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[AfterCOVID-19 映像業界サバイバル]Vol.02 これからの映像制作現場はどうなるのか?アンケートから見えてくること

#AfterCOVID-19

2020-05-29 掲載

txt:石川幸宏 構成:編集部

世界の映画・エンタメ業界でも、新型コロナウイルスは猛威を振るい、すでに尊い命が奪れている。「E.T.」や「カラーパープル」などスティーブン・スピルバーグ監督の初期の代表作の撮影監督だったアレン・ダビュー氏や、スターウォーズなどにも出演し、ハリウッドのダイアレクト・コーチ(訛りや発音の指導者)としても活躍した名優、アンドリュー・ジャック氏など。

日本の芸能界でも、コメディアンの志村けん氏、女優の岡江久美子氏などが新型コロナウイルスの犠牲となり、エンタメ業界にも大きな影響を与えているのは周知のことだろう。緊急事態宣言が解除された後、エンタメや映画制作業界はどう動いていくのか?ここでは映画、TVドラマなどの、特に制作系の状況について見ていきたい。

業界関係者アンケートによるリサーチ(映画・TVドラマ編)

6フィート(約182cm)のソーシャルディスタンス確保は世界のスタンダードになりそうだ

まず、この新型コロナウイルス(COVID-19)による緊急事態宣言で映画やTVドラマなどの撮影も止まっている状況で、今後どのように再開し、変化していくのか?この辺りについて、業界関係者にアンケートを実施した。

※本アンケートは緊急事態宣言発動中の5月中旬に実施

アンケート項目

  1. 現在の会社(仕事)の稼働現状は?現状と休業の場合、再開予定など。
  2. 今後、撮影、編集などを再開するにあたって、具体的にどのような感染防止対策を考えているか?(会社・個人)
  3. 完全に仕事が復活できるだろうと考える時期は、何年何月だと思うか?
  4. 仕事復活のための一番のポイントになるものは?もしくは支障となるものは?
  5. 今後、再開して一番大きく変わると思われるものは?
1.現在の会社(仕事)の稼働現状は?現状と休業の場合、再開予定など
スタジオによっては、エリア色の色分けで、作業エリアと侵入可能スタッフの行動範囲を分けているところも出てきた

ロックダウン中、もしくは緊急自体宣言中は当然、自粛要請ということで、撮影やスタジオ稼働など人の集まるところについては、ほぼ休業=未稼働な状況は国内外共通だが、一部の稼働している部署もあるようだ。例えば、国内のプロダクションの編集室では、3月までに撮り溜めた素材の編集、カラーコレクションなどの作業を一部稼働させているプロダクションや、そもそもリモートワークに近い環境で行われていたCGやアニメーションの制作会社などについては、できるだけ通常稼働している現場もあったようだ。

また撮影や制作延期の作品も、再開準備に向けてリモートでのプリプロダクション会議など、今できることはやろうという動きも多々ある。編集スタジオに関しては会社の上層部が輪番体制などで出社し、編集担当者のみが誰にも接しずに、1名だけ編集室に閉じこもって作業する体制で、なるべく「3密」を避ける体制が工夫されているようだ。

ただ、フリーランスが大多数を占めるこの業界において、再開期日やどうやって再開させるかを決めるのはあくまで制作会社や映画会社、テレビ局などの発注側であり、個人は受け手として、その行方を見守っているというのが、多くの状況だろう。

2.今後、撮影、編集などを再開するにあたって、具体的にどのような感染防止対策を考えているか?(会社でも個人でも)
各現場では、撮影再開に向けてリモート確認用設備の完備体制が急務に

問題はこの点だ。すでに日本映画製作者連盟などでは、撮影を含む作品制作の現場をどうやって行なっていくかの、「映画撮影における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」が公表されているが、おそらく各作品ごと、各プロダクションごと、各局ごとに制作方法も異なることから、このようなベースとなるガイドラインを元に各々のガイドラインが準備されるだろう。すでに制作プロダクションなどで独自のガイドラインを作成中というところも多いようだ。

一例として、映像制作プロダクションであるギークピクチュアズは、医療領域のエキスパートである「キャピタルメディカ」をアドバイザリーに迎え「新型コロナウイルス感染症 感染拡大防止・映像制作進行においてのガイドラン」という撮影、制作現場という特殊環境に特化したガイドラインを策定し、スタジオ、屋外ロケ問わず、撮影スタイルや規模にあったガイドラインを提供するという。

またテレビ局で深刻なのが、連続ドラマなどのスポンサー対策だ。もっとも恐れるのはTVドラマなどの打ち切りでスポンサーが離れてしまうことで、その繋ぎ止めに奔走している。現時点では、過去作品やこれまでのあらすじのダイジェスト版、未公開オンエア部分の再編集などで、なんとか各コンテンツのオンエアに漕ぎ着けているのが現状だが、このままでは、ネタも尽きてしまうだろう。先日の緊急事態宣言の解除を受け、テレビ各局は、ドラマ撮影再開の最終準備に入っている。6月に入れば、新規撮影・制作の現場が復活してくると予測される。実際に日本テレビからはドラマ制作の制作ガイドラインも発表され、撮影再開の動きも見えている。がまだまだ課題は多い。

