txt:猪蔵・手塚一佳 構成:編集部

Leica、Panasonic、シグマによるLマウントアライアンスの樹立

Photokina2018は、来年よりPhotokinaが毎年5月開催になる影響で、規模を大幅に縮小し、前回の半分程度の面積で執り行われた。しかし参加人数は相変わらずの大人気で、狭くなった場所にたくさんの人が訪れたためどこも満員御礼の状況での展示となった。

とはいえ規模縮小により、Blackmagic Design等の大手海外企業の出展取りやめはもちろん、Carl ZeissやCINEMA 4D(MAXON)等の有力地元企業の展示すらいくつも抜けがあるような小規模開催のところに大勢の人が押し掛けたため、同時開催のイベントとして、VR、ME、AI関連に特化したイベントDIGILITYも開催されるなど、概ね大盛況という状況であった。

その盛況の理由は、なんといってもLeica、Panasonic、そしてシグマによるLマウントアライアンスの樹立の話題が大きい。ブースレポート第一弾は、この3社のブースからお送りしたい。

Panasonic

Panasonicブースは今回のPhotokina2018で最も盛り上がったブースと断言していいだろう。Photokina2018最大の目玉といえば、なんといってもLマウントアライアンスの発表だ。その中でもLマウントの新型カメラ「Panasonic LUMIX S1/S1R」の発表は、今大会最大の話題となった。

「Panasonic LUMIX S1/S1R」及び初期発売の3つのLマウントレンズ

「Panasonic LUMIX S1/S1R」は、既報の通り「LUMIX S1」が24Mピクセルの動画兼用ハイブリッド機、「LUMIX S1R」が47Mピクセルの高精細スチル機と位置づけられ、4K60Pでのシネマ4K撮影、高速AF、ボディ内手ぶれ防止、高性能大型EVF、XQDとSDのデュアルスロット収録、3軸ティルト背面モニター、全周防滴防塵、極低温耐性の機能が搭載される。

スペック詳細はまだまだ不明だが、24Mピクセルの「LUMIX S1」は動画とのハイブリッド機を謳っていることもあり、全センサーサイズ読み出しでの4K動画に対応している事が強く期待される。まだモックアップではあるものの「LUMIX S1/S1R」の姿は、高速プライムレンズの「50mm F1.4」「24-105mm」「70-200mm」の3本のLマウントレンズの姿と共に、ブース展示でも見ることが出来た。

PRONEWS読者が一番気になるであろう「Panasonic LUMIX S1」のモックアップ

収録データ方式がまだ未発表だが、XQDスロットがあるところからかなりの大容量データを取り扱うことが想定されていることが伺える。仮に、このXQDを生かすような今流行りの半生RAW動画などの高データ量収録方式が搭載されれば、スチルカメラにして大物ビデオカメラ食いの予感がある。

また、Lマウントレンズ群のうち「24-105mm」は標準レンズとしても非常に幅が広く、かつ、既存のLマウント標準レンズであるLeicaの「VARIO-ELMARIT-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.」よりもかなり小型だ。Panasonicの「24-105mm」の標準レンズはもちろん画質は小型化と焦点距離の増加の分落ちるのであろうが、Webメディア取材や旅カメラのレンズとしては何かとオーバースペックな場面の多い「VARIO-ELMARIT-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.」は今回のPhotokina2018でも取り回しに悩む場面が多々あった事を考えると、Lマウントの標準レンズとして選ばれる可能性が極めて高いレンズであると言えるだろう。

ちなみに実はこの記事も全て「Leica SL」に「VARIO-ELMARIT-SL 24-90mm f/2.8-4 ASPH.」レンズを装着して撮影しているが、カメラシステム全体の大きさの割にAF機能も決して早くはないため、マニュアル運用主体となり、結果、多少体に不自由なところのある筆者ではシャッターチャンスを逃してしまう場面がいくつかあった。この為、Panasonicの新レンズには、取り回しの良い取材レンズ、旅レンズとして期待をしてしまう。

かつてGHシリーズが半端なビデオカメラを駆逐したように「Panasonic LUMIX S1」が台風の目となるのであろうか?また、LUMIXというカメラ全体のプロユースへのサポート充実も今回のPhotokina2018での大きなテーマだ。

