次世代の高画質映像を予感させる技術や製品に注目

今春のNABにも増して実用にむけた4K対応製品が多数登場。そして、単に高解像度というだけではない、次世代の高画質映像を予感させる新たな技術発表や取り組みの状況も発表され、このIBCは非常に内容の濃い開催となっている。それでは気になる会場からメーカー別に取り上げて行こう

Panasonic | 正式製品発表Varicam 35とVaricam HSを中心に、4K関連が充実

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“See the future of your business”をテーマに、待望の正式製品発表となったVaricam 35とVaricam HSを中心に、4Kコーナーを大きく設置。スタンダードな4K撮影のためのカメラであるVaricam 35は、14ストップのワイドダイナミックレンジ(実質15.5ストップとの関係者談)で低照度における低ノイズを実現、またフィルムルックに迫る広い色域を実現する“V-Gamut”が新開発・搭載された。

最近公開されたハリウッドで制作されたデモ映像は、カラーグレーディングもLight Iron社の協力を得て、広範囲な分野で使用されることを想定し、映画やドラマ、ドキュメンタリーなど場面ごとのシーンで様々な工夫がなされている。特に空撮のナイトシーンなどでは従来撮影が難しかった高層ビルへの夜景ネオンの映り込みなども鮮明かつ精彩に表現されており、その実力のほどが伺われる。

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従来のVaricamではF-RECとして搭載されていたものに、ダイナミックレンジをさらに拡張した「V-Log」として今回は正式にLogとして搭載。実はパナソニックが初代Varicamの時点から開発して来たLogカーブであるが、今春のNAB時点ではまだ最終の設定に至っていなかったものの、結果的にはARRIのLog-Cに近いガンマカーブとして提供されている。

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さらに色域に関してはREC.709以外に、従来V-REC、CINE-LIKEに相当したシネマティックなガンマカーブを、V-709として新たに搭載している。ちなみに最新のDaVinci Resolve 11では、すでにV-Log、V-RAWへの対応が発表されている。またPanasonicとcodexのV-RAWレコーダーでは120fpsまでの収録が可能になるとのことで、年末までに対応予定だ。

今回はニューVaricamのリリースにあたってのVricamの特設サイト、そして新たなユーザーとのコミュニケーション活性化のため、専用のFacebookページも新たに開設。今後、Varicamに関する様々な情報公開はSNSベースを基本に行っていくという。

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また4Kコーナーの隅に小さいスペースながらも民生機のコーナーが設けられ、デジタル一眼レフのLUMIX DMC-GH4、ウェラブルカメラのHX-A500、そして注目の新製品HC-X1000と3種の4Kカメラも一斉に展示。筐体とレンズの間の鏡筒リングがスタンバイ時のブルーからREC時にはレッドに変わるのが印象的なHC-X1000は、20倍レンズ搭載、1 / 2.3インチセンサー搭載の4Kカメラでハンディサイズの筐体ながら、4K=60p/50p、さらにUHD(3840×2160)ということで放送局関係者からも大きな注目を集めていた。

また24pのみだがDCI4K(4096×2160)も撮影できる。汎用メディアであるSDカード収録、4K対応として強化されたスタビライズ機能(HDでは5軸、4Kでは3軸)や、IR(赤外線撮影)機能も搭載されている。価格も3000ユーロ、日本円では35万円程度で10月末発売予定だ。ちなみにこの3機種で、今回のIBCでの注目製品賞でもある“What Caught My Eye / Digital Dividend”を受賞した。

Sony | 4Kと放送局、プロダクションの実用に向けIPソリューション紹介

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展示テーマは“Beyond Definition”とNABと同じテーマで12ホールのほぼ全域を使って展開された今回のソニーブース。印象的なのはそのブースデザインで、これまでのソニーブースとは些か傾向の異なった、スケルトンコンクリート風の柱で各分野ごとにエリア分けされたデザインだ。

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センター上部には「スーパーレゾリューション・デモザイキングプロセッサー」を使用した4K OVERのコンテンツのための映像システムのデモとして、4Kスクリーンを3枚横並びに配置した計12Kの巨大画面が設置され、F65撮影によるサッカーワールドカップやレッドブルエアレースなどの4K映像を3台の4Kプロジェクターで12K作品として上映していた。

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大きな傾向としては放送局、プロダクションの実用に向けたIP化へのソリューション紹介に、また今回の大きな注目製品である、PXW-FS7。全くの新ラインナップとして登場しており、ターゲットはシネマというより、ドキュメンタリーやミュージックビデオ向けなど、フリーランスでも手軽に4Kが撮れるカメラという位置づけ。

これはNEX-FS700の後継機という位置づけというわけではないそうだ。またワンマンオペレーションを強く意識して、昔のスーパー16mmを想像するユニークな筐体になっている。グリップやショルダーパッド、VFなどのワンマン撮影にこだわったデザイン設計。センサーはF5に搭載されているものと同じ、ベース感度ISO2000のスーパー35mm CMOSセンサーを搭載。低照度やダイナミックレンジが必要な被写体に対して有利だ。HS機能は各解像度サイズによって異なるが、フルHDサイズでは180fps / 最大7.5倍までのHS撮影が可能。詳しいHSの仕様は以下の通り。

  • HD XAVC収録:1~180fps(※XAVC-Intra収録)、XAVC-Long=120fps)
  • 2K RAW収録:120 / 240fps(※XDCA-FS7+HXR-IFR5+AXS-R5装着が必要)
  • 4K XAVC-Intra収録:1~60fps
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また収録では、XAVCの2種類のフォーマットを採用、XAVC-Sに変わってFS7では新たにXAVC-Long GOPを搭載、4K XAVC-Long GOP搭載機種としては初のモデルで、フルHD時では4:2:2 50Mbps、35Mbps、25Mbpsの撮影に対応し長時間撮影にも対応。さらに拡張ユニットのXDCA-FS7を装着することで、この中にProResのエンコーダーが内蔵されており、本体内のXQDカードにProRes(422 HQまで)で収録ができる。

レンズはEマウント仕様で、このFS7ユーザー向けに3本リング仕様など動画用レンズとして新たにEマウント電動ズームレンズ「SELP28135G」(FE PZ 28-135mm F4 G OSS)を発表。ボディのみの「PXW-FS7」(98万円+税 / 10月23日発売)と、このレンズが付いたレンズキット「PXW-FS7K」(128万円+税 / 12月発売予定)がある。ズームのサーボ機能はグリップ側のコントロールで操作可能で、ちなみにこのレンズ自体はフルサイズ35mmに対応している。

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その他、ミニカムコーダーでは1/2型3CMOSセンサー搭載、PMW-X200を新たにラインナップ。最新のXAVCも搭載する一方で、同じ25MbpsのDVCAMモードを搭載しているのが面白い。これは未だにアナログ放送の地域に向けたもの。またPMW-X180にも搭載されていたMIシュー(マルチインターフェースシュー)を搭載。ミニライトやマイクなどにカメラ側から電源供給が可能だ。ショルダー式のカメラではXDCAMメモリーカムコーダーPXW-X500を発表。MPEG-4 SStP以外に今後はProRes、DNxHD収録にもオプション対応するという。

その他では、フィールドレコーダーPMW-RX50は、3.5インチ液晶画面を搭載したカメラ外部でS×SカードにHDのXAVC、MPEG HD422を収録できるレコーダーだが、S×Sへの専用アダプターを使えばXQDカードも使用可能だ。その他スイートでは、4Kの次世代高画質に対応する新技術なども参考紹介されていた。



txt:石川幸宏 構成:編集部


Vol.00 [IBC 2014] Vol.02