多岐にわたる周辺機器のこれから

4K放送もCSやネットなどを通じて開始されており、4K対応スタジオや中継車なども徐々に広がりを見せ始めている。カメラも初期の4Kカメラから2世代、3世代へと進み、レコーダーを始めとした周辺機器も充実してきた。現状地上波はHDだが、パッケージメディアやWebなど、ワールドワイドではSD機器もまだ現役というというところも少なくない。4K機器とのブリッジや相互変換、アナログからデジタル、IPへの新たな伝送路の対応など、周辺機器への要望は多岐にわたるようだ。

開業当時から一貫してレコーダーを手掛けるATOMOSは、4K60p収録が可能なSHOGUN INFERNOを発表。1500nitの高輝度LCDによるLogガンマ対応の表示や、12G-SDIおよびMDMI2.0の入力端子を装備し、旧機種から最新のカメラまで対応。カメラ側ではできないフォーマットでの収録が可能だ。以前はVTRからのアナログ出力をキャプチャするためのインターフェースが各社から発売されていたが、現行のほとんどのカメラはメモリー記録となった。VTRのようなキャプチャデバイスは過去のものとなってしまった。

Blackmagic Design UltraStudio 4K Extreme 3は、こうしたアナログ入力から最新の12G-SDI入力まで様々なフォーマットに対応したキャプチャデバイスの最終系といえるだろう。もちろん現行HDに対応した新製品としてローランドSDIビデオスイッチャーV-1SDIといった製品もあり、コンバーターも単なる変換装置としての役割だけでなく、モニターが搭載されたエーディテクノマルチコンバーターX_TSといった新種が登場している。ほかにもオーディオレコーダーやLEDライト、バッテリー、三脚など今年は盛りだくさんの周辺機器が新製品として登場した。

PRONEWS AWARD 2016 周辺機器部門ノミネート製品

  • ATOMOS モニター一体型レコーダーSHOGUN INFERNO
  • ローランド SDIビデオスイッチャーV-1SDI
  • Blackmagic Design UltraStudio 4K Extreme 3
  • エーディテクノ マルチコンバーターX_TS
  • プロ機材ドットコム LEDリングライトビューティーライト

何が受賞するのか…?

PRONEWS AWARD 2016 周辺機器部門受賞製品発表

周辺機器部門
ゴールド賞
モニター一体型レコーダー SHOGUN INFERNO

ATOMOS

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HDRワークフローに関する新機能として、PQ in/out(PQガンマ入出力)機能を搭載したことが単なるレコーダーと異なるところで、Logガンマ映像入力時にリアルタイムでPQガンマ(SMPTE ST2084)へ変換し、搭載されている1500nitの高輝度モニターに表示可能。またPQガンマ対応HDRモニターに出力することも可能。

4K60pによる収録のほかにも、RAW to ProRes/DNxやソニーFS RAWのHD 240fps出力にも対応し、2K240pの連続記録が行える。記録メディアは各社の2.5インチHDDまたはSSDが利用可能で、現状最大2TBまでの記録メディアが動作確認されている。記録メディアは同社の専用カートリッジに装着してレコーダーにセットするが、G-Technology社ではこの専用カートリッジに対応した周辺機器を発売しており、PCへのインジェストや場合によっては専用カートリッジのままで編集作業が行える。

4K収録では高速なメディアが必須となるが、安価な記録メディアを採用することで、ランニングコストはXQDやCFast、カメラメーカー専用メディアよりも低く、大容量のものが使用できるメリットがある。

周辺機器部門
シルバー賞
SDIビデオスイッチャー V-1SDI

ローランド

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ほぼ同じデザインのHDMI対応のスイッチャーが発売されているが、V-1SDIは、HDMIとSDIに対応しており、スケーラーやダウンストリームキーヤーを搭載。4つある入力のうち1chと2chが3G-SDI入力、3chが3G-SDIまたはHDMI入力、4chがHDMIでスケーラーを搭載している。

4chはHD以外のビデオフォーマットにも対応し、DSKはこの4chを利用可能となっている。DSKはクロマキーまたはルミナンスキーによる合成が行えるほか、サイズや表示位置などの設定も可能で、PCなどを接続して手軽に文字やロゴをスーパーできるようになっている。入力やDSKは一般のスイッチャーに比べ制約もあるが、コンパクトなのでデスクトップだけでなく、フィールドで簡易スイッチャーとして使用可能。また、コストパフォーマンス(約20万円)も良くいろいろと使い回しができるところを評価したい。

総括

4K/8Kの機材が目立つなか、今年は比較的地味なHD機材も含めて選考対象にした。特に4K収録が一般的となり、カメラを始めとして対応機材のさらなるローコスト化が進んでおり、そのあたりもポイントとした。SDの時代はコンパクトなスイッチャーを発売しているメーカーが国産でもいくつかあったが、HD、特にHD-SDIに対応したコンパクトスイッチャーはほとんどないのが現状だ。ローランドのV-1SDIはHDMIとHD-SDIに対応しているほか、簡易的だがDSKも搭載しているため、様々な用途で使用可能だ。もちろん価格的にもリーズナブルで小型ビデオカメラを中心にしたマルチカメラ収録にぴったりといえる。

一方、ATOMOS SHOGUN INFERNOは20万円台という本体価格だけでなく、記録メディアやバッテリーなどを含めてリーズナブルな価格で収録システムを揃えられる。また、G-Technology社がATOMOSの専用メディアパックに対応した製品を発売したことにより、ワークフロー上の利便性も格段に向上。さらに、PQガンマの表示機能やオーバークランク対応など機能・性能ともに価格をはるかに上回る仕様となっている。単なるレコーダーの領域を超えた新境地を切り開いた製品と言える。


Vol.02 [PRONEWS AWARD 2016] Vol.04