txt:石川幸宏 構成:編集部

神は細部に宿る。見逃せない周辺機器たち

ここまで2年以上のDSLRムービーブームを起点に、従来からの既存メーカーから、スチル系製品メーカー/販売店も含めて一大市場を作り上げてきた撮影ガジェットの世界。もちろん今年のIBC2011でもそれらのメーカーが各国から数多く参加していたのは当然だが、カメラリグや周辺パーツ、ジブ、クレーン、スタビライズといった製品は堅牢性を高める等の細かいバージョンアップやパーツが増えたなどのマイナーチェンジはあっても、さほど大きな変化は見られない。気になったのは、この世界の牽引役であるRedrock Microが唯一有名メーカーとしては展示参加していなかったことぐらいで、他はそもそもキヤノンのEOS 5D MarkⅡをはじめ、デジタル一眼レフや小型ビデオカメラも大きく進化した訳でもないので、周辺ツールの進化も一時停滞している感もある。

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その中で注目だったのは三脚だ。6月にすでに発売され注目を集めているマンフロットの『050 PHOTO-MOVIE HEAD』。このマグネシウム製フォト/ムービー雲台は、DSLRムービーに最適化された雲台で、高性能なフォト雲台機能と、パン/チルト等のビデオ雲台的動きを、一つの雲台で操作することができる。またフォト/ムービーセレクターにより、静止画撮影と動画撮影の切り替えが瞬時に行える。フォトモードでは、ボール雲台同様全方向にすばやく自在に動かせ、ビデオモードではフル装備のビデオ雲台となり、パン、ティルト方向に正確で滑らかな動きが可能。パンハンドルは左右の手で操作できるリバーシブル仕様などきめ細かい仕様が嬉しい。

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ザハトラー、ヴィンテン、オコーナーなどを抱えるVITECグループは、大きめの三脚製品も一部展示はあったものの、展示紹介の中心は小型三脚だ。最も注目を集めていたザハトラーの新製品『ace』は先のマンフロット製品に対抗する小型三脚で、DSLRにも小型ビデオ(AG-AF105程度まで)にも使用可能で、アルミニウム切り出しで従来の同クラス製品より30%も軽量化を実現。驚くのは価格で、ザハトラー製品ながら専用ソフトケースとペデスタルも付いて€540(約5万8千円)。これまでの同社製品の志向性では考えられない価格帯に周囲の同業メーカーも戸惑うばかりだ。

次代を担う新興勢力の台頭

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こうした価格競争に拍車をかけているのが中国などの新興国メーカーだ。E-IMAGEは昨年頃から各展示会に進出してきた新興メーカーだが、実はこれまで多くの有名三脚メーカーの下請け会社として慣してきた実績のある2006年に設立した中国メーカー、Ningbo Eimage Studio Equipment Co., Ltd.が母体。いまや従業員2000人以上、年商1000万米ドルとも言われるこの企業が満を持して自社ブランドとして名乗りを上げたのがこのE-IMAGEだ。こうしたノウハウを積んだ中で安価でしかも使える製品を出してくるメーカーの登場により、今後は三脚業界でも更なる市場激化と個性的な特徴が求められてくる時代になってきた。

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その他、変り種としては、今回初出展のエストニアの企業”KINOTEHNIK(頭のKが反転)”のEVF『LCDVF e』。筐体横に直感的に操作可能なコントロールボタンが配置され、ピーキングなどのフォーカスアシスト機能やゼブラ表示、ピクセルズームなどを操作できて、11月発売予定で€650(約7万円)。またオプションではUSBリモートジョイスティックなども用意されるという。

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日本から参加の”プロ機材ドットコム”。製品のベースは中国、インド、中東を始め世界各地で製作しているが沖縄本社内の工房でひと手間加えてプロ仕様に耐えうる製品に仕上げているのもこの会社の特徴だ。今回は最下位置からのアングル撮影も可能な手動撮影サポートツール通称『クイックルワイパードリー』や、またiPhoneでのムービー撮影用ミニクレーンなども展示。

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イギリスは南部サザンプトン近郊に本社を構えるTELETEST社のモニター『CYCLOPS HD』は、世界一(同社調べ)明るい7インチのLCDモニター。日照下でも高輝度で鮮明に画像を映し出す。アナグリフ方式で3D撮影にも対応。

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昨年登場したポーランドの”DollyCrane”。そのドリーとクレーンを併せ持つユニークな機能発想が今年のNABでも数々の賞を受賞している。従来機が12kgまでのカメラ重量対応だったのに対し、32kgまで対応できる新ラインナップ『DollyCrane HD』を発表。ブラックマジックデザインからもNABで発表された、HyperDeck Shuttleをカメラに直接マウントしたり、V-マウントや Anton Bauerマウントなどのアクセサリーを HyperDeck ShuttleにマウントすることができるHyperDeck Shuttle Mounting Plateを€69(約7500円)で発表。

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また撮影ガジェットではないが、カラーグレーディング流行でひと際人気を呼んでいる低価格のカラーコントロールサーフェス『WAVE』のtangent wave社から新製品『element』が登場。3つのトラックボールを配列した『3U Tk』、12のプログラムボタンと1つのトラックボール、その他アディショナルボタンを配置した『2U Mf』、12の自由にプログラム可能なノブを配置した『1U Kb』、12の自由にプログラム可能なボタンを配置した『1U Bt』。この4つのコントロールパーツを設置スペースなどの使用環境やユーザーの好みに応じて、自由に配置アレンジできるユニーク&シンプルなデザイン。


Vol.03 [IBC2011] Vol.05