PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU
  1. トップ
  2.  > 
  3. 特集
  4.  > 
  5. [Digital Cinema Bülow 2〜CineGear 2014]Vol.04 フィーチャーフィルムで4Kワークフローを構築する際の問題点
News

[Digital Cinema Bülow 2〜CineGear 2014]Vol.04 フィーチャーフィルムで4Kワークフローを構築する際の問題点

#CINE GEAR EXPO #cinegear

2014-06-25 掲載

「相棒-劇場版III-」4Kフルワークフロー制作。高効率圧縮が実現する4K制作の現実

CGE2014_04_08.jpg 「相棒-劇場版III-」沖縄ロケ風景

4月28日から全国公開され、現在も公開中の邦画作品「相棒-劇場版III-巨大密室!特命係 絶海の孤島へ」(出演:水谷豊、成宮寛貴 監督:和泉聖治)は、全編ソニーF55のXAVC 4Kで撮影され、しかもポストプロダクションにおいてもフル4Kワークフローで行われた、おそらく日本初の劇場公開メジャー作品だ。

CGE2014_04_05.jpg 「相棒-劇場版III-」沖縄ロケ風景

「相棒」というコンテンツ自体が、日本初のファイルベース制作ドラマから始まり、そもそも日本のTV映画界の中において、先進技術を取り入れた映像制作を常に最初に取り入れて実現しているコンテンツとしても有名だが、その次なる挑戦がフル4Kワークフローによる劇場公開映画の制作だった。これまで4K撮影までは簡単にできるようになったものの、すべて4Kデータで配信デリバリーまでを一気通貫するワークフロー、つまりフル4Kワークフローは実現されてこなかったのが実情だ。

本作も当初は4K制作の話も考えていなかったようだが、2013 NAB Showの際に、撮影監督の会田正裕氏がXAVCの性能を見いだし、その高効率圧縮の可能性にかけて、今回のXAVC 4Kでのフル4Kワークフロー制作に踏み切った。

「4Kは、僕らがこれまで作品の最終試写で最良の環境と状態で観て来た作品を、これからは劇場で一般客が楽しめることになる、そういう印象がありました」と話す会田氏。

もちろんビッグヒットコンテンツであるという追い風もあるが、その現実はテクニカル面以外でも多くの障壁を乗り越えてきたようだ。「相棒 -劇場版III-」の撮影秘話として、その裏で行われた4K映画制作のポイントを語って頂いた。

4Kで見えて来たレンズの世界

4K映画で最も見えて来るもの。それはレンズだ。とりわけ最上の状態で試写された映像で見えて来るのは、各カットでどんなレンズが使われたか?レンズの善し悪しがハッキリと見えて来る。

CGE2014_04_01.jpg 撮影監督の会田正裕氏(J.S.C.)

会田氏:これまで「相棒」のTVシリーズではビデオ撮影のためRec.709ではあそこまで色を極端にいじらないとなかなか求めている迫力が出ませんでした。しかし、今回は4Kのクオリティで撮ることで充分その画に力があったので、そこまで小手先的なことはやりませんでした。色の不要な情報は排除して階調を重視させた画づくりになっています。

Magnum Photos(※)のモノクロ写真のような、岩のでこぼこ感であるような質感を重視しました。ダイナミックレンジと4K解像度の力強さを利用するために、クロマ成分を少し排除して、なにかモノトーンの映画を観終わったような雰囲気を演出しています。その面でレンズも、(TVシリーズのような)ズームレンズだけでなく単玉も多用しています。

スチルの世界もそうだったように、解像度が上がることでデジタル映像も一気にレンズの世界に入ってきます。レンズの性能が見えるという言い方もできますが、僕の捉え方からすれば、4Kによってますます作品別にレンズを選ぶことができることの重要性が増し、と同時にレンズを変えることによる表現域の拡大・拡張というのができるようになってきたということです。そこには(カメラマンとしての)経験値や勉強もさらに必要ですし、またその面白さも広がったと言えるでしょう。

※MAGNUM PHOTOS
1947年、ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ジョージ・ロジャー、デイビッド・シーモア、4人の写真家が創設した世界最高の国際的写真家集団。現在約50名の写真家が在籍

