PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU

トップ > 特集 > [SIGGRAPH2017]Vol.05 さまざまな分野に広がるCGの世界

News

[SIGGRAPH2017]Vol.05 さまざまな分野に広がるCGの世界

2017-08-30 掲載

txt:安藤幸央 構成:編集部

SIGGRAPH 2017を振り返る

VRコンテンツを楽しむ、奇妙な風景

昨年以上にVR三昧だった今年のSIGGRAPH。会場のあちこちにVRゴーグルを装着して体験できる視聴コーナーが設置されており、多くの参加者が楽しんでいた。VR体験の場合、通常の映像鑑賞とは異なる。ひとつの機材で一人しか体験できないこと、装着に手間がかかり、慣れない人は手助けが必要なこと、VR体験中の映像を他者がディスプレイで見たとしても、動きに追従できずあまり意味の無い酔う映像になってしまうことなどだ。VRコンテンツを視聴している最中は良いかもしれないが、その前後の体験もうまく配慮や工夫が無いと、全体として良い体験になりづらいのだ。

銃や剣の動きもトラッキングされるVRゲームを楽しむ参加者

SIGGRAPHの夜のイベントのひとつであるReal Time Live!では、文字どおりリアルタイム映像であるゲーム映像、VR映像、ゲームエンジン、ツールなどが紹介された。デモ用に用意されたPC機材を使って、その場で生成された映像の数々がデモンストレーションされた。ちなみに本レポートVol.01で紹介した「The Human Race」は、Real Time Liveの最優秀賞である「Best Real-Time Graphics & Interactivity Award」を受賞した。

Real Time Live!のデモの様子(当日オンエアー版)約1時間22分)
■Direct 3D Stylization Pipelines

「Direct 3D Stylization Pipelines」は、インタラクティブに操作できる3D水彩画ツール。シンガポールのナンヤン工科大学のSantiago Montesdeoca氏らの研究。水彩画にはすでに知られたさまざまな描画のためのテクニックがあり、それらをデジタル技術で模倣し、習熟無しでも簡単に使えるようにしたもの。一般的に使われている3DCGソフトMaya上に実装されており、後々オープンソースで公開する予定とのことだ。


■Star Wars Battlefront VR: Piloting an XWing for the First Time

Star Wars Battlefront VRは、Frostbiteというゲームエンジンを利用したゲームで、PlayStation4+PlayStation VRで遊べるVRゲームとして、昨年末にリリースされたものだ。VRで何から何まで体験するのではなく、Star Warsの良く知られたシーンのひとつである宇宙船同士のドッグファイティングにゲーム体験を絞ったことによりVRして受けいれられる内容になっている。

IGNによるプレイ映像
■Penrose Maestro

Penrose Maestroは、複数ユーザーで同時に空間を共有できるVRストーリー構築ツール。


■Unity: EditorVR

VRの世界の構築や編集と、それこそVR世界の中で実施してしまおうというVR編集ツール。

Unite Europe 2017の時の発表
■Pinscreen: Creating Performance-Driven Avatars in Seconds

一般的なWebCamで撮影した顔を、リアルタイムでCGキャラクター(アバター)の画像に切り替えてしまう仕組み。実際のデモでも顔の動きに対するCGの動きの追従性も素早く、会場の拍手喝采を浴びていた発表のひとつであった。まず最初に顔の正面の写真を1枚だけ撮影し、Pinscreenのシステムにアップロードすると、その後は顔を動かすとすぐに追従するアバターを楽しむことができる。ゲーム内キャラクタや、ビデオ電話など、さまざまな応用が考えられる。

アートギャラリー展示

SIGGRAPHでの人気コーナーの一つにアートギャラリーがある。通常のアート作品とはまた異なり、社会的に何か提言を示したメディアアート、デジタルテクノロジーを駆使したアート表現が高く評価される傾向にある。今年は思想がこめられた人工物がテーマとなり、ラテンアメリカ各国、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、キューバ、エクアドル、メキシコの7カ国から招待された10の作品が展示された。

■Echolocalizator(コロンビア)

Echolocalizatorは、目を塞がれて、コウモリのように音だけで動き回るための眼鏡。潜水艦のソナーのように、周りの障害物を音に変換して聞くことで、資格の変わりに聴覚を研ぎすまして動きまわることができる。


■Milpa Polímera(メキシコ)

Milpa Polímeraは、トウモロコシを素材とする3Dプリンターが、畑の上をトラクターのように動きながら、トウモロコシ形状の種子を3Dプリントしながら埋めていくというアート作品。生物学的に閉じた空間での生命のサイクルについて問いを投げかけた作品でもある。


■Anti-Horário(CounterClockwise)(ブラジル)

Anti-Horárioは人間の動きや振る舞いをアナログ時計に見立てたインスタレーション作品。地球、子供、大人、空が、それぞれ時計の部品になっている。丸形の映像で時間を示すとともに「人生」のサイクルを表現しているものでもある。


