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[Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019]Vol.06 山木社長に聞く~シグマ、シネマレンズ次の一手と「シグマ・バーバンク・ショールーム」

2019-06-18 掲載

txt・構成:編集部

Cine Gearのシグマブースで、シグマの代表取締役社長、山木和人氏と商品企画部の若松大久真氏にインタビューする機会を得られた。バーバンクオフィス開設のことやこれからどのようなシネレンズの新製品を予定しているのか?単刀直入に聞いてみた。

左から、シグマ代表取締役社長 山木和人氏と、商品企画部の若松大久真氏

映画関連の企業が多く集まるバーバンクにシグマ・ショールームがオープン

――PRONEWSでは、NABやCine Gear、BIRTV、photokinaなど、世界中の展示会を毎年レポートしてますが、山木社長とはどこの展示会場でも偶然にお会いさせて頂いております。Cine Gearに関しては、毎年来られているのでしょうか?

山木氏:シネマ市場参入の検討を始めた時期から参加しています。昨年は私自身のスケジュールが折り合わずに来られなかったのですが…。最初は、ブースを持たずに視察のみの参加でしたが、その時点で翌年にはブースを出展しようと決めました。

――Cine Gearの会場を見ていると、シネレンズを取り扱うレンズメーカーは増えているような気がします。

山木氏:Cine Gearに限らず、中国、韓国、台湾などのアジア系のレンズメーカーがすごく増えています。面白いといえば面白いですが、混沌としている状況でもありますよね。

――ロサンゼルス・バーバンクにショールームのオープンには驚きました。なぜ、開設されたのでしょうか?

山木氏:シネマ業界に参入後、ハリウッドの業界の方々と日常的にしっかりとお付き合いをして、近い距離でサービスやリペアを行わないと、本当の意味で受け入れられないだろうと考えたからです。

逆に言えば、ハリウッドで受け入れられることが、そのまま世界市場でも受け入れられるはずだと思いました。当社の事業規模からすると、いきなりオフィス開設というのはちょっとやりすぎかなとも思ったのですが、本気でこの業界に受け入れてもらおうと思うなら不可避の選択だろうと考え、最終的に設置を決めました。

バーバンクにオフィスを開設。バーバンクオフィスの詳細は後半で!

大口径のレンズを製造できるのが強み。シネレンズは戦略的に重要な製品

――次にお聞きしたいのは、そもそもシネマの撮影市場はスチル写真の市場に比べて、大きくないと思います。それでもシグマはなぜシネマ市場に参入を決めたのでしょうか?

山木氏:シネマ市場は決して大きくはありません。それでもシネマにこだわる理由の1つが、当社唯一の生産拠点である会津工場、そしてそこで働く人々の雇用を守るうえで、シネマレンズのような高付加価値製品の展開は、安定的な経営にとって重要になるからなのです。レンズメーカーには、車載用監視カメラ用のレンズユニットの設計製造など、社会的需要の大きい領域を中心にしているところもありますが、当社のように、国内工場の従業員の雇用維持に必要な利益率を安定的に確保するのは難しいという課題があります。

また、当社には大口径のレンズを高精度・高効率で製造できる強みがあります。技術的な強みを活かしたビジネスを継続できるという意味でも、シネレンズは戦略的に重要です。

もう1つは、社員が仕事を楽しんでくれていることですね。若松などを見ていると趣味か仕事かわからない感じで打ち込んでいますし、それっていいことだなと思っています(笑)。

会社というのは、やみくもに業務効率化や生産性の向上を求めるのではなく、仕事そのものを楽しめるようにすることも大切だと思います。そういう意味でも、シネマは重要ですね。

――若松さんに質問です。スチルレンズとシネレンズで設計の違うところはどこにあるのでしょうか?

若松氏:大きく違います。シネマはすべてフルマニュアルのレンズで、マニュアルでの使い勝手や動きの滑らかさが重視されます。Cine Gearに来ているDPやフォーカスブラーなどの職人たちが、技術を発揮できるような作りになっています。

一方、スチルレンズのお客様には、アマチュアからプロの方まで幅広くいらっしゃいます。お客様がどんな環境下でも使いこなせるように、オートフォーカスや自動絞りなど、カメラボディとレンズが連携して制御する機能を作りこんでいます。スチルレンズとシネレンズはお客様を見て、ターゲットが違うように作っています。

ブースに展示されていた28mm T1.5とEVA1との組み合わせ

最新テクノロジーを取り入れた国内工場が強みのひとつ

――Cine Gearには、多数のレンズメーカーが出展しています。これだけのレンズメーカーの中で、シグマのアドバンテージとは何でしょうか?

山木氏:それぞれのメーカーに強みや特徴があり、必ずしも当社だけ突出して優れているという訳ではないのですが、強いてひとつ挙げるならば、最新テクノロジーをいち早く取り入れた生産を可能にする唯一の生産拠点・会津工場の存在が強みだと考えています。

最新のテクノロジーを持っていて、しかも高い技術で、精度高い部品を製造できる工場があることで、設計者にもエンジニアにもいろいろと設計上のオプションが増える。もしもそうしたことが可能な工場がない場合、本当に選びたかった設計手法で作れないために、その仕様を諦めるということになります。

やはり国内に工場をもつことで、エンジニアも自由に、良いレンズを作ることが可能になります。例えば、当社のレンズは、高性能だけれどもシネマの世界ではわりとコンパクトだといわれています。そこにもやはり工場が持つ高い技術力が貢献していると思います。

しかも当社は、ある程度の規模をもって、積極的に新しい技術を取り入れて製造を行っています。もちろん、他社さんもいろいろ努力をされているので、それなりに強さはあると思います。

24-35mm T2.2とRED EPIC-Wとの組み合わせ
――光学開発担当から感じる、シグマのアドバンテージとは何でしょうか?