ダイナミックレンジの拡張

CGE2014_04_07.jpg 「相棒-劇場版III-」沖縄ロケ風景

4K解像度を活かせるもう一つの大きなポイントは、カメラのダイナミックレンジをより活かせる撮影ができることろにある。そこにも本作での会田氏の撮影監督としての工夫が随所に感じられるカットが幾つか観られる。

会田氏は今回の撮影にあたり、12ストップとされるF55のダイナミックレンジを、テストシュートでの様々な情報から、有効実用域9ストップとして換算、これに基づく感度やチャートテストなど画質設計を事前に入念に行っている。また担当したカラリストも仕上げを考慮して工夫された撮影素材のおかげで、後のポストでのグレーディング作業(東映デジタルセンターにて、グレーディングシステムはBaselightを使用)で、広いダイナミックレンジを活かしたカラーグレーディングができたと語っており、より上質な作品に仕上がったようだ。

会田氏:冒頭の孤島での暗部のカットでは、本当の素材はかなり明るく撮っています。こういう暗部の撮影はビデオレベルで言えば、0~100の間のほんの10%に満たないところで完成品はできますが、本作では0~70%くらいまでを使って撮るようにしました。70%以上行くとクロマレベルに影響してきます。

色がある物に関しては色が減っていってしまうため、それ以上開けられませんが、実際に欲しい画は10%のところ、6~70%を使って撮影しますので、一見全く雰囲気が違う画が撮れています。こうして撮影しておく事で後のカラーグレーディング作業の段階で、どの部分の黒に階調をつけるかを決める事が出来ます。

現場のモニターではオンセットグレーディングのシステム上で、暗部の黒がグッと締まった、つまり、出来上がりのイメージに近い画が監督や現場のスタッフたちには見れていますが、実際に撮れているのはダイナミックレンジをたっぷり使った、もの凄く明るい画になっています。その際にCDLのデータもラボ(東映デジタルセンター)には同時に送られていますので、「ああ、これは締めて使うんだな」ということが分かります。

カラリストはこういう画であればさらに、「これはどこを分離させたら良い画になるかな?」など、ポストとしての彼らのクリイティブが発揮される幅ができてくるのです。実際には、カメラの帯域よりも劇場で上映されるプロジェクターの帯域の方が狭いため、こうした部分で使う色域の取捨選択ができるなど、カラリストのセンスや手腕が活きてくるわけですね。

CGE2014_04_06.jpg オンセットのグレーディングシステム。F55からの映像信号をBlackmagic DesignのHDLink Pro経由でLive Gradeを使用してプライマリグレーディング。DaVinci Resolve 9で作成したLUTをプロジェクトでヒモ付けしてラボへ転送する。またデータチェック機能を使った安全なバックアップを図るため、SilverStack SETを使用

またラストシーンに近い、相棒の主役2人が手前に歩いて来る、街中の遠景シーンではフィルム撮影に近い階調を活かしたカットがある。会田氏は今回の撮影の場合、事前の画像設計の際に「グレーディング処理で色を戻して行く(絞り込んで行く)ときに、本当は飛んでしまっているにも関わらず、抑えこまれた形跡が全く感じられないという部分が何%なのか?」を判断基準に、感度設定の基準値を決めたという。

会田氏:いままであのようなシーンでは、フィルム時代の映画ではよくありがちな見慣れている画なので、簡単だと思われがちですが、実はデジタルではなかなか撮れなかった難しい画です。今までデジタル撮影だとああいったシーンでは、陽の当たっているところを飛ばしてしまうか、日陰の所にかなりの光量のライトを当てるかしかありませんでした。

あのシーンはほとんどノーライトに近い状態で、どピーカン(晴天)のコントラスト比がかなりあるシーンをワンカットで撮影できるというのは、F55 / 4Kのダイナミックレンジの広さの恩恵でした。

4Kで伝わる音の解像感

CGE2014_04_03.jpg 「相棒-劇場版III-」沖縄ロケ風景

会田氏:4Kでは細部にわたって表現される領域が広がるため、例えば一般劇場では聞き分けにくい小さい効果音が、これまでは画の解像度がなかったためにその意味が見いだせないようなこともありましたが、4Kではその細かい音の配置と画の解像感がピタリとあった感じがします。それにより音の解像度も上がったように感じ、作品のクオリティもアップした感じになるのです。我々作り手の細かい作業が活きて来る、それが4Kなのではないでしょうか?

