入出力が多様化してきた時代に押さえておくべき変換・コネクターとは?

周辺機器や特機の一製品として片付けられてしまうこれらの機材が、DSLRムービーなどの流れから非常に重要なポジションになっていることを周知したいところもある。あえてこの部門を今回設けたのはそういう理由もある。コンバーターとかコネクターといったものはあって当然、まともに動いて当然なのだが、これほどまでに入出力が多様化してきた時代においては、ここの機能や精度が撮影画像、さらには作品の品質に大きく関わってくる。またこれまでの方式変換だけではない、映像リソースを色々と違ったメディアへ統合変換するというようなマルチコンバーター+α的な要素を持った面白い製品が出て来たことにも注目した。

ローランドのVR-5は今年最も映像業界を震撼させた新たなメディアであるUSTREAMやニコニコ動画といったライブストリームへの変換機能を集約した全く新しいコンセプトの製品だ。AVミキサー&レコーダーという名で出されているが、USTREAMやニコニコ動画などへの配信で一番皆が悩む所は映像と音声のミキシングとそのストリーム変換である。このVR-5が画期的なのは、そのすべてを簡単にワンマンオペレーションで出来てしまうところであり、スイッチャーとオーディオミキサー、レコーダーを1台にまとめたまさにパーソナルブロードキャストキットだ。

純粋にコンバーター製品という意味では、EOS 5D markⅡでムービー撮影をする際に、現場でのモニタリングには当たり前のようにブラックマジックデザインのMini ConvertersHDMI to SDIを使っている。一体どれだけの人が何台使っているのか?相当の数のこのコンバーターが出回っているはずだ。これ無くしていまのDSLR市場は語れないと言っても過言ではない。またこれに付随したアイディア製品が出て来た。Redrockmicroのリグなどを扱っているライトアップから、DSLR周りのコネクティングを整理出来る業務用バッテリープレート「BP-V3」だ。カメラの電源供給用8Vカプラーに、14Vのモニター用スルーアウト、さらに12VのMini Converters用ミニピンがVマウントのバッテリープレートに仕込まれており、各機材へ一度に電源供給できる上に差し込み間違えしないような配慮がされている優れモノだ。

変わった所では高価な製品になるが日本ビクターが出した業務用3Dイメージプロセッサー「IF-2D3D1」。2D画像を3Dにリアルタイム変換するコンバーターとしてNABショーなどでも話題になった製品。実際にこれを使った映画作品が上映され始める等、今後も広く3D市場で活躍しそうな製品だ。

txt:石川幸宏 構成:編集部

PRONEWS AWARD 2010 変換/コネクター部門ノミネート製品

  • ブラックマジックデザイン Mini Converters /HDMI to SDI
  • ブラックマジックデザイン Intensity Pro/Shuttle
  • ローランド VR-5
  • 日本ビクター IF-2D3D1
  • ライトアップ BP-V3

ノミネート基準と講評

「変換コンバーターやコネクターといった製品は、その品質とともに正確に動くことが重要」

「IF-2D3D1は、リアルタイムで3D変換できるコンバーターとして凄い機能を持っている。ポストプロダクションでの制作もあるがライブ3Dとしての需要も考えられる」

「Mini Converters HDMI to SDIをよく電源を間違えて飛ばす人が多い。そんなときにBP-V3との連携はありがたい」

「ブラックマジックデザイン製品の中で最も売れているモニタリング需要のコネクター製品としてIntensity Pro/Shuttleがある」

「VR-5で、これまで個別だった映像スイッチャーやオーディオミキサー、レコーダーが一体化し、そしてUSB入力も可能となった。操作もワンマン・オペレーションが可能。ただしそのオペレーションに慣れる時間は必要だろう」

PRONEWS AWARD 2010 変換・コネクター部門受賞製品発表

変換・コネクター 部門
ゴールド賞
VR-5
ローランド
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ライブ放送/収録に必要な機能をコンパクトに凝縮したAVミキサー&レコーダー。マイクやビデオ・カメラを接続するだけで、すぐに放送/収録が可能、しかも多彩な演出を一人で実現できる。豊富な機能をシンプルで直感的な操作で実現するデュアル・タッチモニターを採用。「ピクチャー・イン・ピクチャー」や「キー合成」などで多彩に演出した音と映像は、ワンタッチでSDカードに録画可能。パソコンでの管理や配布が簡単にできる。AVミキサーとしては世界初の「USB AV出力」を装備。USBケーブルでパソコンと接続し、手軽にライブ配信を実現する。この年末に来て、多くの人がコレだ!と思った新製品。来年からUSTREAMなどライブ配信現場では必需品となってくる可能性は高い。

変換・コネクター 部門
シルバー賞
Mini Converters /HDMI to SDI
ブラックマジックデザイン
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Mini Converters HDMI to SDIは、HDMI、バランスAES/EBUもしくはアナログオーディオ入力から選択してSDIエンベデットオーディオへ変換でき、HDMI接続に対応したカメラにSDI出力を加えたり、DVI―HDMIアダプタ経由でHDMIに対応できるPCに SDI出力を加える事も可能。また、ハードウェアダウンコンバーターを搭載、HDMIビデオとSD-SDI機器を接続できる。特筆することはほとんど無いシンプルなコンバーターではあるが、今やDSLRムービー撮影現場の必需品。

総評

変換・コネクターという部門から些か逸脱した感もあるVR-5だが、間違いなく今年話題の映像関連製品であることに変わりない。VR-5をこの部門賞のゴールドに選出することには異論反論もあるとは思うが、既存のAV信号を一気にまとめて、ライブストリームという新たなメディアへ変換できてしまう、この製品が持つ”大ワザ”的なポテンシャルは、かなりセンセーショナルだったと言えるだろう。来年1月の発売以降、このVR-5を使ったライブストリーム放送がどのような進化を遂げるのかも気になる所だ。Mini Converters HDMI to SDIに関しては、これまで3年間のDSLRムービーブームの立役者としての、功労賞的な受賞であるが、EOS 5D markⅡ本体とともに、いまだこれに変わるものが少ないというのは優秀な製品である証でもある。