小型化多機能化が一層進んだビデオスイッチャー

イベントやセミナーなどのライブ配信の需要の増加と共に、マルチカム運用によるスイッチャーへの注目度も増している。そんな期待に応えて今年も魅力的なスイッチャーのリリースが相次いだ。ローランドは、SDI/HDMI/RGB 6チャンネルの映像入力に対応した小型ビデオ・スイッチャー「V-60HD」を発売。いろいろな映像機器が直接つなげられる小型ビデオスイッチャーに、自動化対応の高機能オーディオミキサーを内蔵し、動画コンテンツ制作を省力化できるのが特徴だ。

左からローランドの「V-60HD」、「XS-62S」、「XS-1HD」、ブラックマジックの「ATEM Television Studio Pro HD」

同じくローランドの「XS-62S」は、オーディオミキサーを搭載した1Uサイズのコンパクトな6チャンネルのラックマウントビデオスイッチャー。WindowsやMac、制御用タッチパネルからワンタッチでコントロールできる。「XS-1HD」は、ハーフA4サイズ、4 系統のHDMI入出力を備えたマトリクススイッチャー。コンパクトで、場所を選ばずマルチスクリーン出力や画面合成が可能。

ブラックマジックデザインは、ハードウェアコントロールパネルを一体化したオールインワンライブプロダクションスイッチャー「ATEM Television Studio Pro HD」を発売。8系統の入力、マルチビュー、Auxやプログラム出力、アナログオーディオ入力、内蔵トークバック、Flashベースの2つのメディアプレーヤー、プロ仕様のクリエイティブなトランジション、エフェクト用のDVEなどを搭載している。

まだまだ進化するカメラサポート機材

これまでのカメラサポート機材といえば三脚や一脚が中心だったが、近年はスタビライザーへの注目度が増している。その中でも抜きん出ているのがDJIの「Ronin」シリーズだ。DJIはマルチコプターで有名だが、2014年に手持ちジンバルの「Ronin」を発表。今年はその後継となる3軸カメラスタビライザーシステム「Ronin 2」をリリース。大型カメラの搭載を可能にするパワーや高出力なトルクを備え、多用途に対応できる。

左からDJIの「Ronin 2」、マンフロットの「Nitrotech N8」

雲台ではマンフロットの無段階カウンターバランスを備えたフルードビデオ雲台「Nitrotech N8」の存在感が目立った。ナイトロジェンピストン機構を搭載し、8kgまでのカメラとアクセサリーを静止できる無段階カウンターバランスシステムが特徴。

編集ソフトウェアは新バージョンでさらに領域を拡張

左からブラックマジックデザイン「DaVinci Resolve 14」、アドビ「Adobe Creative Cloud」、グラスバレー「EDIUS Pro 9」、アビッド「Media Composer」

今年は特にポスプロワークのアプリケーションも大変な話題を呼んだ年だった。ブラックマジックデザインは、カラーグレーディング+編集にFairlightのオーディオページを追加したアプリケーション「DaVinci Resolve 14」を発表。編集、グレーディング、オーディオの作業がコンフォームなしでシームレスに行き来できるのが特徴。アドビは、Creative Cloudのアップデートを発表。Premiere ProやAfter Effectsで360°やVRコンテンツの編集機能やアニメーションやモーショングラフィックスなどの映像に加工できるAfter Effectsの「モーショングラフィックステンプレート」をPremiere Pro上で利用できる機能強化を実現している。

グラスバレーは「EDIUS Pro 9」を発表。4Kを含むさまざまなHDR、Log素材のリアルタイムネイティブ編集や、プロジェクト単位のカラースペース設定によるSDR/HDRの混在編集が可能になった。アビッドはMedia Composerシリーズを8.9までバージョンアップ。PhraseFindやScriptSyncの再生、8Kプロジェクトのプリセットなどの機能強化をしている。また、完全無料版のMedia Composer | Firstのリリースも話題となった。

PRONEWS AWARD 2017 周辺機器/ポストプロダクション部門ノミネート製品

以上が周辺機器/ポストプロダクション部門のノミネート製品となる。

  • ローランド 6ch HDビデオスイッチャー「XS-62S」
  • ローランド ビデオ・スイッチャー「V-60HD」
  • ローランド 卓上型マルチフォーマットマトリックススイッチャー「XS-1HD」
  • ブラックマジックデザイン プロダクションスイッチャー「ATEM Television Studio Pro HD」
  • DJI 3軸カメラスタビライザーシステム「DJI Ronin 2」
  • マンフロット フルードビデオ雲台「Nitrotech N8」
  • ブラックマジックデザイン 「DaVinci Resolve 14」
  • アドビ 「Creative Cloud」
  • グラスバレー 「EDIUS Pro 9」
  • アビッド 「Media Composer」

何が受賞するのか…?発表!

PRONEWS AWARD 2017 周辺機器/ポストプロダクション部門受賞製品発表

周辺機器/ポストプロダクション部門
ゴールド賞
ビデオ・スイッチャー「V-60HD」

ローランド

V-60HDは、A4サイズとコンパクトな筐体に必要とされる機能をよくここまで詰め込んだという印象。特に注目なのは「スマートタリー機能」で、従来は放送局や大掛かりなシステムでしか実現できなかったタリーのシステムをスマホで代わりに使えるようにしたところは特筆すべき点だ。スマートフォンの点灯で選択中のビデオカメラが一目で分かり、本番中に声を出すことができない収録現場でのコミュニケーションを可能にしてくれるのは嬉しい機能だ。

また、オーディオ機能の充実も目を見張るものがある。2系統のHDMIチャンネルと4系統のSDIチャンネルのほか、18個のオーディオチャンネルを搭載し、入力された音声の音量を自動的に調整する「オート・ミキシング機能」を搭載している。本番中、常に気を配る必要がある音声の操作の手間を省くことができ、ワンマンオペレーションでも対応できるところもゴールド賞の受賞理由とした。

周辺機器/ポストプロダクション部門
シルバー賞
編集ソフト「DaVinci Resolve 14」

ブラックマジックデザイン

シルバー賞は、Fairlightを統合して大きな反共を呼んだブラックマジックデザインの「DaVinci Resolve 14」とした。DaVinci Resolveはこれまでも業界定番のカラーコレクションのほかに編集機能も加わった統合ソフトとして人気が高かった。そこに、今年のNABでFairlightのオーディオ機能と統合してさらに統合ソフトとしてのさらに完成度を高めた。

これまでの映像制作は、編集はAvid Media ComposerやAdobe Premiere Pro、カラーコレクションはDaVinci Resolve、音声はPro Toolsと別々のソフトを行き来してコンテンツを制作していたが、互換性に問題を抱えることが多かった。今後、DaVinci Resolveを使えば編集、カラーコレクション、音声を1本のソフトでコンフォームなしで作業が可能になるだけでなく、撮影現場の収録メタデータを継承したり、オフライン編集も問題なく共有される唯一無二の環境を実現できそうだ。

また、エフェクト機能ResolveFXの充実や、複数のユーザーで同時に作業ができるコラボレーションワークフローなども魅力的な機能だ。今後、映像業界のポスプロワークは次第にDaVinci Resolveに次第にシフトしていくのでは?と思わせるバージョンアップとしてDaVinci Resolve 14をシルバー賞に選出した。


Vol.02 [PRONEWS AWARD 2017] Vol.04