静けさの中でも注目の製品はBMCC

今年のIBCは、日本関係の話題としてはNHKの放送技術研究所が「IBC国際栄誉賞(IBC International Honour for Excellence)」を放送機関としては初の単独受賞となり表彰されるなど大きな話題もあったが、ユーロ圏全体の長引く経済不安の煽りを受けてか、全体的におとなしく例年よりも静かなイメージだった。特に欧州南部(スペイン、イタリアなど)からの来場者、出展者が少ないという意見が会場でも多く聞かれた。このIBCでの新製品発表もセンセーショナルな大きい発表は特になく、どのメーカーも規模縮小しているケースが多いので、実際の登録来場者数も50,937名と、昨年の50,462名を少し上回った程度で、昨年と同レベルの規模での開催となった。

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その中でも気になる製品としては、まず会場全体で大きく目立っていた「ブラックマジックシネマカメラ(BMCC)」だ。会場の至る所でバナー広告を見かけ、製品自体も同社ブース以外のリグや周辺機材関係など、多くのブースで見ることができ、その注目度の高さに驚かされたが、ある意味で今のトレンドを物語っているように思う。それはデジタルワークフローとの親和性重視というポイントと30万円以下という、その価格帯である。

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今年4月のBMCC登場における市場での反応として顕著だったのは、やはりその後のデジタルワークフローを見据えた新世代のキャプチャーデバイスという部分だろう。13ストップのスーパーワイド・ダイナミックレンジを持つ2.5Kセンサーで捉えた画像は、後処理を意識したCinemaDNG RAW、ProRes、DNxHDといった編集用ファイルで帯域を確保した状態でメタデータとともに内蔵SSDレコーダーへダイレクトに記録。出力系統もThunderboltに加えて、3G-SDI出力も備えている。撮影現場でのモニタリング重視の機材仕様であることから、カラーコレクションのためにフルバージョンDaVinci Resolveと、波形モニタリングのためのBlackmagic UltraScopeを同梱しているなど、その後の画作りへのこだわりを低価格のパッケージとして納めている点は心憎いばかりだ。

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また今回、同価格で新製品として登場してきた「Blackmagic Cinema Camera MFT」は、マイクロフォーサーズマウント対応というリーズナブルでかつ機動性の高い、アクティブなレンズラインナップを使用できることで、ますますBMCCの使用範囲を広げることになりそうだ。4月に発表されたキヤノンEFマウントのベースモデルに対して、このMFTモデルはレンズリレーション機能を搭載していないパッシブ方式。マイクロフォーサーズ (MFT)のレンズマウントに対応し、アイリスおよびフォーカスはマニュアル操作となっている。サードパーティ製のマウントアダプターを使用すればPLマウントなどの他のレンズマウントにももちろん対応可能だ。マイクロフォーサーズ規格は、レンズマウント面からイメージセンサーへの距離が近いため、ベースモデルに比べてマウント部の突起がない。他の種類のレンズマウントのスペースを確保できるようになることもメリットの一つだろう。

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サードパーティーによる周辺機器も豊富に取り揃っている

本流カメラメーカーの台頭

もう一つは、こうした放送・映像機材展の傾向として、これまでのソニー、パナソニックといった日本を代表するビデオメーカーから、キヤノン、ニコンといった本流ともいえるカメラメーカーが台頭してきたということ。

キヤノン
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キヤノンは昨年のCINEMA EOS SYSTEMの発表以来、急速にその存在感を増してきているが、今回のIBCでもそのCINEMA EOSシリーズの最低価格製品ラインナップとして、AVCHD収録(MPEG-4 AVC/H.264)に特化したエントリーモデルの「EOS C100」を投入してきた。

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イメージセンサー自体はC300と同等で、外見も少しC300よりも小さめ(C300より15%減)のニューボディー。CINEMA EOSシリーズ初のAF機能「ONE SHOT AF」機能を搭載。メモリー収録部は同時記録可能な2スロット/SDHC・SDXCカード収録に特化され、ボディ内蔵の3.5型 92.2万画素のバリアングル液晶モニターは機材背面に設置されるなど、コンパクトボディの中にも新たなアイディアが凝縮されている。また従来のNormal1ガンマとCanon Logガンマの間くらいをイメージしたという新たな「ワイドDRガンマ」を搭載。これは主に高輝度部分が滑らかになるよう白トビを抑えるためのガンマである。

ニコン
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ニコンはD4、D800という現行のDSLRモデルのみを中心に、動画撮影に特化したこれまでにない大きなブースを構えた。映像業界におけるニコン周辺は、現行ではまだ何も表面化していないが、様々な憶測も飛び交っている中で今後この世界でも要注目に値するメーカーとなるだろう。

txt:石川幸宏 構成:編集部


Vol.00 [Workflow Design from IBC2012] Vol.02