txt:岩沢卓(バッタネイション)

Ustreamを中心に盛り上がりを見せてきたネットライブ配信。この記事を読んでいる方でも、ライブ中継の相談を受けることが多くなっているのでは無いだろうか?地デジ対応、ブルーレイディスクでの納品、はたまた3D収録など、高画質化の進む映像業界の中で、今までの映像制作のノウハウを用いながらネットライブ配信時代に対応して行くための方法について書いてみたいと思う。

Ustreamライブ配信の肝は音声

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画面に集中して視聴する映像コンテンツと違いライブ配信はインターネットブラウザソフト上で視聴されることが多く常にパソコン画面の全面に来ている訳ではない。そこで、ラジオを制作するような心構えで配信準備をすることが重要だ。基本は映像制作時の集音/録音作業と同様な作業と考えてもらってかまわない。さらに音に関しては、Vol.00を参照していただきたい。

収録用のガンマイクやインタビューマイクを効果的に使用することで、安定した音声の送出が可能になる。PCにリアルタイムで読み込む必要があるため、USBやFirewire対応のオーディオインターフェイスを用いて音声を取り込むようにしたい。その際に、インターフェイス自体にレベルメーターが付いているタイプの製品を選択することで現場での状況把握を容易にすることが出来るだろう。

送出画質は、SDで決まり!

SD用ビデオスイッチャーによるUSTREAM中継。Numark-avm02ビデオオーディオ兼用のミキサー

さて、Ustreamは音が大事と行っても、画と音があっての映像、筆者が考える、Ustreamなどのネットライブ配信で最低限必要とされる画質は「ワンセグ相当」である。ワンセグ画質を一つの基準としつつ、機材や回線の状況に応じてSDでの高画質配信、HD配信などへとステップアップして行くのが良いだろう。

ネットライブ配信の主流はSD画質、配信PC/カメラなどの機材、配信ソフトもHD対応しているものが多いが、視聴環境が様々(iPhoneなどのスマートフォンやネットブックなど)な現状ではSD画質での安定した配信を目指すのが、良いだろう。 最終的な送出画質の設定は、通信回線の太さ、PCの処理能力にも左右されるものなので業務でネットライブ配信を請ける場合には、現場の通信環境に対しての事前調査が必要になる。

SD画質での送信を目指すべき、と書いたが 実際のところ、制作/収録はHD。ネットライブ配信はSDという場合が多い。実際の現場ではフォーマットが混在している事が多いのだ。そこで、筆者はRoland VC50-HDのようなコンバーターを用意して対応するようにしている。特に、HD収録チームが既に組まれている現場にネット配信チームとして招聘された際には、収録班からは、HD-SDI出力を受け取り、送出用にIEEE1394やHDV形式などのフォーマットでPCに入力をするなどといった対応が必要になる。HD環境との共存をしていくことが、ネットライブ配信における、これからの課題となってくるだろう。

ライブ配信の前に回線のチェックが重要

自宅やオフィスからのネットライブ配信であれば、トラブルは少ないだろうが業務での案件となると、会場へ機材を持ち込んで配信を行うことが多くなる。映像” 音響機材の接続に関していえば、イベント収録のノウハウがそのまま役に立つ。そこに、ネット回線とPCへの接続が必要になる。いくらきれいな画質、滑らかなカメラワークを行ったとしても、ネットワークのトラブルが起きてしまうと、配信を行うことができない。

可能であれば、事前に会場のロケハンをした際に回線速度をチェック出来るサービスなどをそれらのサービスを利用して、現場の回線状況(特に上りスピード)を確認しておくとトラブルを防ぐことが出来るだろう。

PCとカメラの接続方法について

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USB/IEEE1394/HDMI/HD-SDIなど、カメラからの出力形式は様々あるがSD画質で安定して送出するという点では、IEEE1394を使用して接続するのが現時点でのオススメできる方法である。カメラからDVスルーが出る現行機種は少ないが、ケースに入れっぱなしだったDVカメラを活用している人も多い。

現行機種では、SONYのHDVラインナップやPanasonicのAG-HPX175などがIEEE1394端子を装備したカメラになっている。カノープスから出ているDVコンバーターを用いることで、ビデオミキサーを使用してのマルチカム配信や、DV端子を持たないカメラを使用することも可能になる。

映像表現としてのネットライブ配信

Ustreamの普及には、Twitterとの連動によって、視聴者が参加出来るようになったことが大きく関わっているといえる。Twitterのタイムライン(Ustream配信画面ではSocialStream)上の反応を見ながら、リアルタイムで中継内容を変化して行くことがポイントとなってくる。

中継したものは、サーバに録画することでアーカイブとして公開も出来るのだがタイムラインを一緒に保存することは出来ない。そのためアーカイブ視聴をメインするものであれば、Ustream Producer PROのタイトル機能で状況を説明したり、出演者がタイムラインのコメントを読み上げるなど、映像のみでも状況が伝わるようにする演出が必要となるだろう。また、タイムライン上からの質問やコメントに、フレキシブルに反応出来るよう意識してセッティング場所などを検討することも必要になってくるだろう。このあたりは従来の映像業界にはないタスクであることはいうまでない。