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[AfterCOVID-19 映像業界サバイバル]Vol.03 コロナ禍の映像制作現場の現状から

2020-06-03 掲載

txt:渡辺健一 構成:編集部

映像関連の将来を考えるため、Vol.02に続き、さらなる分野でいくつかの取材を試みた。まず、この先一年の映像業界の仕事がどうなるかを考える上で、最もキーになるところはどこだろうか?つまり、いずれ仕事は増えてゆくはずだが、どのように増えるのだろうか?

現状1:テレビ番組は、徐々に戻り始めている

緊急事態が解除され、5月28日現在、テレビ番組の収録に関しては徐々にオファーが始まっている。有名タレントが所属する小規模芸能プロダクションでは、

「緊急事態宣言が緩和されて、番組のオファーがポロポロと入ってきています。ただ、予定ということで、急にキャンセルになることが前提だと言われています」(芸能事務社長)

この事務所は誰でも知っている、よくテレビで見かける元アイドルが所属しているが、3月から5月までは仕事が一切なかったという。緊急事態宣言が解除されるとともに出演オファーが来たとのことだが、まだまだテレビ局側も手探りで、状況を見つつ撮影になるということらしい。

同じく、10人ほどのタレントを抱える中堅タレント事務所では、

「6月からのテレビオファーはポロポロと入ってきています。でも、大きな仕事は未定です。弊社では自社制作しているものがあり、そちらを先行させています」(芸能事務所女性社長)

映像作品を自社制作し始めた事務所は少なくない。地方映画や舞台、イベントなどである。その中でも映像を作っている事務所は、テレビ局や配給会社からの仕事の見通しが立たない中、得意とする制作で食いつないでいるということだ。

一方、つい先日も、日本テレビのドラマ撮影に関して感染予防マニュアルが公開されていたが、現場を知っている人間からすると、撮影時間が大幅に増えそうである。最近のテレビ局はコンプライアンスに非常に敏感なので仕方ない方針なのだろう。それにしても、現場負担が大きいことから、撮影がどのように進むのかは手探りになりそうだ。

何れにせよ、テレビ局を中心とする制作環境の中で、新しい表現を生み出すということよりは、感染しないことに重点が置かれていると言える。大手のテレビや映画会社が感染予防に縛られる中、自分たちで制作できる芸能事務所が一歩先行しているように思える。

現状2:舞台中心の芸能事務所はネット生配信で集客

舞台やイベントは自粛の影響で壊滅的だが、熱狂的なファンを持つ2.5次元系の役者を抱える芸能事務所では、活躍の場をバーチャルスタジオでの生配信に収益を移している。これは、顧客リスト(ファンのリスト)がしっかりしていて、生で役者を見たいというファンにタイステの有料生配信することで収益しているのだ。

GFOの菅谷代表は、

「生放送ということで、生配信ができる業者さんやテレビ局のプロデューサーなどにご協力いただいています。大物の役者さんたちもこんな時期なのでご一緒していただけるため、これまでにない収益になっています」(菅谷代表)

テレビや映画の撮影がストップしている現在、大物役者たちも、活躍の場を模索している。そういった現状と、確固たるファン層を掴んでいればこそのビジネスだろう。内容は朗読を主体とした演劇。生配信ということが重要とのことだ。

現状3:大作映画の発注状況を探れ

映像業界も多種多様になっているのだが、次に最も大きな映像ということで映画業界の源流に取材した。それは大作映画のキャスティング会社だ。「キャスティングボードを握れ」とはよく言ったもので、秘密裏に進行する制作も、出演者なしには物事が進まない。名前を出したいところがだ、ちょっと微妙な裏の話もあり、匿名とさせていただく。

まず、ご存知の方も多いと思うが、映画の企画は「プロット」と「出演者案」があって、初めて企画が動き始める。プロットは漫画などの原作か有名脚本家のオリジナル作品を使うが、これはもともとストックがある。それゆえ、映画やドラマの企画が持ち上がる時には、主演クラスの役者が誰であるかが重要だ。それゆえ、役者の動向がそのまま映画・ドラマの動きになる。

