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[Film Shooting Rhapsody:はじめての16mm Film編]Vol.04 桜の撮影本番

2020-04-15 掲載

txt:荒木泰晴 構成:編集部

フィルム装填

第4回目は3月27日(金曜日)午前10時から、いよいよ、桜の撮影本番。天候は、明るい曇り。コントラストの柔らかい光で、穏やかな風景が撮れるだろう。

装填するのは荒木君。念のため、一度目視しながら練習して、最終確認。

ブロアーで埃を清掃した後、新品、元封のコダック250Dフィルムを渡す。

「すっごい緊張する」と荒木君。

「時間をかけていいから、確実に。装填したら、石原チェッカーが、自分の装填と違うか触ってみて」

何度か手順を確認しながら装填が終わり、石原さんがチェック。

「上のループが私より小さい、と思う」

筆者が触ってみると、

「その通り、石原さんの装填は安全をみて、1コマ分ループを大きく取っている。荒木君は規定通りの大きさなので、これでも大丈夫」

石原さんの上のタルミ(ループ)は安全を見て1コマ多め。

荒木君の上のタルミ(ループ)は規定通り

両君とも納得。バッテリーを繋いで、「はい、回すから24コマに合わせて」

「え、ちょっと待ってください。どうするんだっけ」と荒木君。

「このノブを回して、24コマの赤表示に合わせるのは説明したよね」

「思いだした」

24コマ

数秒かからず、石原さんが24コマに合わせることができた。

低速側から 素早く24コマへ調整。手間取ると使えるフィルムが短くなる

「ヒゲを確認して」

石原さんが、照明付きルーペで確認。「あるような、ないような」

筆者が見ると、ミラー面を見ている。「これでは、何も見えないよ。フィルム面を出してね」

ミラー回転ノブを回して、フィルム面を出すと、「アッ、こっちを見るんだ」と、気が付いた。

「左下にあります」

筆者が確認すると、確かに1本ヒゲがある。

楊枝を舐めて、フレーム全体を一回り掃除する。数コマ、フィルムを送ると、ヒゲは無くなっている。それを確認して短時間カメラを回し、ヒゲが出ていなければ、終了。

 

準備

ヒゲの確認が終わったら、フィートカウンターを0に合わせる。カメラの底面に、三脚のプレートを基準線に平行に合わせて装着。

フィート、コマ数カウンターともに0位置。これなら確実

「では、50フィートずつ二人で回すので、ジャンケン」。勝ったのは石原さん。

「石原さんの目に合わせて視度調整して。本番に使うレンズは、ワイドの10mmを含めて、16mmと25mmの3本で撮るよ」

本番用レンズ、10,16,25mm、ワイド側に寄せた

アリフレックス16STは露出計を内蔵していないので、単独露出計を使う。今回は、「セコニック スタジオ デラックスⅡ」。ピンポン玉のような受光部を持つ「入射光」計測機。

3本のレンズには、それぞれND4フィルターを装着してある。

各々のレンズにはND4フィルターを装着

これで感度は、2絞り分落ちる。250Dフィルムなら、露出計の感度設定は1絞り落ちでISO125、2絞り落ちでISO64。

筆者は、フィルターを使う場合や24コマ以外にコマ数を上げ下げする場合、感度を置き換える。これは、露出計の24コマ表示だけを基準として見ているためだ。

筆者はどんな場合でもISO感度を換算し、24コマ表示だけを見ている。これならF値を読み違えることはない  

筆者が朝起きて、露出を測ってみると、ISO250、1/48で、F22だった。ND4で感度ISO64に落とせば、F11になる。

ISO250の露出。24の赤線の数値がF値。この場合F22で、レンズの絞りでは足りない ND4フィルターを使って、ISO64に設定。F10程度まで絞りが開く。これならレンズの絞りで足りる

これなら日陰の暗い場所と明るい場所が自由に撮影できる。「では、撮影に行くよ」と、ここまで30分程度の準備時間。

撮影本番

撮影場所は、筆者の自宅近くの吉祥寺。井の頭線の吉祥寺ではなく、本家。「参詣者が見た桜の吉祥寺」がテーマで、30秒CMを作るつもりで撮影する。

■1カット目

吉祥寺山門の「吉祥寺」石碑。どこに来たのかを観客にまず判ってもらうカット。石原さんは、10mmで石碑と山門全体を収める画面を選択。膝をつくくらいのローアングル。三脚を据えた場所は、車道から参詣の車が入って来る側道。1台の軽自動車が、左折して来た。

「カメラを据えたら、周りを見てね。撮影は通行の邪魔なんだから、迷惑を掛けないようにしてね」

石原さんはファインダーを覗いているので周囲が見えない。荒木君はカメラのセッティングで精一杯。これで二人が必要。監督がいれば周囲を見ていることができるが、撮影が始まれば集中してしまい、余裕はない。

露出を測るチーフはいないので、筆者が担当して、周囲を見ていることにする。絞りはF9からF11の間で雲の状態によって変わる。

筆者の新人時代、フィルムのドキュメンタリー撮影では、監督、助監督、カメラマン、露出を測るチーフ、機材を担当するセカンドの5人がチームを組むことが普通だった。

時代が進むと、助監督がいなくなり、チーフとセカンドが兼任になり、3名のチームが多くなった。16mmフィルムによるテレビ番組取材では、監督とカメラマン、2名で、海外ロケへ行くのが常態化した。

