PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU
  1. トップ
  2.  > 
  3. 特集
  4.  > 
  5. [CES2020]Vol.09 「次の10年のエンターテインメント・プラットフォーム」とは?〜モバイル向け動画配信サービスQuibiスタート直前
News

[CES2020]Vol.09 「次の10年のエンターテインメント・プラットフォーム」とは?〜モバイル向け動画配信サービスQuibiスタート直前

#Report NOW! #CES2020

2020-01-17 掲載

txt:加藤薫(博報堂DYメディアパートナーズ) 構成:編集部

モバイル向けストリーミングサービス「Quibi」とは?

生活を変えるテクノロジーのショーケースとして世界中から注目を集めるCES。今年は会場のあちこちで、「NEXT DECADE=次の10年」という言葉が繰り返し語られ、2020年代ならではの大きな潮流を生み出すべく、様々な領域において新しいコンセプトやサービスの発表が次々となされた。

エンターテインメントの領域でも、現地の来場者の中で大きく話題を集めたサービスがある。「Quibi」というモバイル向けのストリーミングサービスだ。2020年4月のローンチに向け、昨年後半から徐々に情報開示されてきたが、今回のCESでは、創業者のJeffrey Katzenberg氏とCEOのMeg Whitman氏の両氏が登壇した基調講演が行われ、これまで謎めいていたサービスの内容が明らかになった。

モバイル向けの動画配信サービスと聞くと、米国では「GO90」という先行サービスが思い出される。ベライゾンが2015年に鳴り物入りではじめたOTTサービスで、ティーンがスマートフォンを90°回転させ、横向きで動画を専念視聴することを期待したネーミングと、プレミアムコンテンツ獲得のための多額の調達費用が話題となったが、ユーザーに視聴習慣が根付かず、残念ながら2018年にサービス終了となった。このときに多数のコンテンツを「GO90」向けに提供していたAwesomenessTVのトップを務めていたのが、Jeffrey Katzenberg氏だ。

Katzenberg氏にとって、今回の「Quibi」は、モバイル向けストリーミングサービスの二度目の挑戦ともいえる。長らくハリウッドを中心に、コンテンツ制作に取り組んできたKatzenberg氏が、「Quibi」でタッグを組んだのが、Meg Whitman氏。eBayやHewlett-Packardの経営者として知られる。トップの2人の経歴から、「ハリウッドとシリコンバレーがタッグを組んだ」と言われる「Quibi」のサービスとは、いったいどのようなものなのだろうか。

彼らは「Quibi」を、「まったく新しいモバイル専用のストリーミングサービス」として位置付けている。過去のメディアの歴史において、ラジオの次にテレビがうまれる流れになった際、はじめはラジオのフォーマットを踏襲していたが、のちにテレビならではのコンテンツフォーマットが確立したことを引き合いに出し、従来の動画ストリーミングサービスは、テレビのフォーマットの延長線上に過ぎなかった。いまこそモバイルならではのフォーマットを生み出すべきで、その答えが「Quibi」なのだ、と語っている。

ちなみにQuibiとは、Quick Bites(軽食)の略であり、スマホ用のショートコンテンツの意である。提供されるコンテツは、当然短い尺になる。

「Quibi」のユニークな点は、「ターンスタイル」と呼ばれる、スマートフォンの縦と横の画角を自由に切り替えてコンテンツを楽しむことができる映像フォーマットにある。縦型を「ポートレートビデオ」、横型を「ランドスケープビデオ」とし、すべてのコンテンツが「ターンスタイル」に対応している。撮影用に、スマートフォンを3台コネクトさせた独自の機材を開発し、制作者が見せたい映像を縦でも横でも成立するように提供することができる。

