2009年のカメラのトレンドは?

2009年のカメラのトレンドはなんだったのか?PRONEWSでもそのトレンドを追ってお伝えしてきた。では2009年を振り返ってみよう。

昨年からの流れで「RED ONE」の名前は、外せない。「4K」「モーションピクチャー」をキーワードに、静止画でも利用可能なクオリティを持ったデジタルシネマカメラとして新分野を切り拓いてきたと言える。4Kデジタルシネマが手の届くところに拓けてきたとはいっても、まだまだ敷居は高かった。そんななか登場してきたのは、動画収録機能付きデジタル一眼カメラだ。

2008年9月にニコンD90、11月にキヤノンEOS 5D Mark IIが相次いで発売となった。豊富で明るいスチルカメラ用交換レンズ群を使えることと合わせて話題になった。特に、EOS 5D Mark IIについてはフルHD動画収録可能なことから、2009年に入ってから各種制作用に活用され始め実績をあげてきている。この動画収録機能付きデジタル一眼の波は、2009年春に小型デジタルカメラであるフォーサーズやマイクロフォーサーズ機へも波及し、スチルユーザーによる動画収録への影響も大きかった。まさに2009年はデジタル一眼フルHDムービー分野が開花した1年といえるだろう。

2009年のビデオカメラは、ファイルベースへどう移行するのかを模索し続けた1年でもあった。2008年末に発売されたソニーHVR-Z5Jは、従来のHDV方式を採用しつつも、オプションのメモリーレコーディングユニットHVR-MRC1KでCF(コンパクトフラッシュ)カードにファイル記録を可能にすることで、既存のテープベース収録からのスムースな移行を促した。日本ビクターも、グローバルブランドをJVCに統一して、国内業務用カメラレコーダー市場に再参入した。新たに投入したファイルベースカメラレコーダーGY-HM100/GY-HM700は、SDHCカードにQuickTimeフォーマットかMP4フォーマットで記録できる。ソニーのXDCAM EXに使用されているMP4フォーマットのライセンス契約をした上で、記録フォーマットの選択を可能にしたことは、新たな取り組みと言えるだろう。

JVC以外にも、2009年はカメラコーデック面で市場の動きがあった。AVCHDである。ソニーが小型カムコーダー”まめカム”HDで採用したほか、パナソニックはAVCCAMラインアップを拡充した。メモリカードポータブルレコーダーAG-HMR10のオプションとしてコード取り外し可能なカメラヘッドAG-HCK10Gを加えるなど、小型カメラ分野ではAVCHDが標準となりそうだ。Inter BEE 2009では、ソニーがNXCAMを発表しており、HDV業務ユーザーの完全ファイルベースカメラ移行はAVCHDでなされる方向が見えてきたようだ。2009年の動向を受け早速今年のカメラ部門受賞製品発表をしたい。

txt:秋山謙一 構成:編集部

PRONEWS AWARD 2009カメラ部門ノミネート製品

  • キヤノン EOS 5D Mark II
  • ソニー HVR-Z5J
  • ソニー ”まめカム”HD
  • 日本ビクター GY-HM700
  • パナソニック AG-HMR10+AG-HCK10G

ノミネート基準と講評

「RED ONEが登場して、レンズとセンサー部と記録部を自分で選択してカスタマイズしていくような時代が来るかなとは思ってるんですよ。2008年にスポットを浴びた製品だけど、推したいな」

「撮影オプション製品にしても編集製品にしても、2009年に映像業界に波及効果をもっとも与えたのはEOS 5D Mark IIじゃないかな」

「デジタル一眼カメラで動画撮影ができて、作品として充分に成立できるということはすごいことだと思う。しかも、35mmフィルムのフレーム面積を大きく超える35mmフルサイズを使って、明るいレンズの被写界深度を活かせると言うのは、作品の幅を確実に拡げたね」

「あの価格で、しかも手軽に得られる画質の良さというのはありますね。30pだけしかなくて編集が大変だというのに、それでも!と皆が使うようになったことは評価されるべきですね」

「カメラレコーダーで選ぶなら、まだ発売されていないんだけど、XDCAM EX PMW-350Kを推したいなぁ。1/2型で実績を積んできたExmor CMOSイメージセンサーが、いよいよ2/3型になったということで、相当期待してます」

「すでに実績をあげていると言う意味では、HVR-Z5Jですかね。XDCAM EXで培ったExmor技術で1/3型センサーを開発してHDVに採り入れたというだけでなく、HDVのファイルベース化にも寄与しているし」

「ファイルベースと言えば、日本ビクターのGY-HM700で、QuickTimeとMP4のフォーマットを使えるようにしたり、SDHCカードとSxSカードを併用して同時収録したりというのは、一歩先を行く取り組みだったと思うよ」

「ソニーの”まめカム”HDはヘルメットカメラの定番としてAVCHDの活用シーンを拡げたけど、パナソニックのAG-HMR10+AG-HCK10Gもカメラヘッドに手振れ補正を入れたことで評価したいな。ケーブル交換可能なので、今後にも期待できそう」

など意見が交わされ、カメラ部門受賞製品発表である。

PRONRES AWARD 2009カメラ部門受賞製品発表

カメラ部門
ゴールド賞
EOS 5D Mark II

キヤノン

prn5dmrk2.jpg

キヤノンが初めて動画収録機能を搭載したデジタル一眼カメラ。約36mm×24mmサイズのイメージセンサーは、これまでの35mmフィルムキャメラのフレームサイズを凌ぐ。この広い撮像面積と、明るい開放F値を持つ豊富なEOS交換レンズを組み合わせることにより、誰もが手軽に被写界深度の極めて浅いシーンを撮影することが可能になった。動画用カメラとしては荒削りな部分はあり、オールマイティには使用できないこともあるが、『デジタル一眼フルHDムービーここにあり!』と高らかに宣言し、コンシューマからプロフェッショナルまで、カメラ機材から編集ワークフローまで、幅広く影響を与え続けた。

カメラ部門
シルバー賞
HVR-Z5J

ソニー

HVR-Z5Jmark2.jpg

ソニーがXDCAM EX PMW-EX1/PMW-EX3で成熟させてきたExmorイメージセンサー。この技術を使用して、1/3型センサーを新開発。ついにHDV領域にも使用し始めたのがHVR-Z5Jだ。レンズのズーム範囲を広角側に振って29.5mmからの20倍ズームにしたり、素早いズーム操作を可能にするハイスピードモード、真円に近いボケ味が得られる6枚羽絞りの採用など、実際の収録に即した改善もなされている。オプションのメモリーレコーダーユニットHVR-MRC1Kを使用することで、HDVテープへの収録と同時にCFカードにもファイル記録できるため、テープをバックアップアーカイブ用としながら、ファイルベース収録へも移行できる可能性を拡げた。

総括

キヤノンEOS 5D Mark IIの登場は、かつてないほどの市場活性化をもたらした。確かにRED ONEはデジタルシネマへの道を拓いたが、5D Mark IIは、H.264/30p映像+リニアPCMというプロ市場にない記録方式ではあったが、既存のノンリニア編集システムやワークフローを変更してまでも、プロ市場で受け入れられたという事実は特筆すべきことだろう。EOS 5D Mark IIはコンシューマ機でありながらも、映像業界に多大な影響を与え続けたと言っても過言ではない。プロ機材だから、業務に耐えうる性能や機能を持っている必要はあるが、使おうとする人に「これを使えば、素敵な作品が撮れるんじゃないか」と夢を与えられる存在だったこと。文句なしのカメラ部門ゴールド受賞だった。

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