2011年のオーディオについて振り返る

ビデオの世界ではまだ圧縮フォーマットがいくつかあり、収録から編集まで一貫したフォーマットが定まっていない状態だ。オーディオの世界ではすでに非圧縮フォーマットであるPCMが当たり前になっており、小型レコーダーでもこうしたフォーマットに対応している。オーディオはある意味完全に成熟しきった世界ともいえるが、ビデオとは違ったニュアンスを求められたりもする。

最近ではビデオの業界でもボケ味とかレンズの描写を評価するユーザーも増えているようだが、オーディオの世界では以前からこうした傾向があり、多少の部品の相違があるにしろ同じ型番のマイクが現在でも販売されておる。ビデオの業界でもおなじみのMKH416なども一時期後継機種への移行をメーカーが考えていたようだが、こうした事情により今でも販売が続いている。オーディオの歴史がビデオでも継承されるかどうかわからないが、名器といわれるレンズが蘇ることもあるかもしれない。

とはいえ、新たなテクノロジーにより開発され新製品として発売されるマイクロホンやオーディオ機器もあるわけで、収録など制作の現場の実態を反映した製品も数多く存在する。ミキサーは3-4chのポータブルタイプのものが以前からビデオ収録で使われてきたが、レコーダー機能がビルトインされたり、小型ビデオカメラ用に小型化されたミキサーが開発されてきた。最近ではDSLRによる音声収録も視野に入れた機材も登場しており、マイクやミキサー、レコーダーなどの新製品が注目される。

小型レコーダーはマイク内蔵型の2chタイプの製品がソニーやローランド、タスカムなどから発売されているほか、4chを超えるレコーダーも海外製品を含め多数存在する。サラウンド収録では最低でも4ch収録が必要といわれておりこうした方向性の製品もよりリーズナブルな製品が登場してきている。

PRONEWS AWARD 2011オーディオ部門ノミネート製品

  • アツデン デジタル一眼用マイクミキサー FMX-DSLR
  • ソニー デジタルワイヤレストランスミッター DWT-P01(国内未発売モデル)
  • タスカム ポータブルレコーダー DR-100MKII
  • ローランド ポータブルレコーダー R-26
  • ビーチテック デジタル一眼用オーディオミキサーDXAシリーズ

何が受賞するのか…?

PRONRES AWARD 2011オーディオ部門受賞製品発表

オーディオ部門
ゴールド賞
R-26
ローランド
05_audio_r26_gold.jpg

通常のステレオ収録だけでなくサラウンド収録のためのレコーダーも手軽に使える製品が出現し、マルチ収録にも以前より簡単に対応できるようになった。ローランドR-26は2chの収録用のマイクロホンを装備しているほか、24ビット96kHzリニアPCM収録が可能なレコーダーとなっている。マイクは2種類のステレオマイクで構成されており、外部入力用としてキヤノンコネクターを2基装備。PLUG INマイク入力(ステレオミニ)と合わせ最大6ch(3ステレオ)の収録ができる。2秒間さかのぼって記録が可能なプリレコーディング機能なども備えており、性能や機能だけでなく、失敗のない録音が可能だ。

オーディオ部門
シルバー賞
FMX-DSLR

アツデン

04_audio_ATZ_silver.jpg

DSLRなども制作現場によっては使われ始めており、そうした機材へ対応したオーディオ機器としてアツデンFMX-DSLRは開発されている。カメラの底部に装着して使用できる2chのミキサーだが、ファンタム電源や音声モニター、RCAピンコネクターによるリターンモニター入力、ピークインジケーター、ヘッドホンアンプなどを備えている。また、単なるミキサーというだけでなくデジタル一眼に特化した機能としてカメラ側のAGCを無効化する機能が搭載されており、より現場的に使い勝手の良いものとなっている。発売は来年だが、デジタル一眼でもマニュアルで音量調節ができるほか、バスパワー電源を使わない業務用のマイクなどを使用することができるようになる。

総括

オーディオ機器は性能だけを見るとほとんど甲乙付けがたい状態になっており、通常のビデオ制作においてはどれをとっても不足がないといえる。そういう状況の中でも様々な製品が開発され世に出てくるのは性能では推し量れない味とか質の問題であったり、制作環境に合った製品が次々に開発されてくるからであろう。ビデオ制作におけるオーディオは、とかく二の次になりがちだが、撮影の段階できちんと音声が収録されていることは重要である。今までは音声クルーがいてこうした音声収録を行っていたが、小型ビデオカメラが普及し、カメラマンが全てを行わなくてはならないことも多くなってきている。音声収録にはそれなりのテクニックが必要だが、簡単に失敗のない収録が必要な現場も少なくない。ローランドR-26はマルチチャンネルの収録を手軽に行える製品として金賞を、アツデンFMX-DSLRは、今まで問題になっていたデジタル一眼の音声収録を解決できるミキサーとして銀賞に選択した。


Vol.03 [PRONEWS AWARD 2011] Vol.05