PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU

トップ > 特集 > [IBC2019]Vol.04 IP、リモートカメラが変える映像現場の未来

News

[IBC2019]Vol.04 IP、リモートカメラが変える映像現場の未来

2019-10-07 掲載

txt:石川幸宏・編集部 構成:編集部

急激に進むIP化の波

このIBCで特に目立ったのが、IPとリモートカメラによる各種制作ソリューションだ。特にライブイベント、リモートスタジオなどのいわゆるリモートプロダクションの制作現場ソリューションは、世界的規模で様々な形で広がっている。

こうしたライブ配信やライブ放送現場の省力化・効率化といった傾向は、いま始まったことではではない。数年前からIP化のもたらす恩恵として年々進化してきたが、IPプロトコルが標準化されていなかった数年前までは、各社独自のソリューション提案というところに留まっていて、なんとなく決定力に欠けるというか、自社だけが先進的にIPを導入して本当に大丈夫なのか?といった不安視感覚もあったのも事実だろう。

これまでは回りの様子見といった感が否めない様相だったが、SMTPEがIPプロトコルの標準化をST2110に決定したことで、ここにきて急激にIP化への現実味が増して、各社各局で具体的システム導入が一気に進んできているものと思われる。日本では地方局のいくつかがIP化への意欲を見せているようだが、世界の進展はここにきて現実化を帯びて急速に早まったと言えそうだ。

またこのIBC会場で目立ったのが、SMTPEの標準化IPプロトコルである「ST2110」に対応した製品には認定シールが貼られるようになった。またSMTPEと同じような認定機関であるAMWAからも、ネットワーク上にST2110対応機材が接続された場合、それを自動的に認識するシステムであることを示す「JT-NM TR-1001-1」の認定も同時に日程マークでわかりやすく示されたことで、対応製品がより明確化されたのも印象的だ。このマークがついていることでメーカーが変わっても安心して接続運用ができることになる。

第三者機関がIPについて、こうした認証を出してきたのはまさに今年からで、どのメーカーもなるべくこの2つのマークが付けられるように開発を進めている状況だ。これは過去事例でいえば、サウンド・プロトコルの元祖であるMIDIの黎明期を彷彿させる状況で、今後のIPがますます進展することを予感させる。

SMPTEが認定したIP標準化プロトコルST2110の認定マーク(左)と、AWMAが認定するST2110で接続可能な機材JT-NM TR1001-1(右)の認定マーク

とはいえ、ネットのインフラに関するコスト面では、従来の放送機材に対して予算は抑えられ、なるべくコストをかけたくないというのはどこも一緒のようだ。報道の取材素材をクラウドに上げて、クラウド上で編集してとなると、どうしても機材自体の予算は掛けない方向になる。また大手放送機器メーカーがIP化を進める上では、自社にはないネットワークエンジニアリングやIPのソフトウェアに強い企業とのアライアンスを強固にすることで、総合的かつ実用的なソリューションを実現できる、といった展示が増えてきたのも今年の傾向だろう。

パナソニック

パナソニックがこのIBCで全面的に押し出してきたのは、ライブイベントなどの現場で従来の放送スイッチャーで単にカメラの映像信号だけをコントロールするという概念から脱し、会場に存在する全ての映像リソースを、IT/IPで統合的かつ包括的に管理・コントロールできる「Next Generation IT/IP Plastform」というシステム概念を全面に打ち出した。

これはタッチパネル式のコントローラーを中心に、ST2110準拠のIPプロトコルから、従来のSDI信号、ライブ配信などでスタンダードになっているNewTek社のNDIプロトコルまでを、1つのパネル上で扱えるシステムを構築できるというもの。従来のスタジオカメラやPTZカメラの映像リソースはもちろん、今年のNABでも紹介された8Kカメラからの切り出し映像や、PCからのプレゼンテーション映像のコントロールまで全ての映像リソースが対象だ。

