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Vol.09 東京藝術大学 大学院 映像研究科 映画専攻で行われたフィルム撮影実習ゼミについて聞く

2019-05-17 掲載

txt・構成:編集部
協力:東京藝術大学 大学院 映像研究科

東京藝術大学 大学院 映像研究科 フィルム撮影を学ぶ映画制作技術ゼミ開催

「藝大」の愛称で親しまれている東京藝術大学は、1949年設立された。日本で唯一の国立総合芸術大学だ。その東京藝術大学大学院に2005年、日本初の国立映画学校となる映像研究科が設置され、映画製作技術者を育成する「映画専攻」がスタート。設置当初は、北野武監督を教授に迎えた講師陣が大変な話題となった。

映像研究科の映画専攻は今年で創設14年目。「ハッピーアワー」や「寝ても覚めても」を手がけた濱口竜介監督(映画専攻2期生)や、「君の膵臓をたべたい」の月川翔監督(映画専攻1期生)など、優れた若手監督を輩出している。

東京藝術大学の馬車道校舎。馬車道校舎は、1929年に安田銀行横浜支店として開設された歴史的建造物で、横浜市認定歴史的建造物

映像研究科は、施設の充実も特徴だ。映像制作現場では、フィルムからデジタルデータへ、HDから4Kへと移り変わっている。撮影から上映までを全てデジタルで行うシステムを構築し、本編集室や編集ブース、MA室、撮影機材はソニーCineAlta F65RSが2式など、映画制作の現場と同じものが導入されている。

その一方で、フィルムでの映画撮影は年々減ってきており、フィルムを使った授業を行う学校は希少になってきている。そんな映画産業の状況だが、映画専攻では今年も田中一成氏(同大学院教授)の指導の元、フィルム撮影実習の映画制作技術ゼミが行われた。そのゼミの様子を紹介しよう。

富士銀行時代に金庫室だった部屋は、機材庫として使用されている

機材庫は常に決められた位置に置く「定置管理」によって管理されている。出払っている機材は棚が空くので、何がないかすぐにわかる。取材時は、JVCの「1」と「2」が出払っていた。返却の際は、必ず指定された位置に返す

フィルム装填を身につける

フィルム実習に使用するカメラは小型で携帯性に優れたArriflex 16SR II。TVニュース取材や記録映画、劇場映画などで業界標準的に使用されたカメラだ。マウントはARRIバヨネットレンズマウントで、レンズはツァイスのVario Sonnar II 10-100mm T2 f1.8。フィルムは16mmの「500T」または「200T」のタングステンタイプが使われていた。

ゼミで使われた「Arriflex 16SR II」

カリキュラムは、フィルム装填やカメラの使い方から始まる。Arriflex 16SR IIのボディからマガジンを外し、マガジンに400フィートの長尺を装填する。学生全員が、マガジンへ入れてカメラへ装填するのは初めてで、フィルムを見たことがない生徒も少なくない。まずは、フィルムには裏と表があるというところから教えるという。

フィルムはわずかな光でも感光してしまうためにフィルム装填は暗室装填が原則だが、まずは明るい場所でフィルムゲートにフィルムを通す実習を繰り返す。フィルムは細く、注意深くフィルムに装填する必要がある。なかなかうまくいかず、みんな苦労している様子だった。スムーズにフィルム装填ができるようになったら、「ダークバック」と呼ばれる布袋の中でつめる練習を行う。

ボディからマガジンを取り外し、取り付けも身につける

また、16mmフィルムの基本撮影スピードは、24コマ/秒。1分で36フィート、100フィートで166.7秒(約2分45秒)の撮影が可能で、約3分のストーリーを作れる。400フィートのフィルムでは、約11分の撮影が可能。しかし、慣れないとフィルム装填の際に無駄が発生してしまい、約10分30秒しか回らないということもあるそうだ。

慣れるまでは明るいところでフィルム装填の練習を行う

大中小の粒子で実現する柔らかさや濁りこそフィルムの魅力

撮影実習は、馬車道校舎の1階ホールで行われた。映画専攻のフィルム撮影実習はユニークで、シナリオライターが書いたサイレント映画の脚本が用意され、それに合わせて撮影が行われていた。

映画制作技術ゼミを指導する田中一成教授に、フィルム撮影実習について話を聞くことができたので紹介しよう。

馬車道校舎1階ロビーに撮影セットを設営して行われた

ゼミで生徒を指導する田中一成教授(右)