LUMIXプロフェッショナルサービス(LPS)の海外版の展開も確認出来た

プロサービスの実力を示すデモンストレーションとして、会場現地でのユーザーカメラの点検サービスも行われ、LUMIXが本格的なプロユースの選択肢の一つとなっていることが明確化されていた。今でいうところの山ガール向けの遊び用の女子カメラとしてスタートしたLUMIXシリーズが、ついにここまで来たのだなあ、という実感がある。

さらには、4K、そして将来発売機種の8K対応も大きな目玉だ。もちろん現状は8K対応のスチルカメラは存在しないし、次期発売の「LUMIX S1/S1R」も4Kまでの収録だ。しかし会場にはしっかりと8Kの文字が大きく刻まれており、先般のプレスカンファレンスでも、Lマウントカメラシステムで2020年東京五輪までに8K対応をすることが明確に打ち出されていた。

Lマウントのロードマップにもあったように、スチルイベントであるPhotokinaでも鮮明に8Kへの道が打ち出されていた

もちろん、現状は8Kの仕事などほとんど存在しないし、まだ8K機材が必要な場面もほとんどない。あったとしても五輪関連かアーカイブなどの政府官公庁系の仕事くらいだろう。しかし、試験放送開始など着々と8K化の準備は進んでおり、その対応は、非常に楽しみだと言えるだろう。

LUMIXシリーズの性能を実感できる撮影コーナー。もはや家電メーカーの遊びのカメラではない。プロユースを視野に入れた本物のカメラだということを実感する

Lマウントアライアンス加盟の話題はもちろん、PanasonicのLUMIXシリーズがもはや「家電メーカーが遊び向けに作ったカメラ」ではなくなり「プロユースの選択肢」となったことが鮮明に打ち出されたブース展示であった。

Leica

Leicaブースは今回、定番のホール1ではなくホール2の入り口に通常サイズでの出展だった。これもPhotokinaの勢いの低下を感じさせる出来事だ

なぜ、Photokinaの度に日本人がわざわざドイツの田舎町ケルンまで行くのかといえば、このLeicaの発表があるから、という理由がかなりのウェイトを占めるだろう。いわずと知れたライカ判の元祖にして現在の携帯型カメラの本家本元といえば、このLeicaを置いて他にない。

事実、プレスカンファレンスでは、我々日本のプレス陣がプレスバッグを手にする前に、熱心なファンの手によって全て貰われてしまっていて、肝心の我々プレス陣が後日データだけブースで貰うという状況になってしまっていた。それだけ大勢の人がこのLeicaの為に遠路はるばる来ているのだ。

エルンスト・ライツ1世に見いだされたオスカー・バルナックからの歴史については、同社の本社を訪問したのでその別項で語るとして、ここではPhotokina2018会場におけるLeicaの発表に焦点を絞って語ってゆきたい。

Leica S3。Leicaの定番中判カメラで、2019年発売予定。4K動画対応

さて、Leicaブース単体の発表としては、定番中判カメラLeica Sシリーズの新型機「Leica S3」の発表が大きい。同カメラはフルセンサーでの動画撮影にも対応しており、DCI4Kの撮影もフルセンサー読み出しで実現している。ファインダーが光学ファインダーのため、撮影中のフォーカスは背面液晶に頼ることになるが、これも大変に見やすく、かつ、AFも極めて正確高速なため「Leica S3」は、動画カメラとしての可能性も極めて高いものであると言える。64MPの超高画素センサーは45*30mmと巨大な物だが、そのセンサーサイズを生かしてISO50000の感度を実現していて、期待は大きい。

Leica S3では、音声入出力はフラッシュコネクターに専用の変換ケーブルを差し込んで行うことが出来る。HDMI出力も出来るので、そこでフォーカスを取る事も出来るだろう

底面には縦グリップコネクタが配置されている

そして、今回最大の話題といえば、なんといってもLマウントアライアンスの発表だ。

Lマウントアライアンスついては、会場には大きな告知看板が置いてあった

このLマウントアライアンスの発表によって、これまで「ライカTLマウント(Leica TL発売時)」→「ライカLマウント(Leica SL発売時)」と呼び方を変えてきたこのライカの定番マウントの一つが「Lマウント」とシンプルに名前を変えることとなった。筆者も愛用するLeica SLだが、動画屋としての最大の愛用理由は「オールドレンズやシネレンズがちゃんと使える」という一点が大きい。