さらにその守備範囲は広がり、リモートカメラを搭載したロボテックス自体のコントロールや、Zero Densityなどの最新のリアルタイム3Dバーチャルスタジオシステムのコントロール、さらにはプロジェクションマッピングや大型ビジョンなどへの投影/上映システムのコントロールまでを、1つのコントロールパネルで包括的に管理運用するシステムを目指しているという。

近年、複雑化するライブイベント等における映像リソースの管理と、映像収録から配信までのライブ配信は、現場での分担と連携が課題となっているが、これらを統括してコントロールできる、まさにライブ会場における映像プラットフォームの実現を目指しているという。このシステムは2020年の正式発表を目指して開発中だ。

さらに今年は、PTZカメラ(リモートカメラ)10周年ということで、ブース後方にはリモートカメラの専用コーナーを設置。10周年を記念したロゴがブースの各所に配置されていた。ちなみにこのロゴマークにデザインされている192.168.0.10の数字は、パナソニックのPTZカメラの出荷時のIPアドレスを配したもの。

PTZ系の新製品としては、4K30pにに対応した水平111°の超広角レンズ搭載「AW-UE4WGN/UE4KGN」と、直感的な操作ができるジョイスティックが配されたリモートカメラコントローラー「AW-RP60GJ」が展示された。

リモートカメラコントローラー「AW-RP60GJ」

グラスバレー

欧州では今や「Live」の企業として認知されるグラスバレー。IP、HDR、ST2110など、これからの技術の解説中心だった昨年までに比べて、ライブの現場でその技術をどう実務的に使ってもらうか?といった観点から、収録から配信までの流れに沿ってそのソリューションを中心に展示を行った。昨年からほぼ1社占有となった、9ホール中央部をほぼ全面使用し、メインブースのバックにはオーストラリアの放送局、NEPの最新のフルIP中継車が配置され、内部公開されていた。

欧州各国で進展するリモートプロダクションのさらなる省力化がテーマということで、すでに導入が進んでいる世界各地でのリモートプロダクションからのフィードバックに応える形で、様々な提案とデモが行われていた。「Transforming the cost of live」と称したコーナーでは、現在問題となっている現場での人員の配置と、ネットワークの数を解消する取り組みを紹介。IPを利用したわかりやすい利用例として、これまで現場と局舎の2式必要だったものを、機材の大半は現地に送り込み、スタジオのスイッチング操作をパネルのみを局舎に残す形で余計な設備投資なしでライブ現場を実現できるソリューションを展示していた。

またIPを導入する際に、いきなり大きな規模というのが難しい場合が多いことから、小型IPスイッチャーなど、IP対応機材を新製品として出してきている。

ファイルベースのソフトウェア関連では、EDIUS 9の最新バージョン9.5を発表。大きな進化はライブ等で例えばスタジオカメラ、デジタル一眼、ドローン、iPhoneなど全く別のリソースで撮られた同現場の素材を、オーディオ信号を自動判別してマルチカムのオーディオ同期させる機能に対応した。その他ブラックマジクデザインのB-RAWのデコードにネイティブ対応し、同じくブラックマジックデザインのフィルムガンマもサポートした。またProRes4444のアルファチャンネルのサポート。ver.9.5はIBC初日の9月13日からユーザーは無償ダウンロードが可能になっている。

RIO ver.4.5.7は、sam買収後初めて、神戸で全ての開発が行われたバージョンになるという。大きなポイントはソニーRAWとREDのSDKに対応したほか、グラスバレーブランドになってちょうど1年となるこのタイミングで、このバージョンからグラスバレーのHQXコーデックに対応した。まだ参考展示ではあるが、RIOのクラウド編集版が稼働していた。

またブースではあくまで技術展示ではあるが、RIOをクラウドで動作させるデモも行っており、環境面、予算面などの課題は多いが、カラーグレーディングもいよいよクラウドで行える時代が見えてきた。

