF-NMCT30EX/NMコントローラ AF-NMCT30にコンテンツ配信し、ディスプレイに表示すると言うもの。現在のバージョン3.0は、2007年7月に投入。NMstageは最大3,000台までコントロールができ、1台のサーバーで複数のクライアントのコンテンツを管理することができるように、サーバーはマルチユーザー環境を実現している。金融関連で培ったシステムだけに、その安定性は折り紙付きと言える。

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ネットワーク経由でコンテンツの管理・運用を行い、稼働状態の監視も行うことのがNMstageの基本構成だが、AF-NMCT30はより簡易にネットワークやサーバを使用しないスタンドアローンの運用にも対応する。USBメモリに入れたコンテンツを挿入すると自動的にコピー。再起動後に自動再生するものだ。まずは試しにサイネージを導入してみたいという人へも対応できるわけだ。

NMstage用のコンテンツ制作や導入後のシステム管理・運用サポートが必要な場合においては、パナソニックシステムソリューションズ内にある運用サービスのグループが担当するほか、パナソニック社内ベンチャー企業のピーディーシーを紹介する形を採っている。全国のATMコーナーに金融機関ごとの情報を配信する日本ATMや、東京ミッドタウンや六本木ヒルズなどのサイネージでは、ピーディーシーが運用や支援を行っているという。

「コンテンツの素材は、動画であればWindows MediaやMPEG1、MPEG2が扱えますし、JPEGやBMPといった静止画、Flashを組み合わせることができます。一般的なファイル形式なので、Webページを制作できるぐらいのスキルがあれば制作可能です。特別なオーサリングソフトなどを必要とすることはありません。通常は、表示させたいコンテンツ素材をタイムスケジュールに載せていく作業が中心の運用となります。最近では、PowerPointで作ったコンテンツを表示したいという要望も聞くので、NMstageではPowerPointビューアーを搭載することで対応済みです。しかし、FlashやPowerPointの表示にはCPUに負荷がかかるので、最新のPC環境で制作して快適に動いたとしても、サイネージ表示ではパフォーマンスが出ないこともあり、あらかじめ動作確認する必要はあります」(相馬氏)

運用管理を重視したサイネージ運用をしたい分野で導入が進む

現在の稼働状況は、全国で約8,000端末ほど。そのうち、証券会社、都市銀行、地方銀行、ATMコーナーなど金融機関関係が5割近くを占める。これは、もともとのNMstageの生い立ちが影響していることが大きいだろう。しかし、バックグラウンドの運用管理面が充実しているメリットを生かして、日々の業務サポートシステムとしての導入が進んできているようだ。

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都営地下鉄大江戸線の改札口に表示されるサイネージはNMstageで運用

都営地下鉄大江戸線の改札口に表示されるサイネージはNMstageで運用

東京都交通局では2005年9月に都営地下鉄大江戸線の改札口に、運行状況や緊急情報などを掲載するディスプレイを配置。今では、他線も含め全ての駅で採用し、一括管理した情報を駅利用者に提供している。運行状況や緊急情報などは、ディスプレイだけでなく、各駅の業務用PHSにメールやWebコンテンツとして同時配信することも行っているようだ。同様の案件としては、JR西日本やJR東日本でも活用が一部の駅で活用を始めているなど、さらに導入が進んでいきそうだという。鉄道だけでなく空港での導入もある。2008年7月にサイネージサービスを開始したのは、福岡空港ビルディング。福岡空港到着ロビー/出発ロビーで、交通アクセスや運行情報、乗り場案内、九州エリアの観光情報、天気予報やニュースなどの表示に活用している。

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TBSは、赤坂サカスをはじめ連絡通路やエレベーターなどへの情報配信にNMstageを活用

TBSは、赤坂サカスをはじめ連絡通路やエレベーターなどへの情報配信にNMstageを活用

放送局での導入もある。東京放送(TBS)だ。2008年2月に導入し、翌3月の「赤坂サカス」グランドオープンに合わせて運用を開始した。東京メトロ・赤坂駅と直結したSacas Frontの103型ディスプレイと、赤坂サカス正面の400型LEDディスプレイ、LEDビジョン設置の階段Media Stairs、連絡通路や階段のディスプレイ、エレベータ内と周辺など、MNstageなどで一元管理しているという。

業務用のサイネージ利用では、病院での採用も始まっている。

「2008年9月に名古屋第二赤十字病院で採用いただきました。弊社のシステムは、病院に向けた営業が弱かった部分もあるのですが、名古屋第二赤十字病院では、カルテからICタグと患者の呼び出し番号の表示を連動させているほか、院内各所のディスプレイに病院からのお知らせを掲示しています。今後、こうした病院での導入も進むと期待しています」(相馬氏)

金融機関で培った技術が、配信障害が生じては困る業務分野において受け入れられ、活用範囲が広がってきている。