しかしここで大きな問題は、普通の状況下ではないため、プロダクション内でのスケジュール調整窓口が個別に必要になり、休業もしくは通常稼働していない中で、思うように連絡やコンタクトが取れないことだ。キャスト、スタッフ、ロケ現場をどのようにスケジュール調整するのか?とにかく放送局としては、何としても早い時期にオンエアを軌道に乗せたい事情もあり、関係会社間での探り合いが続いているようだ。

米ハリウッドではすでに撮影再開に向けての準備や、具体的ガイドラインが公表され始めているが、これまでの撮影や制作現場が大きく変化しそうな様相だ。
スタッフやキャストは、現場入りの16日程度前にPCR検査を受け陰性であることを確認する証明が必要になる。

加えてスタジオなど入退所時の検温、マスク着用、サニタリーハンドジェル(除菌アルコールジェル)の常設設置はもちろん、各スタッフに識別標識となるカラー分けの目印をつけて、色別に侵入可能範囲を設定するなどの工夫が考案されている。


ケータリングもサラダバーなどバフェ形式による自由なピックアップができなくなり、ランチボックス=お弁当形式に変更、自由につまめるお菓子類などが用意されるクラフトテーブルも今後は衛生面を考えて撤去される見込みだ。

日本ではお弁当文化発祥の地なので、その部分は変わらないだろう。しかしPCR検査などがまだ自由に受診できる環境にない今の状況では、不確かな情報でしか個別の症状確認ができず、もし感染クラスターなどが発生したい場合、その責任所在などもどうなるかは今後の課題のようだ。

3.完全に仕事が復活できるだろうと考える時期は、何年何月だと思うか?
ここにきて、ライブ配信やリモート撮影の需要が急速拡大、自動追尾機能などの機能拡張など、今後のPTZカメラの進化から目が離せない

これについては、もちろん千差万別で、どこも全く同じというわけにはいかない。
撮影現場も上記の理由から、TVドラマ撮影やバラエティものも、大方はこの6月上旬からは始まると予測される。しかし編集作業にその後の時間がかかるわけで、これらのコンテンツが実際にオンエアになるのは早くても6月中旬〜下旬になってくるだろう。

また現場再開には、先の衛生面のガイドラインに従って、マスクや手袋の着用、検温体制、そして入退出時のアルコール溶液などでの消毒液洗浄が必要で、そのための現場の準備も当然必要になってくる。しかしこれらは、今まで撮影現場には常設ではなかったもので、しかも大量に常備が必要となると、その確保には当然お金と時間がかかる。しかも映像業界以外にも世の中全てがほぼ同じ状況であるから、すぐに入手できるという確約もない。そうなるとどうしても開始時期がずれてくることも否めないだろう。

また来年に延期して開催が予定されている東京オリンピックの影響については、誰もが来年の開催も現実的でないと考えている人が多く、これも日本国内ではまたどういった影響を及ぼすかを注視していく必要がありそうだ。

4.仕事復活のための一番のポイントになるものは何か?もしくは支障となるものは?
撮影現場の人を減らす方向は、コロナ後に一気に加速しそうで、スタッフの代役となるロボテック技術はますます導入が進むかもしれない

実際撮影が再開されるにしても、多人数が関わるものはできるだけ避けて、人員を少なくするというのは共通しているようだ。少人数でも撮影でき、風通しの良い安全な屋外ロケ、もしくは単身撮影でのドキュメンタリータッチの作品が増えそうだ。ドラマの撮影部などは、これまで4人だった体制から、3人、もしくは2人に減らしても撮影できる体制を構築することが急務。 しかし現況は、各人のスキルの問題など簡単にはその人員を補えないことも大きな課題だ。

また「3密」を避ける工夫として注目されているのが様々なリモート機材だ。撮影、制作、演出、編集全てにおいて、リモートで操作、確認できる機材と、それを構築、操作するリテラシー確保が急務だと言われている。また、そのための新たな機材投資も現場再開には急務であり、そこにはまた制作予算との兼ね合いなどの問題も出てくるだろう。

さらに深刻なことは、社会に根付いたコロナ感染地域の劣等なイメージだ。東京に多くの映像制作会社やテレビ局、芸能プロダクションがある中で、東京都外の地方ロケが非常に困難な現状があるという。これまでは有名俳優や有名ドラマのスタッフが地方に行けば大歓迎のウェルカム状態だったのに対し、コロナ後はある種の差別的な視点、つまり東京や大都市圏の都会から来る人全てが保菌者扱いという観念がある場合も多いようだ。

要は都会から人が来る=感染者が来る的なイメージで見られ、各地方の自治体や施設での撮影許可も、そうした懸念から許可も降りにくい(今は控えてほしい)という状況もあるという。こうした制作再開の決め手は、まず一つの作品が支障なくクランクアップできることだという。一つの成功例がその後の体制に大きく作用するだろうと思われる。

5.今後、再開して一番大きく変わると思われるものは何?

