PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU

トップ > 特集 > [VFX 2009]00:ワークフロー改善から生まれる映像品質の向上

News

[VFX 2009]00:ワークフロー改善から生まれる映像品質の向上

2009-09-30 掲載

番組・CM、映画、ミュージックビデオ(MV)、プロモーションビデオ(PV)など、各種映像制作においては、CGやVFXを使用せずにただ繋ぐだけの映像は少なくなっている。もちろん分野や予算に応じて、よりリアルな映像を作るためであったり、映像にアクセントを付けるためであったりと、CGやVFXの使用方法はさまざまなものがある。

8月の特集で採り上げたCGカンファレンスSIGGRAPHにおいては、毎年、米ハリウッドの最新アニメーション作品や最新フィルム作品のメイキングが展示ブースやカンファレンスで報告されている。予算規模も制作者数も大きいハリウッドの手法は、そのまま日本の映像制作に生かせるというものではない。しかし、その緻密なクリエイティブワークに見習うべきことも多い。

ハリウッド映画で特徴的なのは、「無駄のなさ」だ。たとえば、リアルさの追求といった面でも、制作最前線の人が見ないと違いが分からないような部分まで作り込むのではなく一般の人が違和感を持たないレベルにとどめたり、カメラの視野周辺で被写界深度から外れてボケてしまうような部分の作り込みをやめたりといったことは、よくあることだ。技術的に作り込みは可能であっても、一般の人が最終的な画を見たときに違和感を持つかどうかで判断しているようだ。もちろん、一般人であってもハイレベルな作品を見続けると、それなりに目は肥えてくるので、年々、技術的なハードルは高まってしまうのであるが……。

こうした制作ができる背景には、撮影段階からポストプロを考慮した制作が行われていることが挙げられる。CGで表現すべきこと、撮影で表現した方がよいものを切り分けながら、作業を効率化しているのだ。撮影段階で作業を切り分けることで、CGやVFXにかける制作期間も伸ばしたり、撮影が難しいカットにひたすら時間とフィルムを使うことを避けているわけだ。莫大な製作費をかけながらも、コストカットの意識は常に働いているとも言える。

縦割りなワークフローによる閉塞感をなくせ

日本ではどうか。CGアニメーションツールは、ハリウッド制作で揉まれて、毎年のように機能向上を果たしてきた。マシンパフォーマンスと時間さえあれば、誰もが劇場のスクリーンに投影しても申し分ないクオリティで制作できるようになった。この「誰もが制作できるツール」というのがクセモノだ。「誰もが制作できる」のは、「誰もがクオリティを上げられる」ことではないはずだ。編集や合成では「誰もが制作できる」ノンリニア編集システムが登場しても、クオリティを上げるにはテクニックが必要なことは理解されている。しかし、CGやVFXとなると、作品に味付けをする添え物で、困った時のCG/VFX頼みという位置付けになってしまうところに問題がある。誰もが制作できるのはモデリングとレンダリング部分であって、実際の画作りの妙といった部分は、制作者のテクニックや感性に裏打ちされたものであるはずだ。けっして添え物ではないのである。

しかし、日本の多くの映像制作において、撮影後にポストプロに持ち込まれ、その合成素材の制作をCGプロダクションが行うといった状況にある。ノンリニア編集が一般的になっているのに、全体のワークフローはきわめてリニアな縦割り構造なのだ。撮影を行う監督がCGに熟知していれば切り分けもなされるのだろうが、そうしたケースはまだまだ少ない。そうであるならば、監督とCGプロダクション、ポストプロとCGプロダクションなど、より緊密に連携しながらトータルなワークフローを模索していくべくなのだろうが、そうした動きはまだまだ鈍いというのが現状だ。こうした制作フローが、日本のCG市場をゲームコンテンツ産業中心に追いやってしまった一因にもなっているのではないだろうか。

そこで今回は、CGやVFXを活用するためのワークフローに焦点を当て、CM、映画、MV、PVの分野から最近の映像制作の事例を紹介していくことにした。分野や制作規模の違いはあれど、いくつもの制約の中でワークフロー全体で制作効率を改善していくヒントが見え隠れしていると思う。しかし、残念ながら、CM制作事例については、広告代理店から掲載許可を得ることができなかった。そのCMは、動物の実写映像をVFXを使うことでよりリアルに、しかも精悍に見せる好例であったのだが、「CGを使ったことは伏せたい」という理由で不許可となった。

