PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU

トップ > 特集 > [CES2019]Vol.05 「VR」「AR」からより大きな「Immersive」へと進化する

News

[CES2019]Vol.05 「VR」「AR」からより大きな「Immersive」へと進化する

2019-01-11 掲載

txt:清水幹太  構成:編集部

VR/ARへの半信半疑な思いが解消されてきた

VR/ARという言葉が市民権を得て久しい。しかし、筆者はここまで常に、狭い意味でのVR/ARという領域について半信半疑な思いで捉えてきた。

VRというのは、Oculus以来のものすごく狭義のイメージだと、正距円筒図法で投射した画像・映像を加速度センサーと連動させて動かす、というものになる。その体験が楽しいのはわかるのだが、既存技術の組み合わせでつくられた子供だましの体験のような気がしてしまって、それが未来のエンターテインメントの本丸になっていくものとはどうしても思えなかったのだ。

ARも然りだ。仮にARがマーカーにスマホをかざすと現実空間に何かが出てくる、というだけならば、早晩みんな飽きるのではないか、と考えていた。飽きるというのは、この要素技術が洗練されて未来に残っていくレベルのものになる前に、市場が成長を止めてしまうのではないか、ということでもある。

もちろんそれをそもそもの意味であるバーチャル・リアリティであるとかオーギュメンテッド・リアリティ(拡張現実)という広い意味で捉えればそこに大いなる可能性があるのは当然だ。しかし、世の中は、上記のような狭い意味でのVR/ARに夢を持ち過ぎていないか、ユーザーエクスペリエンスとしても煩雑ではあるし、みんなそのうち幻滅するんじゃないか、という思いがあった。

我々は、新しいテクノロジーに期待して盛り上がっては幻滅する、みたいなことに慣れている。仮想通貨などは、みんなでお祭り騒ぎをした後に、みんなで幻滅してしんみりと葬式をしているような印象すらある(本来の要素技術であるブロックチェーンの有用性については別の話として)。CESからも仮想通貨絡みの展示は、わかりやすい形で減っていた。

ところが、今回のCES2019は、そういったVR/ARへの半信半疑な思いを良い意味で解消してくれつつある。数え切れないほどあるスマートモビリティ系や、今回のCESのキーワードにもなっていそうな5G、こういったものたちは、まだ市場に出ていないプロトタイプあるいはそれ以前の概念デモでとどまっており、「実装されている・動く家電市」としてのキャラクターが強かったCESのプロトタイプショー化を感じさせた。

しかし、VR/ARブースには、プロトタイプを卒業して「家電製品」になった、「ちゃんと動くプロダクト」が溢れていた。会場内では、「Immersive」=「没入感」というワードをよく見かけた。アメリカのデジタルコンテンツ業界でもこのワードが多く聞かれるようになっている。つまりこの領域は「VR/AR」という概念を包括した「Immersive」というより大きな領域に発展しようとしている感がある。ポイントとして3つの点が挙げられるように感じた。

1.単純に体験のクオリティが上がっている

VR/ARの表示解像度が2K/4Kなのは当たり前。過去のVRにありがちだった「そうは言ってもピクセル感がある世界にいる感じ」は、全体的にほぼなくなりつつある。

「XImmerse」のAR Headset(Webサイトには商品紹介なし)は、スマートフォンをヘッドセットに挿して画面を鏡面反射させて現実世界とミックスするタイプのMR(Mixed Reality)デバイスだ。

Microsoft HololensやMagic Leapといった、眼鏡型のMRデバイスの大きな問題、「がっかり感」をつくる1つの要因として、視野が狭いということがあった。画面の切れ目でバーチャルな要素が切れてしまうため、没入感が失われていたが、このXImmerse AR Headsetは、スマートフォンベースであるからかなりトラッキングの精度が低いものの、視野についてはかなり広く、かなり自然に現実世界とバーチャルのミックスを実現していた。そういった視界のストレスのないMR体験であるがゆえに、細かいアラが目立つものの、そこの精度は高めることは容易だと考えられる。下記のツイートのデモがわかりやすい。

VRの大きな活躍の場となりつつある体験型のアトラクションの領域でも、かなりダイナミックな体験を安価に実現できる機材が登場している。「HURRICANE 360 VR」は、巨大なVRチェアだ。アクチュエータで、VR体験上の動きに同期して動きをコントロール。単純に揺れたり落ちたりだけではなく、360°椅子を回転させることができる。