昨今のミラーレス戦争では如何にショートフランジバックにして軽量化、小型化を図るかという点ばかりに焦点が置かれているが、ミラーレス戦争初期の2014年に発売されたこの「Lマウント」は、フランジバック20mm、物理直径51.6mmと少々大きめ、且つ4枚のステンレスバヨネット爪と、非常に丈夫なのが特徴だ。

しかし、実はその大きさが重要であった。他社のショートフランジバック小直径のマウントでは、オールドレンズやシネマレンズ、で特に広角領域のものを使うと顕著にレッドシフトやパープルフリンジが見られることが多いのだが、これが物理的にフランジバック空間に余裕のある「Lマウント」ではほとんどないのだ。

事実、「Lマウント」で昔ながらのオールドレンズや広角シネレンズをそのまま使って筆者は困ったことがない。また、重たいSLレンズを余裕で支える丈夫なバヨネット爪のお陰でちょっとしたシネマレンズであればマウントだけで支えることも可能だ。オールドスタイルのサードパーティレンズメーカーでは、わざわざ他社ミラーレスマウント専用にレンズを再設計して出すことが多いが、それと好対照だ。

こうした「Lマウントアライアンス」の動きやLeicaの今後の展開について、Global Director Business Unit PhotoのStefan Daniel氏にライカカメラドイツ本社首席日本代表窓口の杢中薫氏を通訳にしてブース内でお話を伺った。

Global Director Business Unit PhotoのStefan Daniel氏と通訳のライカカメラドイツ本社首席日本代表窓口の杢中薫氏

――まず、今回のLマウントアライアンスについてお聞かせ下さい。なぜ、突然にこうしたアライアンスが生まれたのでしょうか?

Stefan Daniel氏:突然というのが適切かどうかわかりません。我々はそもそも2013年からPanasonicとの長年の関係があります。シグマさんとは2016年からのお付き合いですが、3社で「Leicaそのものを発展させてゆく」ことをで一致し、アライアンスを組みました。ただし、これはあくまでもマウントに対する協力であり、個々の製品に関してはそれぞれの企業で互いに秘密裏に出してゆくことになります。これは、市場独占の禁止などの各国の事情に合わせたものです。

――Panasonicさんに加え、今回が初協業になるシグマさん。3社でマウントの供与という思い切ったアライアンスを組んだ、そのあたりをお聞かせ下さい。

Stefan Daniel氏:そもそも私たちがマウントを供与するのは歴史上初めてのことです。もっともMマウントは、パテント切れやリバースエンジニアリングなどで勝手に共通マウント化してしまっていますが(笑)。

しかし、現代のマウント、特にLマウントは電子信号なども非常に複雑で当然に勝手にコピーすることなどは出来ません。そこで、アライアンスを組んでの供与を決めました。今回のLマウントアライアンスの3社は、それぞれ非常に特徴的な会社であり、ユーザー層も違います。シグマさんはあの規模でありながらファミリー企業という特徴があり、安価な交換レンズからスタートしたのに最近はシネレンズを含むハイエンドなレンズや特徴的なセンサーのカメラを作るようになり、非常にユニークです。それぞれがLマウントを利用することでLマウントの可能性を高められれば、と思っています。

――Lマウントアライアンスに3社以外の新規の参加は有り得るのでしょうか?

Stefan Daniel氏:Panasonic、シグマ、そして我々Leicaは、全く別の会社でユーザ層も異なる、という特徴があります。それが互いを高め合う効果がある。全く異なる文化の会社、ということであれば少なくとも我々は歓迎したいと思います。

――全く異なる文化というと、例えばBlackmagic Designのような?特にBlackmagic Designは動画向けのBM-RAWの技術もありますし。

Stefan Daniel氏:現在の「Lマウントアライアンス」はあくまでも3社のもので具体的にそういう話はありませんが、個別に対応したいと思います。また、未来の製品やスペックの話題についてはお答えしかねます。

――では話題を変えて、ZENITというロシアのカメラメーカーを会場で見かけたのですが?あれはLeicaさんが技術供与を?