監督が、演出と録音を受け持ち、カメラマンが撮影の全てに責任を持つ。ここまで省力化しても、遅滞なくこなせるようになるまでには、長い経験が必要だ。

翻って、現在では、「演出、撮影、編集、仕上げまで一人でこなす」、のが求められているそうだ。一人では回りが見えない状態で撮影せざるを得ず、顰蹙を買ってしまうこともある。その結果、自らの撮影がやりにくいばかりでなく、以後の撮影許可も出にくくなる。

■2カット目

山門の扁額から桜並木へティルトダウン。

扁額はF5.6、並木はF11へ変化するので、荒木君が絞りを送る。アリフレックスにはオート露出機能は無い。フィルム初心者にはハードルが高い撮影。

■3カット目

山門とソメイヨシノのクローズアップ。

■4カット目

手持ちで山門を入り、シダレザクラを見上げるまでの移動。10mmのワイドレンズで、手持ちによる揺れを最小限に抑える。手振れ防止機能ももちろん無い。

■5カット目

シダレザクラとソメイヨシノが2種類あることを理解させるカット。ここまでで、およそ50フィート。

荒木カメラマンに交代。視度調整して撮影を続行。

■6カット目

咲いたシダレザクラの枝先、クローズアップ。風に揺れているので、カメラを回すタイミングが難しい。風が吹くと、枝先がフレームアウトする。風が止まると戻って来るので、忍耐が必要なカット。

■7カット目

ツボミの残る枝先、クローズアップ。このカットが、6カット目の前に繋がると、ツボミが満開になるイメージ。

■8カット目

参道の桜と本堂。強風で桜吹雪になる瞬間にカメラを回すが、現象が終わる前にカメラを止めてしまい、カットが短か過ぎるので、もう1テイク。3秒のカットでは使えない。

■9カット目

経堂の壁に散る花吹雪。ローアングルの手持ち撮影。

■10カット目

桜の枝越しに見える本堂。これがラストカットの予定。

■11カット目

荒木君のカット。桜の幹から満開の枝へティルトアップ。最初のテイクはティルトの最初がガクンと揺れたのでNG。筆者が「カット」と言わないと、カメラは止まらない。

2回目は「ティルトが速過ぎた」と、荒木君。

ここで,100フィートのフィルムアウト。約2時間で11カット。3本のレンズをまんべんなく駆使するようにカットを指定したが、どんな撮影結果になるだろうか。

二人の感想は、

「デジタルとは全く違う緊張感」

「3本の単焦点レンズで撮影するのは、カメラを目的の位置に持って行くのが大変」

「画面を一発で決めるのが難しい」

「カメラを回し続けることはできない。その瞬間を予測して撮影するのが基本」

「なるほど、一人では撮影できない」

「自分が何を撮影したいか説明し、助手に指示できなければスムーズに撮影できない」

「監督とカメラマンは役割が違うし、見ているものが違う」

「フィルム時代はモニターが無くても平気だったんだ」

「ドキュメンタリーでは、もう1回、ということができない」

など様々だ。

筆者が見ていると、最初は三脚の上げ下げにも手間取り、フレームを決めるにも時間が掛かっていたが、手順を理解できるようになると、1カットを撮影する時間が短縮できるようになった。これはフィルムだから、ということではなく、デジタルでも手順を追って撮影する習慣が無かったのだろう。

 

総括

たった100フィートフィルムを回しただけで、デジタルとフィルムは全く違う撮影方法だ、という感想のようだ。筆者は、そうは思わない。デジタルであれ、フィルムであれ、撮影する手順は同じである。

デジタルカメラにはフィルム装填は無いかもしれないが、センサーの汚れを確認して清掃することは不可欠だし、レンズ選定やNDフィルターの選択は同じ。フォーカス、絞りを送るのは、監督によって指示が違うので、デジタルでもカメラ任せにはできない。

モニターの有無にかかわらず、カメラマンが画面に責任を持ち、任されるのが当たり前、と筆者は思うが、モニターが無ければ演出できない監督も増えているそうだ。

監督の才能だけで映画、映像ができるものではない。スタッフ全員が監督の意図を理解して、監督の発想以上に画面を膨らませなければ、観客を感動させる作品にはならない。どんな撮影でも、演出、撮影、撮影助手、サウンドマンは最低必要なのだ。

予算が無いのを理由に、スタッフの人件費を削減すれば、人数を削らざるを得ない。 その結果、映像の質が低下しても「デジタルだから」と、容認されるならば、日本の映像制作は「負のスパイラル」に陥っている。

コロナ騒ぎで仕事が無くなれば、フリーランサーは収入が激減し、職種を変えざるを得ない場合もあるかもしれない。ならば、と開き直って、一度フィルムで撮影してみることは、自分の技術を見直し、デジタル撮影のスキルを上げることになる。こんなご時世だからこそ、業界挙げて若いスタッフを支援し、日本の映像の質の向上を目指すべきだろう。

「暇な時期に前向きに何をするかで、若い諸君の未来が変わる」と、筆者は思う。

txt:荒木泰晴 構成:編集部
Vol.03 [Film Shooting Rhapsody] Vol.05

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[ DATE : 2020-04-15 ]
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