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[CineGear 2013]Vol.00 見えてくるDigital Cinemaの今と未来

2013-06-07 掲載

txt:石川幸宏/猪蔵 構成:編集部

デジタルシフトがもたらす物とは?

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「デジタルシネマ」というキーワードは、もしかするとすでに形骸化しているのかもしれない。20世紀FOXでお会いしたGRIPデパートメントのトップは「すでに自分の知る限りでは、いまフィルムで撮っている人は居ないですよ!」という返事が返ってきた。いまやハリウッドでも映画、TVに関わらず、ほとんどがデジタルで撮影されており、またフィルムで撮られたとしても、デジタイズ以降の作業はすべてデジタルフローによって制作されている。フィルム=映画であった時代が、すでに”映画の都”からも完全に消え去りつつある中で、そこにあえて「デジタル」の冠をかぶせるのは、些か窮屈な表現に思えてきた。

毎年5月末〜6月初旬にかけて開催されるCine Gear Expoにあわせて、ここ数年ハリウッドの様々な分野を取材してみることに決めている。この時期はちょうどLAの気候もよく、また夏公開の作品のポストプロダクションが終わった時期である。秋からの新作や年末作品に向けて多くの作品はまだ準備段階ということもあって、ハリウッドのクリエイターや制作関係者は比較的落ち着いている時期なので、インタビューなども割と受けて頂きやすい時期でもあるのだ。

いつも言っていることだが、筆者は別にハリウッド信奉者ではない。ただ映像制作という観点で見てみると、ハリウッドには映画(映像)をどこよりも沢山、そして長く制作してきた歴史があり、そこには多くの経験から生まれた映画作りの様々な知識や理論、手段や方法が存在する。しかも常に世界市場を相手にしてきた過去の経緯は、世界中の誰もが認めるところだ。そうした”シネマロジック”には、話を聞く度になぜかいつも納得させられるものがあり、やはりそこをちゃんと意識して作られた作品は国内外を問わず良い作品と評価され、結果を出しているものが多いのである。

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日本の映画産業、いや映像産業全体がもうすでに国内市場だけを相手にしていたのでは成立しなくなってきている昨今において、よりワールドスタンダードな感性は関係する多くの分野に必要なものだと思う。これは映像分野だけに限ったことでなく、過去には他の産業でも同じ道を歩んできた。「デジタル」という文化の恩恵を受けた副産物として、これはすべての事象に生じてきた構造変化つまりデジタルシフトが起こっているのである。映像だけはそんな影響は受けない!という唯我独尊の違う道を歩むとは到底考えられない。

実はハリウッドもこのデジタルシフトに悩んでいる。様々なデジタルフローへの変化で大幅な予算削減、時間短縮、人員削減はもとより、優れた脚本不足、役者不足、才能ある監督不足などの症状も多い。またその軋轢がすぐにレイオフ(解雇)などにつながる世界なので、実態は日本の映像業界よりもむしろシビアだ。しかし問題を抱えつつ、そこを乗り越えて世界的ヒット作を生んでいる実情はあり、そんな状況下でも活躍しているクリエイターや制作者は存在する。彼らの取材を通じて、そこから聞こえてくる声を国内に伝えることが、少しでも日本の多くの制作者やクリエイターの指針になれば良いが…。

継続的な、クリエイティブ・エクスパンドが求められる時代

ところで、いきなりの余談ではあるが、今年もCine Gear Expo終了後にロサンゼルス郊外のカルバーシティにあるソニーピクチャーズエンターテインメントを訪れ、サウンドデザイナーの石川孝子さんにお会いする機会を得た。

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石川さんは10年以上もの間、ソニーピクチャーズの中のサウンド・デパートメントで仕事されているサウンドデザイナー / エディターで、TVドラマを中心にこれまでも多くの作品を手がけてきた。2004年には”Dead wood”というTVドラマ作品でエミー賞を獲得されている経歴の持ち主だ。近作では日本映画の『図書館戦争』(佐藤信介監督・2013.4.27公開)でもサウンドデザインのスーパーバイザーを務めている。石川さんへの詳細なインタビューはまた別の機会に詳しくご紹介するとして、彼女の話の中で興味深かった言葉の中に、クリエイティブな感性の捉え方とその伸張作業において、ハリウッドと日本ではその基本が大きく異なるという点だ。

日本とアメリカの仕事の進め方の違いとして、 例えばハリウッドにおけるサウンドデザイナーの場合、 作品に対してサウンド素材というのは豊富な方が作品の表現の幅も変わってくるので、より多くのサウンドアイディアをエディターに提示するのが通例だという。そこからエディターが必要な音を組み合わせていくところに、その作品のサウンドクリエイティブの妙技が生まれる。またそこの提案部分こそがサウンドデザイナーのクリエイティビティが求められるところでもある。しかし日本の作品においては大概の場合、この考え方はタブーとされるケースが多いという。要は与えられたもの、指定されたものをそのままカタチにするのが日本流で、ともすれば余計なことは提示してはいけないという雰囲気が存在する。実は映画編集やカラーコレクションの分野でも全く同じことを唱える方が多く、筆者もいくつか作品制作に関わった経験からもそうしたニュアンスはよく理解できる。

クリエイティブの現場とは、関わる個人の感性を仕事を通じて伸張し、集まったより多くの研ぎすまされた感性をまとめあげることが理想とされるわけで、監督なのか、プロデューサーなのか、ある個人の設計図通りにだけ作るのであれば、それは個人作品でしかない。それが際立って突出したアーティストなのであれば、5年も10年もかけて作品制作することがベストだが、映画産業のという中のハリウッドでは、それではプロとして成立しない。

石川さん自身はプロフェッショナルなので、別に自分が提示したアイディアから監督やプロデューサーが好む音を選択してもらえればそれでいいわけで、特に気に入らないのであれば、単純にそれを削ってもらえばいいだけなのだが、過去に日本の作品に関わったときにアイディア提示の段階で「勝手にこんな音までつけてしまったのか?」というネガティブな反応を聞いたときに、そのことを強く感じたという。

日本人の多くは、時として与えられたものをそれ通りに使おうとする癖がある。過去のしきたりを守ろうとする。それはそれでとても良いことである反面、デジタルにおける進化のスピードを考えたとき、現在のクリエイティブとの融合を促しにくいという反作用が気がつかないうちに生まれているという現実もある。つまり人間の感性がデジタルツールによって伸張されるのか、はたまた制限されてしまうのかは、その人の感性の柔軟性にかかっている。これはソフトだけでなく、いまやデジタルを飲み込んだハード面でも同じことが言えそうだ。

そんな時代性における感性の伸張、という些か大げさなテーマを掲げつつ、あえて「デジタルシネマの今と未来」という視点でこの特集をお届けしたい。


[CineGear 2013] Vol.01

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[ DATE : 2013-06-07 ]
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