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[新世紀シネマレンズ漂流:もの作りの現場から編]Vol.03 会津から日本全国で活躍中のグリッド椿氏に交換レンズ選びについて聞く

#新世紀シネマレンズ漂流

2018-12-03 掲載

txt・構成:編集部

福島県会津若松市から全国を駆け回って活動するグリッドの椿英明氏は、ウェディングからテレビCM、エクストリームスポーツまで、幅広いジャンルで活躍中だ。そんな椿氏に交換レンズの選び方について話を聞いてみた。

絵コンテは切らない。ウェディングカメラマンだからできるスタイルが特長

――椿さんが代表のグリッドとはどのような会社ですか?

グリッドは福島県会津若松市にある映像制作会社です。僕たちは撮影のジャンルを限定しません。幼稚園のお遊戯会の撮影もやれば、アーティストの大規模ライブ撮影もしています。地域も限定せず北海道から沖縄まで飛び回りますし、ウェディングにTVCM、エクストリームスポーツに舞台撮影、映画にテレビ番組、PRムービー、Web CM、ブランディングムービー、最近ですと、パナソニックのEVA1 IR Footage「palette」にも参加しました。映像と名の付くものすべてに挑戦させていただいております。

グリッドの代表取締役、椿英明氏
――撮影や映像の技術はどのように学んできましたか?

映像に興味を持ったのは、9才の時に父親に肩乗せのVHSカメラを買ってもらったのがきっかけでした。その当時から、兄弟や友達を撮ったり、2台つなげて編集をやったりすることもありました。

それから今に至るまで、一度もブレることなく映像のみをやってきています。映像を学校で学んだことはありません。すべて映像仲間に学んだり独学で突き進んできました。

――グリッドの特長は何でしょうか?

いろいろ話をしましたが、ウェディングがメインです。僕は20年以上のキャリアを持つウェディングカメラマンなのです。僕たちの撮るウェディングの映像は、撮って出しで撮影したその場で編集することがほとんどです。結婚式当日の様子をメイクシーンから撮影開始し、結婚式、披露宴と撮影しつつ編集も並行して行い、披露宴の終わりに即流します。そのウェディングで学んだ技術をCM、MVの制作に反映させる。これが僕たちのスタイルです。

僕がウェディングを始めた頃のウェディング撮影は、電気屋のスタッフが撮るレベルで、クリエイティブではありませんでした。撮って終了な感じの単純なオペレーション作業で、映像業界の中でも底辺な印象でした。

一眼レフデジタルカメラに動画機能が搭載された頃から結婚式の映像にストーリーをつけて撮ったり、撮って出しが流行りました。それが僕らが変わる転機だったと思います。

僕たちは一眼ムービーの登場する前からENGカメラを使って撮っていたので、フォーカスワークはみんな慣れていました。一眼ムービーの登場によって被写界深度の浅い撮影が可能になりましたが、みんな絞り開放でもバチバチに合わせるフォーカスを駆使した映像を撮影していました。

また、ウェディングの撮影は1日を物語にする編集で完結させるのですが、そのスタイルをMV、CM等を制作にも活かしてみました。これまでのMV、CM等の制作は、一番最初に予算を切って、コンテを切って、現場では決まった流れで撮る撮影をしていたのを、僕らはウェディングムービーのノリと同じにして、大枠は決めますが、コンテをほとんどの場合切りません。

当日、ディレクターと「どんな絵が欲しいですか?」と打ち合わせをして、その場で撮影をして、その場で編集をする。帰りには粗編が出来上っていて、持ち帰ったらすぐに納品するスタイルをやったら、凄くウケがよかったです。そんなウェディングカメラマンにしかできないような現場を作ってみました。

クライアントさんは「コンテを切んないで、とりあえず椿さん来てよ」と言ってくれるので、現場に行ってその場で考え、その場で、「こうしよう」「ああしよう」というふうに撮って、それで作ってしまうスタイルを特徴としています。

写真が動いている感覚の映像を実現

――普段の撮影では、どのような交換レンズを使っていますか?

ほとんどがシグマ製の交換レンズですね。キヤノンの交換レンズも使用していますが、ほとんどシグマのレンズにシフトしました。ウェディングの撮影ではキヤノンの使いやすいズーム幅の「EF70-200mm F2.8L USM」も使っています。シグマの70-200mmがリニューアルして発売されるようなので、すぐにでも導入する予定です。

――なぜシグマの交換レンズを選ばれているのでしょうか?