■Dispersiones(アルゼンチン)

人工生命に見立てた物理的に繋がりのあるネットワークを光とスイッチが切り替わるリレーとワイヤーで表現した作品。目の前に立った人の動きを感知して、光と音で反応します。

SIGGRAPHを通しての雑感

米国、それも映画産業のお膝元であるハリウッドに近いロサンジェルスコンベンションセンターで開催されたSIGGRAPH。VRが単なる物珍しいだけのものではなく、「産業」として発展しつつあることが伝わってきた。VR映像独得の従来のチープなCG質感とは異なり、映像産業で活躍している現役のチームがVRコンテンツを手がけたり、大規模な撮影、ストーリー作りを手がけたり、人、資金、機材の掛け方が段違い変わってきているのだ。

VRは、高品質なVRヘッドセットや必要なPCのスペックなども考慮すると、視聴環境が高額になってしまうことがネックだと言われているが、必ずしも価格だけが課題なわけではないことがわかりつつある。映画館や、ゲームセンター、遊園地のようなアトラクション施設で楽しむVRもひとつの視聴方法であるし、スマートフォンを活用したお手軽なVRも入口のひとつでもある。

その一方、ある程度の時間、受け身で楽しむ映画やドラマとも異なり、さらに数日間、数ヶ月感没頭するゲーム体験ともまた異なる。VRの場合現状はまだ、さまざまな要因により一般的には数分間から十数分間の体験が精一杯であり、映像コンテンツの作り方や、ストーリーの構築などもまだまだ工夫しながら業界全体で模索している段階だ。どこかが王道の手法、王道のストーリーを編み出して、だかが一人勝ちしているわけでもなく、勝ち組が生まれているわけでは無い段階だ。

一方、ありとあらゆる分野で、スマートフォン、タブレットといったモバイル技術への流れは止めようが無く、コンテンツを作る、楽しむ、伝える。観るといったあらゆる用途でモバイル端末が必須、第一に考えなければいけないプラットフォームとなりつつある。そう考えた時に、重厚長大なハリウッド映画を手のひらサイズで観ることが最適とは言えず、新しいタイプのコンテンツ、そしてそれらのコンテンツ消費が求められてきている。

映像そのものも、映画、テレビ、DVDといった広く浸透した旧来メディア型のものから、YouTube、SNS上の動画、VR、NetflixやAmazon Primeを始めとする映像配信サービスによるオリジナル映像制作、映像の利権の扱いが複雑かつ変化しつつあり、コンテンツ収益構造も変化しつつある。CG、VFXを駆使した映像はこれからも増えつつ、骨子となるストーリーが重視される傾向は今後も益々加速していくことが予想される。

そしてさらに映像のみならず、触感や香り、体感できる振動など、映像視聴の際にさまざまな感覚を加えて、さらに体験を強化する流れがやってきている。映像もデジタルデータになり、コピーや視聴場所、視聴デバイスに制限が無くなってきている時代だからこそ、そこでしかできない体験、いままでに無かったような特殊な視聴体験を追い求めているのかもしれません。

SIGGRAPH ASIA 2017開催

今年の冬、11月27日から30日の4日間、SIGGRAPH ASIA 2017がタイのバンコクで開催される。SIGGRAPH ASIAは、全体的なセッション数、参加者数などを米国SIGGRAPHと比べると規模こそ半分ほどだが、内容は大変充実しており、日本に居るだけではなかなか知り得ない最新情報と、アジアから参加される各国の作品を楽しむことができる(ただしほとんどのセッションは英語でおこなわれる)。

また来年夏のSIGGRAPH 2018は、8月12日から16日の5日間、カナダのバンクーバーで開催され、さらに、来年2018年冬のSIGGRAPH ASIAは東京(有楽町の東京国際フォーラム)での開催が決定している。次回も、さらに新しい映像技術と映像作りには欠かせないCG/VFX技術の最先端が垣間みれるSIGGRAPHに期待したい。

txt:安藤幸央 構成:編集部
◀︎Vol.04 [SIGGRAPH 2017] Vol.01

[ Category : , ]
[ DATE : 2017-08-30 ]
[ TAG : ]

この記事に関連する記事一覧

[SIGGRAPH2017]Vol.04 CG/VFX映像の最先端のノウハウが共有できるSIGGRAPHの醍醐味

txt:安藤幸央 構成:編集部 制作過程を洗いざらい公開。メイキングの話題がいっぱいのプロダクションセッション プロダクションセッションは、最新のCG技術/VFX技術を... 続きを読む

[SIGGRAPH2017]Vol.03 応用分野はCGにとどまらず。SIGGRAPH2017の論文発表からみる映像技術の進化

txt:安藤幸央 構成:編集部 キリンとスケッチ スケッチのモデルとして会場に運ばれてきた子供のキリンTiny君と、スケッチ講座の様子 今年のSIGGRP... 続きを読む

[SIGGRAPH2017]Vol.02 例年以上のVR三昧。VRシアターで新たなエンターテインメント拡大へ

txt:安藤幸央 構成:編集部 特別なVR体験から、普通の体験へ移行してきたVRへ 常に長蛇の列であったVRシアター入口 最高峰の映画上映システムとして認知さ... 続きを読む

[SIGGRAPH2017]Vol.01 CGの祭典SIGGRAPH2017開催!

