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[Film Shooting Rhapsody]Vol.07 日本のフィルム現像の灯火を守り続ける「東京現像所」探訪〜フィルムとスキャナーで映像表現の可能性を拡張

#Film Shooting Rhapsody

2019-04-18 掲載

txt・構成:編集部

東日本で唯一の映画フィルム現像所、東京現像所を2回に渡って紹介しよう。東京現像所といえば、国内屈指の技術と設備が特徴だ。また、日本のフィルム現像の灯火を守り続ける存在でもある。国内では新作映画がフィルムで撮影される機会が減っているが、北野武監督、山田洋次監督、木村大作撮影監督などの35mmフィルム撮影は、東京現像所が支えていることでも有名だ。まずは、国内屈指の施設から紹介しよう。

(01)現像:フィルムに記録された映像を現像し定着

■35mm対応カラーポジ現像機

現像機フロアで目を引くのが、映写用プリント用カラーポジ現像機だ。16mm、35mmが各1台稼働している。フィルムで映画のプリントが焼かれた全盛期は、24時間体制で4台のカラーポジ現像機がフル稼働していたという。

特徴は国内最高速スピードで、1分に300フィートの処理が可能。「1981年に導入した現像機ですが、300フィート/分は日本でも最速でした。誕生してから何十年も経ちましたが、スピードを保ち今でも稼働しています」とチーフテクノロジーオフィサーの木下良仁氏は胸を張る。

現在は、保存や公開を行う「国立映画アーカイブ」で上映する旧作の再プリントや、古い作品がCS放送のテレシネ作業に使うポジが多いとのことだ。

また、ポジ現像機はアニメDVD特典や劇場先行特典の「特製フィルムしおり」の作業が増えているという。最近大ヒットしたアニメ作品のBlu-ray予約特典に付属する特製フィルムしおりは東京現像所で作成されたもので、ネガフィルムを作成してポジフィルムを作ってカットして作られた。「100万枚作成しました。そのとき現像機はフル可動しました」と木下氏。

35mm対応カラーポジ現像機 35mmに対応するモノクロ現像機。国産の大友製作所製 16mmに対応するポジフィルム用カラー現像機
■カラーネガ現像機

東京現像所でもっとも可動している現像機は、ネガ現像機。16mm、35mmの各2台が稼働している。主にCM撮影が多く、北野監督や山田監督などの劇場作品の撮影が入れば劇場作品の現像が入り、16mmネガ現像は学生が実習で撮影されたものが多いという。取材時は現像機がメンテナンス中で、フィルム搬送ローラーの清掃が行われていた。

35mm対応カラーネガ現像機 フィルム搬送ローラーのメンテナンス
■ネガ現像の暗室

ネガ現像機の奥には暗室があり、現像機にセットするマガジンを暗室で詰める。暗室作業場は外光を防ぐために二重扉で、入室時は必ずベルを鳴らして確実に光が入らない仕組みになっている。ポジ現像の暗室はうっすらとセーフライトと呼ばれる明かりを照らすことが可能だが、ネガは完全暗室。映像本部映像部長の西野克治氏は、その様子を「真っ暗な状態の中で、ポンポンとフィルムをつないでいく。まさに職人技です」と紹介した。

特に、ネガを扱う人たちは、大変な緊張の中で作業をしている。ネガの場合は二度と作成はできない。絶対にキズは入れられない。ベテランが担当しているとのことだ。

ネガ現像機の奥にある暗室。IMAGICA Lab.の暗室と異なり椅子はない 完全暗室の中で作業が行われる
■毎日行われるコントロールテストとランニングテスト

現像機は毎朝、21段ステップによる特性曲線のカーブやキズを確認するランニングテストを行い、問題がないことを確認してから本番作業を開始する。現像機は、薬品組成比率、現像時間、液温度が少しでも狂うと特性曲線のカーブが変化してしまう。分析スタッフは、長年の経験を活かして、特に気を使ってチェックしているとのことだ。

毎朝確認が行われる21段ステップの特性曲線

(02)薬品調合、分析:化学スタッフによる薬品の調合やコンディションを分析

分析室では、主に現像機で必要な液の調合や分析が行われている。また、排水処理からメンテナンスまで手がけている。具体的には、現像機に液が入るまでのポンプや配管、現像機からオーバーフローした液の回収装置などのメンテナンスまでもが担当とのことだ。