同じ内容の映像を縦でも横でも見れる、というのは、実はそれだけでは大した差別化ポイントにはならない。筆者が面白さを感じたのは、基調講演中のデモで、縦型にした際に「デバイスが電話/スマートフォンであること」を意識した映像演出が行われていた点だ。登場人物がFaceTimeで話している通話画面が、自分のスマートフォンで再生されていたら、まるで自分自身が話をしているかのような錯覚に陥るだろう。また、映像内で、登場人物がSNSをチェックする際は、アプリ画面がスマートフォンいっぱいに表示され、これまた自分のアカウントのように感じられるはずだ。

スマートフォンが単なる映像再生デバイスというだけでなく、様々なアプリケーションを内包しているからこそ、その機能をストーリーテリングにからめることによって、映像のもつリアリティが増し、オーディエンスはより一層、物語に没入することだろう。あたかも、自分のデバイスで起こっている事件かのように。そういう意味において、「Quibi」は、短尺の高クオリティの映像視聴のみならず、スマートフォンという装置をフルに活かしたエンタテインメント体験の提供を目指しているといえるだろう。

ゲームの世界では、10年ほど前に“Alternate Reality Game“という代替現実ゲームの概念が注目されたことがあった。ゲームの中に表示された電話番号に、現実世界で実際にかけると繋がり通話ができてしまう、などといった、オンライン/オフラインの世界にまたがってちりばめられたヒントがストーリーの進行につながる仕掛けが当時のユーザーの熱狂を集めた。「Quibi」をスマートフォンという装置を舞台にしたエンターテインメント体験と考えると、ミステリー、サスペンスと言ったジャンルのゲームのストーリーテリングの発想とは、非常に相性が良さそうだ。

「Quibi」は作り込んだドラマ以外にも、ドキュメンタリー、ファッション、トラベル、スポーツ、ニュースなど、様々なコンテンツを用意しており、現時点で175タイトル、8500エピソードが用意されているという。グローバルでのローンチについては明らかにしていないが、日本の映像制作者たちもすでに「Quibi」でどんな企画がありえそうか、検討に入っているという話も聞こえてきている。2020年代ならではのエンターテインメント・プラットフォームとして育っていくかどうか、今春からの動きを注目していきたい。

txt:加藤薫(博報堂DYメディアパートナーズ) 構成:編集部
Vol.08 [CES2020] Vol.10

[ Category : , ]
[ DATE : 2020-01-17 ]
[ TAG : ]

この記事に関連する記事一覧

[CES2020]Vol.11 Crystal LEDとAtom Viewで実現するヴァーチャルセット最前線~まさにリアルを超える?!

txt:西村真里子・猪蔵・編集部 構成:編集部 リアルとバーチャルの境目がなくなる影像制作 CES 2020はそれまでのCESの歴史から大きくシフトを宣言している年であ... 続きを読む

[CES2020]Vol.10 テレビ局が不在でも完全に8Kが主流のCES2020

txt:江口靖二 構成:編集部 CES 2020の主流が「8K」となった理由 CES 2020では完全に8Kが主流である。グローバルで市場を牽引する中国とアメリカでは、... 続きを読む

[CES2020]Vol.08 日常が“つながる”と意外なものがメディアになる?未来の生活を彩るものたち

txt:平野陽子 (大広) 構成:編集部 2020年1月7日~1月10日、米国ラスベガスにて「CES 2020」が開催された。すでに多くのメディアで語られているが、再度振り返... 続きを読む

[CES2020]Vol.07 人工人間、身体性が問われるテクノロジー「NEONプロジェクト」

txt:西村真里子 構成:編集部 CES 2020で注目のテクノロジー「NEON」とは CES 2020の日本のスタートアップが出展するEureka Parkに... 続きを読む

[CES2020]Vol.06 目の付け所がAIなプロダクトが続々登場〜会場から見えてくるAIプロダクト達

txt:江口靖二 構成:編集部 進化する画像センサーがより良い未来を作る サムスンの「Ballie」は目の付け所がサムスンなプロダクトだ。百聞は一見にしかず、サムス... 続きを読む

[CES2020]Vol.05 航空会社として初基調講演。デルタ航空が考えるイノベーション〜パラレル リアリティ ディスプレイ

txt:江口靖二 構成:編集部 航空会社として初めての基調講演 CESでのキーノートには、例年家電メーカーであったり、インテルやクアルコムのようなチップ系のメーカー、最近では自... 続きを読む

[CES2020]Vol.04 より多くの人を集めるために〜CESにおける「見せ方」と「ブランディング」効果とは?