会場となったロサンジェルスコンベンションセンター txt:安藤幸央 構成:編集部 VR映像が大流行りだった昨年よりも、さらにVR三昧。レンダリングに手間をかけたCGと、リア... 続きを読む

[SIGGRAPH2016]Vol.05 多種多様に広がるCGの世界

セッション会場に展示された、映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」で使われた実物大スーツ txt:安藤幸央 構成:編集部 SIGGRAPH 2016を振り返る... 続きを読む

[SIGGRAPH2016]Vol.04 最先端のノウハウが共有できるSIGGRAPHの醍醐味

展示会会場の隅に鎮座する「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアン txt:安藤幸央 構成:編集部 展示会場 展示会場入ってすぐ。にぎわうNVIDIAのブース... 続きを読む

[SIGGRAPH2016]Vol.03 VR三昧。体験型VRで会場はまるでテーマパークに

txt:安藤幸央 構成:編集部 体験しないとわからないVR展示の数々 昨年以上にVR系の展示に力が入っていた今年のSIGGRAPH。広大な会場内のあるフロアは薄暗い照明... 続きを読む

[SIGGRAPH2016]Vol.02 多分野への応用が深まるSIGGRAPH2016の論文発表

txt:安藤幸央 構成:編集部 宇宙開発とCG映像との深い関係 毎年、示唆に富んだ基調講演が用意されているSIGGRAPH。今年の基調講演は、米国の宇宙開発を率いるNA... 続きを読む

[SIGGRAPH2016]Vol.01 CGの祭典SIGGRAPH2016開催!

会場となったアナハイムコンベンションセンター txt:安藤幸央 構成:編集部 VR映像が大流行り。SIGGRAPHはより多角的な展開へ。まずはCAFの紹介 SIGGR... 続きを読む

特集記事

inside DaVinci 14 inside DaVinci 14
4月に行われたNAB2017にて発表となったDaVinci Resolve 14を紹介。
SIGGRAPH2016 How to Media Composer | First
Avid Media Composerのインターフェースを誰でも無料で使えるAvid Media Composer | Firstのセットアップ方法や、使い勝手を解説していく。
QBEE2016 BIRTV 2017
中国・北京で開催されたアジア地区ではInterBEEと並ぶ大規模な放送機器展 BIRTVをレポート。
SIGGRAPH2017 SIGGRAPH2017
世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術の学会・展示会SIGGRAPH2017ををレポート。
THE ROAD TO VR THE ROAD TO VR
幅広いジャンルで活用されているVRが、いかに普及、どのように進化していくのかを考える。
Digital Cinema Bülow VI~CineGear 2017 Digital Cinema Bülow VI~CineGear 2017
米国ハリウッドで開催された映画撮影機材の専門展示会 Cine Gear Expoをレポート。
QBEE2017 QBEE2017
九州放送機器展(QBEE)をいつもの会場練り歩き方式でレポート。
After Beat NAB SHOW 2017 After Beat NAB SHOW 2017
東京秋葉原のUDXにおいて開催されたAfterNABshowで今年のNABの総括を考える。
NAB2017 NAB2017
米国ネバダ州ラスベガスにて開催される世界最大の放送機器展覧会 2017 NAB Showをレポート。
SXSW2017 SXSW2017
米国テキサス州オースティンで開催された、SXSW(The South by Southwest:サウス・バイ・サウスウエスト)をレポート。
CP+2017 CP+2017
カメラと写真の総合展示会、CP+2017をレポート。
CES2017 CES2017
世界最大の国際家電見本市、2017 International CESをレポート。
PRONEWS AWARD 2016 PRONEWS AWARD 2016
2016年は映像業界にとってどのような年だったのか。PRONEWS AWARDで部門ごとに振り返る。
Inter BEE 2016 Inter BEE 2016
千葉幕張メッセにて開催されるInterBEE2016をレポート。
InterBEE2016の歩き方 InterBEE2016の歩き方
目的に合わせたブースをピックアップし、最小限の力で最大の効果が得られる最強の「Inter BEE 2016の歩き方」を紹介。
Photokina2016 Photokina2016
2年に一度催される、世界最大のカメラ関連の展示会“Photokina(フォトキナ)”をレポート。

トップ > 特集 > [SIGGRAPH2017]Vol.05 さまざまな分野に広がるCGの世界