Stefan Daniel氏:そうです。我々が技術を提供しています。伝統あるZENITの再販売にあたり、ぜひともLeicaの手を借りたいというお話が2年前にあり、そこから協力をしています。Leica M 240をベースにして外装やソフトウェアなどに独自のカスタムを加えています。240ベースなので動画も撮れます。

決して一世代前の機種だから供与した、というわけではないですが、最新のMシリーズはLeicaの直接のユーザーだけでもまだバックオーダーを捌き切れていない状況なので、もし今後同様のお話があっても(240ベースなどの)既存のカメラベースになるでしょう。

――ありがとうございます。謎が解けました。ちなみに私は映像制作メディアPRONEWSの記者として来ているのですが、動画制作ユーザーに対しての「Lマウントアライアンス」としてのアクションや製品予定などはありますか?

Stefan Daniel氏:なるほど、実は私たちにとっても動画というのは重要なターゲットになっています。例えば、新発売のLeica S3は見ましたか?あれは中判センサーでの全センサー読み出しでのシネマサイズ4K動画という、かつてない冒険的な機能を搭載しています。また、Lマウントアライアンスにおいても、動画は重要です。

そもそも、Lマウントはご存じの通りLeica TLというAPS-Cカメラから始まっています。APS-Cは動画で定番のS35に非常に近いサイズで、そこから、シネマ関係者などにも愛用者が多いのです(実際筆者もAPS-CサイズセンサーのLeica CLをディレクターカメラ的に使う事もある)。シネマ、とまでは言いませんが、ビデオグラファー、キネマトグラファーも十分に検討の範囲です。同じLマウントアライアンスのPanasonicさんにおけるGHシリーズのような動画ハイブリッドカメラでの成功例もあります。そこには可能性があるでしょう。

――ありがとうございます。動画ユーザーとしても今後が楽しみです。ちなみに、純粋に疑問なのですが、Lマウントアライアンスにおける御社のメリットというのはなんなのでしょうか?ライセンス料とか?

Stefan Daniel氏:(Lマウントアライアンスの)ライセンス条件等の詳細についてはお話しすることが出来ません。あくまでも3社が互いに技術的交流をすることによって、お互いを高め合えるのが最も大きなメリットと言えます。ただ、先ほども申しましたとおり各国の独禁法の兼ね合いもあって、あくまでも直接の具体的な製品ではなく、マウントに関しての技術供与になるのですが。

もっとも、ライセンスといえば(と後を指さし)例えばブースが繋がっているHUAWEIなどは、純粋にライセンスによるビジネスです。我々は審査基準とライセンスを用意してそれを提供しています。しかし、それによるメリットは大変大きいものです。単にお金というだけではなく、毎日毎日、ラジオやテレビでHUAWEIさんがLeica、Leicaと連呼してくれるのです。

どうしても小規模なユーザーに提供せざるを得ない我々カメラ業界と違って、万人に物を売らなければいけない携帯メーカーの宣伝は大変に大きなものです。これによってLeicaはドイツ国内でも更に知名度を高める事が出来ました。これは大変に大きなメリットです。単純にライセンス料、という話だけではないのです。

――なるほど。不躾な質問済みませんでした。ついでに最後にもう一つ。私はご覧の通りLeica SLとCLのユーザーなのですが、御社にとって、Leica MユーザーとLeica SLユーザーという、水と油のようなユーザー層をどう見ていらっしゃるのでしょうか?日本では相変わらず両ユーザーのせめぎ合いというか、Mユーザーの動画嫌いというような状況があるのですが?

Stefan Daniel氏:我々にとって、Leica Mシリーズはまさに基幹であり、とても重要な部分です。Mカスタマーは、小型高性能を同時に求める社会的インフルエンサーがメインだと思っています。それに対し、今回のLマウントアライアンスでも話題のLeica SLのユーザーは、徹底的に最高性能を求める、セミプロからプロのユーザーを想定しています。当然大きさが違うのでSLの方が高性能ですが、そもそもユーザー層も使い方も大きく違います。APS-Cで小型軽量なCL等は、そうしたハイエンドなSLなどのLマウントユーザーへの入り口となるでしょう。

――SLユーザーなどのLマウントユーザー層は、今回のLマウントアライアンスでも大きく伸びそうですね。ありがとうございました!

