今回の座談会は、何らかのかたちで4K制作の経験のある各方面の方たちを招聘し、制作サイドから見た4K制作について現実的なワークフローが組めるのか、欠落している製品や技術、人材などの問題点について製作者の現実的な視点で語っていただいた。4Kはスチール、ビデオ、ムービーといった業界から様々な4K商品が市場に出ているが、この座談会をきっかけとして映像制作全般にわたり、新たな進展を期待するものだ。これまで数回にわたってHigh Resolution!と題してお送りしてきたが、今回を一区切りとして、来るべき高解像度時代に備えなければならない我々の総括としたい。

Chapter0: イントロダクション

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出席者(写真左から・敬称略)

鈴木:今回の座談会では、4Kに関わりのある人達をお呼びしています。まず最初にそれぞれの4Kの経験について話していただきましょう。ではまずは、宮本さんから。

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株式会社スタジオディーン 宮本 逸雄氏

宮本:スタジオディーンの宮本です。通常弊社は手でアニメを描くという仕事をしています。TVアニメーションで多くの観客を表現する為に3DCGを利用する仕事がありまして、その時はHD解像度での仕事がやっとでした。その画像を4Kで焼き直しをして、シンポジウムで上映することとなり、とりあえず始めての4Kを行いました。上がった映像は非常にクリアで面白く自分も感動するようなクオリティだったんですけど、あまりの大変さに、正直二度とやりたくはないなっていう印象です(笑)。あの当時は、4Kのチェックは、部分的にしかできないし、4Kから2Kにするにも結構手間なので、かなり厳しかったですね。

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CLIPSTER はProResからdpx、RED EPIC5Kまで様々なフォーマット、解像度に対応しており、カラコレや編集、字幕入れ等のDI作業を行うことができる

4Kの部分に関しては映像機材の代理店にご協力を依頼して、4Kでチェックさせてもらいました。CLIPSTERでしたっけ、そこで初めて見て、気づくものがあり、永田町から吉祥寺まで戻ってリテイク作業をするというのが終盤に続きましたね。制作予算がない状況でして、色々な方々にご協力をお願いしながらのプロジェクトだったので、正直予算のある仕事以外ではあまりやりたくないなというのが感想です 。でも、4Kで上がった映像はすごく綺麗でしたね。それだけはいえます。

鈴木:CLIPSTERで再生して4Kのスクリーンで観たんですか?

宮本:DCエキスポで使ったものなんですけど、ソニーの4KプロジェクターSXRDでした。良いプロジェクターだと幸せになれる感じがしましたね。やったのは2年前くらいです。

鈴木:それでは次、田巻さん行きましょうか。

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株式会社インターセプター 田巻源太氏

田巻:上げが4Kだったことはないんですけど、最初は公開が2010年10月公開の『乱暴と待機』っていう実写の映画でした。これの撮影が全部RED ONEだったんですよ。RED ONE MX(REDCODE 42)がまだない時期で。撮影自体は2009年の11月~12月くらいでした。

監督は冨永昌敬さんで、カメラの設定とかも一緒にやる感じだったんです。当時まだDaVinci Resolveが手頃な価格で販売されてなかったので、Final Cut Pro 7でオフラインやって付属のColorで作業をし、最終的にProResで作ったものを、イマジカの2K+でカラコレして、SRのマスター作って、イマレコで35mmっていうワークフローで一回やって。それが最初で、そのあともう一つ、同じく冨永昌敬さんと昨年公開の『目を閉じてギラギラ』というBeeTVの作品なのに4K収録っていうよくわからない作品があるんですけど(笑)。

10分×12本を4K HDでとって、Final Cut ProでオフラインしてDaVinci Resolve持って行き、ProResで上がり。配信用はHDカムマスターで、劇場でかけたのはBlu-ray上映という、悲しいやつです。これはDaVinci Resolveがあったので、サクサク動きましたね。

鈴木:raitankさんは?

