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[4K Ready!] 03:大学機構改革で生まれたデジタルシネマ認証機関

#4K #DMC機構 #デジタルシネマ #4K Ready

2009-05-13 掲載

昨年、4KデジタルシネマカメラRED ONEが登場したことで、4K映像制作への関心もいよいよ高まってきている。しかし、実際に制作にとりかかろうとすると、収録時の注意や、編集での課題、上映や配信での必要事項など、まだまだ情報が少なく整理されていないと感じる人も多いのではないだろうか。デジタルメディア・コンテンツの制作、資源化、流通、環境、知材管理、政策など、総合的な研究を続けてきた機関が慶応義塾大学にある。それが、デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC機構)だ。ここでは、DMC機構の研究活動のなかから、4K高精細映像に関する取り組みを紹介していこう。

DMC機構の設立は、2004年に遡る。文部科学省・科学技術振興調整費の「戦略的研究拠点育成プログラム」に採択されたことで設立され、2008年度まで5年間にわたってデジタルメディア・コンテンツに関する研究を行ってきた。DMC機構で高精細映像技術の研究に携わる金子晋丈(かねこ くにたけ)氏は、「DMC機構は、文部科学省からの委託研究をする機関として、5年間という期限付きの組織として発足しました。その目的には、デジタルメディアなど急速に進化・発展する環境に対応できるように今後の新しい大学のあり方を模索していくという、大学の機構改革の位置づけも含まれました。その一環で、講座制ではなく、技術分野、ポリシー、利用方法などデジタルメディアの応用を考慮しながら、プロジェクトベースの研究活動を行ってきました」と話す。

DMC機構は、2008年度で5年間の文部科学省委託研究機関としての役割を終えたが、2009年度からはプロジェクト内容や規模を整理・再編しながら慶應義塾大学の研究機関としての活動は続けている。

実証実験を通じて収録から制作、配信までの技術を構築

DMC機構の研究プロジェクト活動のなかで金子氏は、デジタルシネマや4K映像といった高精細映像に関連した技術的なプロジェクトに関わってきた。

「NTTが中心となって開発して生まれた4K技術ですが、この数年間でようやく4Kプロジェクターや4K液晶ディスプレイが登場してくる時代になりました。そこで、DMC機構では、これをどう利用していくかという部分にフォーカスし、4K解像度のデータを扱う上でネットワークをどう活用するかということに取り組んできました」

ここで、DMC機構が行ってきた実験をいくつか紹介しておこう。DMC機構が、初めて4K伝送実験を行ったのは2005年9月のことだ。超広帯域ネットワークが必要な先端アプリケーションの開発を推進するための、国際的コラボレーション共同実験イベントである国際ネットワーク会議iGrid 2005に参加。慶應義塾大学と米カリフォルニア大学サンディエゴ校間の15,000kmをギガビットIPネットワークで結び、JPEG2000の4Kデジタルシネマ規格でリアルタイム伝送を行った。一方向ではあったが、4Kライブ映像の伝送は世界初の試みだった。

国際間だけでなく、国内でのトライアル実験も実施している。2006年10月の東京国際映画祭で、大容量IPを使用し複数拠点間で4K映像をリアルタイム共有した世界初の取り組みを行った。プレイステーション3を4台とプレイステーション3用レーシングゲーム『リッジレーサー7』(発売・バンダイナムコゲームス)を使い、DMC機構、けいはんな・OpenLab、秋葉原・JGNII、横須賀・未来ねっと研究所の4カ所を繋いでネットワーク対戦。プレイステーション3のHDTV対戦映像を、DMC機構で繋ぎ4K映像にしたうえで、東京国際映画祭会場のTOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン2を加えた5カ所に400Mbpsで配信した。

DMC200611.jpg

この取り組みと前後する形で、4K・多チャンネルオーディオ映像の同期再生実験も行っている。慶應義塾大学ワグネル・ソサィエティーの演奏を複数のマイクを使用して4K・多チャンネル収録。編集した4K映像とともに、素材の24チャンネルオーディオをそのまま米サンフランシスコのLucas Film Theaterに伝送。会場でミックスダウンをして同期再生するというものだった。

「こうした取り組みを通じて、4K映像をどう使えはよいのか、4Kカメラをどうハンドリングしていけばよいのかということが分かってきました。これまではライブで伝送するだけでしたが、今後は非圧縮での制作も視野に入れた技術構築をしていくことになったのです」(金子氏)

 DMC機構は、2007年6月に行われたオランダフェスティバルに合わせて、アムステルダムへ遠征。4Kカメラと4Kディスクレコーダーを使用し、オペラを4K非圧縮で収録し、アムステルダムから米サンディエゴまでライブ伝送を行った。

