世界からカメラファンが集まる理由

ケルンメッセの全体の11ホール中、7ホール分(といっても実際には2階層のホールもそのうち4つあるので11ホール分に相当)を使ったフォトキナは、日本でも毎年2月ごろ開催されるCP+に比べ、その会場規模は約10倍以上、映像業界の最大イベントNABと比べても、おそらく2倍程度のサイズはあるのでは?という実に広大な規模で開催される。

その中において、フォトキナといえば、やはり大半はスチルカメラと写真系の展示が占める。その辺は写真好き、カメラ好きにはたまらないほどの最新情報に溢れている。しかし2009年のDSLRムービーの誕生とともに、ムービー系の需要もかなり高まった。今年は前回の2012年の時に高い評価もあったことから、各社ムービーユーザーへの情報供給も重点に置いた展示や会場デザインが目立った。

会場から気になるブースを紹介

■キヤノン | Come and See をテーマにEOS 7D Mark II発表など
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5年ぶりのリプレースとなる、EOS 7D Mark IIをこのフォトキナに合わせて発表。これまでのEOS-1D Mark IVに取って代わる、同社のAPS-Cセンサーサイズカメラのフラッグシップ機として登場。秒間最高10コマの連写性能や、被写体の顔、色などを検知して追尾するEOS iTR AF、そして高精度なAF追従性能を発揮するAIサーボAFによって、より動体撮影性能に優れたカメラとして、5D Mark IIIとはユーザー層も棲み分けされているようだ。

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動きに強いカメラという触れ込みのためか、会場では動画被写体の体験コーナーやほとんどのデモ機に望遠系の長玉が装着されていた。またCIENMA EOS SYSTEMのコーナーも設置されており、ミニスタジオをイメージしたセットが組まれていた。

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その他には、小型のミニビデオカメラLEGRIA miniの新製品LEGRIA mini Xが発表(日本ではiVIS mini、新製品は未発表で発売も未定)。

今回キヤノンは3ホール上部の全てを占めるブース規模で、今回から会場のデザインが大幅に一新された。今回のイメージ・キャッチコピー “Come and See” は、スマホや携帯カメラから写真の世界に入ってきたような、新しい写真好きのユーザー層に対して、本格的なカメラの面白さや魅力を発見して欲しいという意味合いだという。

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コーポレートカラーの赤色をキーに、会場のコンパニオン女性は赤色のボブヘアで出迎えてくれる。手渡されるLivePass(NFCカード)でブース内の情報を持ち帰り、帰宅後確認できるサービスや各製品別に愉しみながら体験できるコーナが設けられていた。

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会場エントランスにも威風堂々グラディエーター・フットボールの選手が

また、今回のシンボルイメージとして、欧州でもまだ認知度が低いが、その風変わりな様式に次第に人々の興味が高まりつつあるという「グラディエーター・フットボール(上半身裸身で殴る蹴るの複合格闘技の要素も含んだラグビーのような新たなジャンルのスポーツ)」の画像を全面に配置。まだ知らない未知の世界へ、ユーザーの興味を歓喜させるという発想で好感の持てるブースデザインだ。

キヤノンがフォトキナ会場で上映していたグラディエーター・フットボールの映像と、これをモチーフにしたEOS iTR AFのテスト撮影の模様がYouTubeで公開されている。

■ZEISS | 新製品OutsとLoxia発表
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ツァイスは新たなレンズ2種を今年の新製品として公開。レンズは早くも世界最高の中望遠レンズの呼び名も高い、Outs1.4 / 85を発表。軸上色収差を極限に押さえ込み、カラーフリンジ(偽色)が存在しないという逸品。ZEとZF.2マウント対応。