遊園地などにはよくありそうな仕組みだが、このシステムは$80,000(約880万円)で導入可能。この価格感ならば、予算の少ない商業イベントや、小さい商業施設などにもこういった本格的なVRエンターテインメントを組み入れることができるかもしれない。

2.体験の幅が広がっている

新しい方法でより良いVR体験を実現する技術も生まれている。CES2019で発表されたHTC VIVE cosmosは、加速度センサーではなく、ゴーグル前面に配置された2つのカメラからの視差を利用して、自分の位置や角度をトラッキングする、インサイドアウト方式と呼ばれるカメラベースの空間トラッキング手法を利用している最新のVRヘッドセットだ。昨年から登場していたこの技術により、モーショントラッキングをワイヤレスかつ安価に実現できる。

巨大なモーションキャプチャ装置などやルームランナー的なデバイスなしに、VR空間上の自分の位置を移動させることが可能になる。実際に、このタイプのヘッドセットを着用すると、自分の動きに合わせて世界を自然に歩き回ることができるようになっている。

VR空間上での位置トラッキングについてはその他も様々な実用的なデバイスが登場している。VR専用の「足の動きトラッキングシューズ」である「Cybershoes」は、足に着用して、地面を蹴ることで、実際にVR空間を歩いたり走ったりという体験を、やはりコンパクトに実現している(ただ、スピード等のコントロールが難しく、筆者は体験後に気持ち悪くなってしまった)。

3.用途が広がっている

VRの1つの有効な活用方法として話題に上ってきた医療分野への活用を行っているプロダクトも具体的なものが登場している。

The Psychoの「MedVR」は、手術のトレーニングをバーチャルに行う「手術シミュレータ」だ。実際に手術用のハサミなどを駆使して、処置を行っていく。医師が手術に熟練するためには実際の手術で経験を積む必要があるが、その機会はそうそう頻繁に得られるわけではないので、こういったシミュレータの活用は、医師全体の手術技能のボトムアップへの貢献を期待されている。そしてもちろん、この方向性の活用が進めば、ロボットアームを使った実際の遠隔手術も実現することが可能になるだろう。

VRはもはやエンターテインメント領域だけのものではなく、社会の中で重要な役割を担い始める可能性がある。

そして「Immersive」へ

これら3つのポイントを踏まえても、この「Immersive」領域は、市場を拡張して、体験として洗練されつつも、まだまだ山のように改善できる要素がある。つまりは、「磨けば磨くほどどんどん良くなる」領域なのだ。もっと解像度が上がり、もっとトラッキングの精度が上がり、もっと要素が広がれば、さらに日常生活の中で活用されるものになっていき、そうなればさらに市場が広がり、成長が加速する。ここまで来ると「半信半疑」とは言っていられなくなる。そろそろVR/ARの領域は、その成長の上で「確変」状態に入りつつあるのかもしれない。

txt:清水幹太 構成:編集部
Vol.04 [CES2019] Vol.06

[ Category : , ]
[ DATE : 2019-01-11 ]
[ TAG : ]

この記事に関連する記事一覧

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.16 会場で気になったあれこれ

txt・構成:編集部 美しい肌の色調と滑らかなボケ味を実現したPLプライムレンズ「Sumire Prime」 キヤノンは、NABで発表したSumire Prim... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.15 SmallHD/Teradek:ワイヤレスプロダクションモニターやカメラコントロール対応モニターを展示。両社の技術が新製品に集結

txt・構成:編集部 撮影現場での映像確認やDITに最適な17インチワイヤレスプロダクションモニター「17RX」 TeradekやWooden Camera、Sma... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.14 Cine Gear Expo 2019〜ATOMOS:オンセットやスタジオ用HDRシネマモニター/レコーダー「NEON」を展示

txt・構成:編集部 オンセットやスタジオ向けのHDRシネマモニターレコーダーが登場 ATOMOSは、Cine GearでHDRシネマモニター/レコーダー「NEON」を... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.13 富士フイルム、100メガピクセルのラージフォーマットミラーレス「GFX100」やシネマカメラ用ズームレンズ「Premista」を展示

