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[新世紀シネマレンズ漂流:最新単焦点レンズ編]Vol.08 ミュージックビデオの制作現場からシグマの単焦点シネレンズの魅力を聞く

2018-03-29 掲載

txt・構成:編集部

REDカメラを使った映像技術と環境を提供する「dittok」

2016年9月、シグマはオランダのIBC 2016の会期に合わせてシネマ用レンズ「SIGMA CINE LENS」を発表。2017年には続々とズームレンズやプライムレンズの発売を開始した。そのシグマのシネレンズの特長は、同社のスチルカメラ用レンズで最高の光学性能を実現するArtラインの性能をそのままシネマ用にしているところだ。ユーザーやレンタルで使用した人たちの間でも、お手頃な価格を実現しながら、シャープな画質と高い解像感を実現していることが話題になっている。

そこで、シグマのシネレンズを使って撮影が行われたAndrey Higuchinsky監督による“LeChat”(るしゃ)のミュージックビデオの収録現場にお邪魔させて頂き、DITとして参加したdittokの伊藤格氏やHiguchinsky監督にシグマのシネレンズの魅力を聞くことができたので紹介しよう。

――伊藤さんがテクニカルプロデュースしている「dittok media production technology」とはどのような会社ですか

伊藤氏:社名の由来からご紹介をすると、うちの親父が、「LINN」というオーディオメーカーのレコードプレーヤーのトーンアームを作っていました。「Ittok」(イトック)という名称でオーディオ通の間では結構有名なのですよ。その製品名の和みをちょっと入れてまして、デジタル・イメージング・テクニシャンの「DIT」と「Ittok」を合わせて「dittok」(ディトック)としました。

業務は、REDの撮影から仕上げまでの最適なワークフローの提案を行う「テクニカルプロデューサー」と呼ばれる役職を生業としています。例えばREDを撮影をするときに最大限特長を活かせるように、DITサービス、REDカメラのレンタル、映像技術サービスを提供しています。基本的にREDを使う仕事でしたらなんでも問い合わせを頂く感じですが、特にREDの特長を最大限活かした撮影や編集を希望する監督さんからの問い合わせを多く頂いています。

LeChatのミュージックビデオの撮影が都内のスタジオで行われた
――伊藤さんはなぜシネマカメラの中でもREDにこだわられているのですか。最近の制作実績にはどのようなものがありますか

伊藤氏:dittokは、REDのWEAPON BRAINのHELIUM 8KセンサーとEPIC DRAGON 6Kセンサー、EPIC MYSTERIUM 5Kセンサーの3台を保有しています。やぱり自分で追求していくシネマカメラとしてはREDが一番理想的です。

最近の大きな仕事としては、メルセデス・ベンツのショートストーリーを撮りました。こちらはWebで自由の効くストーリーみたいなものでした。あとは、テクニカルプロデューサーとしてNikon創立100周年記念映像にも参加をしました。

dittok media production technologyの伊藤格氏
――今回ご紹介を頂きます映像作品と使用する機材の概要を教えて頂けますか

伊藤氏:撮影はミュージックビデオで、カメラはEPIC DRAGON 6Kセンサー。レンズはすべてシグマのシネレンズとスチルカメラ用レンズのArtシリーズです。納品はHDですが、6Kで撮影をしています。監督は、映画監督や撮影監督として活躍中のHiguchinskyさんで、とても器用な方で編集でデジタルズームなど頻繁に使うのではないかと思います。

シンガー/コスプレイヤー/モデルのLeChatが3月21日に1stミニアルバム「Ash and Irony」を発売。PVの撮影にはEPIC DRAGON 6Kセンサー搭載のREDと、シグマのシネレンズのズームやプライムレンズが使われていた

LeChat / 覚悟より切実な現実の前で Music Video

――伊藤さんは何がきっかけでシグマのシネレンズを選ぶようになりましたか

伊藤氏:シグマのレンズを使う以前の話ですと、撮影監督の藤井昌之さんが「ツァイスを買うんだったらヤシカコンタックス。レンズがキヤノンのEFレンズとフォーカスリングの回転方向が同じだから」とアドバイスを頂き、マウントアダプタをつけて使っていました。

実はその少し前ぐらいから、フォトグラファーの桐島ローランド氏とREDを中心とした映像制作ビジネスを開始していまして、桐島氏はその当時からシグマの山木社長と知り合いでした。そのような仲で桐島氏がシグマから「SIGMA APO 120-300mm F2.8 EX DG OS HSM」を借りて使う機会があったのですが、これが作りも光学性能もよかったのです。「これをシネマレンズにしないのはもったいない」と思ったのがきっかけでした。

伊藤氏が使っているシグマのシネレンズ一式。レンズの径は95mmとコンパクトのために、すべて一式揃えても1つのケースに収まってしまっている
――シネレンズ開発中に要望をしたとも聞きました。どのようなことをメーカーに伝えましたか?