「この実験では、4K映像収録ではどんなカットが生きるのか、どんなカットは見づらいのかが研究できました。歌手にズームアップした時に、サンディエゴで400型スクリーンで視聴しているスタッフから『アップにし過ぎるのは止めて欲しい』と連絡が入りました。顔のアップと同時に、動きをフォローしていくと、見ている方は酔ってしまうということでした。会場の暗さから、フォーカスがずれやすいことも原因となりました。結果的に、等身大までがちょうど良いということになったのですが、これは実際にやってみないと分からなかったことですね」(金子氏)

この実験で非圧縮収録したことも貴重な経験になったと、金子氏は言う。当初はリハーサルの一部と本番ということだったようだが、海外取材ということもありリハーサル収録、本番1日目収録、2日目収録、さらにはアムステルダム市内の風景も……と増えていったという。昼間の撮影分を一晩かけてローカルのファイルサーバにファイル転送することを繰り返したという。

「非圧縮6Gbpsのファイルの大きさを思い知りました。ローカルのファイルサーバでも足りなくなり、協力していただいたアムステルダム大学のファイルサーバにデータを一時的に転送させてもらいローカルのファイルサーバを空けて使用しました。ディスク間のデータ転送にかかる時間や効率の悪さを考えると、収録時にネットワークを活用する必要もあると感じました」

DMC200711.jpg

2007年11月には4K非圧縮映像を用いたリアルタイム編集実験に踏み切った。稲盛財団の協力を得て第23回京都賞授賞式を収録。NTT・NTTコミュニケーションズ・東京工科大学・三菱電機と共同で、米国経由で北欧・ストックホルムまで10Gbps級のIPネットワーク接続を行い、4K非圧縮映像のリアルタイム編集中継を行っている。さらに2008.12月には、ネットワークを使用して高品質なマルチメディアをどのように運用していくかを検討するワークショップCineGridで、双方向4Kテレビ会議を、2Kテレビ会議や圧縮/非圧縮映像をとりませながらDMC機構とサンディエゴとシカゴの3点を結んで実施している。

DMC200812.jpg

DMC機構の実証実験を中心とした取り組みについて、金子氏は次のように話している。

「『やろうと思ったら、(誰でも普通に伝送を)できるんじゃないの』『4K非圧縮の収録と言っても、HDDレコーダーのボタンを押すだけでしょ』と言うことと、『(4Kを使って)やってみて、本当にできる』と言うことの差は、非常に大きい。4K非圧縮の6Gbpsを圧縮すると500Mbpsぐらいになりますが、この500Mbpsを安定して長時間伝送し続けることの難しさや、4K非圧縮で収録した後で編集するのにどれだけの手間がかかるのかといったことは、実際にやってみて体感できたとも言えます。Proof of Comceptと言っていますが、DMC機構では、こうやればできるのではないかと思ったことを、実際に行ってみて検証していくということを続けています。問題が生じれば、この部分が問題ということを発表していきますし、自分たちの工夫で改善できるものは、新たなプロジェクトとして実証した上で次につなげていきます」

デジタルシネマ機器 国際的認証機関の1つとして認定

こうした地道な国際的な研究活動から、4Kに関する技術やノウハウが蓄積した研究機関であると米ハリウッドの映画製作スタジオが中心となって運営するDigital Cinema Initiatives(DCI)から認められ、2008年10月にデジタルシネマ機器の国際的認証機関として認定された。この認定により、DCIが定めたCompliance Test Planに沿って認証試験を行う、世界3機関のうちの1つ(他の2機関は、米カリフォルニア州CineCert、伊Media Innovation Center)となったことになる。

「デジタルシネマ機器は、世界で3カ所にある国際的認証機関のいずれかで認証を受ける必要があります。どこで認証を受けても構いません。認証試験についてはどういう方法で試験をしなさいと規定されているので、試験結果が変わるということもありません。ただし、認証に必要な期間や費用に関しては3社間で特に共通なものを定めてはいません。機器メーカーは、認証までの期間や試験結果に対するサポートなどを考慮しながら、3機関のいずれかを利用するということになります」(金子氏)

デジタルシネマは、DCIが主導で定めたデジタルシネマ標準(Digital Cinema System Specification=DCSS)に準拠していることが求められる。この標準は、プロジェクター、メディアブロック(再生機)、デジタルコンテンツ、音響、ランプ出力やスクリーンの反射など、細部にわたって記述され、制作者が作成したデジタルデータを制作者が意図した通りに上映できるように規定されている。DMC機構では、機器の認証からとりかかっているという。

「認証について、最終的にはトータルな上映環境の認証が必要になります。しかし、既存の上映環境をどうするかという部分も生じますので、全ての環境を整えなさいというわけにもいきません。そこで、現在はプロジェクターやサーバ(メディアブロック)の認証から運用を始めています」(金子氏)

────

DMC機構は、文部科学省委託研究機関から慶應義塾大学の研究機関へと組織の変更はあったが、今後もデジタルメディア・コンテンツに関する技術共有機関として研究活動が行われていくとともに、デジタルシネマ機器の国際的認証機関としての役目も担っていく。




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[ DATE : 2009-05-13 ]
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