■大手配給系キャスティング会社は1年先をキャスティングしている

コロナの影響で、2020年の上半期の映画撮影はほぼキャンセルになっているのは、ご存知のことだろう。そこで大手キャスティング会社に動向を取材した。

「8月までの撮影はほぼキャンセルになっています。その映画の撮影は1年先伸ばしになっています。テレビドラマは、もう放送分のストックがなくなりつつあるので、9月からの撮影で出演者のスケジュールを押さえにいっていますが、まだ未定の部分も多く、手探り状態です。一方の映画ですが、撮影自体が1年先延ばしなので、役者の1年先のスケジュールが様々な映画で争奪戦になっています。日々、スケジュール調整に追われているというのが現状です」(大手キャスティングプロデューサー)

一方、もう少し小さな作品を扱う中堅キャスティング会社では、

「3〜5月は全く仕事がありませんでした。すべて延期か中止。6月以降は小さな作品から徐々に現場が再開されそうですが、本格的には7月以降との話です。それらは本来、今年の初旬に撮影する予定だったものです。新規の仕事は見通しが立っていません」(中堅キャスティング会社代表)

上の2社の話を総合すると、Vシネクラスの小さな作品は延期されていた作品が夏頃に再開するものの、感染対策が厳しく見られてしまう大手のテレビドラマに関しては、9月撮影を目指して様々な調整が行われているということだ。そして、映画は今年の撮影予定が全て来年の撮影になる見込みで、来年は映画撮影の撮影バブルになることが予測される。

分析1:9月以降の撮影ラッシュに勝機がある?

9月以降に撮影が戻ってくるとすると、短期間に多くの撮影が行われることが予測される。これは東関東大震災の後にもバブル状態の時期があり、その規模を上回る可能性がある。9月以降となると、役所の予算の下半期の執行にもあたり、映像需要が増える時期にもなる。そういった状況を考えると、9月以降に撮影が徐々に増え始め、年末を過ぎる頃からバブルになるのではないかとも思われる。

さて、そういった(甘い)予測に従うとした場合、我々クリエイターは何をしたら良いのだろうか?撮影が重なると、当然のことながらスタッフ不足になる。大手の仕事は、まぁ、参入ルートが限られているのでなんとも言えないが、上記の3・11の後に起こったムーブメントを思い返してみると、若手クリエイターが地方の町おこし映像を任されたり、ご当地映画が地元で作られるなどが増えた(地方創生予算が使われた)。

つまり、映画配給会社にしてもテレビ局にしても、制作本数を減らすわけにはいかないので(売り上げに直結するため)、期間を詰めて撮影することになるはずだ。加えて、コロナで落ち込んだ経済を立て直すための予算が色々と流れてくる。その中には映像(地元宣伝含む)が加わることは当たり前だ。商業映像の撮影需要と地方創生の予算のダブルで、映像業界へ予算が降りてくるのだ。

分析2:新しい映画企画は、制作済み作品の公開と収益を見てから

昨年から年初にかけて撮影された作品の公開が止まっている。公開自体が9月以降とされているのだ。それゆえ、新しい作品の制作に関しては、企画自体はあるものの、予算を含めてどうするのかが決められないという。DVDメーカー(版元)や配給会社にとって新規の映像制作は仕入れに相当するわけで、作らなければ倒産が迫ってくる。それゆえ、作らなくてはいけないのは事実だが、コロナ自粛で体力が落ちていることも事実だ。

そうした状況を背景として、新作に関して現状と同じ予算規模になるかどうかは危うい。ただ、政府が助成する動きもあるので、助成金が決定すると一気に制作が進むと思われる。助成金を前提にすると、その執行は12月から来年3月となるだろう。そういった意味では、年末以降に小さなバブルがあるのではないかと予測できる。

