[After Beat NAB SHOW 2016]Vol.02 「VoIP」「VR」新領域で向かう映像の世界
2016-05-27 掲載

急速に進むIP化。新しい映像提供のされかた

昨年もIPは話題になっていたが、積極的に推進し、製品化しているメーカーは少なかった。理由の一つとしてパケット落ちや遅延、同期などの問題があったからといえるが、今年はAIMS(Alliance for IP Media Solutions)アライアンスや、ソニーIPライブアライアンスのほか、TICOアライアンス、ASPEN(Adaptive Sample Picture Encapsulation)コミュニティなど、それぞれ一長一短はあるものの、ある程度方向性は決まってきたようである。今後統合されていったり、適材適所で使い分けが進んでいくことと思われる。
いずれにしても4K/8Kでは従来のSDI伝送では難しくなり、HDや4K/8Kが混在するようになればなおのことIP伝送が必要になるだろう。国内ではすでに難視対策とか情報過疎化、災害放送などでCATV局のインフラがIPで整備されているところも多いものの予算的な問題もあり、すぐには導入できないのではないだろうか。キー局もすでに系列のネットワークが構築されており、BSやCS、インターネット放送を行っているところもあるので、4K/8Kが本格的に普及するまで様子見になるような気がしてならない。こうしたことが海外ほど国内では注目されない理由といえるだろう。
海外ではスポーツイベントを専門に扱うプロダクションがあるが、そうしたプロダクションでは、スポーツイベントを複数の放送局などにリアルタイムで配信したりするわけだが、衛星やマイクロを使うよりIPのほうが何かと都合がよいので、すでにそうした装備の中継車を導入したプロダクションがあったりする。国内でも局と資本関係のないプロダクションが中継車を所有している会社もあるが、特定の局などに依頼されて中継車で収録するというスタイルだ。イベントを主催する側がこうしたプロダクションを使って必要な局に配信するスタイルが多くなれば、IP化のメリットがでてくるだろう。スポーツイベントや音楽イベントでは、会場内の大型スクリーンなどに映像を流したりしているので、設備的にはIP化のメリットはあると思われる。
また、放送局などでもすでにネットからの情報を番組制作に活かしているので、IP化とリンクすることができるかもしれない。海外では独立した地方局やCATV局、インターネット放送局などが多いが、国内では殆どの地方局はどこかのキー局の系列だし、独立したCATV局も少ないのが現状。国内でのIP化は番組制作にどのように活かせるのかが鍵になりそうだ。イベント関係では国内だけでなく海外への配信、例えば相撲や海外でも知名度のあるアーティストのイベントならば言葉の壁を超えて配信可能だろうし、カワイイを発信する原宿放送局や、オタクの聖地アキバなど可能性がありそうだ。すでに個人で何十万ものリスナーをもつYouTuberなども存在するのでコラボするというのもありだと思う。

国内でのIP化は既存の回線をIP化とか4K/8Kの伝送路としてのIP化よりもこうした取り組みにより新たなビジネスモデルとリンクした発想が必要ではないだろうか。ネットの世界は4K/8K、HDRなどフォーマットにとらわれない配信が可能で、コンテンツの内容に合った配信ができる。PRONEWSでも360°の動画配信を行っているが、視聴者が自由な視点で視聴できるというスタイルは昔流行った3D放送とは別の次元といえるだろう。こうした映像の配信では視聴者が視点を選択する操作が必要になるわけだが、スマホをディスプレイとして利用することで、スマホ内のジャイロセンサーに連動した視点の操作も可能だ。今のところこうしたバーチャルリアリティを利用した番組を配信している放送局はないが、新しい番組制作としての可能性はあるのではないだろうか。
SDIに代わる伝送路としてSDI over IPが4K/8Kでは必要とされており、すでにSMPTE 2022という規格が決めれられている。現在ベースバンドで伝送できるSMPTE 2022-6から2022-7へと進んでいるが、今回のNABではAIMSおよびIPライブプロダクションを採用するメーカーが多かった。いずれSMPTEの規格になってくるだろうが、別々の規格となるのか統合されるのか、今後の成り行きに注目したい。
AIMS

IPライブ

効率的なIP伝送におけるプロトコルとしてASPENとTICOを採用するメーカーが今年のNABでは多かった。TICOはintoPIX社の圧縮フォーマットを採用しており、最大で4:1の視覚上無損失(ビジュアリー・ロスレス)の圧縮技術となっている。ASPENはMPEG2-TSベースの圧縮で、独立したビデオ、オーディオ、補助データ・フローを用いた超低遅延を特徴としている。
ASPEN

TICO

AJA Video Systems

Blackmagic Design

グラスバレー


NewTek

JVCケンウッド


パナソニック


ソニー


GoPro


[ Category : SPECIAL ]
[ DATE : 2016-05-27 ]
[ TAG : Report NOW! After NAB Show NAB2016 After NAB Show 2016]
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