txt:江口靖二 構成:編集部

進化する画像センサーがより良い未来を作る

サムスンの「Ballie」は目の付け所がサムスンなプロダクトだ。百聞は一見にしかず、サムスンのキーノートで紹介されたBallieの紹介ビデオを見ていただきたい。

最初はAIBOのようなデジタルコンパニオンかと思ったのだがそうではない。これは家の中を移動する画像センサーなのだ。西陽が部屋に射してきたらカーテンを閉める、ペットがいたずらをして部屋を汚してしまったら掃除機を起動させるというように、スマートホームを実現させるときの重要な室内環境の監視と指示を出す役割のプロダクトだ。

これらは家中にさまざまな種類のセンサー類を配置すれば実現可能だろうが、それが実は現実的ではない。そこで定期的に家の中を巡回することで、Ballieがそれぞれに機器に対して司令を出すのだ。

Ballieの大きさはソフトボールくらい

これらをソフトボールくらいの大きさに凝縮できるのは、チップレベルの技術と、洗濯機や掃除機のような白物家電の技術を併せ持つサムスンゆえに成し得たものだろう。何よりもこの移動するセンサーと言う発想が素晴らしい。全てをスマートフォンに寄せがちな最近のトレンドに一石を投じている。発売日や価格は未定。

カメラとAIが解決してくれる

もう一つサムスンがEureka Parkで展示していたのが「Selfie Type」というスマートフォン用のタイピングアプリである。スマートフォンのインカメラで指の動きを認識して、文字入力を行うというもの。使用時は最初だけ指の位置をキャリブレーションする必要がある。

このときに指の大きさと関節の位置を認識させている。そのために必要な時間はほんの一瞬だ。基本的にタイプ面の素材は関節さえ認識できれば何でも可能だ。筆者も試してみたが、入力の精度について問題を感じることは無かった。類似のものはこれまで小型プロジェクターでキーボードを投射するものが幾つかあったが、Selfie Typeはスマートフォン以外に何も必要としない。

サムスンのSelfie Type

Boschの「Virtual Visor」もユニークかつ実用的な製品だ。自動車用のサンバイザーは太陽以外の必要な場所も隠してしまうので、運転時の視界に問題が生じる。そこでカメラにによる画像認識により運転者の目の位置を把握し、その部分だけを液晶を使って太陽などを遮るのである。

BoschのSmart Sun Visor

これらはすべて、カメラとAIや画像認識によって実現されたものだ。こうしたニーズは潜在的にはまだまだたくさんありそうだ。そのための要素技術として、今回Googleが発表した「Coral Accelerator Module」は、指先より小さいボードに「Edge TPU」を搭載したモジュールで、村田製作所と共同開発をした。

コプロセッサーは、毎秒4TOPSで実行でき、各TOPSに対して0.5ワットと低消費電力である。インタフェースはPCIe Gen 2とUSB 2.0に対応しており、カスタム基盤設計が容易である。TensorFlow Liteに対応しているので学習モデル構築も簡単になる。これらにより、AIを応用した製品やサービスはさら増えていくことになるだろう。

エッジAIプラットフォーム「Coral」ブランドの「Accelerator Module」

基盤に実装させたもの。プラスチックで覆ってしまっているが、この状態で人物のオブジェクト認識をこなしていたので、発熱問題も大きく改善されている。

これらのように、AIを利用したプロダクトやサービスは、これまでのような大規模なものから、従来の家電製品のようなのような様々なプロダクトに組み込まれていくだろう。

txt:江口靖二 構成:編集部


Vol.05 [CES2020] Vol.07▶︎