2019年第1四半期発売のLマウント向け新レンズ「APO-SUMMICRON-SLF2/35mm ASPH.」と「SUMMILUX SL f1.4/50mm ASPH.」。恐ろしい写りと高速AFで圧倒された。こうした素晴らしいレンズ群がLマウントの主役だ

シグマ

シグマブースは、白を基調にした大規模ブースだ。その配置や規模からも、同社が既に安価なサードパーティの交換レンズメーカーを一歩踏み出し、カメラメーカーであり、プライマリレンズメーカーであることがわかる

Lマウントアライアンスの中でも異色を放つのが、このシグマだ。最後発であるだけにまだ具体的なLマウント製品こそ無いが、LeicaとPanasonicの長年の協業にこのシグマが加わったからこそのLマウントアライアンスの誕生であり、そういう視点から見ればシグマこそがこのアライアンスのキーマンであると言える。

まず、おさらいだが、プレスカンファレンスにおいてシグマ社長は6つの目標を公約した。

プレスカンファレンスでの山木社長による6つの公約

  1. 新しいフォベオンセンサーのフルフレームカメラ本体を2019年中に出す
  2. 新規SAマウントカメラの開発は行わない予定
  3. SAマウントのレンズ生産は継続する
  4. SA-L、EF-Lの変換アダプターを2019年中に出す
  5. ネイティブなLマウントレンズを2019年中に出す
  6. 最近発売したアートラインなどのレンズのLマウントへのマウント交換サービスを2019年にスタートする

この公約に対する製品は当然にまだブースにはないが、同社の新製品は数多くブースに展示されていた。これは、目標の「6、最近発売したアートラインなどのレンズのLマウントへのマウント交換サービスを2019年にスタートする」があるからこそ安心してみていられるものといえる。実によく考えられた戦略だ。

新製品群。これらのマウントをLマウントに交換できると思えば、安心して手を出せるというものだ

さて、こうした新製品群の中から、動画関係製品を見て行くと、なんといっても取り上げなければいけないのはシネレンズ群だ。プライムレンズ群に、28mm T1.5、40mm T1.5、105mm T1.5の三本のプライムシネマレンズを追加し、ついに同社のシネマレンズは全レンジ対応となった。ブリージングの抑制が甘いなど、まだシネレンズとしてのクオリティ的には色々といわれることのあるシネマのシネレンズだが、写り自体は本当に素晴らしい物だ。

そうしたクオリティ面の修正よりも、とりあえずラインナップを揃えることに注力してきたのは、ユーザー重視の姿勢であり、高く評価できる。ブリージングなどのエラーはわかっていれば注意してフォーカス描写を押さえて使うだけのことであり、逆に、レンズそのものが無ければ撮影自体が出来ないのだから、まずラインナップを、というのは非常に正しい。特に、その写り自体は本当に特別なレベルにまで達している素晴らしいレンズだけに、期待していたユーザーは多かったはずだ。実際、同社の試写コーナーでは、多くのシネマカメラが設置され、大勢の人がテストシュートを楽しんでいた。安価で高画質というのは、それだけで大きな魅力だ。

シネマカメラがずらっと並ぶ試写コーナーは大人気であった

さて、当然だが、シグマブースにもLマウントアライアンスのコーナーがあった。とはいえ具体的製品は来年となる同社だけに、その理念などを書いたポスター発表的な展示となっていた。しかし、その面積は非常に大きく、同社の意気込みが感じられるものであった。具体的製品の出てくる2019年初頭が楽しみでならない。

シグマのLマウント対応製品は2019年発表のためまだ具体的展示はない。それでもこの面積。気合いを感じる

急ぎ足でLマウントアライアンス参加各ブースを回ってみたが、いかがだっただろうか?

Lマウントアライアンスにおけるメリットは、なんといっても世界最高峰のLeicaのレンズを、世界最先端の動画ハイブリッドカメラメーカーであるPanasonicやフォベオンセンサーを搭載したシグマのボディで使える、という点だろう。動画カメラで極めて高品位なLeica SLレンズを使えるというメリットは、大変に大きいものだ(もちろん、逆にPanasonicの標準レンズをLeica SLに使いたい、という筆者のようなユーザーもいる)。

まさに、3社の特徴が大きく異なるからこそ成立したアライアンスだと言える。今後の展開が本当に楽しみでならない。

txt:猪蔵・手塚一佳 構成:編集部


Vol.02 [Photokina2018] Vol.04