txt:江口 靖二 構成:編集部

2015年のテレビはどうなるのか?

CES2015でのテレビ関連でのポイントは2つある。1つはQuantum Dot TVやHDRなどの色表現に関しての話題。もう一つがスマートテレビだ。スマートテレビには明確な定義があるわけではない。3年ほど前からテレビをネットに接続して、YouTubeのような放送以外のコンテンツを視聴するためにさまざまな試みが行われてきた。当初はTwitterのタイムラインをテレビに画面分割表示する機能も多く登場したが、やはりテレビといった家庭内でのパブリックなディスプレイに対して、プライベートなSNSを表示するというのはあり得なく、すっかり無くなってしまった。ちょうどこの頃に、GoogleTVが鳴り物入りで登場したが見事に失敗した。この辺りが第一世代といえるだろう。

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GoogleTVの時のソニーブース

少なくとも第一世代のスマートテレビは、全くスマートではなかった。ひたすら多機能になり、操作が複雑で、そのためリモコンには無数のボタンが並び、そこ結果新たに得られるものは、NetflixとhuluとYouTubeがテレビで見られることだけだった、と言ってもいいだろう。

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第一世代スマートテレビのヴィエラコネクト。整然と並んだボタンをリモコンの上下左右キーで動かす

第一世代で浮き彫りになった課題は、結局はコンテンツとしてはYouTube、Netflix、huluでほとんど事足りる、というのは言いすぎだが相当それに近いということだ。極端にロングテールなコンテンツが無数にニーズがあるわけではない。そしてこれらと放送を切り替えて視聴しようとすると、結構もたつくのも気になった。これはテレビ視聴系とネット系の回路や信号処理が独立しているためだ。テレビチャンネルを切り替えるように、テレビとネットの間をサクサク行き来することが難しかった。

こうした課題解決のために、メーカーが同時に向かったのが軽いOSの導入である。これらは自社で一から開発するよりははるかに手軽で、安価で、スピーディーに導入ができるからである。スマートフォンとの親和性も高い。パナソニックは「Firefox OS」、サムスンは「Tizen」、LGは「WebOS」、そしてソニーとシャープは「Android TV」だ。

各社の選択を並べてみると見事にバラバラになっているが、これには事情がある。VHSとベータ、ブルーレイとHDDVDのような場合では、コンテンツ流通のためには完全な標準規格化が必要になる。一方ネット上でコンテンツを配信する場合には、TCP/IPやHTMLのレイヤーでデファクトとして標準化できてさえいれば、あとはコーデックがH.264、HEVC、あるいはYouTubeのVP9なのかという問題だけだ。

「だけ」というのは乱暴であるが、ここを標準化するために時間と労力を費やしても、進化のスピードを考えるとデファクト主義で行かざるをえないのがインターネット側の事情である。いいか悪いかはともかく、スマートテレビの規格を標準化しようと考えているのは日本のハイブリッドキャストくらいである。

では各社の第二世代スマートテレビを見てみよう。まずはAndroid TVである。実はソニーとシャープでかなりデザインや動作が異なっている部分がある。

ソニー | Android OS

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ソニーのAndroid TV。すべての操作項目を表示させた場合。ホタン類は上下にスクロールする。ただし通常はこの状態にして操作させる前提にはなっていない

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リモコンは非常にシンプル。上半分はタッチパッド

ソニーのAndroid TVにはホーム画面という考え方がない。「ワンフリックエンターテインメント」をキーワードに、非常にシンプルなタッチパッド付きのリモコンを指先でフリックすることからスタートする。どちらかというと、今見ているコンテンツを中断させること無く、次の選択を行えるといった、思考や操作を中断しにくいUIUXだといえる。

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人差し指などでタッチパッド部分を上にフリックすると、画面下部に操作メニューが現れる

シャープ | Android OS

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シャープのAndroid TV。ソニーと比較するとかなりUIや構造が異なっている。それほどAndroid TVは柔軟な対応が可能とのこと

シャープは自社のスマートテレビ機能であるSmartCentralの中のAndroid TVは1プラットフォームという位置づけである。放送とネットの切り替えも相当ズムーズだ。

また両者ともに、Android TV そのものを全面に出して訴求するということを行っていない。むしろブース内ではほとんど気が付かないくらいの訴求である。これはAndroid TVというプラットフォームを全面に出してしまうと、他のAndroid TV採用メーカーとの差別化が出来なくなってしまうジレンマがあるからだ。

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ソニーのAndroid TVの説明のためのプレート。ここにしかAndroid TVの文字はソニーのブース内にはない
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シャープブースでもAndroid TVとしての訴求はたったこれだけ。現場ではロゴはほぼ読めないほどだ

パナソニック | Firefox OS

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Firefox OSを採用したマイホームスクリーンの画面

パナソニックはFirefox OSを採用する。しかしまだまともに動いている感じとはいえず、リモコンもオリジナルではないということで撮影は許されなかった。デザインも動きもあまり洗練されている感じがしなかったので、今後に期待をしておきたい。

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極端にシンプル

サムスン | Tizen OS

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サムスンのTizen OS

サムスンはTizen OSである。全体としてUIデザインが良くない。写真にあるようなAPPs選択画面のこの配列デザインはどうかと思われる。操作していても楽しさを感じなかったのが残念。

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サムスンのリモコンは特徴なし

LG | WebOS

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WebOSを搭載したTV

LGはWebOSを昨年から採用、展開している。LGは赤外線によるリモートマウスで操作を行うのだが、これがやはり使いにくい。手に持ったリモコンはどうしても手が動いてしまうので、画面上でも細かく振動して見えてしまう。GUIデザインも比較的選択エリアというかボタンエリアが狭いので、操作を慎重に行わなければならない感じがする。この点を除けは、切り替えなどのスピード感は最も速い印象を受ける。

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LGの赤外線マウス搭載のリモコン

こうして各社の製品を操作してみると、サクサク感や操作性については、かなり向上したと思う。UI/UXについてはまだ改善の余地があるのは事実だ。また肝心のコンテンツ、あるいはこれで、どういう新しさや利便性を視聴者に提供してくれるのかについては、まだ未知数のままだ。


txt:江口 靖二 構成:編集部


Vol.06 [CES2015] Vol.08