txt:黒田伴比古 構成:編集部

4K華盛りにみえる今年の九州放送機器展。だが、今使える製品の主力はHD製品たちだ。しかし、そのHD製品たちも着々と4K時代を見据えた設計がなされているものが多く見受けられる。また、古くSD時代からHD時代になっても変わらない放送機器ならではのスタイルを4K時代にどう活かすのか各社の工夫も垣間見えた。4Kだけでなく撮影環境を支える周辺機器にも着目してみよう。

グラスバレー | 4K撮影~編集~送出の一連ワークフローを展示

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今年、Belden社の傘下となったグラスバレーブースでは、Beldenカラーの紫を基調としたブースに4K撮影から編集、プレイアウトまでのソリューションを一連で展示していた。

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なかでもカメラでは従来のB4マウントレンズをそのまま装着できるワンピース型の2/3インチ3CMOS 4KカメラLDX 4K / UHD Compactを展示。また、中央ステージ前のカメラ群に360fpsの6倍速ウルトラスローカメラLDX Xtreme Speedを展示。メインステージのイベントをウルトラスローで再生する様子を展示していた。

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編集関連では、EDIUS Elite 7と4Kプレビューボードを搭載したターンキーシステムHDWS 4Kを展示。HDWS 4Kでは、HQXコーデックの4K素材にPiPを入れたシーケンスがリアルタイムプレビューされ、ハードウェアスペックの高さを見せた。送出機では参考展示として、4Kファイル送出機4K Playerを展示、4K HQXコーデックのファイルを送出するデモンストレーションを行った。

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また、同じBelden社傘下のMiranda社製Kaleidoシリーズによる2画面マルチビューワーの展示も行われた。

ローランド | 期待のマトリクス・スイッチャーいよいよ登場

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ローランドブースはひとつのブースを映像系製品と音響系製品に分けて展示していた。映像系製品では、年内の発売を予定しているマルチフォーマット・マトリクス・スイッチャーXSシリーズが登場。XS-84Hは8入力4出力のマトリクス・スイッチャーだが、スケーラーを内蔵しているので、SDのコンポジットからHDMIほか、D-sub15ピンによるPC入力まで各種信号を入力することができる。また、出力段はビデオプロセッサを内蔵しているのでマルチスクリーン表示などにも対応。

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さらにオーディオミキサーも搭載しており、入力chの音量調整のほかEQやディレイをかけることもできるという何でも入りのマトリクス・スイッチャーだ。おまけにiPadでコントロールもできるため、一見複雑そうに見えるマトリクス・スイッチャーをGUIで簡単にコントロールできる。入力装置の名称を日本語で表示することも可能だ。

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また、出力には長距離伝送に便利なHDBaseTの端子もあるので、Etherケーブルで長距離伝送し、市販のHDBaseTのレシーバーで映像信号化することもできる。まさにプロジェクターへの距離が長い講義室や視聴覚施設の施工にうってつけの製品といえるだろう。

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そのほかには、HD映像をポン出しできるマルチフォーマット・ビデオ・プレゼンターPR-800HDを展示。1080 / 60pの動画ファイルをポン出し感覚でクイック再生できるイベント送出に最適な製品だ。このPR-800HDにはREF入力があり、かつMIDIやRS-232Cによるコントロール制御で複数台の同期再生ができるようになっている。そのため、4K素材を4分割して4台のPR-800HDに事前仕込みすれば、4K動画をポン出し再生できるプレイヤーとして使用することもできるという。

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音響系の製品では、CF / SDカードスロットを有した1Uサイズのオーディオ・レコーダーAR-3000SDが新製品として展示されていた。このような製品は、施設の定時放送の送出機としてよく利用されてきたが、単なる録再機であるため、定時に再生させるには外部のプログラムタイマーから制御するなどの必要があった。

しかし、AR-3000SDは内部にタイマー機能を持っており、ネットワーク経由で設定することで定時放送がこれ一台で可能になる。当然NTPクライアント機能も持っているので、時刻補正もできる。さらに、市販のUSBテンキーを接続すると、インスタントリプレイのようにポン出し装置として利用することもできるというスグレモノだ。

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そのほかにも、ビデオコンバーターシリーズのファームウェアアップデートの機能追加などが告知されていた。

Libec(平和精機工業) | 三脚+スライダー=ALLEX

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NABでの発表で大きな話題を呼んだ、スライダーと三脚キットが一体化したALLEXシリーズを前面に展開したLibecブースには多くの来場客が訪れ、その完成度を確かめていた。

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ALLEXは、雲台のALLEX H、スライダーのALLEX S、通常の三脚セットのALLEX KITとスライダーまでがセットになったALLEX S KITで展開されている。

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雲台のALLEX Hは、三脚にもスライダーにも取り付けられる形状にするため、雲台のハーフボールを途中で切り落とした形になっている。その平面部分に3/8インチネジ穴があり、ここがスライダーと接合する形だ。

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スライダーのALLEX Sは、8個のボールベアリングがグリス処理されており、一般的なレールに比べると移動にトルク感があり、雲台の動きと一体化したスライドショットが可能になっている。