会津で作ったレンズを使って会津に住むカメラマンが撮る、メイドイン会津であることが一番大きいですね。シグマのシネレンズはスチルレンズArtの光学系をそのまま移植しているので、モデルによってはブリージングも出ます。現場によっては、フレアが好みではないこともあります。

それでもシグマのレンズは、明るさとボケ味の美しさ、シャープにパキっと写る。それに惚れて使っています。さらに、高解像度で撮れる。4Kで撮ったときでも、きちんと端まで高解像度で写る。通常、12-24mmのような広角レンズは端の歪みが目立つのですが、12-24mm F4 DG HSMはしっかりと端まで写り、描写力は高いです。8K撮影で使用されることもあり、間違いのない解像度、性能を持っています。

特に僕は写真が動いているみたいな動画を好みとしています。開放でパキっとしっかりフォーカスが合ったときは、「写真が動いているのではないか」と錯覚する。そんなところを気に入って使っています。

――レンズのマウントは何を選んでいますか?

うちはEFマウントに統一しています。マイクロフォーサーズのGH5や最近発売されたBlackmagic Design社のPocket Cinema Camera 4Kを使う場合は、MetabonesのEFマウントのSpeed Booster「Canon EF Lens to Micro Four Thirds T Speed Booster ULTRA 0.71x」を使います。

Eマウントの場合は、シグマのマウントコンバーター「MC-11」を付けてEマウントに変換します。シグマのシネレンズもすべてEFマウントに揃えています。

Speed Boosterを使ってEFマウントのレンズをマイクロフォーサーズ規格のボディで使用。最大絞りを1ストップ増やしてレンズを0.71倍広げることもできる
――使用されている交換レンズを拝見すると、スチル用レンズを中心に使って映像制作をされているのは意外でした

僕らグリッドのスタイルというのは、撮ってその場で編集して無駄なカットを撮らずにスピーディーに撤収です。このスタイルを実現するために、撮影を素早くこなせる軽量なスチル用レンズを選んでいます。

また、どんな現場でも少ない人数で、サウンドと照明をやりながら撮影をする現場が多いので、結構簡単にテキパキとした撮影を実現するのもスチル用レンズを選ぶ理由です。

むしろグリッドの場合は、シネレンズの使用比率はあまり多くありません。フォーカスワークが大変重要視されるときはシネレンズを使いますが、それ以外はスチル用レンズをマニュアルフォーカスで手短に撮影をします。僕自身、スチル用レンズで映像撮影の経験は長いので、フォーカスワークは慣れています。スチル用レンズで結構やれちゃています。

ただ、シネレンズとスチルレンズの併用する場合もあります。例えば、「18-35mm F1.8 DC HSM」と「18-35mm T2」は、基本的に光学が一緒で、撮れる画も一緒です。そこでよく使うのが、18-35mm F1.8 DC HSMを使用しできるだけ軽量化しジンバルに乗せて使いつつ、18-35mm T2のシネレンズをもう一台同じカメラを用意して撮影をする方法です。撮れる絵が統一できるので後の編集でかなり楽になります。

グリッドでは「18-35mm T2」と「50-100mm T2」の2本のシネレンズを導入している

12-24mm F4 DG HSMにはFS7 IIの電子式可変NDフィルターとの組み合わせがお勧め

――どのような交換レンズを組み合わせて撮影をすることが多いですか?

ウェディングだと広角で撮って、美しい背景を入れたい場合があります。そのため、広角のレンズとズームレンズ1本を基本の組み合わせとしています。

いつものセッティングだと50-100mm F1.8 DC HSM、ジンバル用に12-24mm F4 DG HSM、10-20mm F3.5 EX DC HSM、50mm F1.4 DG HSM。こんな感じのウエディングセットを持って行っています。

左から10-20mm F3.5 EX DC HSM、12-24mm F4 DG HSM、50-100mm F1.8 DC HSM、50mm F1.4 DG HSM
――この組み合わせですと広角側の画角がダブりませんか?