伊藤氏:例えば、基本的なところではフォーカスの回転角です。元がスチルカメラ用レンズのレンズでありオートフォーカスが主体のレンズとなると、マニュアルフォーカスの操作には適しません。それを完全にシネマレンズと同一の感覚を実現してほしいことや、サイズはできるだけコンパクトにしてほしいなどを要望しました。

あと、鏡胴に記された文字や数字は大きすぎても小さすぎてもいけません。インダストリアルデザインを担当されている方が、いくつかのサンプルを作って下さいまして、どのようなものがいいのかなど意見交換をさせて頂きました。

また、ズームやフォーカス、絞りの位置にも要望を出しました。例えば、スーパー35mmに対応するシネズームレンズの「18-35mm T2」と「50-100mm T2」はフォーカスとズーム、アイリスの位置が同じです。レンズを交換しても、ワイヤレスリモートのモーターの位置が一緒になるようになっています。プライムレンズでもフォーカスと絞りの位置を統一するように要望させて頂きました。

――特にシグマのシネマレンズのどの部分を気に入っていますか

伊藤氏:ルックですね。シネレンズの光学設計はスチルカメラ用レンズと全く一緒で、もともとからシネレンズとスチルカメラ用レンズの統一は実現していました。それをきちんと活かした撮影が可能です。

小型スライダーにカメラを載せて撮影をする際に、シネレンズだと耐荷重をオーバーしてしまう場合があります。そういうときには、スチルカメラ用レンズのArtシリーズのレンズを使うことで解決できます。

例えば、シネプライムの「35mm T1.5 FF」とArtシリーズの「35mm F1.4 DG HSM」は光学的にはまったく一緒です。なかなかみんなにわかってもらえないのですが、シグマのシネレンズからArtシリーズのレンズに変えてもルックは変わることはありません。このようにシネレンズとスチルレンズを共用して撮影ができるレンズメーカーは多くはありません。

こちらはシグマのスチルカメラ用レンズで、Artシリーズのラインナップが1つのケースにまとめられていた
――スチルカメラ用レンズとシネレンズをシームレスに使えるということですね

伊藤氏:光学的にですね。例えば、RONINのような手持ちカメラジンバルに搭載する場合はできるだけカメラの重量を軽くしたいです。また、今回のミュージックビデオの撮影でも使用するKesslerの「Second Shooter」と呼ばれる軽量のモーションコントロールとスライダーは、一般の一眼カメラ用のスライダーです。軽量で、山に運んで持っていくことも可能ですし、ボートに乗せて使うということも対応できます。

しかし、シネスライダーではありませんので、カメラが重いと自由が効かなくなってしまいます。このような場合に、Artシリーズを使えば解決ができます。

つまり、一般の撮影は、シネレンズを三脚に乗せて撮影をして、スライダーやハンディを使う際には、Artシリーズのレンズを使うという方法もあるわけです。Artシリーズのレンズを使うと色が変わってしまうと不安になる人もいると思いますが、そのようなことはありません。シグマのレンズは、シネレンズとArtシリーズを使い分けることによって、カメラシステムのウエイトコントロールが可能なのです。

ミュージックビデオの撮影現場でも使用したKesslerのスライダー「Second Shooter」。一眼カメラ用のモーションコントロール/スライダーだが、レンズを工夫すれば問題なく利用することができる
――Higuchinsky監督は、今回のミュージックビデオの撮影でシグマのシネレンズを使われてどのように感じましたか

Higuchinsky監督:スチルカメラ用のレンズでマニュアルフォーカス送りをすると、例えば近づいてくる被写体等にピントを常に合わせるのは非常に困難でした。しかし、シグマのシネレンズでのフォーカス送りはピントが合わせやすいんです。

伊藤氏:シグマのシネレンズはフォーカスワークをやる気にさせてくれますね。このレンズを使っているとやろうかな、という気になる。

Higuchinsky監督:以前の現場で初めて伊藤さんにシグマのシネレンズを使わせて頂いたのですが、フォーカス送りはむろん、キレもあってとても良かったんです。なので今回の撮影でもシグマのシネレンズを希望しまして、一式ご用意して頂きました。

――シグマのシネレンズで特にお勧めのレンズはありますか

伊藤氏:プライムレンズの「14mm T2 FF」がお勧めです。大変ワイドで、重宝します。海外のREDを使う有名なカメラマンの仲間でも、ツァイスよりもこっちのほうが解像力が高いのでは、と話題のレンズです。

自分視点で撮影をする際は、「18-35mm T2」と「50-100mm T2」の2本を選びます。もしその2本にあと1本足そうと思うならば、「135mm T2 FF」を選びます。135mmはやはりポートレートとか自然ものを撮るときにきれいです。あとは、「24-35mm T2.2 FF」の1本だけで撮影するときもあります。

また、スチルカメラ用レンズを組み合わせるパターンとしては、基本的に「18-35mm T2」と「50-100mm T2」のズーム2本に「120-300mm F2.8 DG OS HSM」を足したり、スポーツの撮影ならば「150-600mm F5-6.3 DG OS HSM」を選ぶ組み合わせが考えられます。

REDで収録された素材を管理するストレージにも注目

――レンズ以外についてもお聞きします。伊藤さんといえばストレージのスペシャリストでもありますが、最後にREDで収録された映像素材の管理についてもご紹介を頂けますか

伊藤氏:QnapのThunderbolt 3に対応したNASを使っています。私がNASを選ぶ条件は高速なThunderbolt 3に対応していることです。QnapのNAS は、Thunderbolt 3ポートが2基も搭載されています。このNASがとても便利なところは、この2基のThunderbolt 3ポートにPCとMacをそれぞれ繋げて両方からシェアをして、どちらからでもアクセスできます。こんなに便利なNASはほかにはありません。

例えば、PC側でアクセスしながらもMac側からバックアップができますし、Mac側で行ったバックアップをPC側で確認したりとかできます。現場では、なるべく早く安全にバックアップをするためにコピーのほかにベリファイも行いますが、そういったプロセスも高速です。映像制作の現場にとても理想的なNASです。

伊藤氏の撮影現場のデスク。左にあるのがThunderbolt 3を搭載したQNAP NAS。NASの前面パネルに2基のThunderbolt 3インターフェイスを搭載している txt・構成:編集部
Vol.07 [新世紀シネマレンズ漂流:最新単焦点レンズ編] Vol.01

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[ DATE : 2018-03-29 ]
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