3D映像再生のための3つの基本条件

現在3D映像の最大の問題点である視聴と配信に関する環境については、今後さらなる進化が求められる部分でもある。再生と配信技術の行方によってステレオスコピック3D映像制作の未来が大きく左右されるからだ。

今さらながら基本的なことではあるが、3D映像の再生のための3つの基本条件、そして上映(視聴)ための4つの方法を確認しておきたい。1つ目は『同期再生』で、左右の映像データを常に同じ時間軸で同期再生すること。サイド・バイ・サイドの場合は左右のデータが同梱されているので問題ないが、その他の方式では左右データが別途に存在するのでそれをいかに同期させるかが問題となってくる。MVCの形式でもフレームパッキングされている状態なのでこの同期は確保されるので再生には向いている。

2つ目として左右の映像は必ず分けて上映されなければならない『分離上映』。さらに3つ目として左右に分けられた映像を左右の目にそれぞれの画のみが再生されるようにする『排他視聴』がされなければ3Dとして映像が見えてこない。この為に3Dグラスが必要になってくる。これら3つの条件が揃わなければ3Dとしての再生ができない。

3D映像再生のための3つの基本条件

  1. 『同期再生』
  2. 『分離上映』
  3. 『排他視聴』

3D映像の視聴方法

次に3D映像の視聴方法としては、4つの方法があることを確認しておこう。1つ目は偏光方式=パッシブ方式と呼ばれる光学的に左右の映像を分けて排他的に分離した映像見る方法。左右に直線偏光(劇場などの大型スクリーン)や円偏光(3DPCモニターなど)などの偏光フィルムを当てて見る方式。この方式の長所としては3Dグラスの値段が安いことが上げられ、短所としては視聴する光軸が曲がる(身体を曲げたりする)と3Dに見えないなどの欠点がある。

もう一つはアクティブシャッター方式で秒間120コマのスピード左右の映像がシャッターによって切り替えて排他視聴する方法。これは3D液晶TVなどに用いられている方式で、長所は視野角などに影響されずに完全同期されて視聴できるが、短所としては赤外線による感知によってシャッターが起動しているため、スクリーン側から発射される赤外線を遮断されると視聴できないことと、専用3Dグラスの単価が高額になる。

3つ目は昔からあるアナグリフ(パッシブ)方式。左右に赤青のフィルムを貼ってある、あの”3Dメガネ”によって視聴するもの。最近になってまた見直されて来た方式であり、YouTubeの3D視聴などでも用いられている。光の成分であるRGBの内、R(レッド)を左目で、GB(グリーン&ブルー)を右目に分解して視聴する。

最近出て来た方式としてもう一つあるのは裸眼視聴方式。以前からあるレンチキュラー方式と、最近用いられているパララックスバリア方式の2つがある。レンチキュラーの3Dディスプレイは、細長いカマボコ状の凸レンズが無数に並んだシート(レンチキュラーシート)をピクセルの列に一致させ、一列おきに画像を表示する構造。パララックス(視差)バリア方式は通常の液晶画面の前に数ミリ間隔の網目状フィルタ(パララックスバリア)を配置して、左右の目の各々からしか見えない映像を分離して見せる方法で最近ではこの方法が良く用いられているようである。裸眼方式ではどちらも視野角が制限されるので個人視聴の場合等に適していると言える。

3D映像の視聴方法

  1. 偏光方式=パッシブ方式
  2. アクティブシャッター方式
  3. アナグリフ(パッシブ)方式
  4. 裸眼視聴方式(レンチキュラー方式/パララックスバリア方式)

3D視聴/配信方法の現状と未来

YouTubeでのS3D例。自由に視聴方法を変える事が出来る

これらの標準の再生方式と視聴環境を考慮した上で、何で上映し視聴させるかがこれまで非常に問題であった。しかし最近ではYouTubeでの3D視聴が非常に汎用的かつ有効な手段としてメジャーになりつつある。また最近ではアップロードにおける詳細な設定も非常に簡単で判りやすくになった。制作者は3Dデータをサイド・バイ・サイド方式でアップロードさえしておけば、視聴者がYouTubeプレイヤー側で自由に視聴方法を選べるので、3D視聴にはいま最も有効な視聴方法だといえる。

Stereoscopic 3D用のチャンネルも用意されている。https://www.youtube.com/3d

YouTubeの3Dタグ設定

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またパッケージメディアとして配信では、3Dブルーレイがあるが、現在標準的な方法としてはAdobe PremiereやAfter EffectsなどからH.264/60iのブルーレイを作ることが可能だ。今後注目される方法としては、MVC方式による3Dブルーレイという方法も今後は検討項目になってくるだろう。ただしMVCの規格上、24p映像までしか3Dでのエンコードができない。この条件からも『HXR-NX3D1J』で24p撮影が可能になったことは非常に有効な機材だといえる。また現状ではMVC方式をブルーレイ化するためのエンコードができるNLEはVegas Pro 10.0eしかないため、今後MVC方式に各種NLEが対応し、3Dオーサリングができるようになれば、ますます3D映像の汎用的な活用が広がるだろう。


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