若松氏:私からの補足としては、当社のレンズのアドバンテージとは、やっぱり「コストパフォーマンス」に優れている点だと思います。このハリウッドの状況を見ていただいてもわかる通り、かなりの予算規模のプロジェクトが多いと思いますが、必ずしもそのすべてが予算が潤沢にあるプロジェクトばかりではないと思うんです。当社のレンズであれば、少し予算的に厳しい案件であっても性能に妥協をせずに機材を選んで使える、という話はよく聞きます。

低予算作品でも高性能のシネマレンズが使え、現場スタッフが持てる職人技を存分に発揮でき、さまざまな映像作品において美しい画づくりを追求できるようになっていく。これはまさに、ものづくりの最中から実現を目指してきた世界じゃないかなと最近感じます。ここCien Gearにくると、特にそのことを実感します。

シグマが考えるシネレンズ次期ラインナップの方向性

――シグマのシネレンズは、ズームレンズが3本、シネプライムが10本揃いました。これからどのようなシネレンズの発売を予定していますか?

山木氏:まだ具体的なことは申し上げられないのですが、今後については2つの方向性があると考えています。1つは、現行ラインと同じコンセプトで、最先端の技術を取り入れつつラインナップを拡充しいくというもの。

もう1つは、撮影監督からのリクエストに応えていくこともでしょうか。現場の声として「特徴ある映像描写を狙いたい」というニーズが増えています。まだ具体化はしていませんが、そうした個別のニーズに応えうる製品を産み出し、提供していきたいですね。

この2つの系統を主として模索していきたいと思っています。

――シグマの交換レンズは解像力の高さに定評があります。レンズの性能はまだまだ上がりそうでしょうか?どこが限界なのかよくわからなくなってきています。

山木氏:もちろんまだ上がると思います。レンズは、アナログ的なすり合わせ技術ですので、デジタル的な量子的飛躍を見込める領域ではないんですね。そのかわり新しい材料やテクノロジーを積極的に取り入れながら、着実な向上を目指したいと思っています。

2019年現在、どのメーカーのレンズも格段に性能は向上していますし、この進展はこれからも続いていくと思いますね。

――最後に、今までシグマのシネレンズは、スチルレンズの光学系をそのまま使っていましたが、プライムの40mmはシネレンズとして要求される画角と性能を前提としてレンズ開発をスタートさせた初の試みでした。このように開発される交換レンズは、今後も増えていきそうでしょうか?

山木氏:シネレンズはもともと、スチル用に開発した光学系をシネマに転用することで期待できる量産効果で、コストパフォーマンスの高い製品を実現する、というコンセプトではじめました。 シネマ業界に参入後は、その性能をご評価頂いて多くのハイエンドのユーザー様にもご愛用いただくようになりました。当社事業にとって、シネマ用レンズは不可欠なものになっていくはずです。業界参入後、シネマレンズの比重も大きくなり、われわれ自身の意識もずいぶん変化したと思いますし、今後も、シネマユーザーを意識した商品開発は増えていくと思います。

――シネマ前提の光学設計、ブリージングなし、全域でT値が変化しない高倍率ズームレンズ」の開発を楽しみにされている方も多いと思います。

山木氏:そうですね。そのあたりについては、若松が考えます(笑)。

若松氏:がんばります(笑)。

山木氏:それにしても、自分たちが努力して実現したシネレンズを、ハイエンドの映画産業の方にも採用いただいて、人々に喜びを提供する映画の現場で使っていただけることは技術者の誇りやモチベーションに繋がりますし、「我々は非常に良い仕事をさせていただいている」と実感できる素晴らしい機会です。ですので、これからもシネレンズ開発に邁進したいと思います。今後もさらに積極的にシネマ業界にコミットしていきたいですね。

シグマブースでは2種類のノベルティの配布が行われていた。1つは、14mm T2 FFの図面。丸筒ケースももらえるので、折り目を入れずに持ち帰ることができる もう1つは、シグマのロゴ入り帽子。非売品で購入することはできない貴重なアイテムだ

シグマ・バーバンクオフィス、フォトレポート

シグマは2018年10月、ロサンゼルスのバーバンクにテレビや映画制作業界向けにサービスと技術サポートを提供するオフィス「シグマ・バーバンク・ショールーム」を開設。約11,000平方フィートの広さがあり、ショールーム、管理スペース、会議スペース、4K投影のプライベートシアター、フルシネマサービス部門、倉庫施設がある。同オフィスを見学することができたので、紹介しよう。当日は自身もフォトグラファーでレンズにも詳しい同社のJared Ivy氏に案内いただいた。

オフィスを案内をして頂いた、シグマ・バーバンクオフィスの最高技術責任者 Jared Ivy氏 開設した「シグマ・バーバンク・ショールーム」。建物はお城のような構えだが、これはバーバンクやハリウッドに点在する、中世のファサードをモチーフとしたスタジオグループ「キャッスル」(まさにお城!)所有のものであるため 天井高のあるスタジオに併設されたラウンジ シューティングエリアには、日本の庭園をイメージしたジオラマセットが用意されている。その場でレンズのチェックも行える 製品ショールームには「エビフライ」の愛称でお馴染みのAPO 200-500mm F2.8 EX DGも展示 「レンズBar」では、スチルとシネのレンズをラインナップ。シグマ製品が一堂に揃う 物流センター。ここから北米への出荷が行われているという サービス施設では、レンズテクニシャンのJordan Smith氏がレンズをメンテナンス中 グレーディングシアターやミキシングシアターも装備 txt・構成:編集部
Vol.05 [Digital Cinema Bülow VIII] Vol.07

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[ DATE : 2019-06-18 ]
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