IBC2019トピックス:03

■STEADY GUM

欧州では、ショルダーカメラの重量問題は、今から約10年前くらいにフランスの放送局で起こったある裁判の判決以降、大きく取り沙汰されている。

あるカメラマンが重いカメラの重量のせいで腰や骨に身体的損傷を負ったことに対して、裁判所が放送局への損害賠償責任を決定した。このことをきっかけにその後多くのカメラマンが放送局を相手取り、訴訟を起こしたことで、ショルダーカメラの重量問題が大きく浮上したという。実際にその損傷も多岐にわたっていて、肩、首などのへの直接的負担から、ひじ、手首、膝などの関節、臀部や脇腹などの筋肉損傷などもあるが、最も深刻なのは背骨など骨の変形を引き起こしてしまうことだ。

とはいえ、ショルダーカメラが持つ映像の安定感とライブ中継やENGの現場での信頼性は未だ揺るぎないものもある。こうしたトラブルを解消するグッズとして展示されていたのが、「STEADY GUM」だ。

ショルダーベルトとサポートロッドからなるシンプル構造ながら、腰や背中、背骨や肩の筋肉に負担をかけないバランスを保つ構造で、骨や筋肉の疲労を軽減できる構造になっている。

■TERADEK ORBIT / ORBIT PTZ

TERADEKからの新製品ORBITは、最大2kmの範囲でロスレスの4K HDRビデオ信号を送信する世界初のゼロ遅延ワイヤレスビデオシステム。同社特許取得済みのJSCC(ジョイントソースチャネルコーディング)をMIMOとOFDMの両伝送方式と組み合わせて使用し、4.9~5.8GHz帯域でビデオエンコード/送信、40MHz・20MHzのチャネル容量を最大限に活用できる。

ORBIT PTZは、PTZカメラとハウジング用に特別設計さえれた、PTZカメラ用の4Kワイヤレスビデオ&コントロールシステム。1mm/sec以下という遅延のないワイヤレスリンクを介して、リアルタイムで4K60pのビデオ信号とカメラ制御のコマンドを送信する。ロスレス10bit 4:2:2画質で最大1000フィート(約300m)までの無線範囲を持つ。12G-SDI、HDMI対応。RS-232-RS422を介してPTZカメラ制御コマンドの送信に対応。

txt:石川幸宏・編集部 構成:編集部
Vol.03 [IBC2019] Vol.05

[ Category : , ]
[ DATE : 2019-10-07 ]
[ TAG : ]

この記事に関連する記事一覧

[IBC2019]Vol.08 聞こえてくる脱地上波への足音、OTTへのさらなる進展

txt:石川幸宏・編集部 構成:編集部 OTT普及による映像業界への影響 IBCがいま最も先端の映像事情を垣間見れる展示会であることは本特集Vol.01でも言及... 続きを読む

[IBC2019]Vol.07 SIGMA fp発売直前、一台のカメラに二つのカメラが共存する!?山木社長と若松氏に聞く

シグマ代表取締役社長 山木和人氏(左)と、商品企画部の若松大久真氏(右)txt・構成:編集部 いよいよ発売直前。気になる時期と販売価格は? 7月に発表されたSIGMA ... 続きを読む

[IBC2019]Vol.06 メディアやエンターテインメント領域のAIと機械学習

txt:江口靖二 構成:編集部 カンファレンス、セッションからみる現状と近未来 IBC2019ではブロックチェーンと同様に、AIや機械学習(マシンラーニング、ML)... 続きを読む

[IBC2019]Vol.05 メディアとエンタメにおけるブロックチェーン利用状況の進展が少ない訳とは?

txt:江口靖二 構成:編集部 可能性未知数のブロックチェーン IBC2019では、ブロックチェーンに関するセミナーが3本開催された。2018年は6本だったので、数... 続きを読む