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raitank氏

raitank:JVCから、SDカード4枚入れる4Kカメラが出てきて、それを1ヶ月くらい使える機会がありました。先月からいろいろ試行錯誤しながら、生まれて初めて4Kの素材を撮影から編集まで全部やる機会に恵まれ、それで今ここにこうして座らせてもらってます。

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小型ビデオカメラで4k撮影に対応したJVCケンウッドのGY-HMQ10。4枚のSDカードに4Kを4分割したHD解像度で収録する

JVCの4Kカメラには、のりしろを入れる機能があるんですけど、なくても全然問題ないんですよ。500カットくらい撮って一つもエラーがない。等倍でちゃんと見てても、境目がわからない。もちろん、動いていても大丈夫。最初は当然のりしろが必要だと思ってオンにしていたんですけど、そうすると上下左右に8ピクセルずつ引かれてしまう。これだとFinal Cut Pro Xに読み込んだ時にプリセットが作れなくて。で、のりしろをオフにしちゃったんですけど、まったく問題なし。

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JVC 4K Clip Managerにより、4つのHD画像を1つの4k画像にすることが可能。このとき、のりしろ無しと有りを選択できる

JVC 4K Clip Managerっていうソフトがあって、それで4つのHDファイルを4Kのファイルに書き出してくれるんです。変換には、だいたい実時間の1.5倍くらいかかります。でもバッチ処理できるんで、撮影して休んでたら勝手に終わってる。書き出すときにProRes 422からLTなど、品質も選択できます。実売で50万くらいです。

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REGZA 55XS5とJVCケンウッドのGY-HMQ10を接続するためにはアプションの4K2K映像入力アダプター THD-MBA1が必要となる

宮本: そういう値段で売ってほしくないなぁ(笑)。

raitank:しかも本当にハンドヘルドで、これで出てくる絵が4Kかよ!みたいな。僕のところには4Kモニター環境が無いので、ビクターさんに行った時に REGZAの4K55インチのモニターで見せてもらって、初めてこんなに綺麗なんだ!と驚きましたね。作業はフルHDのモニター2台でやってました。等倍で出すと、上下は切れるんだけど横幅は2台スパンさせると全部見えるんですよ。これで上下にずらしながら確認するという。

鈴木:なかの作りこむところだけが膨大なデータになりそうな気がしますよね。ホントはDCPのプレーヤーがあれば映像制作としてはありがたいですけどね。では石河さんお願いします。

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モーションワークス 石河 慎一氏

石河:4Kでそのままっていうのはそれほど多くないですね。以前RED ONEの撮影素材での、肌修正をしたことがあります。解像度が低い場合はボカして消すっていうテクニックでなんとかなったりするんですけど、4Kの場合ディテールが命なんで 、それが使えないんですよ。部分的に追いかけたり、上手くディテールを残す必要がありました。これがなかなか大変で…。

鈴木:で、あればHDで撮ればって話になっちゃいますよね。顔とか動いてるんですか? その作業は何でやったんですか?

石河:そうですね。普通に動いてます。全部ポイントを打ってトラッキングしました。Autodesk Smokeでやりました。

Chapter1: 編集環境の構築

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宮本:4Kの編集ってみなさん何でやるんですか?

田巻:僕はDVコーデックのQTでやってますよ。720×480とかですね…。

石河:MacならQuickTimeが使えるからProResでなんとかなりますね。

田巻:何かにもよりますよね。パワープレーでもいい時もあるかもしれないし。ネイティブに動かせるパソコンがあっても、そのスピードに耐えられるHDDってなくて、最近だとSSDに入れとけばいいって話になるんですけど、1TBのデータはノートでは無理でしょうってなるし。結局DVに変換してしまうと200GBになって、後はバッチでR3Dにおきかえてやっちゃえばいいってなるし。

