PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU

トップ > 特集 > [CES2019]Vol.10 なくならないでほしいCESの多様性を象徴した「牧歌的」プロダクトたち

News

[CES2019]Vol.10 なくならないでほしいCESの多様性を象徴した「牧歌的」プロダクトたち

2019-01-16 掲載

txt:清水幹太 構成:編集部

CESでは多くの体験型デモンストレーションがある。VR体験や、シミュレータ、車に乗ってみたりなど、多くの参加者が新しい製品の新しい体験のために行列をつくっている。聞くよりも見る、見るよりも触ったり体験することで、「イノベーション」をより深く理解することができる。CESは見本市であり、短時間にいろんなものを体験できる貴重な機会なのだ。

ところが、CESには、そういったイノベーション体験に負けず劣らず、行列をつくる鉄板の体験ブースが存在する。

それはどんなブースかというと、マッサージチェアの展示ブースだ。広大なCESの会場を歩き回るのは、非常に疲れる。40を超えた私なんかだと、荷物を持って休みなく、くまなく会場を見て回るのは相当なハードワークだ。そしてそれはみんな同じで、会期も後半になってくると、みんな死んだ魚の目でイノベーションあふれる展示空間を徘徊するような感じになってくる。

そんな疲労困憊した参加者にとってのオアシスが、マッサージチェア体験ブースなのだ。死んだ魚の目をした人々は、癒やしを求めてマッサージチェアに並ぶ。

それだけではない。実はマッサージチェアブースは別の意味でも癒しになっているように思える。これはもうここ数年ずっとそういう傾向があったのだが、CESの展示物は、もうとにかくなんでもかんでも「つながっている」のだ。「IoT(Internet of things)」という言葉が市民権を得て久しいが、車からテレビからステレオから何から、全部インターネットにつながってしまっている。そして、その「つながっている家電たち」のプラットフォーム争いが、かなり仁義なき戦いになっている。

一昨年はAmazonのAlexaが会場を席巻した。昨年は、Google Homeがものすごいお金を投入して「Hey Google」のプロモーションをCESのそこかしこで行った。今年はどうかというと、昨年の傾向がさらに強まっていて、さらにものすごい量のGoogle広告が投下されている。

Googleは今回、Google Assistantの機能や提供する社会を体現した乗り物「THE RIDE」(コースター)までつくった。

「広告を見せられるために乗る」みたいなことになっていて相当厳しいものだったらしいが(上記参考映像は、参加者に提供してもらったもの)、それだけ、Googleにとって「電化製品のお祭り」であるCESで存在感をつくることが重要なのだろう。

そしてさらにGoogleは今年、白いユニフォームとニット帽を身にまとったGoogle Assistantの説明員を、会場内に点在するスマートデバイスブースに派遣して、Google Assistantとの連携を丁寧に説明する、という戦略をとっていた(正確には去年からこの人たちは存在していたが、量的にすごく増えた)。エウレカパークのスタートアップでも、いくつかGoogleの協賛を受けてGoogle Assistantのマークをでかでかと掲げたブースがあり、そんなブースにはこの白いGoogle Assistant説明員がいるのだ。

一言でいうと「Googleはとにかく必死」という状況だ。それもそのはず。このCES直前には、CESに出展していないAppleのHomekitがSamsungのテレビに組み込まれたり、さらに対応機種が増えるというニュースもあり、莫大な投資をしてシェアを広げても、うかうかしてはいられない状況なのだ。

そしてCES2019の会場の半分かそれ以上は、そういった「コネクテッド戦争」の影響下にある「なにがしかでつながる」ことを主軸としたブースだった印象がある。そしてその結果として見て回る側は食傷気味になってしまって疲れてしまう。どこに行っても「Hey Google」どこに行ってもAlexaなのだ。

だから、そこから隔絶された数少ないプロダクトであるマッサージチェアは、「なんでもかんでもつながっている場所」から逃避するための癒やしの椅子にもなっているのだ(Alexaにつながるマッサージチェアもあるにはあったが)。

中でも多くの人を集めていたのがハイエンドマッサージチェアブランドである「BODYFRIEND」が発表していた、ランボルギーニとコレボレーションしたランボルギーニマッサージチェアだ。デザインはランボルギーニの車体とシートを受け継いだラグジュアリーなマッサージチェアは、ある種上述の「コネクテッドもの」とは別の方向に振り切ってしまったキャラの強い製品として多くの注目を集めていた。

繰り返しになるが、今年のCESは、GoogleやAmazonの影響が強まって、展示も似たようなものになりがちとなり、見て回る方も精神的に疲れてしまうという傾向は間違いなくあったのではないかと思う。