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Outs1.4 / 85

もう一つの注目の新製品Loxiaは、ソニーα7シリーズにフィットした、Eマウントで35mmフルサイズ対応の2/35mmと2/50mmの2本。どちらも非常にコンパクトな設計でレンズとしての同社ならではの高性能さは当然ながら、今回は動画撮影時に特に有効な、絞りのスムーズな無段階調整を可能にする絞りリングのデクリック・オプションが装備。

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新製品Loxia 2/35mm 2/50mm

■Leica | カメラの雄ライカへ同志が集う
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1ホールすべてがライカの展示ホールでまずは参加者はその洗礼を受ける。やはりカメラはここから生まれたという、その威厳と精錬されたブースデザインのセンスの良さに圧倒される。カメラを紹介するというよりも、世界中のライカファンのための2年に一度のサロン的な良い雰囲気に包まれている。

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動画関係では奥のプロフェッショナルCINEコーナーにひっそりと3台のムービー機が飾られ、その内の一台に、今回発表された4K+ライブビュー対応のCMOSセンサーを搭載したライカS(Typ007)のデモ機が置かれていた。4K動画記録は4096×2160/24fpsのMotion JPEG、4:2:2仕様、HDMIの出力端子により外部レコーダー等に録画可能。ライブビューは60fps。他の2台はF55とALEXAにそれぞれライカ製のシネレンズのプレゼンテーション。 しかし特に説明員もおらず、ライカ自体の動画系へのアピールは感じられなかった。

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奥の半分はギャラリー会場となっており、今年は音楽をテーマにした写真が有名ミュージシャンや関係者(ブライアン・アダムスやビートルズのポール・マッカートニーの娘など)の写真がギャラリーを埋め尽くしていた。また出来たばかりの新社屋の紹介CGビデオが流されるなどライカファンの心をときめかせ、癒す場所になっていた。

■RED DIGITAL CINEMA | Digital Still Motion Cameraのフローを紹介
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創業当時からのコンセプトであるDSMC(Digital Still Motion Camera)のコンセプトを昨年あたりから思い切りスチルの方向へ舵を切っているRED。

今回はIBCよりも大きなブーススペースを確保し、NABのときと同様にファッションショーを撮影するというデモが繰り広げられ会場を沸かせていた。

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またRED EPIC等で撮影されたデータを大型プリンターで出力し、その画質の良さを証明するなど、スチルカメラとしてのモチベーションアップに余念がない。最近海外のメジャーなマガジン関連の撮影では、電子メディアとの連携でスチルとムービー(メイキングなどが多いが!)と一緒に撮ることはほぼ当たり前となってきており、REDカメラの訴求先としても今後重要な部分を占める分野になりそうだ。

■リコー | WG-M1でアクションカム市場にも参入
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リコーイメージングは、防水仕様の新型タフカメラ「WG-M1」を展示。1400万画素、1/2.3型CMOS搭載。レンズ画角160°(16.8mm換算)、水深10mで連続1時間動作、−10℃でも動作可能。動画30fps、タイムラプス撮影、ハイフレームレート撮影は120fps(848×480)1.5型のモニター搭載の仕様になっている。多機能なアクションカメラの登場と言える。

■ブラックマジックデザイン | 今年発表したStudio Camera、URSA等の充実したカメラ機材の展示
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映像系の展示会とほぼ変わらない規模で出展を果たしたブラックマジックデザイン。今回はやはりBlackmagic Cinema Cameraを中心に、今年発表したStudio Camera、URSA等の新シリーズを含む充実したカメラ機材の展示を中心にラインナップ。会場には至る所にまたも巨大バナーが登場。

■photokina movie
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ホール6の会場には、一角に設けられたムービー系のワークショップやセミナーが開催される場所が設けられていた。パワーユーザー等によるセミナーが開催され、それをWebで生中継する。ブラックマジックデザインとツァイスがスポンサーとなっており、その中継機材はほぼすべてブラックマジックデザインの機材で構成。

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txt:石川幸宏/編集部 構成:編集部


Vol.00 [Photokina 2014] Vol.02