4Kカメラ〜その沿革と現状を見てみる

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2003年のNABShowに出展されていたDALSA Origin4Kカメラ

すでに業務用としてのカメラ、とりわけシネマカメラと呼ばれるカメラに関しては、多くの4K対応カメラが出ている。撮影に関してはCM、映画についてはすでに4K収録は当たり前になって来ているようだ。

この4Kフォーマットによるデジタル撮影ができるカメラは、いまからちょうど10年ほど前から始まった。宇宙衛星用カメラなどの開発をしていたカナダの産業用カメラメーカー、DALSA社が2003年のNABで発表した“Origin”は、初の4K収録可能なシネマ用高解像度デジタルカメラだと言われている。

基本仕様は、4K、16bit、12ストップのダイナミックレンジ、400MB/secのRAWデータで収録できるが、収録時間はわずか1分と当時としては非凡な高性能デジタルシネマカメラながら、劇映画などの撮影としてはかなり厳しいものであった。このカメラはレンタルのみの取り扱いで、合成シーンなど限られた用途で数本のハリウッド映画作品に使用されたという。しかしその後2008年にDALSA社は“Origin”カメラの製造を中止、2009年にはレンタルも終了、同社は2010年にテレダイン・テクノロジー社に買収され、それ以後の開発は止まっている。

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昨年のInterBEEに出展されたEPIC DRAGON。写真の通常ボディーの他、カーボンファイバーシェルのモデルも受注生産する

2006年、オークリー社の創業者ジム・ジャナード率いるRED Digital Cinema社の登場は世界をアっと言わせた。4.5Kでの撮影を可能にしたカメラ「RED ONE」は、スーパー35mmサイズ/4520×2540ピクセルサイズのCMOSセンサーを有し、4Kサイズでの収録はもちろん、モジュラー式のボディデザイン、オリジナルのRAW形式“REDCODE RAW”とアップルのProResコーデックによる収録というワークフロー重視の収録、1〜120pまでのHFR撮影も可能と、いまの映像制作に無くてはならない機能が基本装備されたことに、多くのユーザーが惹かれ、また多くの映画作品も撮影されて来た。まさにデジタルシネマ時代に革命を起して来たRED ONEカメラは、その後、その遺伝子をEPICとSCARLETに移譲(RED ONEは2012年10月に生産終了)。

「EPIC」と廉価版の入門機と言える「SCARLET」はどちらも5120×2700ピクセル=5K解像度の14bit 13.5ストップのCMOSセンサー、“Mysterium-X”を搭載。EPICについては個体別に技術者が手組みでその品質と製品保証がついた「EPIC-M」と、通常の生産ラインで製造される「EPIC-X」が存在する。また通常CMOSセンサーの手前にあるRGBフィルター等を排除し、光の明暗を鮮明に捉えるモノクロ撮影に特化した「EPIC-M MONOCHROME」などバリエーションも増え、昨年末にはいよいよ1900万画素、16ストップ、6K(6144×3160)の“DRAGONセンサー”を搭載した、“EPIC DRAGON”も登場。更なる進化を続けている。

ビデオカメラメーカーも大判センサーカメラ、そして4Kカメラへ

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InterBEE2013のソニーブースに置かれていた、PMW-F5。新登場ND/CCフィルター搭載のB4レンズマウント変換アダプター「LA-FZB2」とB4マウントのHDレンズが装着されている。欧米では、感度の高い方のF5(ISO2000)と、B4マウントレンズというこのスタイルが、ドキュメンタリー系カメラマンに非常に評判が良いとのこと

長くビデオカメラの世界を牽引してきたソニーは、2011年4月、自社のデジタルシネマカメラブランドである“CineAlta”を、4K以上の高解像度に対応する映像制作機器として再定義。そのフラッグシップとして8Kセンサーを積んだ4Kカメラの最高機種「F65」を発表。「F65」は、スーパー35mmサイズ/水平画素8K、総画素数約2000万画素、14ストップのダイナミックレンジと120fpsのハイフレームレートに対応、記録にはSRMASTERポータブルレコーダー「SR-R4」を使用することで、ソニー独自の大容量メモリーメディア「SRMemory」に16bitリニアRAWデータである「F65RAW」を収録可能。まさに現在存在するデジタルシネマカメラとしては最高峰に位置するカメラだと言える。2012年1月発売開始から、ロータリーシャッターとNDフィルターを内蔵した「F65RS」がスタンダードモデルとなっている。

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ソニー「PMW-F55」

さらに2012年10月には4K収録を汎用化させるべく「PMW-F55/PMW-F5」の2機種を発表。両機とも4096×2160ピクセルの4K/CMOSセンサーを搭載。さらに4Kの膨大なデータを効率的に圧縮する新コーデック“XAVC”を開発、XAVC MPEG-4 AVC/H.264規格、4K対応10bit 4:2:2イントラフレームというこのコーデックで、S×S Pro+メディアにより収録可能。その他にも「AXS-R5」RAWレコーダーを接続、さらに最大2.4Gbpsの高速書き込みに対応した専用のAXSメモリーカードで16bitリニアの4K RAWデータ収録も可能となる。