そういう中では逆に、全くコネクテッドではない、シンプルで大胆だったり、逆の方向に走っていってしまっているような「牧歌的」プロダクトが光って見えるし、それに癒やされることになる。そういったものは基本的にメディアには紹介されることが少ないものだと思うが、CESという多様性の受け皿にはこんなものも展示されているんだ、ということを伝えるために、いくつかそんな「癒し系牧歌的ガジェット」を紹介したいと思う。

まずは、アイルランドの発明家であるKen McFeetersさんが自ら展示していた「CALLCOP」。これは、自宅の固定電話と回線の間に挟んで使う「セールス電話ブロッカー」だ。Kenさんは、日々かかってくるセールスの迷惑電話、そんな電話をかけてくるセールスマンは、電話を受け取られたときにファックスのような「ピー」というロボット音が出ていると二度と掛けてこないだろうという仮説を立てた。

そして、電話がかかってくると一旦受け取ってロボット音を出すプロダクトを開発した。電話がかかってきているときは、デバイスが光って音を出す、友達からかかってきたときはどうするのかというと、「友達にはこれのことを教えておけばいい」みたいなことを言って、「それがアイリッシュ・テクノロジーさ」と言いウインクしてくれた。日本の販売代理店を探しているらしい。

CESにはKenさんのような面白いおじちゃんが自分の発明品を個人で出店しているブースがたまにある。そしてそういったブースはえてして、まさにGoogleだAlexaだという世界の中では忘れてしまいそうな古き良き電化製品的工夫があって、とても心地よい。

次に紹介したいのが、シンプルで強い、ただ1つの機能に特化した、全くコネクテッドではない製品である「The Rocking Bed」だ。

映像を見て頂ければおわかり頂ける通り、これは、寝ている間ゆらゆらとゆりかごのように揺れるベッドだ。この浮遊感が癒やされるんだよ、ということで、展示をしていた開発者の方が熱弁していたが、実際に寝てみると、確かになかなかどうして気持ちいい。

こういうものに大真面目に取り組んでいる人がまだまだいるのが、CESの美しいところだと思う。今年で出展は3年目とのこと。こちらも、ディストリビューションパートナーを募集中だ。

牧歌的というよりは、GoogleやAmazonのビッグデータ社会に抵抗して独自のルートをつくろうとしているチームもある。中国のスタートアップであるOneThingのOneThing Cloud miniは、いわゆるクラウドコンピューティング・クラウドストレージデバイスだ。写真にある円筒カプセル状のデバイスに、使わなくなったスマートフォンを接続して、そのスマートフォンを通じて、クラウド上のデータを蓄積し、自らもクラウドの一部としてデータを提供する、という、「スマホリサイクル型クラウド・プラットフォーム」になっている。

GoogleやAmazonのように超巨大なデータセンターを抱えて超巨大なクラウドをつくるのではなく、「古くなったスマートフォン」というみんなが持っているデバイスを介してクラウドをつくることで、GoogleやAmazonとは別の社会的価値をつくりたい、と開発者の方が言っていた。

クラウドに参加するとショッピングなどで使用できるトークン(≒仮想通貨)がもらえる。これを含めたOneThing Cloudサービスは中国では既に多くのユーザーを抱えて成長しているではありつつも、GoogleやAmazonへのカウンターとしての意識が強い。

以上のように、「コネクテッド戦争」で多様性を失いつつあるCESの隅っこで静かに展示されているおもしろ電化製品や、大手と戦おうとしているサービスたちは、追いやられてはいるが、まだ健在だ。こういったロングテールな文化を保っている限りは、まだまだCESは興味深い場所であり続けてくれるだろうと期待する。なにもかもが全部「Hey Google」ばかりになってしまった世界には風情っていうものがない。

txt:清水幹太 構成:編集部
Vol.09 [CES2019] Vol.11

[ Category : , ]
[ DATE : 2019-01-16 ]
[ TAG : ]

この記事に関連する記事一覧

[4K・8K映像技術展Report]Vol.11 ビジュアルテクノロジーブース:8K60P映像編集向けターンキーのワークステーション「TRUX SUPER MAX」を展示

txt・構成:編集部 ビジュアルテクノロジーは、日本サムスンとITGマーケティングと合同のSamsung SSDブース内に出展し、8K60P映像編集向けターンキーのワークステ... 続きを読む

[4K・8K映像技術展Report]Vol.10 ガンスイブース:リアルタイムにフレームごとのHDRからSDR変換を実現するLYNX Technikのコンバーター「HDR Evie」を展示

txt・構成:編集部 ガンスイは、今年も映像伝送EXPOに出展。ドイツLYNX Technikのスタンドアロンのプラグアンドプレイモジュール「yellobrik」シリーズと、... 続きを読む