現場再開には、とにかく衛生面でのガイドラインが必須になり、新部署なのか?制作部なのか?各部署内での担当配置なのか?、とにかく何かしらの形で『衛生部』的な役割は必要になってきそうだ。とにかく積極的に安全策を事前にうっていくことが求められる。

また毎日の出社時の検温チェック、問診票、マスク、手袋。また食事におけるケータリングの手順、配布方法など、細かいところにまで気をつけなければならない。今後は撮影現場へのお菓子の差し入れなども制限されてくる可能性もありそうだ。

またこれから最も大変だと考えられているのが、メイクさんやスタイリストさんだ。
人の素肌に触る機会が最も多い部署であり、ここの衛生面の管理は一段と厳しく、しかもこれまでとも大きく変わると予測されている。例えば化粧品や化粧筆などの使用する備品は全て、各俳優ごとの個別管理になったり、使い回し禁止になる可能性もある。控え室やメイク室の衛生管理も徹底されるだろう。果たしてそこに予算が割けるのか?非常に悩ましい現状があるだろう。


また映画作品については、今後制作だけでなく上映・配給までも大きな影響が出てきそうだ。ほとんどが制作先送り、もしくは1年飛ばしの現場増えている中で、大きな問題は上映・公開の時期だ。現状では映画館自体の本格営業再開がまだ先で、再開されたとしても全ての席を埋めないような観劇スタイルが提唱されている。しかしそのことは即、観客動員数に直結してしまうため、興行収入に直接響いてくることは製作側にとって大問題なのだ。

劇場映画では、今夏に公開予定だったトム・クルーズ主演の「トップガン・マーベリック」(SONY VENICE 数十台を使用した初の作品)や「007 ノー・タイム・トゥー・ダイ」も今年後半へ、国内作品では今夏に公開予定だった「るろうに剣心」の新作続編2本も、来年のGWまで約一年の公開延期になったりと、公開自体の予定が大幅にずれたことで、業界全体の予スケジュールも大きく変わってくることが予測される。

これに変わって、NetflixやAmazon Primeなどのネット配信は逆に威勢がすこぶる良い。ネット配信側から劇場公開映画も増ることで、映像業界におけるネット配信の立ち位置が、さらに優位になるだろ。

すでにアメリカではこの問題について、今後の映画作品の行方を占うような大事件が勃発した。ユニバーサルスタジオ制作のアニメーション映画「トロールズ ミュージック★パワー」という作品を劇場公開が制限される中でネット公開したことで、映画館チェーンとメジャースタジオの確執が大きな問題となっている。

この作品の公開は3月だったが、全米の劇場がコロナウイルスの影響で入場制限され、その後全米がロックダウン。このことを理由に、ユニバーサル側は4月10日から本作のデジタル配信を開始した。この配信は有料で、購入後48時間が視聴可能であり、価格も$19.99ドルという、配信にしてはかなり高額だった。それにも関わらず、全米でロックダウンする自宅で、4人家族が同時に見れば元が取れてしまう計算になるため、配信からたった約3週間で1億ドル以上の売上を記録した。


これに対してユニバーサルのCEOが「期待以上の成績、今後の映画作品のネット配信の可能性を証明した」さらには「映画館の営業再開後も、両方のフォーマットで映画を発表していきたい」と米ウォールストリートジャーナル紙に答えてしまった。この発言に全米最大手の映画館チェーンAMC側が黙っているはずもなく、すかさずAMCは「今後はユニバーサル作品を、全世界の劇場で一切上映しない」と、真っ向からの大喧嘩となっている。

しかしユニバーサル側にも理由はあって、映画館上映では配給/劇場側に多額のマージンを持っていかれる訳だが、ネット配信であれば儲けのパーセンテージも圧倒的に高い。今後の映画制作を考えれば、ネット配信販売の方がかなり有益だということが証明された訳だ。逆にAMC側にとっては、拳を振り上げたものの、もしこれが他のメジャースタジオも足並みを揃えてネット配信もすることになれば、一気に映画館自体の存続が危ぶまれるわけで、諸刃の剣ということにもなりかねない。

今年に入ってから、Netflixが全世界で4000万人以上の登録者が増えていることも鑑みるに、このコロナ禍で大きく変わったのは、やはりネット配信の可能性と一般市民へのネット映像コンテンツへの親密感が一気に上昇、普及したことだろう。またNetflixは制作者にも手を差し伸べている。Netflixは、米国におけるテレビ番組および映画制作の現場に向けて1億ドル(111億円)のコロナウィルス救済基金設立した。日本国内でも、「Netflix 映画・テレビドラマ制作従事者支援基金」設立している(すでに申請者多数で締め切られている)。


いずれにしてもコロナ禍における影響で、様々な変化を余儀なくされる映画TVの制作業界。まずは制作が始まってみて、現場を実体験して行く中で、様々な工夫が必要になるが、第二波、第三波の感染拡大の波が、予想を大きく裏切って大きくならないことを切に願うばかりだ。

txt:石川幸宏 構成:編集部
Vol.01 [AfterCOVID-19] Vol.03

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[ DATE : 2020-05-29 ]
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