分析室 薬品調合タンク

(03)フィルムアーカイブ:古いフィルムの診断、洗浄、修復、補強

東京現像所では、古いフィルムの診断や修復を行うアーカイブサービスも実施されている。古いフィルムは、付着物や切れ目があると、プリンターにかけた際に切れたりする恐れがある。プリンターやスキャナーにかける前に必ずチェックを行う。

チェックは、フィルムの端を触って指先の感触で切れ目を確認していく。また、カウンターにかけ、検尺を行う。
フィルムの端を指先で触ってチェックをする

ビネガーシンドロームと呼ばれる化学的な劣化が起きたフィルムの例を見せていただいた。セルロースアセテートベースで製造されたフィルムは、水分、熱、酸によって分離し、酢酸を放出する。

ビネガーシンドロームは、A-D Stripsと呼ばれる検査紙片で酸性劣化の測定を行う。劣化が進行すると、検査紙片は黄色に変化する。付属する鉛筆はカラーチャートになっており、劣化具合を数字と色で確認できる。

ビネガーシンドロームを発症したフィルム。酸性劣化を色で測定 カラーチャートと比較してレベルを測定。0が「良好」、1が「劣化開始」、2が「進行中」、3が「歪みや縮小が顕著」となる

(04)タイミング:ネガフィルムからポジフィルムに焼き付ける数値を調整

フィルムの色調調整はタイミングで行われ、ネガフィルムからポジフィルムに焼き付ける工程で行われる。オペレーターは、「タイミングマン」や「タイマー」などと呼ばれている。

タイミングは、タイミングアナライザーと呼ばれる機械で、手元にあるR(赤)G(緑)B(青)の値をダイヤルで設定しながら、ネガからポジへ焼き付け時の設定を調整する。タイミングマンがカメラマンと打ち合わせをして、カットの色を決めていく。

カラーネガからカラーポジにプリントするときに用いられるタイミング装置。RGB50段階を調整する

タイミングでカットに対して数値を決めたら、「何フィートから何フィートまではこの数値」という結果を紙テープにパンチして出力する。古いコンピューターでお馴染みの紙テープだが、現役で稼働中。紙であるために、長期間に渡る保存も特徴とのことだ。

タイミングデータはデジタル化されて紙テープに出力される

プルーフ・プリンターは、タイミングマンには便利なプリンターだ。タイミングで決めた色の仕上がりをポジに焼いて確認したい場合は、1ロール焼く必要がある。そのため、2000フィートの原版では、相当なフィルム代がかかってしまう。プルーフ・プリンターは、各カットの任意のコマを選んで焼き付ける事が可能。2000フィートの原版でも、カット数によっては10フィートから20フィートでテスト焼きを済ませることができる。

東京現像所ではプルーフ・プリンターと呼ぶ、各カットの任意のコマを選んで焼き付ける特殊なプリンター

検尺を行う部屋には数多くのリワインダーが並んでおり、ここで作品ごとに紙テープやタイミングデータの修正が行われる。机のライトテーブルは、すべて自社によるカスタマイズだという。

検尺を行う。ライトテーブルで実際にポジの確認 カットごとにタイマーで打った値は紙で管理(PC上でも管理)
■フィルムを洗浄するクリーニングマシン

クリーニングルームの注目は、2018年夏に導入した新クリーニングマシンだ。「現像は減っても古いフィルムをスキャンする機会は増えており、古いフィルムを念頭にした新しい洗浄機を導入することにしました」と西野氏。古いフィルムの増加で、導入に踏み切ったという。

現像機を手かげている大友製作所製の特注で、すでに本番稼働もしている。従来のクリーニングマシンは縦型のために曲がりが多くてテンションがかかり、古いフィルムには理想的ではなかった。新クリーニングマシンは、古いフィルムを念頭に極力曲がりを減らすように基本設計しており、テンションがかからない仕様を実現している。有機溶剤で洗浄が可能で、油汚れやホコリなどを落としてくれる。