4K制作における高効率圧縮の可能性

CGE2014_04_04.jpg 「相棒-劇場版III-」沖縄ロケ風景

いま現場で大きく問題になっているのは、ポストプロダクションに掛かる予算だ。撮影に関してはさして4Kに問題はない。むしろ映画やCMの世界ではすでに4K OVER収録はスタンダードとなっている。4Kスタンダードの世界を実現するには、むしろ問題はその後にあり、関わる人のそこに対する深い理解が必要だ。

会田氏:いま難しいのはむしろポストプロダクションの金額設定が出来ないことです。4Kになってもその作業のほとんどは1クリック。これまでと何も変わりません。しかしシアターに4Kプロジェクターもなく、グレーディングも2Kでやっているという現状のように、4K設備が揃っていない=確立していない中で、どうやって4K制作のコストを決めて行くのは業界全体の重大な問題でもあります。

いまはそのデータの選択やワークフローの決め方一つで、処理時間やデータ容量が大きく異なり、一体何を基準に金額を決めれば良いのかが決められない状況です。時間やデータ容量が決まらなければ、NLEのマシン機材の使用時間の設定も出来ないため、ポスプロの営業さんが一番困っている、というのが現状でしょう。

この「相棒-劇場版III-」ではワークフローで4K制作を実現するという提案が実現した作品であり、そのテストとしてチャレンジした部分も多いのですが、これが成功した理由として、ソニーのF55のXAVCという“高効率圧縮”をベースにしてワークフローを考えたことが根幹にあります。未だに4K制作フローが難しい中で、データの高効率圧縮が、時間の圧縮、人員の圧縮、コストの圧縮に繋がることが分かりました。これはやってみないとわからないことが多かったです。

4K制作におけるポイントとは?

CGE2014_04_02.jpg 「相棒-劇場版III-」沖縄ロケ風景

何事も制作前に出来上がりを想定した設計がしっかり出来ていなければ、高い完成度は求められない。フル4Kワークフロー制作におけるポイントは、その解像感の増幅によって、ダイナミックレンジであったり、またさらにその中でどこの部分の、何を強調するのかなど、ポストプロダクションにおける様々な選択の幅が広がる、ということが言えそうだ。

そうしてこそ求められる映画ならではの上質な4K作品においては、その完成形を主要スタッフがまず理解していることが必要であり、ゴールを決めて掛からなければ、たどり着かない世界でもある。

そこにはプリプロダクションの重要性とともに、ポストプロダクションにおける技量もさらに高度なものが求められて来ることから、映画制作者にとっての4Kとは、更なる個人のスキルアップが求められる世界でもあるようだ。

txt:石川幸宏 構成:編集部
Vol.03 [Digital Cinema Bülow 2] Vol.05

[ Category : ]
[ DATE : 2014-06-25 ]
[ TAG : ]

この記事に関連する記事一覧

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.16 会場で気になったあれこれ

txt・構成:編集部 美しい肌の色調と滑らかなボケ味を実現したPLプライムレンズ「Sumire Prime」 キヤノンは、NABで発表したSumire Prim... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.06 山木社長に聞く~シグマ、シネマレンズ次の一手と「シグマ・バーバンク・ショールーム」

txt・構成:編集部 Cine Gearのシグマブースで、シグマの代表取締役社長、山木和人氏と商品企画部の若松大久真氏にインタビューする機会を得られた。バーバンクオフィス開設... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.05 Sony DMPC(Digital Media Production Center)オープニングイベントレポート