宮本:編集というか合成になるんですかね。最初は一生懸命AEでやろうと思ってたんですけど、AEだめでしたね。

田巻:合成カットはAEにR3Dをまんま読ませてますけどね。

宮本:64bit環境が必須なのかなと。

raitank:そのへん僕も興味津々だったんですけど、Windows環境だとそのへんばっちりいけるのかなってうっすら期待を持っていたんですけど…

鈴木:hpのZ820が届いて、どうしても古いバージョンでCS4を使いたくて入れたら、マルチコア過ぎて立ち上がらなくなっちゃったんですよ(笑)64bitじゃないと受け付けませんみたいな。そういう時代になっちゃったんですよね。内蔵のディスクも速くして、CPUとのバランスもとっていかないと、いくらWindowsでも結局そこがボトルネックになりますね。

raitank:この1ヶ月集中して色々やってみたんですけど、普通のRAIDだとビクともしないんですよね。しょうがないからSSD用意して、やっと3秒動いたと思ったら、また止まるんですよ。DVコーデックまでは思いつかなくて、プロキシに落とすことしかできなくて、FCP Xだとチェック入れたら勝手にやってくれるんで、これでやっと編集できると思って。

田巻:僕はオフラインにDVコーデック使って、自分だけが編集するときは1080で、監督自身も自分で編集するとなると、その当時まだMacBookで、テレビに出したいってなるとFireWireでつなぐ、DVっていう話になっちゃうんですよね。DVだとNTSCにすぐ出せるのもあるんですけど。

Chapter2: 4K視聴環境の確立が急務

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石河:4Kでそのまま視聴できる環境がないのが一番問題ですよね。

宮本:制作側としては、4Kで作ってるんだからそのまま見て欲しいと思うわけじゃないですか。

鈴木:そういう意味ではYouTubeで4Kできるっていう話は面白いなと思って。

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2010年7月にYouTubeは4K (4096×2304)に対応した

石河:そうそう、4Kって映画やネット、YouTubeでは見れるけど、放送っていう一番大事な間が抜けている。問題はそこですね。

鈴木:今までの金額って、映画だからCMだからという単価設定だったじゃないですか。最終デバイスがこれだからこの値段みたいになっていかないと、なかなか作業ができないんじゃないかと思ったんですよ。YouTubeの話とか見て、結局YouTubeとかのほうが人目に触れる機会が多いとしたら、そこに付加価値の高い映像をみせていくみたいな。

石河:売る方からすると高いもの1個を売っても、安いものを100個売っても、どっちが利益が多いかが勝負だと思うんですよね。安くても利益がある方が価値が上がっていく気がします。安いから質が悪いんじゃ全然ダメなんですけど…。

宮本:仕事の上下とは違うのかもしれないですが、仕事の種類によって、今までは単純に一人ひとりお金をとるから、映画は高くしてかつ高画質じゃないといけないというルールだったと思うんですけど、その辺りのルールがこわれてきている。最終的に映画はDVDのアップコンで放送されているとか。YouTubeが流れてるとか。テレビで4K見れますという、中途半端な時代がくるかもしれないですけど。

鈴木:でも放送の電波を調整するのが非常に難しいじゃないですか。既存のHDの放送もしながら4Kも流すとしたら、テレビ業務が肥大化していってしまうというか。

石河:電波は国が管理してるので法を整備しなきゃいけないし、何だかんだで時間がかかるんで、国がやるのが早いのか民間がやるのが早いのかっていう感じですね。

raitank:そろそろ放送っていう前提を無くしてしまっても良いのかな?って思うんですよ。テレビっていう概念が、今後は「ディスプレイモニタ」に変わっていくというような。映る箱があって、どこかから何かの信号を持ってきて流して見るとか。