こんなところにも、CGやVFXは映像のクオリティを向上させる必要不可欠なものではなく、CGやVFXを添え物としか見ていない現状がにじみ出る。映像にCG/VFXを使うことがそんなに恥ずかしいことなのか。まったく理解できない。制作現場だけでなく、映像をプロデュースする代理店関係者の理解も必要だということを痛感した次第だ。

映画、MV、PVの最新映像制作ワークフロー事例を紹介する。分野や制作規模の違いはあれど、いくつもの制約の中でワークフロー全体で制作効率を改善していくヒントが見え隠れしていると思う。参考にしてもらいたい。



[ Category : ]
[ DATE : 2009-09-30 ]
[ TAG : ]

この記事に関連する記事一覧

[VFX 2009]03:PV/ポップな演出をしつつ、機能をしっかり伝える映像作り

地上デジタル移行やBlu-ray環境など、ハイビジョンの視聴環境が整いつつある。CMなどは製作費の兼ね合いもあって、まだまだ移行が進んでいない状況もあるが、視聴環境が増えるに従って... 続きを読む

[VFX 2009]02:MV/フィルム撮影、ファイルベース収録を作品で使い分ける

MVやTV番組のタイトルパック、STATION IDなどを演出するディレクターの中には、自ら CGや合成、モーション・グラフィックス、編集を手がける人材が多くいる。現在活躍中の映像... 続きを読む

[VFX 2009]01:映画/フィルムワークフローを変えずにデジタル化

『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー/侍戦隊シンケンジャー 銀幕版 天下分け目の戦』絶賛公開中 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映 ©2009 テレビ... 続きを読む

特集記事

Camera Preview 2020 Camera Preview 2020
2019年から2020年春にかけて発表された話題の新製品やカメラシステムを紹介。
AfterCOVID-19 映像業界サバイバル AfterCOVID-19 映像業界サバイバル
社会的危機となっている新型コロナウイルス拡大の状況を分析し、今何が起こり、何が必要で、その後に何が訪れるのかを考えてみる。
Film Shooting Rhapsody 上映編 Film Shooting Rhapsody 上映編
16mmフィルムトライアルルームの荒木泰晴氏によるフィルム特集第2弾。今回はフィルム現像から紹介する。
再現:NAB2020 再現:NAB2020
米国ラスベガスにて開催予定だった世界最大の放送機器展覧会 2020 NAB Showでお披露目される予定だった内容を再現していく。
Film Shooting Rhapsody Film Shooting Rhapsody
16mmフィルムトライアルルームの荒木泰晴氏によるフィルム特集第2弾。
再現:CP+2020 再現:CP+2020
開催中止となってしまったCP+2020をPRONEWS誌面上で再現して行く。
CES2020 CES2020
米国ラスベガスで開催された世界最大の国際家電見本市 CES2020をレポート。
PRONEWS AWARD 2019 PRONEWS AWARD 2019
2019年は映像業界にとってどんな年だったのだろうか。PRONEWS AWARDで部門ごとに振り返る。
Inter BEE 2019 Inter BEE 2019
千葉幕張メッセにて開催される国際放送機器展“Inter BEE“をレポート。
InterBEE 2019の歩き方 InterBEE 2019の歩き方
今年もInterBEEの歩き方をジャンル別にピックアップし、6種類のコースを紹介。
Film Shooting Rhapsody Film Shooting Rhapsody
フィルム撮影の経験をしたい人に向けてフィルム撮影で必要な各種の工程について解説していく。
IBC2019 IBC2019
欧州最大の業務用映像・音響の専門展示会「IBC2019」をレポート。
新世紀シネマレンズ漂流 新世紀シネマレンズ漂流
シネマレンズを中心に一眼やミラーレスデジタルカメラの動画撮影機能と組み合わせて使われる交換レンズの最新動向を紹介する。
BIRTV2019 BIRTV2019
中国・北京の中国国際展覧中心で開催された展示会「BIRTV 2019」をレポート。
SIGGRAPH2019 SIGGRAPH2019
世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する学会・展示会SIGGRAPH2019をレポート。

トップ > 特集 > [VFX 2009]00:ワークフロー改善から生まれる映像品質の向上