東京現像所オリジナルの新クリーニングマシン 有機溶剤の液を吹き付けてフィルムを洗浄

(05)プリンターで焼付け:タイミングによって決定されたRGBの数値で、ポジフィルムに焼きつける

ネガをポジに焼き付ける密着プリンターは、米国BHP製が導入されている。非常に高速で、最高速度は600フィート/分で動作が可能だが、約480フィート/分に抑えて使用しているとのこと。映画館に収める大量焼き増しに使われていた際には、6台が24時間フル稼働していたという。特に優れているところは往復で焼付けができる双方向フィルム搬送システムで、スタートからエンドにかけてポジへの焼付けが終わると、今度はエンドからスタートにかけてポジに焼付けが可能。

タイミングで決めたデータは、フロッピーディスクや紙テープを読み込ませてダウンロードする。「何フィートから何フィートまでがこの数値」というタイミングのデータを読み込み、データに基づいてR(赤)G(緑)B(青)の光量をカットごとにバルブが動いて光を当てる仕組みになっている。

プリンターのある部屋は暗室だが、どこにどういうスイッチがあるか、スタッフはほとんど覚えているという。また、ポジフィルム用セーフライトの点灯が可能で、10分ぐらいすれば目は慣れるだろうとのことだ。

米国BHP製の密着プリンターが可動中 タイミングの数値に合わせてバルブが動く

(06)フィルムスキャナー:フィルムとデジタルの融合でアナログの可能性を拡張する

東京現像所には、「ARRISCAN」3台、「Scanity HDR」1台、「ScanStation」1台、「Cintel Scanner」1台、「Sondor resonances」1台を保有している。金額やセンサー、特色が異なる合計7台のフィルムスキャナーが可動している。使い分けで重要視するのが目的で、スクリーン、放送用、配信、そして配信先が求めるクオリティを含めたうえで、選定を行うとのこと。また、持ち込まれたフィルムの状態も考慮するという。

例えば、予算を抑えたい場合は、レーザーグラフィックス製ScanStationやBlackmagic Design製Cintel Scannerを提案するという。さまざまなラインナップを持つことで、さまざまなニーズに応えることができるとのことだ。

■Digital Film Technology/Scanity HDR

Scanityは2015年導入で、国内では2例目だという。特に東京現像所のScanityはHDR対応で、R、G、B、IRに対応する多板センサーを搭載。HDR機能は、カラー時に使う3センサーを、白黒3段階の露出でスキャンに使用することにより、より広いレンジを自然な階調でスキャンすることが可能にしている。

Scanity HDRの特に優れているところはローラーゲートと呼ばれる機構の搭載で、フィルムはすべてローラー上に乗って走るために摩擦がない。ダメージフィルムにも優しいスキャナーとなっている。また、内蔵されたスタビライザーでフィルムを安定させてブレないように対策している。スプロケットがないのでフィルムが破損していても対応できるメリットもある。

「弊社に持ち込まれるフィルムは、多種多様です。柔軟性がないフィルムもあれば、平面性がないフィルム、パーフォレーションの穴が欠けるなど物理的に損傷したフィルム、収縮がどんどん強くなるフィルムなどもあります。旧作に関して痛んだフィルムはScanityが理想でしょう」と三木氏。

三木氏はこうも続けた。

「CMなどに関しては、35mmフィルムで撮られているものもあります。以前は、ラッシュで編集した使い所をだけをスキャンする流れが多かったですが、最近は最初から2Kでスキャンして納品し、それで編集から最後の仕上げまでDPXを使うという方法もあります。そうなってきたときに、Scanityのスピードはすごく魅力になってきます。

また、スチルのカメラ、デジタルカメラ、シネマカメラでも同じように、メーカーや製品によって印象が異なります。実はスキャナーも光源やセンサー、レンズなど、基本的な構造はカメラと似通っています。CM撮影のスキャンでも「これはARRISCAN」とか「SCANITYでお願いします」というふうにスキャナーを選ばれるカメラマンも多くいらっしゃいます」とも語った。

