txt:小寺信良 構成:編集部

北京取材も本日で3日目。最終日は明日だが、この日はもうブースをたたむメーカーも出てくるそうで、フルで取材できるのは本日が最後となる。国外企業が中国国内へ機材を販売するためには、メーカーが直接販売店に品物を卸すことはできず、いったん必ず中国国内の輸入代理店を通す必要がある。その点では、小物が多いレンズやオーディオではメーカーが直接ブースを出すケースは少なく、輸入代理店がブースを構え、その中に有名メーカーの製品が展示される。

輸入代理店も独占契約している例はそれほどないので、結果的にはあちこちのブースで同じ製品を目にすることになる。中国営業担当のメーカーさんも、4~5箇所のブースをぐるぐる周りながら製品説明をすることになり、なかなか大変そうだ。

中国のクラウド企業とコラボレートして事業展開を行うJVC

そんな中、中国のクラウド企業「奥点云(アウデン)」とコラボレートして事業展開しているのが、JVCだ。奥点云は映像ストリーミングサービスを展開している会社で、放送用途からコンシューマまで、幅広く事業を行なっている。YouTube LiveやUstreamのように表に出てサービスを行うのではなく、そういったサービスのバックボーンを支える会社だ。

地元企業とコラボレーション展示を行なったJVCブース

今回展示しているのは、放送局向けのストリーミングシステムだ。イベントに対してマルチカメラを配備、複数カメラから直接、奥点云のクラウドに映像がストリーミングされる。クラウド側では各カメラのタイムコードデータを照合し、もっともディレイの大きいソースに対して他のソースを同期させ、クラウド上でスイッチング、そのままネットへストリーミングするという「放送事業」を「テレビ局」が行なうというものだ。

独自ファームウェアを搭載したGY-HM200で奥点云のクラウドに直結

日本では小規模なストリーミング方法であれば、やはり小規模な事業者が現場へ出かけていって現場でスイッチング、完成したコンテンツを1本だけストリーミングするという手法が一般的だが、それとは全く次元が違う発想である。

中国においてこうしたことが起こりやすいのは、放送と通信は特に敵でもなく、さらに言えば国がネットを掌握している共産主義社会だからという側面は無視でない。しかしそれが故に、テレビ放送も常に新しいメディアであり続けられるわけで、若い人がどんどん入ってくるという回転のエンジンともなっている。

同じ理屈を資本主義社会へは持ち込めないとは思うが、せめて「放送と通信の融合」の議論が高まった2000年台に、しっかり20年後の未来を予見した議論をしていれば、これほどまでに日本のテレビ産業の将来性が危ぶまれることもなかっただろう。


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