このPMW-F55はXAVCによる4Kデータの取り扱いの良さもあり、発売早々すでに様々な撮影現場で使用されている。またソニーは民生用ミラーレスカメラシリーズのNEXシリーズより、AVCHDでの収録機器の総称であるNXCAMシリーズラインナップとして2012年4月に同じく4Kセンサー搭載した「NEX-FS700J/JK」を発表。こちらも4K収録ユニット「AXS-R5」とインターフェイスユニットの「HXR-IFR5」をドッキングして使用する事で、60p/30p/24pの4K撮影が可能になる。

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ソニー「FDR-AX1」

2013年、ソニーはさらにハンディカムコーダーの領域にも4Kサイズのカメラを投入。昨年秋には民生機として初めての4Kカムコーダー「FDR-AX1」を発表、引き続きその業務機版となる「PXW-Z100」を発表した。PMW-F55と同じXAVCでの4K収録方式で、新たに記録メディアとして600Mbpsビットレートの「XQDメモリーカード」を採用している。そして今春、ついにハンディカムのラインナップにも4Kカメラが登場。この1月に発表された「FDR-AX100」は、文字通りハンディサイズの4Kカムコーダーとして世界中の注目の的だ。

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キヤノン「EOS-1D C」

キヤノンはDSLR機「EOS 5D Mark II」の登場とその波及効果により、ムービーカメラの市場に一大ムーブメントを巻き起こし、以後の大判センサー搭載のカメラの潮流を大きく変化させた。日本のビデオメーカーも4Kあるいはそれ以上の次世代市場を睨んで、そこからオーバーHD仕様のカメラを発表してきた。 EOS 5D Mark IIの動画機能によって、大判センサーカメラの潮流のトップに躍り出たキヤノンは、2011年11月、スーパー35mmサイズ/4K:4096×2160ピクセルの大判センサーを搭載した、デジタルシネマカメラの新たなラインナップ、CINEMA EOS SYSTEMを発表。1stラインアップのHDカメラ「EOS C300」の発表後、2012年4月には外部レコーダー接続による4K CinemaRAWデータ収録が可能なフラッグシップ機「EOS C500」と、Motion JPEGによりCFカードに4K収録を可能にしたDSLRタイプの「EOS-1D C」を発表した。静止画と4Kムービーが撮れる業務用カメラとしては、EOS-1D Cは現行機材の中では、そのクオリティとともに最も汎用性、機動性に優れていることで、現在多くの現場で使用されている。

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JVC「GY-HMQ10」

JVCケンウッドでは、2011年ごろから様々な展示会で試作機として4Kカメラを紹介。そして2012年3月、初のハンドヘルドタイプの4Kカメラとして「GY-HMQ10」を発表。4K UHD(3840×2160)の4K収録で、記録フォーマットはMPEG-4 AVC/H.264(MP4)、収録方法は全体を4K画像と捉えた画面を4分割したフルHD画像を4枚のSDHC/SDXCカードに記録、パソコンの接続時に結合して4K表示するユニークな発想。この4分割画像を効率的に処理するため、高速画像処理エンジン「FALCONBRID(ファルコンブリッド)」を搭載。形状は通常のハンディタイプのHDビデオカメラと同じような仕様なので、レンズは交換式ではなく光学10倍のズームレンズが装着されている。この後継機種として、2013年6月には、基本機能をそのままに1.25型の大判CMOSセンサーとニコンFマウント採用によるレンズ交換式の「JY-HMQ30」を発表している。

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モジュラー型VARICAM 4Kカメラの試作機は、その後いくつかの展示会でも展示

パナソニックは、2012年4月のNABショーにおいて、次世代のVARICAMモデルとしてモジュラー型4Kカメラの試作機を、さらに2013年のNABショーではハンドヘルド型の4Kカメラを発表しているが、実機発表は今年のNABでの発表となるようだ。

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BMCCの最上位ラインナップとなるBlackmagic Production Camera 4K。基本スペックと最近のBMCC、BMPCCの好感度からかこのカメラの期待値も高い

カラーコレクションシステム、DaVinci Resolveとの親和性と、ARRI ALEXAとのトーンバランスの良さで最近大いに注目されている「Blackmagic Cinema Camera」。このカメラの登場以来、カメラ業界でも注目株となっているブラックマジックデザインは、いまの4K/UHD市場に最も注目すべきメーカーでもある。2013年のNABで発表され、国内での実発売も待ち遠しい「Blackmagic Production Camera 4K」は、スーパー35mmサイズセンサーでUHD(3840×2160)収録、グローバルシャッター、EFマウント仕様、非圧縮オーディオレコーダーを搭載。収録はProRes422(HQ)および、CinemaDNGで筐体内部のリムーバブルSSDに収録。12ストップのダイナミックレンジとタッチスクリーンによるメタデータ操作など備え、312,190円(2014年3月現在)というお手頃価格も魅力的だ。

txt:石川幸宏 構成:編集部


Vol.00 [TRUE 4K] Vol.02