ダブりますが、使い分けがあります。例えば、12-24mm F4 DG HSMは前玉が前方へせり出しているのでNDフィルターをつけることはできません。そのため、室内で撮るNDフィルターが必要がない場合は12-24mm F4 DG HSMを使いますが、NDフィルターが必要な場合は10-20mm F3.5 EX DC HSMにバリアブルNDフィルターを付けて撮影をしています。

前玉がぽっこりでている12-24mm F4 DG HSM(右)と超広角ながらフィルターを付けることができる10-20mm F3.5 EX DC HSM(左)

あと、NDフィルターが付けられない12-24mm F4 DG HSMですが、XDCAMメモリーカムコーダー「FS7 II」の電子式可変NDフィルターとの組み合わせは凄く便利です。FS7 IIはカメラ内にNDフィルターが内蔵されているので、フィルター径にNDフィルターを付ける必要がありません。

しかもバリアブルで使えるのが大変便利で、電子制御により1/4から1/128NDまでジワーと濃度を変えることができる。どんなにドピーカンでもFS7 IIであればマットボックスも何もつけないで電子式可変NDフィルターをポンと入れてそれだけで使えちゃう。それが、凄く楽ですね。

FS7 IIは電子式可変NDフィルターを搭載している

会津でクリエイターを目指す後輩たちへの道を示したい

――特に稼働率が高い交換レンズを聞かせていただけますか?

50mm F1.4 DG HSMですね。披露宴会場は暗いので、どうして明るさを稼ぎたい。プラス、ちょっと寄りたい。そのときに50mm F1.4 DG HSMが重宝します。ウェディングを始めた当初なんて50mm 1本で撮っていたときもありました。

その次が50-100mm F1.8 DC HSM。これはフルサイズは使えないですけれども稼働率は高いです。あとはジンバルの乗せる10-20mm F3.5 EX DC HSMをよく選びます。

50-100mm F1.8 DC HSMに関しては、シャープかつ明るく、開放で使ったときのボケみの美しさ、シャープさが一流です。ウエディングの大半はこれを使っていますね。むしろこれ1本でいけるぐらい。やっぱり、ベストオブベストは50-100mmですね。

海外のウェディング撮影で、機材を厳選しなければいけないときがありました。そのときに持って行ったのは、ジンバルに乗せた10-20mm F3.5 EX DC HSMと50-100mm F1.8 DC HSMの2本でした。

とはいっても、ウェディングの撮影はレンズをたくさん現場に持って行って、感覚でボンボンをガッチャンガッチャンとスイッチしながら使っています。「ウェディングなのに何でそんなにレンズ持ち歩いているの?」って言われるくらい現場に持っていきますが、この2本にGH5の組み合わせが多いです。

――お勧めのレンズを挙げるとしたら何になりますか?

50-100mm F1.8 DC HSMと18-35mm F1.8 DC HSMの2本をお勧めします。これがあればどんな仕事でもできます。50-100mmと18-35mmの間を埋める35-50mmというレンズがあれば完璧で、シグマさんにはこの焦点距離を埋めてくれるレンズの発売を期待したいです。

少ない人数、しかも、僕一人で制作の現場に行ってワンマンでもこの2本があれば、早い時間で終わらせられる現場もあります。明るさを稼げるので、照明を減らせる。寄ったアングルでも周りがボケてくれますし、描画の美しさも間違いありません。

――最後に、グリッドさんは日本全国で活躍をしながらも、地元会津で活動することも忘れていません。どんな思いで活動されているのかをご紹介ください

ロケが東京や全国に広がっても、会津に残って仕事をする理由は地元愛です。やはり生まれた土地に残って仕事をして、会津若松が注目されるようになることも自分の使命だと思ってやっています。会津以外に事務所も作りませんし、会津でやることに意味があります。

あと、これまで大手広告代理店が地元の仕事を受けて結局やるのが東京のプロダクションで、移動距離遠いしも時間もないし適当に作ってそれで終わりみたいなものを多く目にしてしまってずっと悔しい思いをしてきました。しかし、今では地元にグリッドという会社があり、みんなが声をかけてくれる。地元で完結できる。地元でクリエイティブができると思ってもらえるようになったのは、強みだなと思っています。

地元の中学生や高校生、それ以下の年齢でも子供たちにカメラの面白さを伝えて、少しでも地元クリエイターが育つように様々な活動をしていきたいと思っています。最近では、中学生の職場体験に来てもらう機会も設けています。子供たちが地元に残って地元でクリエイティブをやれる環境を作りたいです。

地元企業にシグマさんもありますし、会津は歴史がある。景色もキレイ。壮大な景色の中ドローンも飛ばせる。そういう環境があるので、会津に残ってクリエイティブへ積極的に向かってほしいと願っています。

txt・構成:編集部
Vol.02 [新世紀シネマレンズ漂流:もの作りの現場から] Vol.04

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[ DATE : 2018-12-03 ]
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