Audiのブースは上からキラキラしたリボンが無数に装飾されており、否が応でも足を踏み入れたくなる txt:清水幹太 構成:編集部 来場者の気を引く“見せ方”は多種多様 ... 続きを読む

[CES2020]Vol.03 一般化を迎えたカテゴリーに花開く、味わい深いプロダクトたち〜展示会スタート

txt:清水幹太 / 編集部 構成:編集部 いよいよ展示会が始まる MediaDayが終わり、CES展示会場での展示がいよいよ始まった。CESの他の展示会と大きく違う点... 続きを読む

[CES2020]Vol.02 TOYOTA、メルセデス・ベンツ、Sony~それぞれの「その次」の示し方~ MediaDay02

txt:西村真里子・猪蔵・編集部 構成:編集部 各社が次に問うモビリティとは? CESには世界160カ国から6,000人以上のメディア関係者が集まる。そのメディア関係者... 続きを読む

特集記事

2020年11月特集:[再現:Inter BEE 2020]-Web Trade Show- 再現:Inter BEE 2020-Web Trade Show-
11月18日(水)からオンライン開催されるInterBEEを解説する。
Inter BEE 2019 ぼくらのEDIUS X
約3年ぶりのメジャーバージョンアップとなる「EDIUS X」の魅力を紹介。
InterBEE 2019の歩き方 Broadcast & Cinema EXPO 2020
映像制作者、映像業界関係者向け情報イベント配信番組。
ATEM WORLD ATEM WORLD
ラインナップ充実のATEM Miniシリーズの選び方や使いこなしをご紹介。
SIGGRAPH2020 SIGGRAPH2020
オンライン開催されたVFXの祭典・SIGGRAPH2020をレポート。
映像基礎講座 映像基礎講座
映像の基本や基礎知識を学ぶ。映像制作初心者はもちろん、熟練者ももう一度初心に立ち返ろう。
	
Shoot with Vlog cam Shoot with Vlog cam
個人の動画ブログ「Vlog」が隆盛するいま、Vlog用カメラを通して映像を撮ることを数回にわたり考える。
Camera Preview 2020 Camera Preview 2020 Part II
2019年から2020年春にかけて発表された話題の新製品やカメラシステムを紹介。
Camera Preview 2020 Camera Preview 2020 Part I
2019年から2020年春にかけて発表された話題の新製品やカメラシステムを紹介。
AfterCOVID-19 映像業界サバイバル AfterCOVID-19 映像業界サバイバル
社会的危機となっている新型コロナウイルス拡大の状況を分析し、今何が起こり、何が必要で、その後に何が訪れるのかを考えてみる。
Film Shooting Rhapsody 上映編 Film Shooting Rhapsody 上映編
16mmフィルムトライアルルームの荒木泰晴氏によるフィルム特集第2弾。今回はフィルム現像から紹介する。
再現:NAB2020 再現:NAB2020
米国ラスベガスにて開催予定だった世界最大の放送機器展覧会 2020 NAB Showでお披露目される予定だった内容を再現していく。
Film Shooting Rhapsody Film Shooting Rhapsody
16mmフィルムトライアルルームの荒木泰晴氏によるフィルム特集第2弾。
再現:CP+2020 再現:CP+2020
開催中止となってしまったCP+2020をPRONEWS誌面上で再現して行く。
CES2020 CES2020
米国ラスベガスで開催された世界最大の国際家電見本市 CES2020をレポート。
  1. トップ
  2.  > 
  3. 特集
  4.  > 
  5. [CES2020]Vol.09 「次の10年のエンターテインメント・プラットフォーム」とは?〜モバイル向け動画配信サービスQuibiスタート直前