石河:テレビのような家庭に一台が、段々ポータブルで一人に一台になっていくというか。個人が見たい時にみるというような。

宮本:高精細になっていくと、より近づいても大丈夫なので、綺麗ですよ。でも今ある4Kとか8Kのモニターって日本の住宅環境にはあってないですよね。

Chapter3: 4Kコンテンツの必然性

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株式会社白組 鈴木勝氏

raitank:コンテンツのところですけど、今実際テレビで流れているものを4Kでみたいか?っていう話ですよね。野球中継とかオリンピックとかはみたいですけど。

鈴木:この先、同時に配信することがメリットあるのか?というのが出てきますよね。電波だから同時に配信しても帯域そんなにくわないですけど。こんだけ大きくなってくると、今後みんながキャッシュになってばっと広がるほうが4Kの映像でももっと早く伝わるだろうし。でもニュースとかは早くみたいですよね。ニュースを4Kで見る必要性はないかもしれないけど。

raitank:ビクターの4Kカメラを買う人の大多数はハイアマチュアの方たちだそうです。その人達が無条件にREGZAも買っている。今はまだそういう時代で、逆にいうと、こういう時代の時から、僕らはコンテンツを作ってたんですよ、と。で、こういう内容だから4Kで見せたいんですっていうスタンダードを作っていきたいですよね。そうじゃないと、気がついたら、これ別に4Kじゃなくてもいいじゃん?っていうものばかり溢れてしまうような気が。

鈴木:本当は3Dの時も「映像を作るのって本当はなんのため?」ということを考えるきっかけがあったわけじゃないですか。3Dをやることがどんどん目的化していってしまって、気がついたら3Dの流行りが過ぎていってしまったというか。4Kだからこそ、カメラの制限はないわけで、4Kであるべき絵作りのようなものとか色づくりをきちんとやれればいいんですけどね。

raitank:画質とか解像感って、業界の人は別にして、普通の人からしたらメガネの汚れくらいのものだと思うんですよね。「汚れているよ」っていわれて、ふいて初めて、「自分のメガネってこんなにみえたんだ」って気がつく。でも言われなければ気づかず普通に生活しているわけなんですよね。例えばHuluみたいな”なんでも見放題サービス”って、SD解像度で流していますけど、それをフルHDパネル全画面に拡大して見てても文句とかないですよね。それをまず知らないと、しょうがないですよね。

宮本:そうなってくると、コンテンツがよければなんでもいいっていう話になってきちゃいますよね。画質がいいからコンテンツも面白いっていうふうに持って行かないとって思うんですけどね。

raitank:そういう状態が普通になった時に、僕ら側はやっと綺麗な絵が出せるようになったぞと思うんですけど、普通の人は絵が綺麗だから見ているわけじゃないんですよね。関係ないんです。

宮本:技術者としては難しい話になってきますね。

鈴木:普通の人もDCPでかけられるようになったらいいなっていうのあるじゃないですか。その辺りを日本の場合読み取れないというか。降りてこないんですよね。で、結果みんなテレビつくっちゃう。4Kで気軽にDCPもかけられるみたいにちゃんとなってくると、自分たちでお金集めて4Kを見せる会とかやったり、地道に4Kの良さを伝えて行かないと、見ている人からしたら関係ないじゃないですか。

Chapter4: 4K制作の意味

raitank:2Kの映像つくるのでも4Kで撮るっていうのはすごく意味があると思うんですよね。

鈴木:さっきのYouTubeもそうですけど、いろんな所にそれって当てはまりますよね。スペック勝負じゃなくて内容じゃないですか。それをきちんと伝えたいから4Kで撮る。

石河:後々使いたいからとか、素材としてまず4Kを使うというのはいいですよね。クロッピングしたりとか。

宮本:我々的にいうと、使う用途が決まっていない状態で4Kでレンダリングするのは難しいですけど、そういった機会があるのであれば、それでとっておいて、後のために残しておくというか。今もまだNHKアーカイブスさんもフィルムはマスターとして残されてますし。最終的にもう一回フィルムスキャンをかけたら、再現度の高いものが出来上がるということだと思うんですよ。

