txt:江口 靖二 構成:編集部

盛況な3Dプリンター業界から見えてくる事

今年は3Dプリンターの出展が非常に多い。この3Dプリンターで出力するためには、元になるデーターが必要だ。工業的あるいは商業的には、CGやCADのソフトウエアで作成しても構わないが、すでにあるモノをスキャンするというニーズは、個人や家庭に3Dプリンターが浸透していくためには不可欠と言ってもいい。


■Matter and Form社
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599ドルで3Dスキャナーが登場

まずは本当にホームユースな、お手軽な3Dスキャナーから紹介したい。Matter and Form社の3Dスキャナーは価格が599ドルである。スキャン出来る最大サイズは22.9cm×20.3cmまでで、分解能は0.43ミリ。ターンテーブルに対象物を乗せて回転させながら、赤色レーザー光を照射していく。注目すべきは、なんといってもこの価格だろう。小物に限定はされるが、実体物の3Dコピーを手軽に行えるような時代になってきたわけだ。


■iSense | 3DSystems社
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人物をスキャンする様子の実演中

続いては3Dスキャナーでも実体物のコピー作成というより、スナップショット的であったり遊びの要素が強い使い方である。3DSystems社のハンディタイプの3Dスキャナー「iSense」だ。分解能こそ1ミリだが、人間のような大きな物体をスキャンすることができる。iPad上の専用アプリで動作させる。CESの現場で見たスキャンの様子は、本体を片手で持ち、iPadで画面を見ながら、まるで人物の周囲の空間に、ペンキでも塗るような感じで作業していく。

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iPadだけで完成

スキャンは重なりや抜け落ちがないように、モニタリングしながら作業していく。人間1人分だと1分もかからないくらいだ。最大で3メートル四方までスキャン可能なので、街に出てスナップ写真を撮るような感覚で、スキャンができるのは楽しそうだ。日本でもすでに発売されており、価格は税別7万円。ノートPCで処理する「Sense」もある。


■SCANITY | Fuel3D社
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LED3光源、カメラは2台

Fuel3D社の「SCANITY」は、PRONEWS読者には最適なセレクトかもしれない。価格は1490ドルであるが、非常に高精度な3Dスキャナーシステムだ。どちらかと言うと3Dプリンターに出力するというよりは、CG制作のために取り込みツールといえる。ハンディタイプのスキャナー部分には3点のLED光源が装着されている。これによってスキャン制度の向上と、光源の移動による影の再現がよりリアルに実現できるという。分解能は0.35ミリ。

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撮影は一瞬。顎の下にあるのがキャリブレーション用のマーカー
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取り込み後にマスキング補正などの処理

■Sprout | HP
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静物をスキャン

HPからは「sprout」というちょっと変わったPCが展示されていた。ディスプレイ一体型PCで、上部にはインテルの3Dカメラとプロジェクターを持っている。手元のタッチマットは20インチで20点タッチ。サブスクリーンであり、バーチャルキーボードにもなる。このタッチマット上に物体を置いて3Dスキャンすることができる。

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スキャン後のレンダリングはあっという間に完了

専用の価格は1899.99ドル。担当者によると、まもなくsproutに最適化した3Dプリンターを発表するとのことだ。この製品は見た目のデザインも機能も、久しぶりにワクワクするPCであるように思えた。

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スキャン中の様子

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スキャン中の様子

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バーチャルキーボードも同時に実現


■Food Printer  |XYZPrinting社
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XYZPrinting社のその名も「Food Printer」

こうした3Dスキャナーはプロ用の高精度なものから、おもちゃに近いものまで、バリエーションが一気に拡大した。3Dプリンターの方でも、食品や衣服といったものをプリントすることも可能になってきた。誰がどこで何のために3Dスキャンして、3Dプリントするのか。この先家庭や個人向け市場がどこまで拡大していくのか、ニーズはどれくらいあり、新たなニーズをどこまで作り出せるのか、たいへん興味深いところだ。

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クッキーの材料を出力。このあとオーブンで焼いて完成



txt:江口 靖二 構成:編集部


Vol.07 [CES2015] Vol.09