6月の特集「RED flow Now」で、Avid Technologyがフリーウェアとして提供するデジタルインタミディエイト用ファイル変換ソフトウェアMetaFuzeをバージョンアップし、R3DファイルをMedia Composerで取り扱い可能なAvid DNxHDに変換できるようにし、Media Composerでオフライン編集をした後に書き出したAFEファイルを使用して、Avid DSでR3Dファイルとコンフォームを行うREDワークフローを確立したとレポートした。

実は、このMetaFuzeのバージョンアップは、REDワークフローを確立するものであると同時に、ステレオスコピック3Dオフライン編集のファーストステップとしても位置づけている。アビッド テクノロジーのビデオプリセールスの西岡崇行氏は、今回の取り組みについて次のように話した。

「これまでは、ステレオスコピックを確認しながら作業するオフライン編集という概念がありませんでした。左右いずれかの映像でオフライン編集をするか、初めからハイエンドシステムを使用してステレオスコピックを確認しながら編集していくことしかできませんでした。そこで、Media Composerでステレオスコピックのオフライン編集ができるようにと考え出されたものです」

Avidはすでに、オンライン・フィニッシング環境のAvid DSにおいてステレオスコピック制作に対応してきていた。オフライン編集については、Media Composerなどを使用して左右いずれかの映像を使用して行い、EDLファイルなどに編集カットリストを書き出してハイエンドシステムで編集するというワークフローを採用していた。これは、他社のワークフローと同様のスタンダードな方法だ。しかし、これではハイエンドのフィニッシング環境にデータを持って行くまで、ステレオスコピックでカット間のつなぎの状態が確認ができない。その確認のためにもフィニッシング環境が占有されると考えたAvidは、オフライン環境でテレスコピックでプレビューできるワークフローを提供することにしたわけだ。

オフライン編集でステレオスコピック出力を実現

今回のMetaFuzeバージョンアップで、ステレオスコピック制作に対応し、左右の映像を読み込んで表示することが可能になった。ステレオスコピックモードは、左右を重ねて出力するインタレース方式、上下分割形式のOver/Under方式、左右分割形式のSide by Side方式、赤青グラスを使用するアナグリフ形式に対応している。素材の中身を確認するだけであれば、MetaFuzeを使用して確認しやすいモードを選択すればよいことになる。

Avid_MetaFuzeStereo.JPG

オフライン編集のワークフローを整理しておこう。まず、MetaFuzeを使用してステレオスコピックに対応したAvid DNxHDを生成する。このAvid DNxHDを使用してMedia Composerでオフライン編集を行った後、フィルムカットリスト出力用ツールのFilmScribeを使用してXMLファイルを出力するという流れだ。もちろんEDLファイルによってフィニッシングシステムへ移行する方法もあるが、ファイルベース編集を効率的に行うために、メタデータとの親和性の高いXMLファイルをFilmScribeで出力する方法が推奨されているというわけだ。

Avid_FilmScribe.JPG Avid_ComposerSetting.jpg

Madia Composerの「コンポーザー」ウィンドウに表示されるプレビュー方式は、「コンポーザー設定」にある「Stereo View」プルダウンメニューで設定できる。ここで、ステレオスコピックをオフにするのかオンにするのか、左右のいずれかを見るのかを選択するわけだ。オフライン編集作業自体では、左右いずれかの映像があればよいので、「Left」か「Right」に設定することが多いはずだ。この「コンポーザー」ウィンドウでのプレビュー表示以外に、マルチディスプレイを使用して、一方をフルスクリーンプレイバックすることも可能だ。Madia ComposerでAvid Mojo DXやNitris DXを使用している場合は、HDMI出力からステレオスコピック出力が常に得られる。対応するモニタを使用すれば、編集しながらカットのつなぎなどを確認することができるというわけだ。

Media ComposerからXML形式でオンラインへと連携

Avid_Checkerborad.jpg

Checkerboard方式の仕組み。左目用と右目用のピクセルを交互に並べることで、ステレオスコピック3Dを実現している。

さて、先ほど、ステレオスコピック3Dオフライン編集の「ファーストステップ」と書いた。Media Composerで扱えるテレスコピック対応のAvid DNxHDに使用できるMetaFuzeのテレスコピックモードは、現時点ではOver/Under方式だけだ。さらに、Avid Mojo DXやNitris DXを使用したモニタープレビュー用のHDMI出力にも制約がある。常にステレオ出力はなされているのだが、左右のピクセルを交互に並べて1枚のフレームにするCheckerboard形式のプレビューにしか対応していないのだ。「まずはオフライン編集ができるものを」というスタートラインに着いた状況だ。

Avid_MC3D.JPG

オフラインデータの書き出し部分も同様だ。Media Composerのオフラインデータは、フィルムカットリスト出力用ツールのFilmScribeを使用してXMLファイルを出力する。このXMLファイルを使用できるオンライン編集システムで編集データを読み込み、フィニッシングを始めることとなる。

「Avidは、ユーザーが必要な環境をまず整えるという方針に変わってきました。Avid DSのステレオスコピックは複数の映像をまとめるコンテナを利用しているため、現時点では対応し切れていません。今回はステレオスコピック制作をする場合に、モニターでステレオスコピックを確認しながら手軽にオフライン編集をできる環境を整える第一歩としてバージョンアップを行いました。Avid DSとの連携や、モニター時のステレオスコピックモードなど改善しなければならない点は認識しているので、今後ブラッシュアップを続けていきます」(西岡氏)

すでにステレオスコピック環境を実現していた自社のAvid DSではなく、より活用されているオンライン編集システムとの連携を最初に実現したということからも、Avidの本気度がうかがい知れるというものだ。