石河:フィルムと4Kが丁度同じレベルの解像度くらいだとおもうんですよ。そのフィルムを全部4Kに変換するとか。

田巻:単純に解像度だけで言うと、ファーストネガ以下のプリントになると2K、HD以下の解像度しか残らないので。

宮本:我々的には、4Kの映像を残していくというのはネガを残すイメージというか、のちのちの素材として転用できる、アーカイブするということに近いのではないでしょうか。

鈴木:過去の資料をちゃんと4Kまでレベルアップしたいなと思った時につかえますよね。

宮本:SD作品が売れたのでその後Blu-rayでも作りたいと販社さんに言わることがあったのですが、同じようなことが今後あるかもしれないと思って、一時期HDで制作していたんですよ。SD放送だけど、後々のためにHDを作っておこうと。アニメのコンテンツの販売のしかたって、DVDで出してDVDボックスがでてBlu-rayで出して、Blu-rayボックスもでて…。ある程度先を見越して素材作りをするというのは非常に勉強になりました。今後4Kのために何をしたらいいかというと、ある程度の余裕があれば高解像度の素材をとっておいたほうがいいってことですよね。

鈴木:あと、機材的なところで4Kで足りないっていう話があったじゃないですか。モニター、見る環境。作る側での見る環境がありますよね。映画で言ったら試写にいくときの環境もまだ4K多くないですよね。その他に必要な物ってありますかね。

Chapter5: 制作上必要だけど無い機材

田巻:4K収録の現場で4Kモニター見た事無いですからね。だれがフォーカスとるんだよって。フィルムの時みたいにフォーカスとるしかないですよね。モニター見ててもフォーカスわかんないですもん。僕も現場でも4Kのカメラから720のアウトが出ているのをHDのモニターでみているだけなんで、わかるわけがないんですよね。

鈴木:それじゃだれもOKっていえないですよね。 ビューファーでいいから出して欲しいですよね。レンズの次に高くなりそうですけど。

アストロデザインのフルHD解像度(1920×1080)対応電子ビューファインダーDF-3511。現状ではフルHD解像度のDF-3511が最も解像度が高い電子ビューファインダーで、4K解像度をフルに表示できる製品はない

田巻:実写は難しいですね。4Kになったからっていいことって、そんなになくて、合成が楽、マスクはピンがあっていれば、時間はかかるけど綺麗に抜けるっていうくらいですかね。データはどんどん大きくなりますけど。

鈴木:この5年間でどこまで進化するかによってかわってくるのかなって。RAIDもSASエキスパンダーで買いながらも、次の台数を買うとRAIDカードがかわっていて、互換性無いじゃんみたいになっちゃうんですよね。エンドレスに毎回買い換えてて。そういう意味では、Thunderboltみたいにボックス側にRAID機能が搭載されてて拡張できるようなものがないと、4Kで大きくなったデータで作業エリアを動かすだけで大変なのかなって。

宮本:モニターとコンピューターがもう少し頑張ってもらわないと困りますよね。

raitank:4Kモニターの小さいのも出てきたんですけど、値段分からないから恐ろしいですよね。

Chapter6: 4Kワークフローの難しさ

田巻:機材とか、ワークフロー的なものはまずモニターがそろわないと作業はしづらいし、撮影の時も撮影している信号を確認するものがどこにもないっていう。 RED ONEの現場も多いですけど、再生すらできないですからね。

鈴木:フィルムの時代に戻って、フィルムの時も見えなかったでいくかどうかですよね…。現実的なワークフローなんですけど、田巻さんのDaVinci Resolveを使ったMOVとR3Dすり替え作戦って現状のワークフローで現実的だと思うんですよね。

田巻:結局モニターがないのを逆手にとってるだけなんですよね。4Kでとった素材があろうと、編集中に4Kでモニタリングできないのであれば、4Kで編集する意味ないよね。っていう。見てても小さい編集画面なのであれば、QT DV形式で良くないですか?軽いし早いし。