新しいDMPCは、LA東北部の山中のMedia Center Driveにある txt:手塚一佳 構成:編集部 Sony DMPCがオープニングイベントを開催! 5月30... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.03 LUMIX「S1H」開発の背景をパナソニック香山氏に聞く

txt・構成:編集部 パナソニックは5月31日、Cine Gearでプレスカンファレンスを開催し、LUMIX S1Hの開発を発表した。6K24Pや5.9K30P動画記録の実現... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.02 アンジェニュー、好みの描画に合わせて鏡胴内のレンズや絞り羽根を交換できるプライムレンズ「Optimo Prime」を開発発表

txt・構成:編集部 「なぜプライムを発売しないのか?」お客様の要望から発売へ 業界標準のズームレンズとして親しまれているAngénieuxは、Cine Gear Ex... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.01 Cine Gear Expo 2019〜パナソニックがプレミアセミナーでシネマ向けLUMIX「S1H」開発を発表

txt・構成:編集部 映画業界の祭典~Cine Gear 2019開催! 今年も映画撮影機材の専門展示会「Cine Gear Expo」が米ハリウッドの中心、パラマウン... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VII~Cine Gear 2018]Vol.05 Cine Gearでシネマ業界注目のレンズメーカーを拝見 レンズ/周辺機器編

txt:編集部 構成:編集部 ATOMOSブース:Sumo19に対応する「AtomOS 9.1」を発表 Cine Gearの展示会場の注目は、レンズメーカーの展示だ。シ... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VII~Cine Gear 2018]Vol.04 ラージセンサー搭載のデジタルシネマカメラに注目

txt・構成:編集部 今年のCine Gearの展示ブースから注目を挙げるならば、各社からリリースが相次いでいるラージセンサー搭載のデジタルシネマカメラだろう。RED MON... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VII]Vol.10 Cine Gear探訪5:栁下隆之編〜レンズ、アクセサリーで気になったもの

txt:栁下隆之 構成:編集部 暑い!熱い!会場から いやいや、これは参った!と思うほどの、2日目の入場もまさかの行列。入り口のセキュリティーチェック待ちなのだが、10... 続きを読む

特集記事

ATEM WORLD ATEM WORLD
ラインナップ充実のATEM Miniシリーズの選び方や使いこなしをご紹介。
SIGGRAPH2020 SIGGRAPH2020
オンライン開催されたVFXの祭典・SIGGRAPH2020をレポート。
映像基礎講座 映像基礎講座
映像の基本や基礎知識を学ぶ。映像制作初心者はもちろん、熟練者ももう一度初心に立ち返ろう。
	
Shoot with Vlog cam Shoot with Vlog cam
個人の動画ブログ「Vlog」が隆盛するいま、Vlog用カメラを通して映像を撮ることを数回にわたり考える。
Camera Preview 2020 Camera Preview 2020 Part II
2019年から2020年春にかけて発表された話題の新製品やカメラシステムを紹介。
Camera Preview 2020 Camera Preview 2020 Part I
2019年から2020年春にかけて発表された話題の新製品やカメラシステムを紹介。
AfterCOVID-19 映像業界サバイバル AfterCOVID-19 映像業界サバイバル
社会的危機となっている新型コロナウイルス拡大の状況を分析し、今何が起こり、何が必要で、その後に何が訪れるのかを考えてみる。
Film Shooting Rhapsody 上映編 Film Shooting Rhapsody 上映編
16mmフィルムトライアルルームの荒木泰晴氏によるフィルム特集第2弾。今回はフィルム現像から紹介する。
再現:NAB2020 再現:NAB2020
米国ラスベガスにて開催予定だった世界最大の放送機器展覧会 2020 NAB Showでお披露目される予定だった内容を再現していく。
Film Shooting Rhapsody Film Shooting Rhapsody
16mmフィルムトライアルルームの荒木泰晴氏によるフィルム特集第2弾。
再現:CP+2020 再現:CP+2020
開催中止となってしまったCP+2020をPRONEWS誌面上で再現して行く。
CES2020 CES2020
米国ラスベガスで開催された世界最大の国際家電見本市 CES2020をレポート。
PRONEWS AWARD 2019 PRONEWS AWARD 2019
2019年は映像業界にとってどんな年だったのだろうか。PRONEWS AWARDで部門ごとに振り返る。
Inter BEE 2019 Inter BEE 2019
千葉幕張メッセにて開催される国際放送機器展“Inter BEE“をレポート。
InterBEE 2019の歩き方 InterBEE 2019の歩き方
今年もInterBEEの歩き方をジャンル別にピックアップし、6種類のコースを紹介。
  1. トップ
  2.  > 
  3. 特集
  4.  > 
  5. [Digital Cinema Bülow 2〜CineGear 2014]Vol.04 フィーチャーフィルムで4Kワークフローを構築する際の問題点