打開策1:新需要に応えられる準備ができているクリエイターが生き残る

さて、上記のような甘い予測に関して、落とし穴もある。それは、上記の状況は一時的ということだ。しかし、その波に乗れるかどうかが、クリエイターとしての将来に大きく関わるはずだ。映像需要の拡大と人手不足の期間は、おそらく半年くらいではないかと思う。その期間に仕事をこなし、実績を詰めるかどうかが重要になるだろう。

そのために必要なことは何か?人手不足の状況下では採用の実績ハードルが下がる。これは3・11以降の地方創生予算でもハードルが下がっていた。それほど実績のなかった若手に破格の予算で映像を作らせたのだ。それでも、受注するにあたって見せられる作品があるかないかは重要なポイントだろう。それゆえ、この暇な時期にどれだけ見本となる作品を作れるかがポイントになる。ぜひ、作品を作ることをオススメしたい。

気になる業界の動向:もう1つの大再編が起こる

キャスティング会社には多くの情報が集まっているのだが、もう1つ気になることを言っていた。

「今、大手芸能プロダクションが倒れるという話があります。半年くらい無収入のタレント・役者が多く、事務所機能を維持できないというのです。これは芸能事務所に限らず、制作プロダクションも同じで、従業員や機材や施設を抱えているある程度の規模の会社が倒産するという話がたくさんあります。つまり、中堅が危ないということで、売掛金の支払い能力などを調べています」(キャティングプロデューサー)

実は、誰でも知っている超大手芸能プロダクションの分裂騒動は、去年の夏頃から動き始めていた。すでに分裂した後のタレント争奪戦が昨年の秋から起きており、新しくできる芸能プロダクションの配下に入る入らないという影の接待攻勢が何度も行われている。

ここで芸能プロダクションの仕組みを大まかに紹介すると、名前のある芸能人は裏で個人事務所になっており、暖簾だけが大手になっているケースが少なくない。表立って提携としている芸能人もいれば、実態は個人事務所なのだが(税制的な対策)、大手事務所専属ということになっているケースもあるのだ。それゆえ、大手が分裂すると、どちらの暖簾に属するのかという問題が生じる。

テレビCMを見ていると変化にお気づきかもしれない。これまでCMにあまり出ていなかった役者を多く見かける。タレントではなく役者が出るのは、実は芸能事務所としては非常に微妙で、タレントというのは安いギャラでテレビ出演して知名度を上げてCMで稼ぐというビジネスプランが王道だ。役者はちょっと違っていて、大きな映画に出ることが目的。CMには積極的でないのが通常だ。なぜなら、スポンサーがついてしまうと他社提供の映画に出られなくなってしまうからだ。その役者がCMに出るというのは、いろいろな懐具合が想像できる。

まぁ、そんな事情はともかくとして、コロナの影響で中途半端に大きな芸能プロダクションや制作会社は倒産の危機にある。前述の超大手プロダクションの分裂は後継者争いが原因で、実はコロナが原因ではないのだが、コロナの影響で分裂騒ぎに拍車がかかっているようだ。

まとめ:中堅企業が衰退する後にチャンスが来るはず

コロナの影響は会社の大小にかかわらず大きな影響があるはずなのだが、固定費が大きく規模が中途半端な会社は倒産の危機が囁かれている。芸能プロダクションにしても制作会社にしても、苦しくなる。そこからの仕事というのは望まない方が得策だろうし、売掛が残っている場合には注意が必要だ。

その一方で、コロナ後のバブル(規模は予測不能)で、その前後で動きが取りやすいのが個人クリエイターや小規模の制作会社だろう。これまで使えなかった有名な役者で映像を撮るチャンスが今ならある。バブルが始まってしまう前に、小さな作品を作るのが重要だと提言したい。十分に準備を進めて、バブルに備えたい。そのバブルまでは安い仕事も積極的にこなし、人脈を広げることも大切だろう。

次号以降では、これからの映像制作方法についてみていきたい。

txt:渡辺健一 構成:編集部
Vol.02 [AfterCOVID-19] Vol.04

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[ DATE : 2020-06-03 ]
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