宮本:編集するのと映像をチェックするっていうのはちょっと違いますもんね。

鈴木:ここで作業をちゃんと切り分けるのが、作業全体のスピードがあがるじゃないですか。4Kでだらだら編集してしてると、いつそれ上がってくるんですか、みたいな。

raitank:ワークフローってことでいうと、以前記事を書いた、ドラゴン・タトゥーのマイケル・チオーニ(Michael Cioni)氏が、新しいソリューションを出したんですよ。現場で撮っている最中リアルタイムにどんどんプロキシを出していくというラックなんですよね。必要な機材が全部入っていて、撮影終了ってなったらみんなのiPadに素材が配信されているっていう。

潤沢な予算があるなら、そういうのもあるわけじゃないですか。松竹梅で行ったら松の上くらいかもしれないですけど。その下、更に下がどうなるのかって感じですよね。

鈴木:今だと、あれはラボが来ちゃう感じですもんね。デイリーチェックラボに出すんじゃなくてラボが来ちゃう。

田巻:僕はそれを現場でやっている訳なんですが、意外と予算はかからないですよ。そっちのほうが楽なんですよね。元々16ミリとか8ミリとかやっていたので、複製物を編集することに抵抗がないんですよね。VTRの編集もリニアでやっている頃って、シブサンでオフラインやったり。その時の感覚となんにも変わらないんですよね。みんなもそういう気持ちでやったらいいのにって思います。そっちの方が早いんですよね。古くから映像の編集に携わっている人はわかりやすくそっちに流れると思いますよ。特に劇ものとか音楽ものだとレスポンスが良くないと編集乗れないっていうのもあって。ライブの20カメの編集をProResでやりますか?って話で、DVだからサクサクできるんですよね。

Chapter7: 情報提供が鍵になる

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鈴木:そういう情報をちゃんとこうやったほうがトータルで楽だよねって提供できれば、みんなも少しずつ向いてくれるかもしれないですよね。

宮本: 以前はポスプロにお任せしてきましたが、制作会社に負担がある形を要求されるようになったというか。助けになってないんですよね。ノンリニアが始まったくらいから、そうなったかも?

raitank:使うカメラが5D Mark II一択だった頃は、知識が共有できたんですよ。でも、いつの間にかカメラの選択肢が無限に増えてしまって、だんだんノウハウの共有が難しくなってきている。今や「うちの環境ではこうだけど?」としか言えなくなっていて、他ではできたよ?って言われても参考にならない。

これは映像だけじゃなくて、たとえばMacintoshが出てきて「これからはDTPだ!」って言われた時、実は書体が2書体しかなくて、熱意ある人たちがアイデアを共有しながら気概で乗り越えていこうという感じでした。それが、今やザッと5000書体。もはや、すべての書体を把握している人なんて存在しない。浸透と拡散による効果や仕組みはいつもそんな感じですよね。

宮本:同じような感じで、4Kもすごいどどーんと敷居が下がってくる瞬間があるんだと思いますよ。

鈴木:昔はみんながSDしか使っていなかったころにHDが使えると高い金額もらえて、みんなが参入しようとするじゃないですか。そうするとさっきの局部的な情報の集中が起きるんですけど、4Kになったからといって、局部的集中がなかなか起きないのが5年とかのスパンの中で出てくる確率は高いですよね。情報共有ができていないところが、そもそも業界の問題点として集約されているじゃないですか。こういう絵つくりたいとか、技術的にはこういう風にとったらいいよねっていうのがしっかりできることが重要ですよね。

アウトプットとしては、2Kで出力とか。今後4Kはフィルムに近い感じで、アーカイブの要素として良くなってくると、4Kで素材をとっておくのはよさそうですよね。テクノロジー的な問題で言えば、ストレージ的な問題とか、パワープレイの問題が大きいのと作業環境の中ではモニターが圧倒的に不足しているのがまず実作業として問題に上がっている。撮影のところでは、ビューファーがなかったり、現場に持っていける4Kモニターがないっていう問題ですかね。