フィルムと機材が摩擦しないスキャナー、Scanity HDR
■ARRI/ARRISCAN

ARRISCANは、東京現像所の中でもフラッグシップモデル。世界中のスキャナーの中でもARRISCANは別格な存在といっていいだろう。東京現像所が関わる新作映画のほとんどがARRISCANで、一部でSCANITYやScanStationが使われている。北野武監督や山田洋次監督の作品も仕上げにARRISCANを使用しているという。驚くのは、格別な存在と言われているARRISCANを東京現像所は3台も保有しているところだ。恐らく東洋一の保有台数だという。

ARRISCANは、CMOSセンサーを搭載。他社スキャナーはラインセンサーのものもあるが、ARRISCANは面センサーで画像のひずみがない。また、「ダブル露光」方式と呼ばれる技術を採用しており。RGBの露光を3回、もしくは6回行い、ハイライトとシャードーの拡張を特徴としている。

3台のARRISCANが可動している CMOSイメージセンサ搭載で、面センサーによる面スキャンを1フレームごとに行える
■レーザーグラフィックス/ScanStation

黒い突起が印象的なのが、レーザーグラフィックス製のScanStationだ。8mm、16mm、35mmなど各種フィルムのスキャニングが可能。フィルムスキャンをしながらDPXやQuickTimeが同時生成も可能。ScanStationはセンサーがベイヤー配列で、1つの単板センサーでフルカラー画像をすべて取得する。最大60fpsの速度で直接デジタル形式にフィルムを変換可能なスピードも特徴だ。

ハイスピードとハイレゾリューションに対応したScanStation

(06)テレシネ:フィルムからテレビ信号への変換とDPXへの書き出し

映画フィルムの映像をテレビ信号に変換する際に使われているのが、Cintel製HDテレシネシステム「Millennium」だ。一般的には、フィルムをビデオ信号に変換をしてテープに収録するのがテレシネだが、Millenniumはスキャナーとして使うことも可能。DPXに書き出してグレーディングという流れの作業に使用されることも多くなってきているという。

特に、スキャナーとして使用した際は、光源にCRTを使った独特の柔らかい描画が特徴で、最近ではCMのデジタイズに使われているという。一部のカメラマンや監督から柔らかい上がりが好みという支持を受けているという。

ただし、Millenniumの光源に使われているCRTは生産中止で、入手はできない。Blackmagic Designは2014年にCintelを買収したが、Millenniumはサポートしない。東京現像所ではCRTのストックを自社で保有しているという。

■カラーコレクター

フィルムをSD/HD映像へ変換する際の色彩調整には、davinci 2k plusが使われている。davinci 2k plusをバージョンアップしたものが現在のDaVinci Resolveだ。グレーディングとしての基本的な機能は一緒。

(07)フィルムレコーダー:デジタル映像のファイルフィルムに記録

劇場作品のフィルム化にフィルムレコーダーが導入されている。ARRILASERは、半導体レーザーを使用した35mmフィルムレコーダーで、デジタルデータをフィルムに変換をする。例えば、フィルムをデジタルデータにして、デジタルの処理を加えて完成したらARRILASERでフィルムに戻すといったことが可能だ。

特徴は、初の半導体レーザーを採用したフィルムレコーダーであるところだ。最初にデジタルが始まった頃は、コダックはCINEONでレーザーレコーダーを実現していたが、ガスレーザーのために安定しなかった。ARRILASERは半導体レーザー採用で完成度を高めている。「半導体レーザー採用で、世界中のレコーダーが、ARRILASERに変わりました」と木下氏はいう。

Quattroは、4Kリアルタイムでコストを抑えたフィルムレコーダーだ。ソニー製またはビクター製の4Kエンジンを搭載しており、ビデオデータを読み込み、中で映写をしたものを直接ARRI社35mmフィルムカメラで撮影してフィルムに焼き付ける仕組みだ。ARRILASERは1枚2Kで約2秒、4Kで約4秒かかるが、Quattroは1秒24コマで収録が可能。フィルムしおりはQuattroのフィルムレコーダーで一回ネガを作成してから、ポジにプリントを焼いて実現しているという。

4KリアルタイムフィルムレコーダーのQuattro txt・構成:編集部
Vol.06 [Film Shooting Rhapsody] Vol.08

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[ DATE : 2019-04-18 ]
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