時流に合わせて進化する三脚・特機の傾向とは?

三脚・特機市場の今年の傾向として最も顕著だったのは、DSLR(デジタル一眼レフカメラ)ムービー市場への各社の注力度合いだ。面白かったのは、ビデオ三脚メーカーやビデオバッグのメーカーまでが”DSLR専用”と言わんばかりのネーミングで製品を送り出して来たことだ。このDSLRムービーブームに牽引されるカタチで、ハイエンドなプロ映像専用だったザハトラーやオコーナーといった有名三脚メーカーも小型のビデオ三脚に力を入れ、またステディカムや新しいミニジブなど小型カメラ用の特機も数多く出てきたことも今年の大きな流れだったように思う。実際にDSLR関係の周辺製品も数多く出て来たが、中でもプロ機材ドットコムのEOS 5D markⅡ用ムービーリモコン「REC-R1」は、これまで背面ボタンでしか出来なかったムービーのREC ON/OFFを、アクセサリーシューに送信機をセットしてスイッチをDSLRリグのグリップ等にセットするだけでリモートコントロールできる安価で使える優れものだ。

ビデオ三脚では、ザハトラーのビデオ 18S1/20S1やヴィンテンからも「Vision Blue」シリーズなど新たな小型カメラ向けのラインナップが出て来た。マンフロットからは新設計のバリアブルフリクションや新しい独自の特許技術”ブリッジング・テクノロジー”を採用したフルーイド雲台の新製品「504HD」に注目が集まった。

国産メーカーからは一昨年に発売されたLibec(平和精機工業)のRSシリーズが依然として人気が高く、低価格でありながら高い品質と無段階カウンターバランス構造や-40℃までの寒冷地仕様など、シンプルかつ最大公約数のプロ機能装備がユーザーからの好評を博しているようだ。

ユニークだったのは、キヤノンがInter BEE 2010で発表した、放送用レンズ用のワイヤレスレンズコントロールボックス「WB-10T/WB-10R」で、Bluetooth2.4GHzを採用したレンズのワイヤレス遠隔コントロールシステムは、最大10mというアイディア製品だが、放送局などでも小型化が進む現在では、今後多く求められるソリューションとして注目だ。また海外製品からもポーランドのFloatcam社から出てきたドリーとクレーンの両方の機能を持つその名も「DollyCrane(ドリークレーン)」は、こちらもアイディア商品だが、これまでのミニジブやミニクレーン、もしくはドリーだけでは得られなかった変わったアングルが得られる等、小型化するカメラに追従するカタチで、これまでに無かったユニークな撮影が実現出来る機材が出てきた。

txt:石川幸宏 構成:編集部

PRONEWS AWARD 2010 三脚・特機部門ノミネート製品

  • Libec RSシリーズ
  • ザハトラー ビデオ 18S1/20S1
  • ヴィンテン Vision Blue
  • キヤノンWB-10T/10R ワイヤレスレンズコントロールボックス
  • プロ機材ドットコム REC-R1 EOS 5D markⅡ用ムービーリモコン
  • Flatcam (ポーランド製)DollyCrane

ノミネート基準と講評

「LibecのRSシリーズはRS-250が出て、ますます低価格ながら高機能が受け入れられて売れ続けているので、スタンダードなビデオ三脚として定着しそうだ」

「DSLRムービーに関する周辺機器は本当に国内外取り混ぜて沢山出ているが、REC-R1などの基本機能をサポートしてくれるものが一番重要」

「カメラの小型化に併せて、撮影方法なども様々なスタイルがとられるようになったのは、ベータカムからDV化が進んだときなど、これまでの映像撮影の歴史と同じ。現在で根本的に違っているのはそれがファイルベースであるということだ」

「国内製品と海外製品の差異は無くなって来ているので、問題はサポートやメンテナンスといった体制が求められてくるだろう」

「中国、台湾、韓国製品も三脚メーカーや特機製品では充分に使える面白いアイディア製品が多々出て来ており、今後の市場活況が楽しみだ」

「来年はDSLRに加えて、パナソニックAG-AF105やソニーPMW-F3などの大判センサービデオカメラの周辺機器や三脚、特機も充実してくるのではないか?」

PRONEWS AWARD 2010 三脚・特機部門受賞製品発表

三脚・特機 部門
ゴールド賞
Libec RSシリーズ(RS-250)
平和精機工業
rs_serieso.jpg

昨年に続いての連続受賞。無段階カウンターバランス構造や、黒い筐体色など外観デザインが一新されただけでなく、新設計のトルクシステムを採用することで、パン・ティルトともにフリーおよび3段階の切り替えを実現した。操作フィーリングや耐寒性能に大きな影響を及ぼすグリースも新たなものを採用、−40℃までの耐寒冷地仕様となっている。これまで海外製品に比べて劣っていると言われていた高機能性を克服&実現しつつ、コストパフォーマンスの良さを実現したのが一番の魅力。特に今年登場したシリーズ最小のシステム、RS-250が受賞対象製品。

三脚・特機 部門
シルバー賞
WB-10T/WB-10R ワイヤレスレンズコントロールボックス

キヤノン

WB-10R.jpg

テレビ制作における三脚撮影時や、スポーツ中継で野球場やゴルフ場などでの三脚撮影から担ぎの撮影に移る際に、ケーブルなしでレンズのコントロールができるワイヤレスコントロールシステム。コントローラーの送信側<WB-10T>とコントロールする放送用レンズの受信側<WB-10R>をそれぞれ設置することでレンズの遠隔操作を実現した。混信に強いBluetooth2.4GHz帯を採用、スタジオ収録でのクレーン等での使用でも安心して使用出来る。単三電池2本で最大80時間の連続使用が可能。

総評

小型軽量化したカメラシステムの性能をどこまで助長できるかがこの部門での選出で一番着目したところだが、Libecの三脚RSシリーズは、これまでの日本製三脚には劣っていたと言われていた部分を克服しつつ、コストパフォーマンスの高い価格帯が魅力であり、すでに発売から2年経過しているにもかかわらず、多くのユーザーに受け入れられている。キヤノンのWB-10T/WB-10Rは、制作費削減やカメラの小型化、1台のカメラの多用途使用など、効率化が求められる現場で、非常に使い勝手のある細かいソリューションをレンズメーカー自らが手を差し伸べたところを評価したい。その他の製品もユニークな製品、新たなアイディア製品もあり意見の別れるところだが、どちらも地に足の着いたユーザーフレンドリーなソリューションという点を受賞の決め手とした。