でもやっぱり、情報共有をすることで、みんなの声が出て、例えば優先順位はビューファーが先だよねとか。2Kでアウトするけど4Kでとったほうがいいよねってなったらつながっていくじゃないですか。そういうところが問題なのかなって。今のやりくりはMOVとR3Dの入れ替え方式もあれば非圧縮でDNxHDとか色々ありますけど。やろうと思えばできるけど、その前段階のところが問題なのかなと。

Chapter8: 4K普及に向けて

田巻:僕は、学校がもっと取り入れて欲しいと思うんですよ。

石河:情報は日々変わっていくので、それを教えていく場所とか見る場所っていうのが必要ですよね。

raitank:僕なんかはブログをやっていて感じるのは、情報って出せば出すほど自分のところに集まってくるんですよね。それって意外と知られてなくて、みんな一方的に聞くだけで満足してたりしますけど。考えが固定しているところあるじゃないですか。秘伝みたいな形で。それもそれでいいんだけど、情報は出して入れ替わらせたほうがいいですよね。

石河:意外と自分が知ってたり、普段使っている情報も間違ってる場合もありますからね。これとこれを合わせたり試したりするのは、ユーザーの仕事ですよね。

宮本:自分たちが4Kにする意味を見出して使って行きたいですよね。

鈴木:用途に分けて4Kを定義していくのもいいですよね。こういう用途はいいとかこれは意味ないとか。

raitank:クライアント側から4Kを要求されることがないですよね。

石河:それはプロデューサー判断が大きいと思うんですよ。お金を持ってくる人が上手く説得出来る制作体制をつくらないといけないかなと。

宮本:作品の企画自体にもかなり関わってくるので、4Kに対する知識は入れて欲しいですよね。 4Kみられるリストとか作ってみたらいいかも。

鈴木:みんなにもっと4Kを見てもらえる環境をつくっていかないとよくないですよね。あと、ここまでの話を総括すると、会社の経営者みたいな人がまとめを把握できるじゃないですか。散らばってそれぞれが大変とかキツイという話ではなくて、こうすべきだという話を聞いたほうがいいですね。全体で何かの一個の作品は難しいかもしれないけど、3本を通したらすごい楽になるという投資って大きいじゃないですか。2~3作品にまたがって投資していくのもいいと思うし。

アイデアの泉っていうコンセプトで、リスタートかけたいと思っています。みんなで新しいアイデアを湧き出るように行う感じで。みんなでどんどん新しい情報をいれれば入れるほど新しい水が湧き出てくるし量が増えるし。みんなの情報がそこに集まれば一人で悩まなくてもよくなるし。そういうやり方が、今の時代の過ごし方何じゃないかなと思うんですよね。メーカーがそこをカバーできる領域ではなくなったのかなと思います。

そして4Kは…?

今後4Kは普及へ向けて進むのであろうか?制作サイドではすでに幾つもの事例が上がっており、制作環境やコスト、4Kをどのように視聴者へ訴求するかなど、進めていくべき方向性は見えてきている。制作機材のローコスト化や新たな製品も発売されており、ワークフローや制作環境も急速に整いつつある。

ホームシアターやシネコンなど、まずは4Kの特長を活かせる部分からの普及が始まっているが、一般家庭への普及も時間の問題ともいえるだろう。ただ、一般家庭への普及は4Kを4Kとして視聴するだけでなく、視聴者が4Kから必要部分をトリミングして表示するというような今までの映像視聴にはなかった新たな機能も伴ってくるだろう。

この春からPRONEWSでは、[High Resolution!]と題して 来るべき高解像度時代に向け複数の視点から紐解いて来た。いずれにしろ技術の進化は止められないが、現時点での方向性は示唆できたのではないかと思う。引き続き来るべきHigh Resolution時代に我々は何をすべきか追いかけていきたい。

文責:PRONEWS編集部


Vol.04 [4K High Resolution!] Vol.00