[4K・8K映像技術展Report]Vol.09 三友ブース:小型の放送用カメラや8K対応光伝送装置を使ったケーブル1本の伝送デモを展示

txt・構成:編集部 Dream CHIP社SDI対応の小型放送カメラ「ATOM one」ファミリーを展示 三友は、長距離拠点の8K伝送を可能にする「THUNDER... 続きを読む

[4K・8K映像技術展Report]Vol.08 ATENジャパンブース:ビデオキャプチャとビデオスイッチを統合したマルチチャンネルオーディオ/ビデオミキサーデバイス「Stream Live HD. UC9020」を展示

txt・構成:編集部 ATENジャパンは、「第3回 映像伝送EXPO」に出展。目玉は、4K60P対応の新製品のビデオキャプチャ機能付きオーディオ/ビデオミキサー「Stre... 続きを読む

[4K・8K映像技術展Report]Vol.07 ニコンブース:配信やカメラコントロールが可能な4Kワンオペライブ配信ソリューションを展示

少人数でもライブ配信が可能な4Kワンオペライブ配信ソリューション ニコンは、一眼カメラやミラーレスカメラでお馴染みのニコンは、動画のライブ配信をするためのワンマンオペレーショ... 続きを読む

[4K・8K映像技術展Report]Vol.06 アストロデザインブース:8Kカムコーダーのプロトタイプ機や、8K60P 4ストリーム同時処理可能なTamazone Workstationを展示

txt・構成:編集部 8Kカムコーダー「8C-B60A」をカスタマイズしたプロトタイプ機を展示 アストロデザインの展示製品はすべて8Kだ。撮影システムコーナーでは、... 続きを読む

[QBEE2019]Vol.03 地味にすごい製品を発掘!

txt/movie:MonkeyHills(岡英史&猿田守一) 構成:編集部 前回に引き続き、気になったブースを紹介していく。 AJA NABで登場し注目... 続きを読む

[QBEE2019]Vol.02 隠れたおもしろ製品を探しに行こう

txt/movie:MonkeyHills(岡英史&猿田守一) 構成:編集部 前回に引き続き、気になったブースを紹介していこう。 アストロデザイン 8Kカメラ... 続きを読む

[QBEE2019]Vol.01 今年は快晴開催!九州放送機器展2019初日で気になったもの

txt/movie:MonkeyHills(岡英史&猿田守一) 構成:編集部 QBEE2019開幕!宝物を探して九州へ 毎年梅雨時期と重なるためか、これまで荒天... 続きを読む

特集記事

SIGGRAPH2019 SIGGRAPH2019
世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する学会・展示会SIGGRAPH2019をレポート。
QBEE2019 QBEE2019
九州放送機器展(QBEE)をいつもの会場練り歩き方式でレポート。
4K・8K映像技術展Report 4K・8K映像技術展Report
東京ビッグサイト青海展示棟にて開催された4K・8K映像技術などの最新技術が一堂に出展する「通信・放送Week2019」をレポート。
DSJ2019 DSJ2019
幕張メッセで開催された国内最大のデジタルサイネージの展示会「DSJ2019」をレポート。
Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019 Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019
米国ハリウッドのパラマウントスタジオ内で開催された映画撮影機材の専門展示会「Cine Gear Expo」をレポート。
After Beat NAB SHOW 2019 After Beat NAB SHOW 2019
東京・秋葉原のUDXにて開催されたAfter NAB Show 2019をレポート。
NAB2019 NAB2019
米国ネバダ州ラスベガスにて開催される世界最大の放送機器展覧会「NAB2019」をレポート。
SXSW2019 SXSW2019
テキサス州オースティンで開催されたSXSW2019をレポート。
CP+2019 CP+2019
パシフィコ横浜にて開催されたカメラと写真の総合展示会「CP+2019」をレポート。
Film Shooting Rhapsody Film Shooting Rhapsody
いまだから知っておきたいフィルムの現状や伝統的な技術などを紹介する。
CES2019 CES2019
米国ラスベガスで開催された世界最大の国際家電見本市 CES2019をレポート。
PRONEWS AWARD 2018 PRONEWS AWARD 2018
2018年は映像業界にとってどんな年だったのだろうか。PRONEWS AWARDで部門ごとに振り返る。
10万円以下のジンバル選び 10万円以下のジンバル選び
一層注目が増している小型カメラジンバルをDJIやZHIYUN、FEIYU TECH、FILMPOWERの4社5機種に渡って比較紹介。
Inter BEE 2018 Inter BEE 2018
千葉幕張メッセにて開催される国際放送機器展“Inter BEE“をレポート。
InterBEE 2018の歩き方 InterBEE 2018の歩き方
今年もInterBEEの歩き方をジャンル別にピックアップし、6種類のコースを紹介。

トップ > 特集 > [CES2019]Vol.10 なくならないでほしいCESの多様性を象徴した「牧歌的」プロダクトたち