txt・構成:編集部 話題のラージフォーマットミラーレスカメラとシネマカメラ用ズームレンズ「Premista」との組み合わせがユニーク 富士フイルムブースの注目は、... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.12 きれいなフレアとボケ味が特徴のプライムレンズの新製品「Tokina Vista One」シリーズを展示

txt・構成:編集部 シングルコートが特徴のフレアを実現したVista Oneシリーズをデモ 今年のTokina Cinemaブースは、昨年よりも大きくなっている。メイ... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.11 ニコン、フルフレームミラーレスカメラで12ビットProRes Raw出力対応「Z 7」を展示

txt・構成:編集部 3:2のフルフレームセンサーを16:9に上下カットした形で収録可能予定 Cine Gear展示エリアに、ニコンはブース出展していない。しかし、AT... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.10 パナビジョン、NDフィルターの度合いを調整できる6ストップ「LCND」フィルターシステムを展示

txt・構成:編集部 スタンドアロンでもワイヤレスでも濃度の調整が可能な「LCND」 パナビジョンは、レンズ、カメラ、フィルターから制作ワークフロー、ポストプロダクショ... 続きを読む

[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.08 Leitz、プライムレンズのThalia-Tシリーズに新ラインナップを検討中

txt・構成:編集部 ライカユーザーならお馴染みのTHAMBAR 90mmがThalia-Tシリーズとして登場 2019年8月発売予定のThalia-T 90m... 続きを読む

[DSJ2019]Vol.03 気になる表示装置と気になるアナ・デジ変換技術

txt:江口靖二 構成:編集部 シブくて新しい展示たち DSJは言うまでもなく日本最大のデジタルサイネージのイベントだ。デジタルサイネージには何かしらの表示装置が必要だ... 続きを読む

特集記事

DSJ2019 DSJ2019
幕張メッセで開催された国内最大のデジタルサイネージの展示会「DSJ2019」をレポート。
Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019 Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019
米国ハリウッドのパラマウントスタジオ内で開催された映画撮影機材の専門展示会「Cine Gear Expo」をレポート。
After Beat NAB SHOW 2019 After Beat NAB SHOW 2019
東京・秋葉原のUDXにて開催されたAfter NAB Show 2019をレポート。
NAB2019 NAB2019
米国ネバダ州ラスベガスにて開催される世界最大の放送機器展覧会「NAB2019」をレポート。
SXSW2019 SXSW2019
テキサス州オースティンで開催されたSXSW2019をレポート。
CP+2019 CP+2019
パシフィコ横浜にて開催されたカメラと写真の総合展示会「CP+2019」をレポート。
Film Shooting Rhapsody Film Shooting Rhapsody
いまだから知っておきたいフィルムの現状や伝統的な技術などを紹介する。
CES2019 CES2019
米国ラスベガスで開催された世界最大の国際家電見本市 CES2019をレポート。
PRONEWS AWARD 2018 PRONEWS AWARD 2018
2018年は映像業界にとってどんな年だったのだろうか。PRONEWS AWARDで部門ごとに振り返る。
10万円以下のジンバル選び 10万円以下のジンバル選び
一層注目が増している小型カメラジンバルをDJIやZHIYUN、FEIYU TECH、FILMPOWERの4社5機種に渡って比較紹介。
Inter BEE 2018 Inter BEE 2018
千葉幕張メッセにて開催される国際放送機器展“Inter BEE“をレポート。
InterBEE 2018の歩き方 InterBEE 2018の歩き方
今年もInterBEEの歩き方をジャンル別にピックアップし、6種類のコースを紹介。
新世紀シネマレンズ漂流:最新単焦点レンズ編 新世紀シネマレンズ漂流:もの作りの現場から
「新世紀シネマレンズ漂流:最新単焦点レンズ編」の続編。前回紹介することができなかったシネマレンズメーカーを取材。
Photokina2018 Photokina2018
ドイツ・ケルンメッセで開催されたスチルカメラの祭典 Photokina2018をレポート。
IBC2018 IBC2018
オランダ・アムステルダムで開催された欧州最大の映像・放送の展示会IBC2018をレポート。

トップ > 特集 > [CES2019]Vol.05 「VR」「AR」からより大きな「Immersive」へと進化する