[IBC2019]Vol.03 今後の映像業界を牽引するのはGAFAではなく中国勢になる

txt:江口靖二 構成:編集部 今年注目のキーワードは“8K+AI” IBC2019での注目キーワードは「8K+AI」だ。そしてそれらのほとんどは中国企業によって先導さ... 続きを読む

[IBC2019]Vol.02 豊作の秋を感じる賑わう会場から〜カメラ、レンズなど注目の新製品と動向

txt:石川幸宏・編集部 構成:編集部 豊作の秋を感じさせる賑わう会場より この秋のIBC2019のタイミングでは、Vol.01で紹介したソニーのFX9、Z750をはじ... 続きを読む

[IBC2019]Vol.01 欧州放送展示会IBCに異変あり!今年の印象と目立つ新製品発表から

txt:石川幸宏・編集部 構成:編集部 今年のトレンドを探る 毎年9月にオランダ・アムステルダム市街地にある、RAI会場で開催される、欧州最大の業務用映像・音響... 続きを読む

[BIRTV2019]Vol.09 DJI、Zhiyun Tech、FeiyuTech、MOZAの4大ジンバルメーカーに注目

txt・構成:編集部 FeiyuTech、未発表のジンバル「AK3000」を参考展示 BIRTVの展示会場で見逃せないのは、DJI、Zhiyun Tech、Feiy... 続きを読む

[BIRTV2019]Vol.08 Pilotfly、カメラをあらゆる方向に向けてもモニターの角度は保てるスマートトラッキングローラー「Pilotfly Cavalier」を展示

txt・構成:編集部 モニターやライトを一定方向に固定可能な「Pilotfly Cavalier」 Pilotflyは2013年設立の台湾を拠点とするブランド。主力... 続きを読む

特集記事

IBC2019 IBC2019
欧州最大の業務用映像・音響の専門展示会「IBC2019」をレポート。
新世紀シネマレンズ漂流 新世紀シネマレンズ漂流
シネマレンズを中心に一眼やミラーレスデジタルカメラの動画撮影機能と組み合わせて使われる交換レンズの最新動向を紹介する。
BIRTV2019 BIRTV2019
中国・北京の中国国際展覧中心で開催された展示会「BIRTV 2019」をレポート。
SIGGRAPH2019 SIGGRAPH2019
世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する学会・展示会SIGGRAPH2019をレポート。
QBEE2019 QBEE2019
九州放送機器展(QBEE)をいつもの会場練り歩き方式でレポート。
4K・8K映像技術展Report 4K・8K映像技術展Report
東京ビッグサイト青海展示棟にて開催された4K・8K映像技術などの最新技術が一堂に出展する「通信・放送Week2019」をレポート。
DSJ2019 DSJ2019
幕張メッセで開催された国内最大のデジタルサイネージの展示会「DSJ2019」をレポート。
Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019 Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019
米国ハリウッドのパラマウントスタジオ内で開催された映画撮影機材の専門展示会「Cine Gear Expo」をレポート。
After Beat NAB SHOW 2019 After Beat NAB SHOW 2019
東京・秋葉原のUDXにて開催されたAfter NAB Show 2019をレポート。
NAB2019 NAB2019
米国ネバダ州ラスベガスにて開催される世界最大の放送機器展覧会「NAB2019」をレポート。
SXSW2019 SXSW2019
テキサス州オースティンで開催されたSXSW2019をレポート。
CP+2019 CP+2019
パシフィコ横浜にて開催されたカメラと写真の総合展示会「CP+2019」をレポート。
Film Shooting Rhapsody Film Shooting Rhapsody
いまだから知っておきたいフィルムの現状や伝統的な技術などを紹介する。
CES2019 CES2019
米国ラスベガスで開催された世界最大の国際家電見本市 CES2019をレポート。
PRONEWS AWARD 2018 PRONEWS AWARD 2018
2018年は映像業界にとってどんな年だったのだろうか。PRONEWS AWARDで部門ごとに振り返る。

トップ > 特集 > [IBC2019]Vol.04 IP、リモートカメラが変える映像現場の未来