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また、従来の小型カメラ向け三脚キットTH-650DVの後継機種、TH-650HDも展示。カメラプレートのねじ位置が固定から前後のスライド幅を持つようになったほか、プレートロックつまみの突起部が下向きから上向きに変わるなど、ユーザーの声を反映させた後継製品になっている。

銀一 | ATOMOS製品とSteadicam製品が一同に

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一堂に会したSteadicam製品群がならぶ銀一ブース。GoProに対応するSteadicam CurveからSteadicam PILOTなどスタビライザー製品群が数多く体験できた。

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最近人気となっているのが、iPhoneでの動画撮影をスタビライズするSteadicam Smootheeだ。特に今月の入荷分からは、GoPro用のマウントアダプターも付属するようになったため、さらに撮影の場が広がるという。さらに銀一ブースでは、同社が先月より取り扱いを開始したATOMOS社のレコーダーがブースの半分を使って展開していた。

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NABで発表されたSHOGUNは、あいにくこちらのブースでもNAB時点の録画はできない動画再生できる状態のものがアクリルケースの中に展示されていた。ただしこのSHOGUN、HDMIもSDIも入力でき、ディスプレイはIPSフルHD、4K収録可能というモンスタースペックゆえ、早く完動品が見たい商品だ。

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そのほか、CFastカードを使用するレコーダーNINJA STARの展示や、SDI入力のSAMURAI BLADE、HDMI入力のNINJA BLADEが展示されていた。CFastカードレコーダーのNINJA STARだが、標準セットの中に、CFastカードリーダーが付属するという。

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ちなみにATOMOS製品の展示の中で、同社のバッテリー駆動のHDMI-SDIコンバーターH2Sを利用した便利機能を紹介していた。ソニーのHXR-NX3を例にしてあるのだが、HXR-NX3はTCをHDMI上に重畳している。SAMURAI BLADEのバックプレート部分にH2Sとバッテリーを装着し、HXR-NX3からHDMIをH2Sに入力、SDIをSAMURAI BLADEに入力した状態で、SAMURAI BLADEをRecRun状態にしておけば、HXR-NX3のRECでTCが歩進すると同時にSAMURAI BLADEもRECをするというものだ。そのほかのカメラでもHDMI上にTCが重畳されていればこういった利用もできるという。

Manfrotto | KATAブランドをManfrottoに。新製品のLEDライトも

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Manfrottoのブースには主力の三脚製品のほか、DSLR関連商品やカメラバッグなどの撮影周辺製品が一同に展示された。

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なかでも、カメラバッグはこれまでKATAブランドで販売されてきたが、先月からManfrottoのカメラバッグ再構成に伴い、Manfrottoブランドで販売されることとなった。そのため、これまでKATAのイメージカラーであったイエローから、内装もManfrottoカラーのレッドに変更されている。もちろんKATAのこれまでの堅牢性には変更なく、カラーとブランドが変わっての製品展開となっている。

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また、これまでの小型LEDライトに加え、大型のLEDライトSPECTRA LEDライト3種を参考展示した。外観はいずれも変わらないが、照射角を30度のスポット光としたSpectra 1×1Sのほか、フラッド光タイプのSpectra 1×1F、色温度が可変できるSpectra 1×1FTがあり、早ければ今月中に発売をしたいとしている。

エーディテクノ | コンバーターの新製品とHDBaseT関連製品

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エーディテクノのブースでは、液晶ディスプレイ製品のほか、同社取り扱いの韓国Digital Forecast社のアップ / ダウン / クロス対応マルチコンバーターBridge X_MCや、近く販売を予定しているSDIフレームシンクロナイザーBridge X_F / Sを展示。SDI信号の入力に加え、オーディオ入力も備えており、リファレンス信号を入力することで、ゲンロックすることができる。たとえば、出先のイベント会場の映像スイッチャーアウト、オーディオミキサーアウトをエンベデッドしたうえ、本線系のリファレンスに同期させて本線スイッチャー向けにSDI出力する場合などに有効な商品だ。

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また、発売中のマルチコンバーターBridge X_MCのオプションとしてRS-232C接続のボタン装置を参考展示。Bridge X_MCの豊富な変換機能をボタンひとつで切り替えできるようにと考えられている。同じくDigital Forecast社の製品からはルーティングスイッチャーなどが展示されていた。

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また、自社製品のHDBaseT規格対応HDMI延長機HD-06Eを展示。最大60mまでHDMI信号をEtherケーブルで延長できる製品だ。今回の展示には間に合わなかったが、同社では100mまで延長可能な製品の開発も行っているという。この100m対応の製品はHDBaseT規格の5PLAYと呼ばれる映像、音声、リモート、ネットワーク、電源を一本のLANケーブルで伝送する規格に対応する予定で、送信機側もしくは受信機側の一方から電源を送れば、両方が動作できるようにしたいとしている。

この製品が実現すれば、電源の取れない屋外に設置したバッテリー駆動のカメラからでも、電源設備のある受信機側から送信機側に配電することができ、延長機を使用することが可能になるという。早く製品の登場が待たれる製品だ。


Vol.02 [QBEE 2014] Vol.04

WRITER PROFILE

黒田伴比古

黒田伴比古

報道・ドキュメンタリーエディターでありながら、放送機器に造詣が深く、放送局のシステム構築などにも携わるマルチプレーヤー。