田中一成|プロフィール
鳥取県出身。横浜放送映画専門学院(現日本映画大学)卒業後、フリーの撮影助手として映画、テレビの撮影に携わる。1994年度文化庁芸術家在外研修員として米国、オーストラリアで研修を積む。主な担当作品は「探偵はBARにいる」(11~17)シリーズ、三池崇史監督作「極道恐怖大劇場 牛頭GOZU」(03)「ゼブラーマン」(04)、宮藤官九郎監督作「少年メリケンサック」(09)「中学生円山」(14)、松本人志監督作「R100」(13)など、テレビドラマ、Vシネマ多数。日本映画撮影監督協会理事。
――なぜフィルム撮影の実習を行うのでしょうか?

一番の理由は、フィルムを取り扱える人が減ってきていることです。少しでもフィルム撮影ができるようにしておきたいのと、フィルム撮影の技術や特徴は知っておくべきだと思うからです。

――デジタルの使用率が上がるにつれてフィルム撮影は減少しています。それでも、フィルムを知っておくべきという背景を教えてください。

結局デジタルになっても、映像撮影の基本は全てフィルムの技術からきています。S-LogなどのLogカーブはフィルムのカーブからきており、それを知らなければ映像を理解しづらいと思います。また、デジタル撮影のみだと自分の表現の幅を狭めることになります。

映像記録メディアがフィルムからデジタルに移行し、その次にどう変遷していくのかはわかりません。しかし、フィルムを知っていれば、どんなメディアの時代になっても対応できるのではないか?その対応力をつける意味でも、フィルムは知るべきなのです。

――フィルム撮影とデジタル撮影の違いは何でしょうか?

デジタルはモニター確認が可能で、撮影も難しくはありません。しかしフィルムは、映そうと思うところと、映さなくてよいところを始終選択しながら撮影をします。そのままでは、なかなか映せないのです。それをどのようにしたら映せるのか?というのが一番、フィルムとデジタルの違いかなと思います。

――そのような違いがある中で、田中教授はゼミでどういったことを意識して指導されましたか?

やはり計測ですよね。つまり、露出に気を払います。デジタル撮影では、モニターの見た目でも撮影は行えます。しかし、フィルム撮影では露出のF値から換算します。やはり露出計で計測しないとわかりません。それが一番大きいかなと思います。

ゼミの撮影では、露出の計測を何度も繰り返して確認が行われていた

――特に露出計に関しては、特にどのようなことを強調して指導されましたか?

単なる露出計をそこに置くのではなく、ライトの方向にどの程度の強さなのか?フィルム撮影は、光を切ったり、光源に向けてしっかりと計る点を、学生に指導しています。

――撮影中は、窓ゴミの確認も頻繁に行われていました。フィルム撮影はそういった気遣いも必要になるのですね。

フィルムの場合は、「窓ゴミ」と呼ばれる物理的なフィルムのカスが発生します。フィルムは、実際に動いていきますから擦れたフィルムのカスが発生し、それが画面の中に付いてしまうことがあります。そこで、カットごとにゴミがついていないかチェックをして、付着していればそれらを取り除きます。

カットごとにレンズを外して窓ゴミのチェックも行われていた

――田中教授が思う、フィルムの魅力とは何でしょうか?

デジタルの映像はどちらかというと非常にクリーンで、フィルムはなんらかの濁りがあります。その濁りが魅力かもしれません。

また、デジタルの場合は、素子の大きさがすべて同じです。それぞれの素子が点滅して、画を形成します。一方、フィルムには、大中小の粒子が存在します。暗いところに大きな粒子が感光し、明るいところは小さな粒子が感光します。その大中小の粒子が全体的にうまくまざりあうことで、柔らかさみたいなものを実現しています。

――最後にフィルム撮影のアドバイスがあればご紹介をお願いします。

作品の内容によって、デジタルがいい場合もあるし、フィルムがいい場合もあると思います。例えば、一枚の絵画を作る際に、油彩、水彩、版画など、どの表現がもっとも最適なのか?というのがあると思います。何でもかんでもフィルムがいい、何でもかんでもデジタルがいいというのではなく、その作品によって選ぶことができる。それが、一番幸せな現場、もしくは撮影ではないかと思います。

txt・構成:編集部


Vol.08 [Film Shooting Rhapsody] Vol.01

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[ DATE : 2019-05-17 ]
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